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2014年12月29日 (月)

ベートーヴェン 交響曲第9番 クルト・ザンデルリンク/ベルリン・ドイツ響のライブ盤

今年もいよいよ終わりに近づきましたね。昨日はシェア奥沢での今年最後のクラシック鑑賞会でしたが、歌劇「フィガロの結婚」の全幕をベーム/ウイーン国立歌劇場の日本公演DVDで鑑賞しました。つくづく凄いキャストと演奏だったと今更ながら驚かされます。年の瀬の慌ただしい中をいらして頂いた皆さんも、この演奏には一様に圧倒されていたようです。

さて、今年最後に取り上げるCDは、やはり”この曲”しかありませんね。もちろんベートーヴェンの第九です。何だかんだ言いながら、結局聴き納めには今年も第九を聴いています。

51facl7ssjl__sy300_クルト・ザンデルリンク指揮ベルリン交響楽団、
ベルリン放送合唱団、ベルリン国立歌劇場合唱団、ベルリン・コミッシェ・オパー合唱団
エヴァ・マリア・ブントシュー(S)、ウタ・プリエフ(Ms)、ペーター・シュライアー(T)、テオ・アダム(Bs)(1987年録音/Weiblick盤)

今年購入した第九のCDは、クルト・ザンデルリンクが1987年にベルリン・ドイツ響を指揮したライブ録音です。これはベルリン市制750周年を記念した祝賀演奏会の記録です。ですので合唱はベルリン放送合唱団、ベルリン国立歌劇場合唱団、ベルリン・コミッシェオパーの3つの団体からの混成です。独唱歌手も当時の東ドイツの歌手が揃いました。

ザンデルリンクというとブラームスの演奏の印象がとても強く、イン・テンポで堂々とした巨大な造形を構築するように感じています。ですので余りに人間的でドラマティックなベートーヴェンの音楽には今一つ合わない様なイメージを持っていました。ところが、この第九では堂々として立派には違いないのですが、フォルテの音は激しく、アクセントもかなり強調されていますし、テンポに揺れも感じられます。通常のザンデルリンクからは想像が出来ないほど極めてドラマティックな演奏なのです。

第1楽章からエンジンは全開。精神は激しく高揚しています。ティンパニの強打にも驚かされます。その激しさは「フルトヴェングラーのようだ」と言えば少々オーバーになりますが、中々に胸に迫るものが有ります。第2楽章も叩きつけるように激しいアクセントが興奮を呼んでいます。第3楽章では一転して静寂の雰囲気を一杯に漂わせていて非常に美しいです。第4楽章も導入部は冒頭から気合のこもった激しい音で表情豊かに迫ります。主部に入ると主題の歌わせ方の大きさに圧倒される思いです。独唱はバスをテオ・アダムが歌いますが、ここまでのオーケストラに比べると威厳と深さにやや物足りなさを感じます。その点、テノールを歌うペーター・シュライヤーは声、力強さともに十二分です。女性歌手の二人は平均的ですが歌のアンサンブルに不満は有りません。展開部でのオーケストラと合唱の白熱ぶりは非常に素晴らしいです。大きなスケール感と精神の高揚ぶりが見事に両立していて聴き応え充分です。コーダの迫力も中々のものです。
ライブですのでオーケストラの演奏には小さなキズが何か所も見られます。恐らくそれを気にする聴き手も多いかもしれませんが、個人的には問題とするほどでは無いと思っています。

CDの音質としては、残響が多い割には音に芯が有るので生々しさが感じられて良いです。初めはイコライジングが過剰に感じられますが、聴いているうちに気にならなくなります。問題はアナログで録音されているために、数か所で微妙な音揺れが感じられます。これはマスターテープに起因するのものだと思います。第1楽章で1箇所ホルンが引っくり返ったように聞こえるのは問題ですが、それ以外は個人的にはギリギリ無視できるレベルです。

ということから、確かにキズは幾つも有るものの、ザンデルリンクがこの3年後に同じベルリン響と録音したブラームス交響曲全集での悠揚迫らざる演奏と比べて、とても同じ指揮者とは思えないほどドラマティックな演奏であるのが驚きであり、非常に楽しめます。そういう点で、ザンデルリンクのファンにとって、とても価値の高い録音だと思います。

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コメント

まつやすです、久々の登場ですね〜そうですかぁ、ザンデルリンクはチェックしていませんでした。私も今日は第九の話題にします。日本人ですもの今第九ですね。
以降の文章は先に準備していたもので少し言い回しが変なところがあります。悪しからずご了承ください。
この年末までに聴いた第九、今年は以下のものを聴いた。
1950 コンビチュニー ライプチヒ放送交響楽団
1955 ワルター ウィーンフィル
1961 クリップス ロンドン交響楽団
1961 セル クリーブランド管弦楽団
1973 アルヴィド・ヤンソンス ベルリン放送

最初はコンビチュニー
夏ごろだったかに買ったモノラル7枚組の中からの1枚
有名なゲヴァントハウスとのステレオ録音よりも古くまるでフルトヴェングラーの第九のように響く。ドイツでの第九といえば私にはこのイメージである。実に立派な構成で巨大な音楽が鳴り響く。
続いてワルター、これは熱い第九である。
1955年といえば、ウィーン国立歌劇場の再興の年、ベームのフィデリオの杮落としの1週間後のものだそうで録音もよくこんなワルターの姿があるとは思ってもみなかった。フルトヴェングラーと対極をなす演奏で熱く力強い。これは見つけものだった。
三番目はヤンソンス、それも父ヤンソンス。この指揮者をわたしは大好きでヤンソンスと言えば黙っていても父のことである。彼の第九は是非とも聞きたいと思っていた。中古屋でもなかなか見かけることはなく、ついに発見した時は小躍りしたものだ。演奏の方はフルトヴェングラー風かと思いきや、解説書には遠大深遠なクナッパーツブッシュ流かとあった。わたしにはそうは思えないが貴重な録音であることはたしかである。ラス前はセル盤、セルのベートーヴェンは結構評価が高い。第九もすぐれた解釈でベートーヴェンとはこういうものだと教えてくれているかのようであった。これも新発見。
そして最後は
クリップス、昔からある全集は話題になることなく私も見過ごしてきた。しかし60歳になった今、この演奏は実にゆったりリラックスして聴ける第九であった。本来第九を鑑賞後は疲労が募るものであるが疲れない第九というのもあっても良いと思う。ついでだが彼の田園も実に良い。疲れがスーッとぬけていくようだった。今年聴いた第九にピカイチはなんとワルター次点はクリップスであった。自分自身でも意外な結果だった。


投稿: まつやす | 2014年12月29日 (月) 23時33分

ハルくんさん、こんばんは。
今、実家に帰っています。
実家のオーディオは 朽ち果ててしまっているので(笑)、音楽は 昨日 聴き納めをしました。E・クライバー/ウィーン・フィルの「第9」です。
う~ん……「田園」や第7番などと比べると "感銘度"は落ちると感じるのは 曲が「第9」だからでしょうか……テンポ設定が 早すぎて"軽く"なってしまっている印象です。 残念…。
 
ザンデルリンクは 良さそうですね。
(来年は これで行こうかな。)
 
さて、今年も 楽しい記事を 提供してくださり、ありがとうございました。今年は やはり モーツァルト特集でしたね。毎回 興味深く 読まさせていただきました。
 
来年も よろしくお願いいたします。
それでは 良いお年をお迎えください。

投稿: ヨシツグカ | 2014年12月30日 (火) 00時10分

まつやすさん、お久しぶりです。
暮れのご挨拶代り?でしょうか。(笑)

今年の第九の総括ですね。
コンビチュニーのステレオ全集はお気に入りで、優秀な音質で味わえる古風な響きに参っています。第九の演奏もとても気に入っています。旧盤の購入計画はいまのところ有りませんが中古店で見かけたら考えます。
ワルターの1955年の第九は聴いていません。この時代にVPOと行ったライブはどれもが名演なので聴いてみたいですね。ありがとうございます。
クリップスは好きなのですが、VPOとの演奏以外は余り良いと思ったことが有りません。でもいかにもクリップスらしい演奏のようですね。聴いてみたいです。

”自分自身意外な結果”と言うことは、先入観にとらわれずに無心で聴いていらっしゃる証拠ですね。素晴らしいことです。

投稿: ハルくん | 2014年12月30日 (火) 14時20分

ヨシツグカさん、こんにちは。

Eクライバー/VPOの「第9」は昔LPで持っていました。割に良い印象が残っていて、それほど速かった記憶は無いのですが、今聴けばどんな感想になることでしょうか。

ザンデルリンクはファンが聴けば(意外な演奏スタイルなので)楽しめると思います。よかったら来年是非。

こちらこそ一年間ありがとうございました。
毎回欠かさずコメントを頂けて本当に励みになります。来年もどうぞよろしくお願いします。
それでは良いお年をお迎えください。

投稿: ハルくん | 2014年12月30日 (火) 14時28分

ハルくんさん
一年間ブログ楽しまさせて頂きありがとうございました。
今泣いています。あと数分早くこのブログを見ていたならば・・・
実は今、フルトヴェングイラーのルッェルン音楽祭のaudite盤と、51年バイロイトのオタケン盤(以前より発売されているLPから採音されたものではなく、予備マスターを使用したもの)を注文してしまいました。
あーザンデルリンクも検討しとけば・・・
小遣いの関係でいつ購入できることやら・・・

投稿: まーちゃん | 2014年12月31日 (水) 21時33分

まーちゃんさん、こちらこそありがとうございました。来年もどうぞよろしくお願いします。

フルトヴェングイラーのルツェルン盤、バイロイト盤の新リソースとあれば聴く価値は充分に有りますよ。僕もaudite盤は注文済みです。
ザンデルリンク盤は追々聴かれてみて下さい。

投稿: ハルくん | 2015年1月 1日 (木) 01時38分

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