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2014年11月28日 (金)

ブラームス 今年聴いた交響曲のCDから

それでは今年聴いたブラームスの交響曲CDの単独盤をご紹介します。古い奴だとお思いでしょうが・・・相変わらず古いCDばかりです。(苦笑)

交響曲第1番

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ヨーゼフ・クリップス指揮ウイーン・フィル(1956年録音/DECCA盤)

クリップスによる最初期のステレオ録音ですが、音質は良好で許容出来ます。それにしても当時のウイーン・フィルの響きの何とも魅力的なこと!堅牢な造形を誇るドイツ・スタイルとはまるで異なる柔らかい音のウイーン風ですが、ゆったりと構えて下手なテンポ操作を行わないオーソドックスな指揮なので、安心して耳を委ねられます。と言うよりも、演奏に心が自然と惹き込まれてしまい、気付けば陶酔して浸り切っている自分が居ます。特に2楽章の歌いぶりの何と甘く柔らかいことか。単なる伴奏音型さえもがドキッとさせるほどに魅力的なのです。ヴァイオリン独奏も魅惑の限りで、名前の記述は無いのですが、恐らくはウイリー・ボスコフスキーでしょう。終楽章の序奏はあっさりと始まりますが、第1主題の歌も軽く流すようです。展開部でも力みが一切有りませんので、迫力不足に感じられるでしょうが、これこそが古くて粋なウイーンのスタイルです。

交響曲第3番

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グィド・カンテルリ指揮フィルハーモニア管(1955年録音/EMI盤)

これはEMIの9枚組BOXの中の1曲です。録音の大半はモノラルですが、この曲はステレオ録音ですので聴き易く、同じくこのBOXに収められた第1番のモノラル録音とは音質に大差が有ります。音にざらつきも少なく、当時のEMIの録音にしてはかなり良質な部類です。しかしオーケストラの管楽と弦楽をふっくらと柔らかくブレンドさせた心地良い響きを造り出しているのはカンテルリの実力なのでしょう。テンポも速からず遅からず中庸で落ち着きが有り、イン・テンポをしっかりと守るので安心して聴いていられます。大袈裟に歌わせないのもかかわらず情感にも事欠きません。ドイツの武骨さこそ有りませんが、これは極めてオードソックスなブラームスという印象です。イタリアの若手指揮者がこれだけのブラームスを振れるのは驚きで、飛行機事故による死がつくづく惜しまれます。

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イシュトヴァン・ケルテス指揮ウイーン・フィル(1973年録音/DECCA盤)

奇しくも若くして事故死した指揮者が続きますが、その割にはケルテスには録音の数が案外と多く、ブラームスも交響曲全集を残しました。同じ1970年代のウイーン・フィルとの録音とあればグラモフォンのベーム盤と比べたくなりますが、あくまで自然体で立派な貫禄を感じさせるベームとは対照的な演奏です。こちらは「積極的表現主義」とでも言えそうな、楽譜の読み方からして表現意欲が満々だからです。パートごとの音量バランスやダイナミクスがかなり極端です。特定の音型が強調されたり、通常は目立たない金管の音が浮き上がってみたりと、それはマーラーやワーグナーなら大成功するような手法です。しかしブラームスではどうか・・・。少なくとも自分は違和感を憶えてしまいます。愉しめないどころかわずらわしさを感じてしまうのです。基本テンポがいじられずにイン・テンポを守っているのは唯一の救いです。これが若さに任せた演奏だとすれば、円熟したこの人がどんなブラームスを演奏したか聴いてみたかった気はします。

交響曲第4番

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サー・ジョン・バルビローリ指揮ウイーン・フィル(1967年録音/EMI盤)

バルビローリの全集はかつて廉価のDisky盤で持っていましたが、現在は有りません。ところがこの第4番の演奏を熱烈に支持されるCBEDさんからコメントを頂いてからというもの再び聴きたくなってしまいました。そこで入手したのは中古の東芝盤です。最新リマスターに良くありがちな高域強調型でない為にEMI録音にしては聴き易さを感じます。改めて聴いてみて、つくづく深い情感に覆われた演奏だと思います。この人のマーラー演奏のようにテンポは遅く、一歩一歩を踏みしめながら歩みますが、演奏スタイルと同期しているせいか不思議と不自然さやもたれる印象は受けません。ブラームスの古典的造形は希薄でも、内面のロマンティシズムのほとばしりによって、他には例が無いぐらい強い説得力を持ちます。恐らくはバルビローリにしか演奏が出来ない非常に個性的なブラームスです。

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イシュトヴァン・ケルテス指揮ウイーン・フィル(1972年録音/DECCA盤)

現在出ているCDでは、上述の第3番とカップリングされています。お買得ですが、演奏そのものは第3番の表現スタイルと同じです。けれども1、2楽章には抵抗感は感じられず、逆に青春の光と陰のような新鮮なブラームスを愉しめました。問題は3、4楽章で、極めて積極的でダイナミックな表現がブラームスのイメージからは遠ざかります。但し、それも聴き手の好み次第ですし、こういうブラームスが好きだという方は案外と多いのではないでしょうか。自分自身、普段は枯れたブラームスを好んで聴いているので、余り固定概念にとらわれないようにする為に、時にはこのような演奏を耳にするのも良いのかもしれません。

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ヘルベルト・ブロムシュテット指揮ライプチッヒ・ゲヴァントハウス管(1996年録音/DECCA盤)

シュターツカペレ・ドレスデン、北ドイツ放送響の他にもうひとつ”ブラームス・オーケストラ”を上げるとすればライプチッヒ・ゲヴァントハウス管でしょう。ところが残念なことにコンヴィチュニー以降、指揮者に余り恵まれなかった為に目ぼしいディスク録音が有りません。この演奏もいかにもブロムシュテットらしい誠実な演奏です。けれどもこの曲の魅力を充分に引き出しているかというと疑問です。古典的な造形性は素晴らしく保たれていますが、センチメンタリズムやロマンティシズムが不足です。第1番や第2番であれば構いませんが、第4番がこれでは頂けません。表情があっさりし過ぎている部分も多いですし、気迫や重厚さにも不足して感じられる箇所が見受けられます。管弦楽の響きが素晴らしいだけに残念でなりません。もっとも、このディスクには作品74-1や作品110の3つのモテット、作品109「祭典と記念の格言」といった無伴奏合唱曲が収録されていて、むしろこちらのほうが価値が高い気がします。

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ブラームス(交響曲第1番~4番)」カテゴリの記事

コメント

 バルビローリの良く歌うブラームスはいいですね。「明るい歌」の割合が多く「暗い歌」があまりないところが難点ですが、しかめ面のブラームスを笑顔にする手腕は素晴らしいと思います(笑)。
 大好きというほどではありませんが、たまに聴きたくなる演奏です。4番もいいのですが、私は1番の演奏が特に素晴らしいと思います。バルビローリの個性が曲の堅苦しさを軽減してくれるので。

投稿: ぴあの・ぴあの | 2014年11月28日 (金) 22時17分

ハルくんさん、こんにちは。
ブラームスの全集で有名な バルビローリとケルテスですが、バルビローリには エルガー  エニグマ変奏曲やチェロ協奏曲等、ケルテスには モーツァルト 交響曲第35、36、39番等、愛聴盤はありますが、ブラームスは 情熱的過ぎそうで あまり食指が動きませんね……。("内に秘めたる情熱"こそが彼の真骨頂だと思うので…)  ただ、第3番はロマンティックなブラームスも"アリ"だとは思っているので 機会があれば 聴いてみようと思います。

投稿: ヨシツグカ | 2014年11月29日 (土) 08時29分

懐かしい指揮者が登場しますね。
あまりブラームスを聴かなかったのですが、最近思い直して聴いています。
ワルター・コロンビア響のLP、ヴァント・北ドイツ放送響のCD、新しくシャイー・ゲバンドハウス管のブルーレイ。
シャイーは明快な演奏、オケの昔の少しくすんだ感じの音色が一変して明るく現代風になったように感じました。音は臨場感に溢れ素晴らしいのですが。( シャイーのマーラーは好きですが)
今落ち着いて聴くとしたら、ヴァントでしょうか。
「オーディオとクラシック」http://blog.goo.ne.jp/ymmconcerto
 を書き始めました。

投稿: 蝶 旅の友 | 2014年11月29日 (土) 10時34分

 追加 です。
 大事なディスクを書き忘れました。
 カルロス・クイバー指揮ウィーン・フィルのブルーレイ・オーディオ・ディスクの第4です。
 以前からCDで出ていたものですが、ブルーレイオーディオで聴いてみると、美しい音、旋律の細やかな動き、会場の立体感に溢れた音に感嘆しました。
 「蝶 旅の友」「オーディオとクラシック」

投稿: オーディオとクラシック | 2014年11月29日 (土) 11時23分

ぴあの・ぴあのさん

僕もバルビローリのブラームスは手放しで好きな訳ではありませんが、演奏に”暗さ”よりもノスタルジーを感じます。これはマーラーにも言えそうです。
そういう点ではブラームスだとやはり3番や4番の演奏が好きですね。1番は曲の”堅苦しさ”がいかにもブラームスらしいので、王道を行く、しかめ面した演奏が好きなのですねー。(苦笑)

投稿: ハルくん | 2014年11月29日 (土) 12時27分

ヨシツグカさん、こんにちは。

バルビローリのエルガー、ケルテスのモーツァルトは良いですね。両者ともブラームスの演奏よりも好きです。(笑)

ケルテスのブラ3はさほどロマンティックでも無いですよ。記事に書いた通り、楽譜の読み過ぎがわずらわしいです。全くお勧めはしません。でも実際に聴いてみないとわかりませんからね。そういう意味では一度お聴きになられても良いのかもしれませんが。

投稿: ハルくん | 2014年11月29日 (土) 12時35分

蝶 旅の友さん、こんにちは。

ブラームスは昔風のくすんだ音色がやはり良いと思います。現代風のスッキリとした音はどうもいただけません。

ヴァントもNDRの音は良いですね。ただ、結構細かく色々とやっているのが曲によってはわずらわしく感じられてしまいます。

Cクライバーのブラ4も余りに分析的な演奏に感じられたので気に入らず、随分前にCDを手放しました。
もっとも時々、自分の耳の受け取り方が変わったかどうか聴き直してみたくはなるのですが。

投稿: ハルくん | 2014年11月29日 (土) 12時46分

お久しぶりです。相変わらず、たくさん聴き抜いておられることに、ひたすら脱帽です。

クライバーの4番は、好き嫌いは別として、別格の演奏というか、他の演奏と比較にならない格の違いを感じます。私としては大好きです。注意深く聴くと、ものすごく難しいことをオケに要求しているのがわかります。注意深くスコアを分析していることは確かですね。

ふだん聴いているのはヴァントの全集です。ブラームスの音楽をブラームスたらしめる必須条件はオケ全体の音色とエネルギーの凝縮だと思うので、細かい点はさておき、そういう点で条件を満たす演奏だと思います。

すっきりこぎれいな演奏はいけませんねえ、ブラームスに関しては。

投稿: かげっち | 2014年12月10日 (水) 13時06分

かげっちさん、こんにちは。

クライバーは限られたレパートリーを徹底的に彫琢して演奏しますね。凄いことは確かですが、聴き様によっては分析的に過ぎて、姑息(と言うと言い過ぎかもしれませんが)に感じられなくも有りません。
ブラ4は随分久しく聴いていませんのでいずれまた聴き直してみたいと思っています。

ヴァントのブラームスはNDRの音が素晴らしいですし、中々に良い演奏だと思うのですが、時々”いじり過ぎ”に感じられる部分が現れます。でも4番に関してはそういった不満も感じられず、非常に気に入っています。

投稿: ハルくん | 2014年12月10日 (水) 23時31分

はじめまして。
ブラームスの2番が大好き。クライバーが大好物ですが、ケルテスもいいですね。またお邪魔させてください。

投稿: Kero@FB | 2015年2月 1日 (日) 11時19分

Kero@FBさん、はじめまして。
お越し頂きましてありがとうございます!

ブラームスは基本的にドイツオケで聴きたいのですが、2番にはウイーンPOの流麗な音がよく似合いますね。大好きです。

お時間が有るときにどうぞまたゆっくりお越しください。
今後ともよろしくお願いします。

投稿: ハルくん | 2015年2月 1日 (日) 11時55分

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