« モーツァルト 歌劇「フィガロの結婚」K492 名盤 | トップページ | クラシック音楽鑑賞会 in シェア奥沢Vol.4 「秋の夕べのブラームス」  »

2014年10月18日 (土)

モーツァルト 歌劇「ドン・ジョヴァンニ」K527 名盤

Don_giovannni_robinsonpittsinger

モーツァルトの歌劇「ドン・ジョヴァンニ」は、ダ・ポンテの台本によるオペラ・ブッファなので、本来であれば喜劇です。けれども、モーツァルトはこの作品を「ドラマ・ジョコーソ」と呼びました。「ドラマ」が”悲劇”を表すのに対して「ジョコーソ」は”喜劇”の意味ですので、モーツァルトはこのオペラには悲劇と喜劇の両方を込めたという見方が自然です。何しろ、幕が上がるといきなり真暗闇の場面に始り、そして殺人が起きて、最後はドン・ジョヴァンニの”地獄落ち”の壮絶な場面で終わりますので、通常のオペラ・ブッファのイメージからはまるでかけ離れます。全体を覆っている暗さ、重さは、とても単純に喜劇と呼べるような作品ではありません。

その主人公のドン・ジョヴァンニは、神をも恐れず人をも恐れず、ひたすら快楽の本能に従って行動する放蕩者ですが、従者のレポレッロが第1幕の「カタログの歌」で御主人様のことを歌っています。ちなみに”カタログ”というのは、過去にドン・ジョヴァンニが遍歴を重ねてきた数多くの女性たちの記録台帳のことです。

「カタログの歌」 
オットー・エーデルマン(Bs)、フルトヴェングラー/ウイーン・フィル(1954年ザルツブルク音楽祭より)

イタリアでは640人、ドイツでは231人、
フランスでは100人、トルコでは91人、
スペインでは1003人、
田舎娘も、町の女も、女中も、伯爵夫人も、
男爵夫人も、公爵夫人も、お姫様も、
ブロンドの髪も、とび色の髪も、白髪も、
冬は太った女を、夏は痩せた女を、
大柄の女も、小柄の女も、
年増女も、若い娘も、
貧乏でも、金持ちでも、
醜い女も、美しい女も、
要はスカートをはいてさえいれば、
彼が何をするか、あなたもご存じの通り!

すごいですよねぇ・・・。女たらしもここまでくれば見上げたものです。何しろ、人種の違いも、年齢も、貧富の差も、容姿にも全くとられわることなく、全ての女性を分け隔てなく愛せる男だということですね。第二幕では「一人の女だけを愛したのでは、他の女が可哀そうだ。」とも言っています。

さて、一応ストーリーのおさらいをしておきます。

―あらすじ―

時代:指定なし(およそ17世紀)
場所:指定なし(恐らくスペイン)

登場人物
ドン・ジョヴァンニ(Br):スペインの好色な貴族
レポレッロ(Bs):ドン・ジョヴァンニの従者
騎士長(Bs):ドンナ・アンナの父
ドンナ・アンナ(S):騎士長の娘
ドン・オッターヴィオ(T):ドンナ・アンナの婚約者
ドンナ・エルヴィーラ(S):ブルゴスの貴婦人(ドン・ジョヴァンニのかつての恋人)
ツェルリーナ(S):村の娘
マゼット(Bs):ツェルリーナの婚約者、他

第1幕
伝説のドン・ファンことドン・ジョヴァンニは、女であれば誰でも口説き、そして捨て去ることを次々と繰り返していた。

その夜も従者のレポレッロに見張りをさせて、ドンナ・アンナの寝室に忍び込むが、失敗して騒がれる。そこへドンナ・アンナの父親の騎士長が駆けつけて争いとなるが、ドン・ジョヴァンニは騎士長を刺し殺し、レポレッロとともに逃げ去った。

それでも懲りないドン・ジョヴァンニは、別の貴婦人に声をかけたが、その婦人はかつて恋人だったドンナ・エルヴィーラだった。捨てられたことを怒る彼女を従者レポレッロに押しつけて、ドン・ジョヴァンニはその場を逃げ去る。

その次の標的は、村で農夫マゼットと結婚式を挙げていた娘ツェルリーナであった。ドン・ジョヴァンニは村人たちを自分の邸宅に招待して派手な宴会を催し、その間にツェルリーナをこっそり頂こうという企みを考えたのだった。あと一歩でツェルリーナをものにできるところだったが、そこに突然ドンナ・アンナ、ドン・オッターヴィオ、ドンナ・エルヴーィラの3人が現れて、彼の悪行を暴露したので大混乱となる。しかしドン・ジョヴァンニとレポレッロは、その絶体絶命の窮地を何とか切り抜けると、またしても逃げ去った。
             
第2幕
ドン・ジョヴァンニは策略で、レポレッロと服を交換して、またしても女性を誘惑しに出かけてしまう。一方、ドン・ジョヴァンニになりすましたレポレッロは、エルヴィーラを館の外に連れ出すが、ドンナ・アンナ達に本人と勘違いされて取り囲まれてしまう。

やっとの思いで窮地を脱したレポレッロは、墓場でドン・ジョヴァンニと落ち合う。その墓場には殺した騎士長の墓が有り、石像が立っていた。ドン・ジョヴァンニが自分の女遊びのことをレポレッロに話していると、石像が口を開いて、彼に「悔い改めよ」と語りかけた。レポレッロは恐しさに震えるが、ドン・ジョヴァンニは全く動揺せず、大胆不敵にもその石像を晩餐に招待する。

その晩、ドン・ジョヴァンニが豪勢な晩餐をしていると、本当に騎士長の石像が歩いてやって来た。石像は「悔い改めよ」と繰り返すが、ドン・ジョヴァンニが「私は何も悪いことはしていない」と答えると、地獄への扉が開き石像は彼を地獄に引きずり込んだ。

一同は「これが悪人の成れの果て」と歌い、幕が閉じられる。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

という、一見したところ「勧善懲悪」の話なのですが、果たして法治国家の日本だったら彼の悪行が死刑に値するものかという疑問がわきます。
法律に詳しくはありませんが、罪状が「2000人以上の女性との淫行と一人の殺人」では、死刑にまではならないように思います。
恐らく女性の大半は、両者に合意が有ったと見なされるでしょうし、そもそも騎士長の殺人も先に剣を抜いたのは騎士長のほうですし、ドン・ジョヴァンニが「お前となど戦うつもりは無い!」と言っているのに、騎士長が向かって行ったのです。従って”正当防衛”だと解釈されるでしょう。この事件、もしも皆さんが陪審員だったらどう判断されるでしょう。

それにしても「ドン・ジョヴァンニ」の音楽は凄いです。
それまでのような一人の歌手が長く歌うアリアはほとんど無く、複雑に絡み合う重唱曲が大半を占めます。ブッファ的な愉しい曲や天国的に美しい曲を多く含みながらも、全体はデモーニッシュな雰囲気に満ちていて、不協和音による凄みの有る音を出してみたり、半音階を使って心の不安を表現したりと、音楽の懐の深さという点では、「フィガロ」や「魔笛」以上のように思います。音楽の持っている”毒”の含有量も半端では無いですし、もしかしたら、この作品こそが三大オペラの最高峰かもしれない、そんな気がしてくるほどです。

尚、このオペラはプラハで初演されましたが、ウイーンで再演されたときにはモーツァルトが改編を行ったので二つの版が存在します。改編はウイーンの聴衆の好みに合わせて行われたようですが、出演歌手に力量のバラつきが有った為でもあるようです。ですので、現在は大抵の場合、両版の折衷の形で演奏されています。

それでは愛聴盤のご紹介です。

Donjm
ブルーノ・ワルター指揮メトロポリタン歌劇場
エツィオ・ピンツァ(Br)、アレキサンダー・キプニス(Bs)、ローズ・バンプトン(S)、ヤルミナ・ノヴォトナー(S)他(1942年録音/NAXOS盤)

ワルターは1937年にザルツブルクで演奏したウイーン・フィルとの素晴らしい「ドン・ジョヴァンニ」を聴くことも出来ますが、音質の貧しさはどうしようもありません。その点、こちらのメトのライブは古いながらも比較的音がしっかりしています。とにかく猛烈なテンポによる凄まじい演奏で、ドラマティックな点では比類有りません。部分的には歌手が歌い切れないほどの速さで、極端過ぎに感じられるほどです。ただ、フルトヴェングラーのように濃密に粘るわけではありません。タイトルロールのピンツァは男臭さが強烈です。レチタティーヴォでチェンバロでは無くピアノが使われている点が古めかしくマイナスに感じられます。誰にでもお勧め出来る演奏ではありませんが、強烈な歴史的録音として一聴の価値が有ります。

Donj_furtw0077776386058_600
ウィルヘルム・フルトヴェングラー指揮ウイーン・フィル
チェーザレ・シェピ(Br)、オットー・エーデルマン(Bs)、エリザベート・グリュンマー(S)、エリザベート・シュワルツコップ(S)、アントン・デルモータ(T)他(1954年録音/EMI盤)

これはザルツブルク音楽祭のライブです。フルトヴェングラーの亡くなる年の演奏ですが、気力が充実していて弛緩することは皆無です。序曲から物々しいテンポと濃密な表情に圧倒されますが、逆に”しつこい”と感じる人も居ると思います。歌手陣はさすがに豪華で、EMIリリースなのでシュワルツコップのドンナ・エルヴィーラが聴けます。さすがに表現力が圧巻で、シェピとエーデルマンの最強コンビの向こうを張って素晴らしいです。フルトヴェングラーのテンポはここでも緩急の変化が大きく、曲によっては驚くほど遅く歌わせます。つまり、完全にロマン派寄りの演奏なのですが、作品そのものにロマン派的な要素が多いので、聴き慣れると余り違和感は感じません。これが他の作品であれば、このようには行かないと思います。”古典派”の枠からはみ出した作品と指揮が幸福な出会いをした名演だと思います。オーストリア放送協会による録音はもちろんモノラルですが当時のライブとしてはバランスが良く、かなり聴き易いです。

Don_giovanni_krips3cd
ヨーゼフ・クリップス指揮ウイーン・フィル
チェーザレ・シェピ(Br)、フェルナンド・コレナ(Bs)、シュザンヌ・ダンコ(S)、リーザ・デラ・カーザ(S)、ヒルデ・ギューデン(S)他(1955年録音/DECCA盤)

これもまた1955年録音のデッカによるモーツァルト・オペラの白眉の一つです。クリップスはウイーン・フィルと当時ウイーンで活躍した歌手たちを揃えて古き良きウイーンの味わいを引き出しています。その甘く柔らかいサウンドは、このオペラの持つ重さに一見似合わないと感じられるかもしれませんが、本来オペラブッファであることから考えれば、この洒落た軽みこそがむしろ相応しい気がします。シェピのタイトルロールはキャラクターイメージにピッタリのハマり役で、これ以上の歌手は二度と出ないと思いますし、コレナのレポレッロも素晴らしく、このコンビだけでも満足し切れます。もちろん他の歌手達も非常に充実していて心から楽しめます。音質もさすがにデッカで、レンジの狭さは感じますが、正規のステレオ録音で鑑賞に支障は有りません。

Donj_kara_sar500
ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ウイーン・フィル
ニコライ・ギャウロフ(Br)、ジェレイント・エヴァンス(Bs)、グンドゥラ・ヤノヴィッツ(S)、テレサ・ツィリス=ガラ(S)、オリヴェラ・ミリヤコヴィッチ(S)他(1970年録音/オルフェオ盤)

カラヤン全盛期のザルツブルク音楽祭ライブです。気になる音質はバランスの良いもので満足できます。過去の大巨匠達の演奏と比べると、ずっとスタイリッシュですが、極端にロマンティックに成り過ぎないのでモーツァルトの音楽そのままを鑑賞出来ます。先人たちの個性が余りに強烈であった為に続けて聴くと物足りなさを感じますが、決してそんなことは有りません。この曲のウイーン・フィルの演奏はさすがに素晴らしいです。ただ、地獄落ちの場面の恐ろしさはいま一つかもしれません。歌手ではギャウロウのタイトルロールは声は立派ですが、セクシーさはまずますというところ。それよりもヤノヴィッツのドンナ・アンナが声が美しく表現も深く非常に魅力を感じます。ミリヤコヴィッチのツェルリーナの声もとてもチャーミングで良いです。

Dong_bohm51glwnkerwl
カール・ベーム指揮ウイーン・フィル
シェリル・ミリンズ(Br)、ワルター・ベリー(Bs)、アンナ・トモワ=シントウ(S)、テレサ・ツィリス=ガラ(S)、エディット・マティス(S)、ペーター・シュライヤー(T)、他(1977年録音/グラモフォン盤)

ザルツブルク音楽祭ライブですが、この演奏はベームにしては余り話題に上がることが有りません。確かにこのオペラの持つ濃厚なロマンティシズムには不足している気がします。けれども極端で無く安定したテンポを取って古典的な造形性と格調の高さを示すのは流石にベームのモーツァルト・オペラです。歌手ではミリンズのタイトルロールはカラヤン盤のレイミーよりも好きですし、ワルター・ベリーのレポレットも良いと思います。トモワ=シントウのドンナ・アンナは気が強そうで役柄的に相応しいです。エディット・マティスも綺麗な声を生かしてツェルリーナにピッタリです。 シュライヤーのドン・オッターヴィオも期待通りで素晴らしいです。但しジョン・マカーディの騎士長は凄みに欠けています。その為に”地獄落ち”の迫力はいま一つのように感じます。録音はウイーン・フィルの音の美しさを十全に捉えた優秀なものです。

Dongiovanni_karabig
ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ベルリン・フィル
サミュエル・レイミー(Br)、フェルッチョ・フルラネット(Bs)、アンナ・トモワ=シントウ(S)、アグネス・バルツァ(Ms)、キャスリーン・バトル(S)他(1985年録音/グラモフォン盤)

カラヤンはオペラの録音にベルリン・フィルを頻繁に使いましたが、総じて好みません。上手いことは上手いのですが、響きがシンフォニックに過ぎます。それに加えて必ずしも歌伴奏のセンスが充分ではありません。もっともそれはウイーン・フィルと比較した場合の話ではあるのですが。比較的世評の高い歌手陣ですが、1970年のザルツブルク音楽祭の方が好みに合います。特にレイミーのタイトルロールが声も演技も小物なのが大きな不満です。逆にバトルのツェルリーナは可憐な美声が最高に魅力的で素晴らしいです。スタジオ録音ですので細部の完成度は高いですが、音楽の流れの勢いには不足しているように感じられてしまいます。”地獄落ち”も凄まじい音響の割にはドラマが余り感じられません。総合的にはカラヤンは1970年盤を好みます。

Dong_muti5170fxutbl__sx300_
リッカルド・ムーティ指揮ウイーン・フィル
ウィリアム・シメル(Br)、サミュエル・レイミー(Bs)、キャロル・ヴァネス(S)、シェリル・ステューダー(S)、スザンヌ・メンツァー(S)他(1990年録音/EMI盤)

ムーティは「ドン・ジョヴァンニ」を相当に愛していると思います。でなければ、とても出来そうに無い名演です。このオペラを知り尽くしているウイーン・フィルに更に細かく表情づけを行なわせて、あらゆる部分で新しい発見をさせられます。それも音楽の奔流を損なうこと無く、細部の彫琢の限りを尽くすという、少々大袈裟に言えば「神業」です。ダイナミクスとデリカシーの両立が見事に成し遂げられています。歌手では、ヴァネスのドンナ・アンナがややヒステリックですが、役柄上の性格ですし不自然ではありません。メンツァーのツェルリーナも新婦としては幾らか歳かさを感じられなくも無いですが悪くは有りません。その他のキャストは総じて優秀です。一幕の騎士長とドン・ジョヴァンニの争いの場面で、剣の効果音や騎士長の叫び声が無いのが物足りませんが、全体から見れば些細な事です。その分”地獄落ち”では壮絶な音の迫力がドラマを充分に表していて満足させてくれます。

Dong_noring83546
ロジャー・ノリントン指揮ロンドン・クラシカル・プレイヤーズ
アンドレアス・シュミット(Br)、グレゴリー・ユーリッチ(Bs)、アマンダ・ハルグリムソン(S)、リン・ドーソン(S)他(1992年録音/Virgin Classics盤) 

所有している唯一の古楽器系の演奏です。これはプラハ版で演奏していますが、ウイーン版による部分が別の1枚のCDに収録されているので比較するのには便利です。古楽器派のノリントンならではのアイディアですね。演奏は曲にも寄りますが、総じてかなり速いテンポで駆け抜けます。古楽器派とあれば仕方がありませんが、ロマン派的な要素の強いこのオペラにはもう少し濃密な表現を求めたくは成ります。オーケストラは非常に歯切れが良く、音が軽くあっさりとしているので物足りなさを感じますが、時にバロック的に書かれている部分が真正バロック音楽に聞えるのは新鮮です。ベルリン・フィルのようなシンフォニックな音は好みませんが、もう少し浪漫の色彩が欲しいような気はします。但し”地獄落ち”の場面は現代楽器派以上に迫力が有り緊迫感を感じます。歌手陣については、美声が揃っていて表情がとても豊かなので満足させられます。

最後にDVDもご紹介します。

Dong_muti51sv1c851kl
リッカルド・ムーティ指揮ウイーン国立歌劇場管弦楽団/合唱団
ドン・ジョヴァンニ:カルロス・アルバレス
レポレッロ:イルデブランド・ダルカンジェロ
ドンナ・アンナ: アドリアンヌ・ピエチョンカ
ドン・オッターヴィオ:ミヒャエル・シャーデ
ドンナ・エルヴィーラ:アンナ・カテリーナ・アントナッチ
ツェルリーナ:アンゲリカ・キルヒシュラーガー
騎士長:フランツ=ヨーゼフ・ゼーリヒ

演出:ロベルト・デ・シモーネ
会場:アン・デア・ウィーン劇場
(1996年収録/DENON盤) 

フルトヴェングラーとカラヤンの映像ものは非常にポピュラーで、かつてはこの二つで「ドン・ジョヴァンニ」の舞台を楽しみました。特に前者は、稀代のドン・ジョヴァンニ役のシェピの舞台が見られるのが貴重です。けれども最近はムーティがアン・デア・ウィーン劇場で行ったライブ映像盤で楽しんでいます。
ロベルト・デ・シモーネの演出舞台は一貫して照明が暗く、夜の場面だけで無く、晩餐会の場でも同じように暗いです。この作品の「闇」の面を特に重視しているからでしょう。衣装もユニークです。幕開けは17世紀の服装、次には18世紀風、最後は19世紀風と、劇の進行につれて服装が時代を変えてゆくのです。それが全く違和感を感じさせず、自然に感じられるのが凄いです。元々この作品には時代設定がされていないので、このような演出を取ったのでしょう。
ムーティとウイーン・フィルの演奏は90年のCD録音が最高でしたが、ここでも同様の素晴らしさです。セッション録音と変わらない精緻さで気迫のこもった演奏を繰り広げています。歌手陣は全て容姿も歌も申し分なく、演技も非常に満足できます。特筆すべきはタイトルロールのカルロス・アルバレスで、悪そうで、セクシーで、どこか憎めない役柄をものの見事に演じています。
これだけ映像と演奏が充実している舞台は珍しいと思います。

以上ですが、マイ・フェイヴァリットを特に上げれば、CDではヨーゼフ・クリップス/ウイーン・フィル盤とリッカルド・ムーティ/ウイーン・フィル盤です。それに番外としてワルターとフルトヴェングラーを上げます。
DVDではもちろんリッカルド・ムーティ/ウイーン国立歌劇場盤です。

|

« モーツァルト 歌劇「フィガロの結婚」K492 名盤 | トップページ | クラシック音楽鑑賞会 in シェア奥沢Vol.4 「秋の夕べのブラームス」  »

モーツァルト(歌劇)」カテゴリの記事

コメント

ハルくんさん、こんにちは

モーツァルトのオペラに関して、私は、ほぼ9年前の12月上旬にウィーン国立歌劇場のボックス席で、ムーティ指揮の『フィガロの結婚』全曲を聴き、高校生の時に札幌の大きな会場でフルトヴェングラー指揮の『ドン・ジョヴァンニ』の映画を観、音大の試演会で息子たちの演奏による『魔笛』からの抜粋を聴いたのが、とてもよく印象に残っています。ステージを観たもの、臨場感のあるものは、歌の意味や、演奏が表現しようとしているものが分かりやすくなり、やはり特に印象に残りますね。。
ドン・ジョヴァンニは、モーツァルトの時代に、よくこれほどの劇的な内容を持った音楽が生まれたものと、驚嘆せざるを得ません。ここでは、個々の歌よりも音楽全体を流れる凄いエネルギーの印象が強烈で、我が家にある幾つかの演奏録音、フルトヴェングラーの録音(LP)はもちろんのこと、どちらかと言うと”さっぱり”系のネヴィル・マリナー指揮ASMFのもの(CD)まで、その印象を強く受けます。私は、その時、頭に浮かんだ指揮者名や歌手名で演奏録音を選んで聴いています。

投稿: HABABI | 2014年10月18日 (土) 16時06分

ハルくんさん、こんばんは。
このオペラを現代日本風に題名をつけるとしたら、「ドン・ジョヴァンニ 騎士長殺人事件…」と言った所でしょうか。(笑)
キムタク主演の検事ドラマなら"あっと驚く、逆転判決!" となりそうですが どうでしょうかね~?(笑)
 
モーツァルトのオペラの中でも、これほど「人間ドラマ」を描ききった作品はありませんね。
異色の傑作だと思います。
 
愛聴盤は 私も やはり、フルトヴェングラー盤(私は'53盤で聴いています)、クリップス盤、ベーム/ウィーン・フィル盤、ワルター/メト盤ですが。シエピがドン・ジョヴァンニ役の フルトヴェングラー盤とクリップス盤は やはり"格"が違いますね。

投稿: ヨシツグカ | 2014年10月18日 (土) 19時11分

HABABIさん、こんにちは。

ウィーン国立歌劇場で、ムーティの「フィガロの結婚」を聴かれたとは幸運ですね。さぞや素晴らしかったのだろうなぁと想像します。

本当にモーツァルトの時代によくぞこのような作品を書けたものです。ダ・ポンテの台本はともかく、モーツァルトの天才、独創性には脱帽です。
仰る通り、仮にどんな演奏で聴いても凄さの印象には変わりありませんね。驚くべき作品です。

投稿: ハルくん | 2014年10月18日 (土) 22時27分

ヨシツグカさん、こんにちは。

「殺したのはお前だ!騎士長殺人事件」とか「地獄に落ちた好色貴族」「真相を暴く!怨恨殺人事件」など色々と出て来そうです。(笑)
それにしても騎士長の方がワルい奴だと思うのはボクぐらいでしょうか。恨みから怨霊となって報復殺人を犯すのですからね。

人間臭さがプンプンするドラマです。「悪徳の象徴」みたいな主人公ですが、オトコという生きものは誰でもあんな生き方に案外、憧れの気持ちを持っているのではないでしょうか。

フルトヴェングラーの'53盤は聴いていませんが、シェピのドン・ジョヴァンニだけはやはり最高ですね。

投稿: ハルくん | 2014年10月18日 (土) 22時51分

個人的な思い出ですが1988年、大阪でサヴァリッシュの指揮でバイエルン国立歌劇場の「ドン・ジョバンニ」の公演を聴きました。たいへん素晴らしい公演で今も思い出として深く残っています。
特に第2幕の最後、ドン・ジョバンニの地獄落ちから「これが悪人の成れの果て」と歌う六重唱までは、これぞ劇場芸術の持つ最高の緊迫感だと強く感じました。サヴァリッシュの録音が無いのが本当に残念です。
さて「ドン・ジョバンニ」の録音では、ベームが1955年の再建されたウィーン国立歌劇場で指揮したライブ録音(RCA盤)が、はずせません。ベームの「ドン・ジョバンニ」の真骨頂を示す演奏で、これを聴くと1977年のライブ録音が物足りなく聴こえます。ドイツ語の歌唱ですが、気になりません。
さてDVDでは1996年のウィーンでのムーティ指揮の映像が紹介されていますが、私は同じムーティ指揮では、1987年のミラノ・スカラ座での公演のDVDを所持しています。
これも、いいですよ。ムーティのスカラ座時代のスタート時期を飾る名演だと思います。
演出はジョルジュ・ストレーレル。歌手もエディータ・グルベローヴァのドンナ・アンナをはじめ揃っていて聴き応えがあります。

投稿: オペラファン | 2014年10月21日 (火) 10時28分

オペラファンさん

サヴァリッシュでバイエルン歌劇場の「ドン・ジョヴァンニ」公演とは素晴らしいです。
確かにサヴァリッシュの録音は無いですが、生の舞台に勝るものは無いですし一生の宝ですね。

ベームの1955年ライブ盤は所有していませんが、ウイーンPOの最高の時代ですし是非聴いてみたいものです。

ムーティの「ドン・ジョヴァンニ」はどれも素晴らしいみたいですね。やはり作品との相性が良いのだと思います。これも観てみたいです。ありがとうございました。

投稿: ハルくん | 2014年10月22日 (水) 18時00分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1080200/57642909

この記事へのトラックバック一覧です: モーツァルト 歌劇「ドン・ジョヴァンニ」K527 名盤:

« モーツァルト 歌劇「フィガロの結婚」K492 名盤 | トップページ | クラシック音楽鑑賞会 in シェア奥沢Vol.4 「秋の夕べのブラームス」  »