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2014年11月11日 (火)

クリスティアン・ティーレマン/シュターツカペレ・ドレスデンのブラームス交響曲全集 新盤

♪更け行く~秋の夜~♪には、別に旅の空を見上げなくてもセンチメンタルになってしまいます。そんな時にピッタリなのが哀愁漂うブラームスの曲ですよね。

毎年恒例の『秋のブラームス祭り』ですが、この1年モーツァルトばかりを聴いていたせいで、余り新しいディスクを聴いていません。”祭り”とは名ばかりの特集となりますが、ご容赦願います。

ということで、まずは今年リリースされたクリスティアン・ティーレマン/シュターツカペレ・ドレスデンの交響曲全集です

Uccg1674m01dlクリスティアン・ティーレマン指揮シュターツカペレ・ドレスデン(2013年録音/グラモフォン盤)

第1番は1楽章の開始早々から重厚なテンポと響きに心を奪われます。イン・テンポを保っているのが良いです。2、3楽章も美しい響きが素晴らしいのですが、その割に味わいに於いては最高レベルからほんの僅かに下がるような気がします。もっとも、問題は終楽章の有名な第一主題です。楽譜の指定はポーコ・フォルテのアレグロ・コン・ブリオなのですが、どう聴いてもメゾ・ピアノ程度に聞こえます。テンポももったいを付けて遅く、到底”生き生きと”という感じではありません。通常聴かれる演奏とは大きく印象が異なります。ティーレマンはベートーヴェン演奏にも見られましたが、全体はとても堂々としているのに部分的に妙にこだわり過ぎて、逆に”姑息”に感じられることが有りますね。これは悪い癖です。真の巨匠となる為にはこのクセから抜け出す必要が有りそうです。

第2番においてもドレスデンの響きは最高です。録音が良いので非常に満足できます。全体的に遅いテンポで美しく歌わせています。強いて問題点を上げるとすれば終楽章のコーダで、効果を狙ってテンポを煽ってしまうがために、結局は凡百の演奏に陥ってしまうのです。これは非常に惜しいことです。

第3番では1楽章から非常に細かく音量の変化とアゴーギクを伴って歌わせるのですが、これが逆に煩わしさを感じさせてしまい、どうも落ち着きません。2、3楽章には抵抗感は無く、特に3楽章では極めて美しい響きと歌を堪能できます。終楽章はスケールが大きく、重戦車のような分厚い響きに圧倒されて、これには大満足です。

第4番は元々の曲の構造からか、ティーレマンの細かいニュアンス付けが裏目に出ることもなく、音楽を自然に楽しむことが出来ます。録音の良さやオーケストラの響きが全て生きて来ます。ゆったり目のテンポも理想的です。ザンデルリンクの旧盤のような武骨さこそ有りませんが、ライブならではの感興の高さと相まって非常に聴き応えが有ります。1楽章の終結部では徐々にテンポを速めていきますがフルトヴェングラーのような極端さは有りません。2楽章の美しさは秀逸ですし、3楽章は速いテンポの燃えた演奏で、幾らか腰の軽さを感じるものの愉しめます。終楽章は各変奏に旺盛な表現意欲を感じます。多少造りものめいた感は有りますが、終結部へ向かって高揚してゆく様は圧巻です。

総合的には録音が非常に素晴らしく、現在のシュターツカペレ・ドレスデンの美音を忠実に捉えた全集だと思います。にもかかわらずティーレマンの演奏は正にジキルとハイドのようで、スケールの大きさを感じさせたかと思えば、しばしばテンポに余計なギア・チェンジをして矮小さを感じさせてしまいます。少なくとも古典派形式の曲に対してはまだまだ青さを感じてしまいます。それはヴェートーヴェンの全集では見逃せるレベルでしたが、ブラームスではちょっと見逃し切れません。

このセットには交響曲の他にも、シェア奥沢での鑑賞会の記事でご紹介したピアノ協奏曲とヴァイオリン協奏曲のライブ映像のDVDが含まれていて、そちらは非常に魅力的です。
交響曲の演奏に幾らか不満が有るものの、シュターツカペレ・ドレスデンの素晴らしい響きが味わえる点と、DVD付きというコストパフォーマンスの高さから、購入をされても決して損は無いセットだと思います。

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ブラームス(交響曲全集)」カテゴリの記事

コメント

ハルくんさん、こんにちは。
11月に入り ブラームスの音楽が恋しい季節になりましたね。
今日は、今年入手した ブラームスのCDの内、ホープリッチのクラリネット五重奏曲、ベーム/ウィーン・フィルの二重協奏曲と共に印象が強く残っていた、シューリヒト/北ドイツ放響の第4番を聴いています。
シューリヒトの表現は 例のごとく "すっきりして、コクがある"もので、よく晴れた秋空のように さわやかさと寂しさが 同時に 心に染みて来ます……。北ドイツ放響も素晴らしい演奏を繰り広げています。

投稿: ヨシツグカ | 2014年11月16日 (日) 15時46分

ヨシツグカさん、こんにちは。

秋はやっぱりブラームスですね~。
今年は余りCDが増えていませんが、それでも購入したものを聴き直しているところです。
シューリヒトのブラームスは自分はどうやら晩年にシューリヒト色が薄くなった(?)方がむしろ好みのようです。ただ、北ドイツ放送盤は一部試聴しただけで持っていませんので、ヨシツグカさんのお薦めとあらば是非ちゃんと聴いてみたいですね。ありがとうございます。

投稿: ハルくん | 2014年11月16日 (日) 18時00分

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