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2015年7月14日 (火)

ヴァレリー・ポリャンスキー指揮ロシア国立交響楽団の日本公演 チャイコフスキー三大交響曲

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何という演奏・・・とんでもない「悲愴交響曲」だった。

ロシアの幻の名指揮者ヴァレリー・ポリャンスキーが率いるロシア国立交響楽団の日本公演です。7月12日、会場は横浜みなとみらい大ホールでした。

ポリャンスキーが1990年代に英シャンドスレーベルに録音したチャイコフスキーの三大交響曲の素晴らしさを知る者としては、何とかその実演を聴きたいとは思うものの、知名度の低さから、日本に招聘するマネージメント会社は居ないだろうなぁと諦めていました。

ところが中堅のテンポプリモが招聘をして、しかも三大交響曲を一度に演奏すると言う前代未聞のコンサートの開催を知ったときの驚きと喜びといったら有りませんでした。その時のブログ記事はこちらです。

この半年の間、期待に胸を膨らませてこの時を待ち、ついにその日がやって来ました。

しかし、通常ならメインの曲が3曲続くというマラソン・コンサートです。いくらロシアでも演奏家のスタミナが心配されるところです。

とにかく交響曲第4番から開始されました。バックステージ席ですので、ポリャンスキーの指揮ぶりと顔の表情が良く見えます。
オーケストラの音は暗く、太く、華麗さからは程遠い印象です。ロシア特有の歌い回しにはホッとします。これは他の国には真似できません。演奏は非常にオーソドックスで、テミルカーノフ/サンクトぺテルブルグ・フィルのような洗練された上手さはありません。特に第3楽章のピチカートなどは、人によっては雑と受け止めるかもしれません。けれどもポリャンスキーは精密さを売り物にしているわけでは無く、音楽を大きくわしづかみにして、ロシア伝統の情緒の味わいと荒々しく豪快な音楽を聴かせてくれます。但し、マラソンに例えればまだ序盤の15km程度。エンジンはまだまだ控え目という印象でした。

第1回目の休憩をはさんで、2曲目は交響曲第5番です。この曲でもやはりオーソドックスなロシア風の音楽を聴かせます。甘さはかなり控えめで、良く歌いますが、ベタベタと甘ったるく演奏するというよりもロシアの土の香りが漂います。しかし第2楽章のホルンのソロは本当に上手かった。ポリャンスキーは合唱指揮者として名を馳せただけにハーモニーの美しさは特筆されます。テンポは全体的にゆったりとして気宇の大きな構えを感じさせます。決して新鮮味が有る訳では在りませんが、とても安心して聴けるチャイ5です。
終楽章の音の充実度と盛り上がりは第4番よりも格段に上がり、非常に聴き応えが有りました。
レースは既に30km地点。スパートをして他選手を振り切ろうという強い意欲が感じられます。

さて、2度目の休憩をはさんだ3曲目は、あの交響曲第6番「悲愴」です。ゴールに向かって驚異的な追い込みを駆けます。
「悲愴」冒頭の弱音部をかなり強く厚い音で弾かせるのは中々にユニーク。そして強音部の音の激しさは意外なほどで驚きを感じます。というのもシャンドスのCDで聴かれた演奏は、哀しみをも通り越して涙も枯れ果てた「虚無感」を感じさせるユニークな名演奏だったからです。
それに対して、この日の生演奏ではずっと普通のチャイコフスキーを聞かせました。といっても中間部のアレグロヴィーヴォ以降の凄さには言葉を失いました。地球上の哀しみを全部集めてきたかのような慟哭の極み!これこそは破滅のカタルシスです。こんな演奏を可能にするのはポリャンスキーの肺腑をえぐるような真実の音楽が団員に徹底的に浸透している証拠でしょう。
となれば、最大の聴きものが終楽章であることは想像が付きます。何という悲劇的で痛切な演奏!こんな「悲愴」は初めて聴きました。
確かにテミルカーノフ/サンクトぺテルブルグ・フィルの演奏は第一級の芸術品でした。妖刀村正のような切れ味と凄みは比類のないものでした。
しかし、このポリャンンスキーの「悲愴」は、人類の悲劇と哀しみを一身に背負ったかのような慟哭の爆発なのです。オケの音の壮絶さも驚異的でした。3曲目にして最高の盛り上がりを聴かせるスタミナとパワフルさは圧巻です。
こんなとんでもない「悲愴交響曲」を聴くことが出来たのは本当に幸せです。

今週末の18日は東京芸術劇場公演ですが、同じ三大交響曲のプログラムです。この稀有なチャイコフスキーの演奏を聴き逃しては一生の不覚ですよ。
何を置いてもこの演奏体験をしてみるべきです。

ちなみに、三大交響曲の最新録音CDセットが会場で限定販売されていました。¥4500でしたが、最新とあっては買わざるを得ません。
家に帰って「悲愴」を聴きましたが、生演奏の感動には及びません。当たり前です。あの感動は実演でしか感じられないのは間違いありません。(注)

(注)今回販売されたCDセットの演奏は全てシャンドス録音と同一であることが分かりました。その経緯はコメントを追って頂けると分かります。

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チャイコフスキー(交響曲)」カテゴリの記事

コメント

ハルくんさん、こんにちは。
ポリャンスキーのコンサートに行かれたのですね。かなりの名演奏だったようで、九州に住んでいる 私としては非常に羨ましい限りです……。
せめて、その最新盤CDを聴いてみたいのですが、検索しても見つかりません。申し訳ありませんが、レーベルと 規格品番号を教えていただけないでしょうか…。
よろしくお願いいたします。

投稿: ヨシツグカ | 2015年7月14日 (火) 12時32分

ヨシツグカさん、こんばんは。

このCDには商品番号が有りません。
イギリス、アメリカ、日本のワールドツアー向けのオーケストラの自主制作盤で、会場限定販売の様なのです。
ただ、CDとしてシャンドスの旧盤とどちらが良いかはまだ比較出来ていません。
もしかしたら「悲愴」なんかはシャンドス盤を取る可能性も有る気がします。

投稿: ハルくん | 2015年7月14日 (火) 22時37分

ハルくん様

はじめまして。
7月24日の福岡公演に行く予定の者です。

東京に住んでいたころは、月2回はクラッシックのコンサートに行っていたのですが、15年ほど前に地元の九州に帰って一度も行っていません。
『何でもいいので久しぶりに生の演奏が聴きたい』と思っていたら、”三大を一気に”という嘘みたいな演目が目に入り、ついチケットを購入しました。
『ポリャンスキーって、聞いたことあるような無いような…』ということで、ネットを彷徨っていたらこちらへ辿り着きました。

こんな調子の私ですが、
拝読しながらだんだん楽しみになってきました。

ありがとうございます。


投稿: ばいかるあざらし | 2015年7月15日 (水) 02時51分

ばいかるあざらしさん、はじめまして。
コメントを頂き大変うれしく思います。

福岡でも三大交響曲プロなのですね。
チャイコの3曲を聴けるだけでもワクワクものですが、おまけに素晴らしい演奏であれば言うことないですからね。
どうかポリャンスキーの演奏にじっくりと耳を傾けられて下さい。そうそう聴ける演奏でないことと思います。
是非聴かれたあとのご感想をお知らせください。楽しみにしておりますので。
今後ともどうぞよろしくお願いします。

投稿: ハルくん | 2015年7月15日 (水) 17時18分

こちらはザ・シンフォニー・ホールで同じく3大交響曲です。
聴きたいのですが、3曲だと肉体的にも精神的にも無理です。
特に「第4」と「悲愴」は大きく心を揺さぶられる音楽なので
「第4」&「第5」、「第5」&「悲愴」
の2曲ずつでないと聴き通せないです。

しかし、まだまだ世界には
実力のある指揮者とオケが存在するのですね。
レヴューを読んで感じました。

投稿: 影の王子 | 2015年7月15日 (水) 21時53分

ハルくんさん、こんばんは。

会場限定発売の物を僕も買いましたが、CDの内容はシャンドス版と全く同じでしたね。4・5・6番ともに収録時間もほぼ一致しています。

聴き比べても同じでした。

最新録音版と販売では歌っていましたが、あれは嘘っぽいです。残念な売り方にショックを隠せません・・・。

いい演奏会だっただけに残念ですね。

投稿: ぺんと | 2015年7月15日 (水) 22時29分

ポリャンスキー公演、評判よいようですね。
残念ながら東北には来ないようです。
ただ東北のホール特に仙台市は多少難ありなので外来オケの演奏会でがっかりすることもままあります。その点首都圏や近畿圏など音の良いホールがある地区がうらやましいものです。

投稿: リベルテ | 2015年7月16日 (木) 13時44分

影の王子さん

こんばんは。
私などは3曲まとめて聴けるのに喜びました。
ワーグナーのオペラ全曲を聴き通すような心地良い疲労感と満足感に浸れます。

特にこの指揮者の実力は世にもっともっと認められるべきですね。

投稿: ハルくん | 2015年7月16日 (木) 22時50分

ぺんとさん、こんばんは。

限定販売のCDはPCをやりながら「悲愴」を一度聴いただけだったので気が付きませんでした。
今日聴き比べましたが同一録音なのは間違いありませんね。
会場で販売していたのはHMVですね。マネージメント会社の方とは会場でお話しをしましたが、これが旧録音だとご存知無かったのは確かです。
ポリャンスキーをネット紹介したファンの一人としては放っておけないので早急に追ってみたいと思います。

投稿: ハルくん | 2015年7月16日 (木) 23時23分

リベルテさん、こんばんは。

東北では昨夜、盛岡市民文化ホールで3曲プロが有りましたが、それのみでしたね。仙台の方には残念でした。
コンサートの開かれる場所に大きな隔たりが有るのは残念ですが、仮に音の良いホールが有っても集客が難しいのが地方の問題ですね。クラシックファンが育ち難いのは何故なのでしょう。

投稿: ハルくん | 2015年7月16日 (木) 23時32分

ハルくんさん

こんばんは、お返事ありがとうございます。この件に関してはどうにかしたいなー、と考えていました。

この先の演奏会でも同じような売り方をされるとしたら、ちょっと心苦しさがあるので^^;

なんで嘘(?)をついてまで新録音として売っていたのかも気になる所です。

もし何か分かりましたら教えて頂けると嬉しいです。

僕はシャンドス盤の4・5・6番を持っていたので、軽い詐欺にあったような感じで少しショック受けてます^^;(笑)

投稿: ぺんと | 2015年7月17日 (金) 02時16分

ぺんとさん、こんにちは。

マネージメント事務所からこの件でお知らせを受けました。
CDを持ち込んだのはオーケストラ側でしたが、会場で販売するにあたり、行き違いから新録音だと間違えてしまったそうです。
ですので、私から連絡をした後の公演では「新盤」とは言わずに販売をしていたそうです。
すでにマネージメント事務所「テンポプリモ」のホームページには謝罪と説明が掲載されています。もしも購入者が返品を希望する場合には受け付けるとのことです。
もっとも私は記念に返品はしないつもりです。
それに希少な名盤ですので、オークションに出したほうが高い値がつきそうですね。(笑)
ということですので、本件についてはどうかお気を直して下さると嬉しいです。

投稿: ハルくん | 2015年7月22日 (水) 17時21分

ハルくんさん
福岡の公演、行ってまいりました。
1階6列目ということで、ポリャンスキー氏の「床ドン」が2回ほど聞こえました(笑)

良い演奏でした。
オケは、ゆったりとした大らかさも感じられつつ、指揮者の繊細な指示を忠実に再現しており、
スポーツで例えると『有力な選手はいないが、名監督に率いられた良いチーム』とでも言いましょうか。

実は本当はあまり好きではない(ほぼ5番しか聴かない)チャイコですが、帰りには鼻歌を歌ってしまうほどでした。

件のCDですが、ちゃんと「再編集」と貼られて売られていましたよ。
ただ裏には2015との西暦があり、確かに紛らわしいですね。
「これか~」と手に取ったのですが、売り切れるということはなかろうと、一度その場を離れて戻るともう無くなってしまっていました。
大失敗です…。

投稿: ばいかるあざらし | 2015年7月25日 (土) 20時15分

ばいかるあざらしさん、こんにちは。

福岡公演に行かれたのですね。
余りお好きでは無い4番、6番も楽しまれたようで良かったです。
決して名人芸を披露する団体ではありませんが、土臭い音色のロシアのロシアらしい団体として魅力を感じます。それもポリャンスキーの指揮が有ってこそですが、表現に変なスマートさが無い分、僕は気に入りました。

CDのPマークは通常、録音年ではなく発売年の表示なので、再リリースされた場合にはその年になりますね。「新録音」とわざわざ言わなければ問題は無いのですね。
でも売り切れてしまいましたか。残念でしたね。

投稿: ハルくん | 2015年7月26日 (日) 11時39分

私は東京公演に行ってきました!

件のCDは、手持ちのお金が少なく断念しましたが(笑)、会場で売られていた新編集版はリマスターなどが施されて音質が上がっているのでしょうか?

投稿: パズー | 2015年7月27日 (月) 22時32分

バズーさん、芸劇公演ですね!

いやCDの音質はほぼ同じですね。
元々デジタル録音なので新編集盤でも差は無いように思います。

投稿: ハルくん | 2015年7月28日 (火) 00時06分

こんばんは。
7/19(日)から何日も経ちますが、初クラシックコンサートの余韻からなのか、部屋で音楽を聴けなくなっております。ロスです笑。

残席からオススメ頂いたバックステージは、指揮者をしっかり観察できて大正解でした。深謝。角席を選んだので鞄を膝でなく横に置けて、脚も出せて窮屈せずに鑑賞できました。

4番は余り聴かない曲ですが、静かに始まり弦楽隊の出だし、皆が揃ってスッと楽器を持ち上げた瞬間ドキっ!ついに始まる...。2楽章、特にオーボエ独奏に酔いました。3楽章、コレがピチカートか!と。Vnだけでなく弦楽隊が皆で演るとは思ってなかったです。

5番みたく或る程度は知っている曲だと、弦楽隊の厚い響きは実演ならではで、部屋で聴くCDでは決して体感できまセン。ホルン独奏も素晴らしかった。

6番は不思議な感覚でした。スヴェトラーノフの東京公演だと、判っていても心臓に悪いとしか思えない1楽章の"ジャン!!"が、意外な程にアッサリ。恐怖の"ジャン"により遠ざけていた曲ですが、久々に、しかも実演で聴いて、やはりイイ曲と再認識です。

木管隊と金管隊には女性は1人だけで、弦楽隊は半数が女性だったのと、終演後に木管隊が戻って来てステージの席で楽器の手入れと片付けをしていたのが印象的でした。繊細な楽器だから直ぐに手入れをしないと...ドラマ「のだめ~」の通りでした。

投稿: source man | 2015年7月30日 (木) 21時48分

ハルくんさん

こんばんは。 お話をしてくださりありがとうございます。 勘違いして購入される方がいなくなればいいな、との思いがあったので良かったです!

会場限定のCDにサインを頂けたので、大切にしようと思います!

投稿: ぺんと | 2015年7月31日 (金) 01時43分

sourcemanさん、こんにちは。

ついに記念すべき初クラシックコンサートを経験されたのですね!
CDを何枚も購入できるお金を払って聴きに行く生演奏がすべてその価値があるかというのは難しいところですが、名演奏に接した時には「ああ本当に聴いて良かったなぁ!」と思いますね。

ポリャンスキーの指揮は後姿より顔の表情を見ていたほうが絶対楽しいと思います。あの雄弁な表情が演奏の全てですね。
『男は顔で指揮をする??』
とにかくご満足された様子なので良かったです!

投稿: ハルくん | 2015年7月31日 (金) 12時42分

ぺんとさん、こんにちは。

私も恥ずかしながら、初めは聴き比べをしなかったので気づきませんでした。教えて頂いて良かったです。テンポプリモから、初めに気づかれた方にもお詫びとお礼を差し上げてくださいと伝言を貰いました。
あのCDにサインを貰われましたか!
それは素晴らしい記念になりましたね。良かったですね。

投稿: ハルくん | 2015年7月31日 (金) 12時51分

初めて投稿します。ポリャンスキー指揮の演奏会が終わって半年以上も過ぎると言いますのに、いまだにあの演奏会が忘れられません。お願いがあるのですが、もしポリャンスキー指揮のチャイコフスキー交響曲4・5・6番のCDを複数でご購入なさった方、もしくは、別の理由で譲っても構わないという方がいらっしゃいましたら、どうぞ私に譲って頂けないでしょうか?開封後でも構いません。購入価格でお支払い致します。もちろん送料は私の方で負担致します。ご連絡頂ければとても嬉しいです。宜しくお願い致します。

投稿: yum-yum | 2016年1月 7日 (木) 17時40分

yum-yumさん、初めまして。
コメント頂きましてありがとうございます。

ポリャンスキーのチャイコフスキー素晴らしかったですね。あの凄さはちょっと忘れられませんよね。
CDはかなり希少だと思うのでご入手できればラッキーだと思います。

今後ともどうぞよろしくお願いします。
いつでもお気軽にコメント下さい。

投稿: ハルくん | 2016年1月 8日 (金) 00時09分

http://www.hmv.co.jp/fl/12/1762/1/

本文にあった18日「のみ」の収録ですね。
編集の無い「真性ライヴ」なので、買おうかな?

投稿: 影の王子 | 2017年11月16日 (木) 17時04分

影の王子さん、こんにちは。

情報ありがとうございます。
前回来日のときのライブ録音なのですね。
ただ、どうせならディスクは3枚にしてほしかったですね。途中の楽章で切れるというのはマーラーの大曲でもない限りは避けてほしいところです。

投稿: ハルくん | 2017年11月19日 (日) 01時44分

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