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2014年11月19日 (水)

ブラームス 今年聴いた交響曲全集のCDから

ティーレマン/シュターツカペレ・ドレスデンの新盤(その記事はこちら)以外に、今年聴いたブラームスの交響曲のCDをご紹介したいと思います。
聴いてるのは大半が新録音ではなく古いものばかりですが、ブラームスの音楽の真髄は”温故知新”ですので、「ダメよ~ダメダメ」なんて言わずに「いいじゃないか~ぁ」(日本ブラキイテル連合??)

馬鹿な事を言っていないで、まずは全集盤からです。

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レナード・バーンスタイン指揮ウイーン・フィル(1981‐82年録音/グラモフォン盤)

バーンスタインは後期ロマン派の曲を演奏するとテンポは遅く、しかも大きく揺れに揺れて限りなく濃厚な演奏をします。ところが古典派形式の曲だと、確かにロマンの味わいは強いのですが、しっかりとイン・テンポを守り、様式感をとても大切にします。ですのでモーツァルトやブラームスのシンフォニーも安心して聴くことが出来ます。この全集も、どの曲の演奏でも奇をてらった演出は一切行わずに造形性を重視しています。ですので「踏み外し」が全く有りません。これはブラームスの演奏としては我が意を得たりです。4曲ともゆったりとしたテンポでスケール大きく聴き応え充分です。緩徐楽章などでは幾らか耽美的に過ぎるような印象を受けないでもありませんが、その分ロマン的な情緒表出がとても豊かです。第4番の3楽章では腰の軽さを感じますが、これはこれで解釈として許容できます。ウイーン・フィルの音は幾らか明るめに響いていますが、これはこの楽団の元々の特徴ですし、しっとりとした歌や楽器の音色の美しさは正に絶品で魅了されます。それは4つの交響曲のどの曲についても共通しています。

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ギュンター・ヴァント指揮北ドイツ放送響(1996-97年録音/RCA盤)

ブラームスを演奏させてシュターツカペレ・ドレスデンと並ぶのが北ドイツ放送響だと思いますが、ドレスデンの持つ暖色系の音に対して暗いモノトーンの北ドイツ放送は正にブラームスの生まれ故郷ハンブルグのどんよりした曇り空を想わせます。ヴァントが晩年にライブ録音したこの全集はその暗く渋い響きを生かした演奏です。第1番は全体的には引き締まった好演なのですが、問題が有るのは終楽章で、突然のテンポのギア・チェンジが頻出します。それによってスケール感が極端に損なわれてしまい矮小な印象を受けます。ティンパニーの強打も目立ち過ぎて気になります。第2番は他の3曲と比べるとずっと南ドイツ的なおおらかさと美しさを感じる曲なのですが、ヴァントの演奏は極めて北ドイツ的で、彫の深いのは良いとしても少々神経質に聞こえます。始終金管が張り出して聞こえるのも煩わしさを感じます。第3番は速めのテンポでリズムの刻みが浅いためにスケールが小さく感じられてしまいます。もたつかないで良いと感じられる方も居られるでしょうが、自分の好みとは異なります。第4番でも細部のニュアンスへの非常なこだわりが感じられますが、それには抵抗を感じないばかりか愉しめます。これはやはり曲想のせいでしょう。決して重量級ではありませんが、イン・テンポを通していて聴き応えは充分です。

ということで色々と不満を述べてはいますが、ティーレマン盤も含めて、今年新たにコレクションに加えた全集盤はどれも一聴の価値が有りました。
次回は単独曲のディスクです。

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ブラームス(交響曲全集)」カテゴリの記事

コメント

こんばんは。

バーンスタインの全集は最近聴き直したのですが
4曲とも魅了されました。

曲に対する先入感を感じず
なにか、こう音楽がすんなり入ってくる感じで・・・

聴いていて心が和む演奏だと思います。

投稿: 影の王子 | 2014年11月19日 (水) 23時51分

ハルくんさん、こんばんは。
バーンスタイン/ウィーン・フィル の全集はLPで持ってましたが CDでザンデルリンク旧盤を聴いてからは 指揮者の個性が強く感じられるようになって 聴かなくなりましたね‥…。
ザンデルリンクが凄すぎました。(笑)

投稿: ヨシツグカ | 2014年11月20日 (木) 00時58分

影の王子さん、こんばんは。

バーンスタインのブラームスはこれまで余り食指を動かされなかったのですが、聴いてみればとても良いですね。ウイーンフィルの全集としてはベーム、ジュリーニに並ぶと思います。
自分には何かこう、”ロマンティストで粋な中年のブラームス”という印象を受けますが、かなり気に入りました。

投稿: ハルくん | 2014年11月20日 (木) 18時16分

ヨシツグカさん、こんばんは。

まぁザンデルリンクは・・・「神」ですからね。本当は非常に個性的なのに、個性が表に出てこないところが神様の面目躍如ですね。

バーンスタインもそれほど個性は気になりません。ロマンティストであることを余り隠さずに自然に感じさせてくれるブラームスも良いですよ。”過度”はいけませんが。
同じウイーンPOの演奏でもちょっと健康的に感じられ過ぎるベートーヴェンやシューマンの全集よりは好みです。

投稿: ハルくん | 2014年11月20日 (木) 18時33分

 ハルくんさん、こんばんは。
 バーンスタイン&ウィーン・フィルのブラームスは、私がクラシックを聴き始めた頃に魅了された演奏です。現在は好みが変わってしまいましたが・・・。
 私の印象ではバーンスタインは自分の感性を優先しつつ、曲との折り合いをつけるのが上手い指揮者です。「この曲はちょっと抑え気味に」「こっちはこれくらいならやっていいだろう」という風に。その代り曲によっては大変なことになりますが、彼の個性が曲とシンクロしたときは比類のない名演になるんですよね。
 ヴァント&北ドイツ放送響は硬派な旧盤を好んで聴いており、新盤は未聴です。解釈がどの程度違うのかが気になりますね。

投稿: ぴあの・ぴあの | 2014年11月22日 (土) 00時06分

ぴあの・ぴあのさん、こんばんは。

バーンスタイン/ウィーンPOのブラームスは良い意味で万人向きですね。これはティマーマンと組んだピアノ協奏曲についても言えます。色々なブラームス演奏が有りますが、これはこれでやはりとても魅力ある演奏だと思います。
”彼の個性が曲とシンクロしたときは比類のない名演になる”、正に同感です。マーラーがその最上の見本ですね。

ヴァント/NDRの旧録音は聴いていませんが、ヴァントのブラームスは大好きだというレベルでは有りませんので果たしてどうでしょうか。

投稿: ハルくん | 2014年11月22日 (土) 00時26分

ハルくんさん、こんばんは。
「日本ブラキイテイル連合」の促進アンドロイド"クララちゃん"(笑)に「もっと色々聴かないと ダメよ~ダメダメ…」と言われたからではないのですが,(笑) 思い立って ワルター/コロムビア響の第4番のSACDを入手……。
昨日から聴き込んでいます。
「ん…? LPやCDで聴いていた"音"とは違う?」
以前、アメリカのブラームスは……とコメントで ワルターでも……と言っていたのですが、以前、聴いていたものは "音"が 「軽く」感じられ、それが私にはネックになっていました。
それが今回のSACDでは解消されていて、中音域主体ながら 重心が下がり、ブラームスらしい"響き"が感じられるのです。
こうなると、ワルターのブラームスは なんと素晴らしいのでしょう!
これからは 認識を改めなければならいけませんね。
 
バーンスタインのブラームスも CDで 今のオーディオシステムで聴き直してみたい…と思いました。

投稿: ヨシツグカ | 2014年11月22日 (土) 22時39分

ヨシツグカさん、こんばんは。
お返事が遅くなりました。

アンドロイド”クララちゃん”イイですね~。
”アケミちゃん”よりずっと可愛いのは間違いないでしょう!

SACDではなくCDで聴いてはいますが、ワルター/コロムビアのブラ4は好きな演奏です。その音質が大幅に向上するとなれば素晴らしいですね。
確かにマスタリングによって印象ががらりと変わる例は多いです。レコード鑑賞における要注意点ですね。

投稿: ハルくん | 2014年11月24日 (月) 22時56分

バーンスタイン指揮ウィーンフィルの録音は、LPレコードで初めて発売された時、購入して数回、聴いてそのまんまの状態でCDで、まだ買い直していません。まだヴァント指揮北ドイツ放送響の録音も購入していますが、これまた1回聴いただけで、そのまんまで、お恥ずかしい限り。
一度、改めて聴きなおしてみるつもりです。
今年は、私自身、今頃になってベーム指揮ウィーンフィルの全集を初めて購入した状態で、これまた、お恥ずかしい限りです。ただ現在はブラームスの交響曲を聴きたい時は、ベーム盤をよく聴いていて、たいへん気に入っています。

投稿: オペラファン | 2014年11月25日 (火) 14時35分

オペラファンさん

私もベーム/ウイーンフィル盤の良さに気付いたのは随分と後になってからのことです。若い頃は余りよく分かりませんでしたね。
バーンスタイン/ウィーン・フィル盤もそのベーム盤に匹敵するぐらい良い演奏だと思います。聴き直されてみてください。
ただヴァント盤は・・・正直ちょっと不満な点が多過ぎますね。もしも北ドイツ放送響でなかったら手放しそうです。
けれどもこの頃は、若い頃なら嫌ったであろう色々なタイプの演奏が面白く聴けるように変わって来ました。これも齢のせいかもしれません。角が取れて丸くなったのかな?

投稿: ハルくん | 2014年11月25日 (火) 18時55分

ハルくんさん、こんばんは。

最近になって、クルト・ザンデルリンク新盤を買ったと言いましたが、さらにギュンター・ヴァント新盤まで中古で安く売っていたので『レンタル落ち商品はどうかな?』と思いつつ購入致しました。

結果的には、プラスティックケース無し、レンタル用ビニルケース入りと昔の僕ならば、返品したような品物でしたが、説明にはそう書いてあったので、業者には一応『このような商品は売らない方が良いかと思います。』とメールして、返品はせず。

そしてきのうの夜から今朝方にかけて、1番から4番まで順に聴きました。1番の冒頭のティンパニから僕は失礼ですが、ハルくんさんの<怒り心頭顔>を想像しました(笑)。

そういう僕もブラームス交響曲に関してテンポを弄るのは、嫌いです。しかし、聴いて行くに従いマエストロの世界観に段々と引き込まれて行きました。

前にも書いたようにこのサイトは、『ザンデルリンク ブラームス』と検索して出て来た場所です。僕は、いろいろと浮気はするもののザンデルリンク旧盤が好きです。

最後に気が緩んで投稿してしまいました。
直前の僕の投稿は「非公開」にしてください。

投稿: kum | 2020年2月 1日 (土) 19時17分

ハルくんさん、こんばんは。

先ほどは二重投稿にはならず、blogを汚さずに済みました。

ザンデルリンク新盤のベルリン交響楽団との録音は、これはこれでブラームスの交響曲と思いますが、4曲通しての感想はまだはっきりしません。ただし、ハルくんさんの概念を使えば、『「推進力」も「造形」も失われてはいない。たとえ「鈍牛」と言われても』となると思います。

今は、ベルリン交響楽団との第2番を聴いていますが、僕は今週、実は『大学祝典序曲』に嵌まってしまい、さすがブラームスと思ってしまいました。

また、『印象が変わった』ら、報告しますね。

投稿: kum | 2020年2月 1日 (土) 21時40分

kumさん

ザンデルリンク/ドレスデンの旧盤全集は、45年間マイべストの座を守っています。
僕も全集盤となると色々と聴いてみたくなり、最近もバレンボイム/SKベルリン盤を買いました。まだ1番しか聴いていませんが、中々良いもののやはりザンデルリンクを脅かす存在とは成りえないという印象です。

投稿: ハルくん | 2020年2月 3日 (月) 12時52分

ハルくんさん、こんにちは。

シュターツカペレ・ドレスデン、クルト・ザンデルリンクのブラームス交響曲は僕にもその良さが分かるくらい他を圧倒しています。

ところで、カラヤン・ファンはなぜ他の演奏を聴いて比較しないのであろう、と長いこと思っていたら、以下のような書き込みがありました。

『・・やはりこのCDは、良い音とは言えない。1番はお約束通りの名演です。ただカラヤンさんの飛び抜けた名演では無い気がします。3番は、イマイチ。酔えない(。-_-。) もっとも3番については、40年近くの名盤が有るので、さすがカラヤン-ベルリンフィルでもちょっとかなわないです。もちろん、他の指揮者でも全く同じですが… デンオンから発売されているクルトザンデルリンク指揮ドレスデンです。ブラームスの3番については、極め付けの名演です。私はこれ以上の名演を聴いた事がありません。第3楽章から第4楽章は、涙出そうになります。録音も良いです。・・』

↑カラヤン・ファンでも、ザンデルリンク旧盤を極め付けの名演と分かる人がいて少し安心しました。

僕はヘルベルト・フォン・カラヤンの指揮よりも彼の信者のなんというか「視野の狭さ」を攻撃していますからね。

「比較検討すること」は、音楽ファンの最大の楽しみでもあります。

投稿: kum | 2020年2月 4日 (火) 17時50分

kumさん

クラシックといえども「ファン心理」というものは有って良いと思います。時には「盲目の愛」となったとしてもです。誰もが客観的に成ることもないですし、自分とてそう心がけているつもりでも果たしてどうだか。
でも演奏家によって、演奏が全く異なる面白さを感じ取るのはやはり楽しいですよね。

投稿: ハルくん | 2020年2月 5日 (水) 17時28分

ハルくんさん、こんにちは。

僕は、『ファン心理』や『ミーハー心理』を否定しているわけではなく、かといって『1億総評論家になれ』と言っているわけでもなく、結局のところ『人間は自分の視点しか持てない』のだから、 『「私の世界」はできることならば拡げた方がいい』と思っています。

だから、カラヤンのファンが損するのは、彼らの勝手ですが、reviewを見て<もう少し>良く書けないのかとは思っていました。

でも世の中、全員が熱中していても、全員が冷静でいてもまずいですからね。

投稿: kum | 2020年2月 6日 (木) 14時35分

政治評論家の俵孝太郎様が、『トスカニーニ、フルトヴェングラーは約50年に渡り、オーケストラーファンの間にある二大政党である。(中略)フランス系指揮者は政党と言うより、個人クラブ。』と『CDちょっと凝り屋の楽しみ方』と言う本に、書いておいででした。無論少数派の人を貶めて仰って居る訳ではありませんけれども、面白い例えかと‥(笑)。

投稿: リゴレットさん | 2020年2月 8日 (土) 07時06分

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