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2014年10月

2014年10月27日 (月)

クラシック音楽鑑賞会 in シェア奥沢Vol.4

昨日は「秋の夕べのブラームス」と題したシェア奥沢の音楽鑑賞会でしたが、クリスティアン・ティーレマンがシュターツカペレ・ドレスデンと本拠地ゼンパーオーパーでライブ収録したCD+DVDボックスからDVDで収録されたピアノ協奏曲第2番とヴァイオリン協奏曲の2曲を鑑賞しました。

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前半に聴いたピアノ協奏曲第2番の独奏者はマウリツィオ・ポリーニです。2013年1月の収録ですが、この演奏は先にCDでリリースされています。ポリーニはこの曲を得意としていて、正規録音だけでこれが3度目です。基本的な解釈は以前と全く変わりませんが、若い頃の研ぎ澄まされた鋭利さはかなり後退して、ある種の武骨さが加わったような印象を受けます。これはやはり年齢によるものなのでしょうか。ブラームスの音楽として考えた場合にはよりそれに近づいたようには感じます。しかし演奏の気迫は凄まじく、とても70歳を越えた奏者には聞こえません。顔の風貌だけは立派な老人ではあるのですが。
ティーレマンとシュターツカペレ・ドレスデンには文句の付けようが有りません。往年のいぶし銀の響きが後退したとはいえ、ドイツ伝統の分厚い響きは健在です。つくづく素晴らしいオーケストラだと思います。
演奏後には、ポリーニの熱演に対してドイツの聴衆が盛大な拍手とスタンディング・オーべーションで応えていました。シェア奥沢の鑑賞者たちもスクリーンと一緒になって拍手を贈っていました。

後半はヴァイオリン協奏曲で、独奏者はリサ・バティアシュヴィリです。2013年4月の収録ですが、同じコンビで前の年にドレスデンのルカ教会でセッション録音を行いCDをリリースしています。そのCDは素晴らしい名演奏で、このブログでも記事にしましたし(こちら)、古今の多くの名盤の中に入れてもベストに上げたいほどです。ところが、今回のライブはそれをも上回る超名演です。えっ、それは映像でバティアシュヴィリの美貌に惑わされているからだろうって?いえいえ惑わされているのは確かなのですが(苦笑)、ライブ特有の情熱の高まりが加わって本当に素晴らしいです。まず、とにかく技巧が完璧なのには驚かされます。難しい重音も非常に美しく、急速な指のポジション移動でも音程が瞬時に決まります。そこには曖昧さが微塵も感じられません。そのような正確さを持ちながらも、高揚する部分では激しい気迫を込めて遠慮なく音を割るのですからたまりません。また、旋律の歌い回しの魅力、センスの良さも特筆ものです。それを支えているのが彼女のボウイングの滑らかさです。
要するに彼女はヴァイオリンに要求されるもの全てを備えていて、それが大きな音楽を形成しているのですから鬼に金棒です。ティーレマンとシュターツカペレ・ドレスデンのメンバーも演奏していて楽しくて仕方ないように見えます。もちろん彼らも最高の管弦楽伴奏を聞かせています。ブラームスを演奏させてこれ以上の団体は絶対に無いですね。
それにしても、これほど高い次元での名演奏は記憶に有りません。しかも彼女は美人です!なんということでしょうか。こんなことが許されるなんて。
もちろん映像のドイツの聴衆もシェア奥沢の鑑賞者たちも大喝采でした。

DVDにはやはりポリーニが独奏するピアノ協奏曲の第1番のライブも収められています。もちろんこれも素晴らしい演奏ですが、昨日は鑑賞しませんでした。
なお、このボックスに収められた交響曲全集のCDは時間が無くてまだ1曲も聴いていませんが、近いうちにじっくりと聴いて記事にする予定です。

<関連記事>
ティーレマン/シュターツカペレ・ドレスデンのブラームス交響曲全集 新盤

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2014年10月22日 (水)

クラシック音楽鑑賞会 in シェア奥沢Vol.4 「秋の夕べのブラームス」 

すっかり秋ですね~。こんな気分になりませんか。

 ♪更け行く秋の夜 旅の空の
  わびしき思いに 一人悩む
  恋しやふるさと 懐かし父母
  夢路にたどるは 故郷の家路♪
       ~旅愁~

そこで、恒例のシェア奥沢でのクラシック音楽鑑賞会もテーマを『秋の夕べのブラームス』としました。今回はレコード(CD&LP)では無くDVDによるコンサート映像プログラムです。
(詳しくはこちらを参照ください)

開催は10月26日(日)午後4時からです。ご興味の有る方の参加をお待ちしています。

連絡先:シェア奥沢  堀内正弘
158-0083 東京都世田谷区奥沢 2-32-11
E-mail: horiuchi.masahiro@gmail.com
tel: 03-6421-2118、mobile: 090-7401-5103

ご参考にシェア奥沢についての紹介記事です。
 (朝日新聞10月19日紙面のデジタル版)

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2014年10月18日 (土)

モーツァルト 歌劇「ドン・ジョヴァンニ」K527 名盤

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モーツァルトの歌劇「ドン・ジョヴァンニ」は、ダ・ポンテの台本によるオペラ・ブッファなので、本来であれば喜劇です。けれども、モーツァルトはこの作品を「ドラマ・ジョコーソ」と呼びました。「ドラマ」が”悲劇”を表すのに対して「ジョコーソ」は”喜劇”の意味ですので、モーツァルトはこのオペラには悲劇と喜劇の両方を込めたという見方が自然です。何しろ、幕が上がるといきなり真暗闇の場面に始り、そして殺人が起きて、最後はドン・ジョヴァンニの”地獄落ち”の壮絶な場面で終わりますので、通常のオペラ・ブッファのイメージからはまるでかけ離れます。全体を覆っている暗さ、重さは、とても単純に喜劇と呼べるような作品ではありません。

その主人公のドン・ジョヴァンニは、神をも恐れず人をも恐れず、ひたすら快楽の本能に従って行動する放蕩者ですが、従者のレポレッロが第1幕の「カタログの歌」で御主人様のことを歌っています。ちなみに”カタログ”というのは、過去にドン・ジョヴァンニが遍歴を重ねてきた数多くの女性たちの記録台帳のことです。

「カタログの歌」 
オットー・エーデルマン(Bs)、フルトヴェングラー/ウイーン・フィル(1954年ザルツブルク音楽祭より)

イタリアでは640人、ドイツでは231人、
フランスでは100人、トルコでは91人、
スペインでは1003人、
田舎娘も、町の女も、女中も、伯爵夫人も、
男爵夫人も、公爵夫人も、お姫様も、
ブロンドの髪も、とび色の髪も、白髪も、
冬は太った女を、夏は痩せた女を、
大柄の女も、小柄の女も、
年増女も、若い娘も、
貧乏でも、金持ちでも、
醜い女も、美しい女も、
要はスカートをはいてさえいれば、
彼が何をするか、あなたもご存じの通り!

すごいですよねぇ・・・。女たらしもここまでくれば見上げたものです。何しろ、人種の違いも、年齢も、貧富の差も、容姿にも全くとられわることなく、全ての女性を分け隔てなく愛せる男だということですね。第二幕では「一人の女だけを愛したのでは、他の女が可哀そうだ。」とも言っています。

さて、一応ストーリーのおさらいをしておきます。

―あらすじ―

時代:指定なし(およそ17世紀)
場所:指定なし(恐らくスペイン)

登場人物
ドン・ジョヴァンニ(Br):スペインの好色な貴族
レポレッロ(Bs):ドン・ジョヴァンニの従者
騎士長(Bs):ドンナ・アンナの父
ドンナ・アンナ(S):騎士長の娘
ドン・オッターヴィオ(T):ドンナ・アンナの婚約者
ドンナ・エルヴィーラ(S):ブルゴスの貴婦人(ドン・ジョヴァンニのかつての恋人)
ツェルリーナ(S):村の娘
マゼット(Bs):ツェルリーナの婚約者、他

第1幕
伝説のドン・ファンことドン・ジョヴァンニは、女であれば誰でも口説き、そして捨て去ることを次々と繰り返していた。

その夜も従者のレポレッロに見張りをさせて、ドンナ・アンナの寝室に忍び込むが、失敗して騒がれる。そこへドンナ・アンナの父親の騎士長が駆けつけて争いとなるが、ドン・ジョヴァンニは騎士長を刺し殺し、レポレッロとともに逃げ去った。

それでも懲りないドン・ジョヴァンニは、別の貴婦人に声をかけたが、その婦人はかつて恋人だったドンナ・エルヴィーラだった。捨てられたことを怒る彼女を従者レポレッロに押しつけて、ドン・ジョヴァンニはその場を逃げ去る。

その次の標的は、村で農夫マゼットと結婚式を挙げていた娘ツェルリーナであった。ドン・ジョヴァンニは村人たちを自分の邸宅に招待して派手な宴会を催し、その間にツェルリーナをこっそり頂こうという企みを考えたのだった。あと一歩でツェルリーナをものにできるところだったが、そこに突然ドンナ・アンナ、ドン・オッターヴィオ、ドンナ・エルヴーィラの3人が現れて、彼の悪行を暴露したので大混乱となる。しかしドン・ジョヴァンニとレポレッロは、その絶体絶命の窮地を何とか切り抜けると、またしても逃げ去った。
             
第2幕
ドン・ジョヴァンニは策略で、レポレッロと服を交換して、またしても女性を誘惑しに出かけてしまう。一方、ドン・ジョヴァンニになりすましたレポレッロは、エルヴィーラを館の外に連れ出すが、ドンナ・アンナ達に本人と勘違いされて取り囲まれてしまう。

やっとの思いで窮地を脱したレポレッロは、墓場でドン・ジョヴァンニと落ち合う。その墓場には殺した騎士長の墓が有り、石像が立っていた。ドン・ジョヴァンニが自分の女遊びのことをレポレッロに話していると、石像が口を開いて、彼に「悔い改めよ」と語りかけた。レポレッロは恐しさに震えるが、ドン・ジョヴァンニは全く動揺せず、大胆不敵にもその石像を晩餐に招待する。

その晩、ドン・ジョヴァンニが豪勢な晩餐をしていると、本当に騎士長の石像が歩いてやって来た。石像は「悔い改めよ」と繰り返すが、ドン・ジョヴァンニが「私は何も悪いことはしていない」と答えると、地獄への扉が開き石像は彼を地獄に引きずり込んだ。

一同は「これが悪人の成れの果て」と歌い、幕が閉じられる。

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という、一見したところ「勧善懲悪」の話なのですが、果たして法治国家の日本だったら彼の悪行が死刑に値するものかという疑問がわきます。
法律に詳しくはありませんが、罪状が「2000人以上の女性との淫行と一人の殺人」では、死刑にまではならないように思います。
恐らく女性の大半は、両者に合意が有ったと見なされるでしょうし、そもそも騎士長の殺人も先に剣を抜いたのは騎士長のほうですし、ドン・ジョヴァンニが「お前となど戦うつもりは無い!」と言っているのに、騎士長が向かって行ったのです。従って”正当防衛”だと解釈されるでしょう。この事件、もしも皆さんが陪審員だったらどう判断されるでしょう。

それにしても「ドン・ジョヴァンニ」の音楽は凄いです。
それまでのような一人の歌手が長く歌うアリアはほとんど無く、複雑に絡み合う重唱曲が大半を占めます。ブッファ的な愉しい曲や天国的に美しい曲を多く含みながらも、全体はデモーニッシュな雰囲気に満ちていて、不協和音による凄みの有る音を出してみたり、半音階を使って心の不安を表現したりと、音楽の懐の深さという点では、「フィガロ」や「魔笛」以上のように思います。音楽の持っている”毒”の含有量も半端では無いですし、もしかしたら、この作品こそが三大オペラの最高峰かもしれない、そんな気がしてくるほどです。

尚、このオペラはプラハで初演されましたが、ウイーンで再演されたときにはモーツァルトが改編を行ったので二つの版が存在します。改編はウイーンの聴衆の好みに合わせて行われたようですが、出演歌手に力量のバラつきが有った為でもあるようです。ですので、現在は大抵の場合、両版の折衷の形で演奏されています。

それでは愛聴盤のご紹介です。

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ブルーノ・ワルター指揮メトロポリタン歌劇場
エツィオ・ピンツァ(Br)、アレキサンダー・キプニス(Bs)、ローズ・バンプトン(S)、ヤルミナ・ノヴォトナー(S)他(1942年録音/NAXOS盤)

ワルターは1937年にザルツブルクで演奏したウイーン・フィルとの素晴らしい「ドン・ジョヴァンニ」を聴くことも出来ますが、音質の貧しさはどうしようもありません。その点、こちらのメトのライブは古いながらも比較的音がしっかりしています。とにかく猛烈なテンポによる凄まじい演奏で、ドラマティックな点では比類有りません。部分的には歌手が歌い切れないほどの速さで、極端過ぎに感じられるほどです。ただ、フルトヴェングラーのように濃密に粘るわけではありません。タイトルロールのピンツァは男臭さが強烈です。レチタティーヴォでチェンバロでは無くピアノが使われている点が古めかしくマイナスに感じられます。誰にでもお勧め出来る演奏ではありませんが、強烈な歴史的録音として一聴の価値が有ります。

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ウィルヘルム・フルトヴェングラー指揮ウイーン・フィル
チェーザレ・シェピ(Br)、オットー・エーデルマン(Bs)、エリザベート・グリュンマー(S)、エリザベート・シュワルツコップ(S)、アントン・デルモータ(T)他(1954年録音/EMI盤)

これはザルツブルク音楽祭のライブです。フルトヴェングラーの亡くなる年の演奏ですが、気力が充実していて弛緩することは皆無です。序曲から物々しいテンポと濃密な表情に圧倒されますが、逆に”しつこい”と感じる人も居ると思います。歌手陣はさすがに豪華で、EMIリリースなのでシュワルツコップのドンナ・エルヴィーラが聴けます。さすがに表現力が圧巻で、シェピとエーデルマンの最強コンビの向こうを張って素晴らしいです。フルトヴェングラーのテンポはここでも緩急の変化が大きく、曲によっては驚くほど遅く歌わせます。つまり、完全にロマン派寄りの演奏なのですが、作品そのものにロマン派的な要素が多いので、聴き慣れると余り違和感は感じません。これが他の作品であれば、このようには行かないと思います。”古典派”の枠からはみ出した作品と指揮が幸福な出会いをした名演だと思います。オーストリア放送協会による録音はもちろんモノラルですが当時のライブとしてはバランスが良く、かなり聴き易いです。

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ヨーゼフ・クリップス指揮ウイーン・フィル
チェーザレ・シェピ(Br)、フェルナンド・コレナ(Bs)、シュザンヌ・ダンコ(S)、リーザ・デラ・カーザ(S)、ヒルデ・ギューデン(S)他(1955年録音/DECCA盤)

これもまた1955年録音のデッカによるモーツァルト・オペラの白眉の一つです。クリップスはウイーン・フィルと当時ウイーンで活躍した歌手たちを揃えて古き良きウイーンの味わいを引き出しています。その甘く柔らかいサウンドは、このオペラの持つ重さに一見似合わないと感じられるかもしれませんが、本来オペラブッファであることから考えれば、この洒落た軽みこそがむしろ相応しい気がします。シェピのタイトルロールはキャラクターイメージにピッタリのハマり役で、これ以上の歌手は二度と出ないと思いますし、コレナのレポレッロも素晴らしく、このコンビだけでも満足し切れます。もちろん他の歌手達も非常に充実していて心から楽しめます。音質もさすがにデッカで、レンジの狭さは感じますが、正規のステレオ録音で鑑賞に支障は有りません。

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ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ウイーン・フィル
ニコライ・ギャウロフ(Br)、ジェレイント・エヴァンス(Bs)、グンドゥラ・ヤノヴィッツ(S)、テレサ・ツィリス=ガラ(S)、オリヴェラ・ミリヤコヴィッチ(S)他(1970年録音/オルフェオ盤)

カラヤン全盛期のザルツブルク音楽祭ライブです。気になる音質はバランスの良いもので満足できます。過去の大巨匠達の演奏と比べると、ずっとスタイリッシュですが、極端にロマンティックに成り過ぎないのでモーツァルトの音楽そのままを鑑賞出来ます。先人たちの個性が余りに強烈であった為に続けて聴くと物足りなさを感じますが、決してそんなことは有りません。この曲のウイーン・フィルの演奏はさすがに素晴らしいです。ただ、地獄落ちの場面の恐ろしさはいま一つかもしれません。歌手ではギャウロウのタイトルロールは声は立派ですが、セクシーさはまずますというところ。それよりもヤノヴィッツのドンナ・アンナが声が美しく表現も深く非常に魅力を感じます。ミリヤコヴィッチのツェルリーナの声もとてもチャーミングで良いです。

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カール・ベーム指揮ウイーン・フィル
シェリル・ミリンズ(Br)、ワルター・ベリー(Bs)、アンナ・トモワ=シントウ(S)、テレサ・ツィリス=ガラ(S)、エディット・マティス(S)、ペーター・シュライヤー(T)、他(1977年録音/グラモフォン盤)

ザルツブルク音楽祭ライブですが、この演奏はベームにしては余り話題に上がることが有りません。確かにこのオペラの持つ濃厚なロマンティシズムには不足している気がします。けれども極端で無く安定したテンポを取って古典的な造形性と格調の高さを示すのは流石にベームのモーツァルト・オペラです。歌手ではミリンズのタイトルロールはカラヤン盤のレイミーよりも好きですし、ワルター・ベリーのレポレットも良いと思います。トモワ=シントウのドンナ・アンナは気が強そうで役柄的に相応しいです。エディット・マティスも綺麗な声を生かしてツェルリーナにピッタリです。 シュライヤーのドン・オッターヴィオも期待通りで素晴らしいです。但しジョン・マカーディの騎士長は凄みに欠けています。その為に”地獄落ち”の迫力はいま一つのように感じます。録音はウイーン・フィルの音の美しさを十全に捉えた優秀なものです。

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ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ベルリン・フィル
サミュエル・レイミー(Br)、フェルッチョ・フルラネット(Bs)、アンナ・トモワ=シントウ(S)、アグネス・バルツァ(Ms)、キャスリーン・バトル(S)他(1985年録音/グラモフォン盤)

カラヤンはオペラの録音にベルリン・フィルを頻繁に使いましたが、総じて好みません。上手いことは上手いのですが、響きがシンフォニックに過ぎます。それに加えて必ずしも歌伴奏のセンスが充分ではありません。もっともそれはウイーン・フィルと比較した場合の話ではあるのですが。比較的世評の高い歌手陣ですが、1970年のザルツブルク音楽祭の方が好みに合います。特にレイミーのタイトルロールが声も演技も小物なのが大きな不満です。逆にバトルのツェルリーナは可憐な美声が最高に魅力的で素晴らしいです。スタジオ録音ですので細部の完成度は高いですが、音楽の流れの勢いには不足しているように感じられてしまいます。”地獄落ち”も凄まじい音響の割にはドラマが余り感じられません。総合的にはカラヤンは1970年盤を好みます。

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リッカルド・ムーティ指揮ウイーン・フィル
ウィリアム・シメル(Br)、サミュエル・レイミー(Bs)、キャロル・ヴァネス(S)、シェリル・ステューダー(S)、スザンヌ・メンツァー(S)他(1990年録音/EMI盤)

ムーティは「ドン・ジョヴァンニ」を相当に愛していると思います。でなければ、とても出来そうに無い名演です。このオペラを知り尽くしているウイーン・フィルに更に細かく表情づけを行なわせて、あらゆる部分で新しい発見をさせられます。それも音楽の奔流を損なうこと無く、細部の彫琢の限りを尽くすという、少々大袈裟に言えば「神業」です。ダイナミクスとデリカシーの両立が見事に成し遂げられています。歌手では、ヴァネスのドンナ・アンナがややヒステリックですが、役柄上の性格ですし不自然ではありません。メンツァーのツェルリーナも新婦としては幾らか歳かさを感じられなくも無いですが悪くは有りません。その他のキャストは総じて優秀です。一幕の騎士長とドン・ジョヴァンニの争いの場面で、剣の効果音や騎士長の叫び声が無いのが物足りませんが、全体から見れば些細な事です。その分”地獄落ち”では壮絶な音の迫力がドラマを充分に表していて満足させてくれます。

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ロジャー・ノリントン指揮ロンドン・クラシカル・プレイヤーズ
アンドレアス・シュミット(Br)、グレゴリー・ユーリッチ(Bs)、アマンダ・ハルグリムソン(S)、リン・ドーソン(S)他(1992年録音/Virgin Classics盤) 

所有している唯一の古楽器系の演奏です。これはプラハ版で演奏していますが、ウイーン版による部分が別の1枚のCDに収録されているので比較するのには便利です。古楽器派のノリントンならではのアイディアですね。演奏は曲にも寄りますが、総じてかなり速いテンポで駆け抜けます。古楽器派とあれば仕方がありませんが、ロマン派的な要素の強いこのオペラにはもう少し濃密な表現を求めたくは成ります。オーケストラは非常に歯切れが良く、音が軽くあっさりとしているので物足りなさを感じますが、時にバロック的に書かれている部分が真正バロック音楽に聞えるのは新鮮です。ベルリン・フィルのようなシンフォニックな音は好みませんが、もう少し浪漫の色彩が欲しいような気はします。但し”地獄落ち”の場面は現代楽器派以上に迫力が有り緊迫感を感じます。歌手陣については、美声が揃っていて表情がとても豊かなので満足させられます。

最後にDVDもご紹介します。

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リッカルド・ムーティ指揮ウイーン国立歌劇場管弦楽団/合唱団
ドン・ジョヴァンニ:カルロス・アルバレス
レポレッロ:イルデブランド・ダルカンジェロ
ドンナ・アンナ: アドリアンヌ・ピエチョンカ
ドン・オッターヴィオ:ミヒャエル・シャーデ
ドンナ・エルヴィーラ:アンナ・カテリーナ・アントナッチ
ツェルリーナ:アンゲリカ・キルヒシュラーガー
騎士長:フランツ=ヨーゼフ・ゼーリヒ

演出:ロベルト・デ・シモーネ
会場:アン・デア・ウィーン劇場
(1996年収録/DENON盤) 

フルトヴェングラーとカラヤンの映像ものは非常にポピュラーで、かつてはこの二つで「ドン・ジョヴァンニ」の舞台を楽しみました。特に前者は、稀代のドン・ジョヴァンニ役のシェピの舞台が見られるのが貴重です。けれども最近はムーティがアン・デア・ウィーン劇場で行ったライブ映像盤で楽しんでいます。
ロベルト・デ・シモーネの演出舞台は一貫して照明が暗く、夜の場面だけで無く、晩餐会の場でも同じように暗いです。この作品の「闇」の面を特に重視しているからでしょう。衣装もユニークです。幕開けは17世紀の服装、次には18世紀風、最後は19世紀風と、劇の進行につれて服装が時代を変えてゆくのです。それが全く違和感を感じさせず、自然に感じられるのが凄いです。元々この作品には時代設定がされていないので、このような演出を取ったのでしょう。
ムーティとウイーン・フィルの演奏は90年のCD録音が最高でしたが、ここでも同様の素晴らしさです。セッション録音と変わらない精緻さで気迫のこもった演奏を繰り広げています。歌手陣は全て容姿も歌も申し分なく、演技も非常に満足できます。特筆すべきはタイトルロールのカルロス・アルバレスで、悪そうで、セクシーで、どこか憎めない役柄をものの見事に演じています。
これだけ映像と演奏が充実している舞台は珍しいと思います。

以上ですが、マイ・フェイヴァリットを特に上げれば、CDではヨーゼフ・クリップス/ウイーン・フィル盤とリッカルド・ムーティ/ウイーン・フィル盤です。それに番外としてワルターとフルトヴェングラーを上げます。
DVDではもちろんリッカルド・ムーティ/ウイーン国立歌劇場盤です。

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2014年10月 9日 (木)

モーツァルト 歌劇「フィガロの結婚」K492 名盤

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モーツァルトの三大オペラ「フィガロの結婚」「ドン・ジョヴァンニ」「魔笛」は、そのどれもが余りに素晴らしいので、これに順序を付けるのはおよそ至難の業です。聴き手の好みに委ねる他に手は無いでしょう。それとて熱列なモーツァルティアンであればあるほど、悩み迷うのは明らかです。「それでお前はどうなのか?」と尋ねられても、うーん、やはり困った・・・。最初に好きになったのは「魔笛」ですが、次に熱中したのは「フィガロ」です。今では「ドン・ジョヴァンニ」の魅力にも抗し難いですし、やはり結論が出せません。

まぁ、それはさておき、「フィガロの結婚」はチャーミングで心が躍るようなアリア、旋律がよくもまあ次から次へと登場してくる、まるで「七色虹変化」とでも呼びたくなるようなオペラです。その点では古今のオペラの中でも随一ではないでしょうか。

ダ・ポンテによるイタリア語の台本は、ドタバタ喜劇の極みです。領主の使用人である婚約者の二人が領主夫人と協力して、「初夜権」(使用人同士が結婚をする場合には、領主が新郎よりも先に花嫁と初夜を過ごせるという、とんでもない中世の封建的特権制度)を復活させようと企む領主を懲らしめるという、なんともふざけた内容で、モーツァルトの美しく愉しい音楽とのギャップが信じられません。

ともかく、ストーリーのおさらいをしてみましょう。

―あらすじ―

時代:18世紀中ごろ
場所:スペインのセヴィリア

登場人物
アルマヴィーヴァ伯爵(Br):領主
伯爵夫人(S)
スザンナ(S):伯爵の女中
フィガロ(Br):伯爵の従者
ケルビーノ(Ms):伯爵邸に住む少年
バルトロ(Bs):医者
マルチェリーナ(Ms):女中頭
バジーリオ(T):音楽教師

第1幕
伯爵邸。フィガロは、今日結婚をするスザンナから驚きの話を聞く。それは、スザンナに下心を持つ伯爵が、かつての領主の特権であった初夜権の復活をたくらんでいるという事実であった。

一方、女中頭のマルチェリーナはフィガロに貸した借金の証文をたてに、バルトロとともにフィガロの結婚の妨害を企てる。

スザンヌの部屋にケルビーノ、伯爵、バジーリオが集まって大混乱となり、怒った伯爵はケルビーノに軍隊入りを命じる。
             
第2幕
伯爵夫人の居間。夫人は伯爵の愛が冷めてしまったことを悲しんでいる。
そこでフィガロとスザンナは伯爵をこらしめる作戦を考えて、伯爵夫人も協力をする。
その作戦とは、伯爵に仕える少年ケルビーノにスザンナの服を着せて、伯爵がスザンナと夜こっそり会おうとしたときに、驚かせようというものであった。ところが、スザンナがケルビーノに女装をさせている最中に伯爵が現れてしまい大混乱となる。結局、フィガロの作戦は失敗に終わる。
その上、マルチェリーナが借金の証文を持ってやって来て、「契約通り、フィガロは私と結婚をしなさい!」と迫るので、伯爵は大喜び。
             
第3幕
城内の大広間。裁判の結果、フィガロはマルチェリーナと結婚するように申し渡される。
ところが驚きの事実が発覚する。捨て子であったフィガロは、実はマルチェリーナとバルトロの二人が若い頃に遊びをして出来てしまった子供だということである。つまり、3人は父母、息子の関係であった。
スザンナを加えた4人は喜び合い、フィガロとスザンナは無事に結婚式を挙げることが出来た。

一方、伯爵は相変わらずスザンナを誘惑しようとしている。そこで伯爵夫人が、今度は自分がスザンナと服を交換して、密会の現場に行く作戦を思いつく。
             
第4幕
夜の城内の裏庭。伯爵はスザンナと秘かに会えるのを楽しみにやって来る。そして、スザンナの服を着た伯爵夫人をスザンナと勘違いして、甘い言葉で誘惑する。

一方、フィガロは伯爵夫人の服を着たスザンナを大袈裟に誘惑する芝居をする。それを聞いた伯爵は妻の浮気を見つけたものと勘違いをして大声で一同を集める。ところが、実は自分が誘惑をした相手が妻だったことを知って驚愕する。
伯爵夫人はすっかり反省した伯爵を許し、一同喜び幕を閉じる。

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というように、かなり入り組んだドタバタ劇なので最初は理解がし難いですが、話を理解してしまうと実に計算され尽くした傑作喜劇であることが分かります。一方、これは単なる喜劇では無く、封建制度を風刺、批判する”毒”を含む内容とも受け止められます。それにしては、ヨーゼフ2世が宮廷歌劇場での公演をよく許可したものですね。

それでは僕の愛聴盤のご紹介です。
モーツァルトの三大オペラは登場人物が多く、誰もみな強い個性を持つので、歌手の配役が大変です。全てが満足できる配役は中々無いので、どこかで妥協をしながら全体が満足できる演奏を選ぶしか無いと思います。

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エーリッヒ・クライバー指揮ウイーン・フィル
チェザーレ・シェピ(B)、ヒルデ・ギューデン(S)、アルフレート・ぺル(Br)、リーザ・デラ・カーザ(S)、スザンヌ・ダンコ(S)他(1955年録音/DECCA盤)

1955年に録音されたデッカのモーツァルト・オペラの白眉の一つです。何といっても戦前のウイーン・フィルから続いている甘く柔らかい音を生かして、かつ全体をキリリとしたテンポで引き締めている父クライバーの指揮が最高です。序曲に続くフィガロとスザンナの二重唱の伴奏を聴いただけでもう魅了されてしまいます。艶と色気のあるシェピの声は助平な伯爵の方に似合いそうですが、フィガロ役でも芝居っ気たっぷりの上手い歌に惹きつけられます。一方ギューデンのスザンナにはやや気品が足りない気がします。ぺルの伯爵とデラ・カーザの伯爵夫人は水準レベルです。むしろダンコのケルビーノが可愛らしい声でいてボーイッシュな雰囲気が有り素晴らしいです。主要な歌手が必ずしも万全では無いのですが、とにかくオーケストラの音色と全体の雰囲気がいかにもウイーンであり、何物にも代え難い絶大な魅力を感じます。終幕のフィナーレも実にあっさりとしていますが、これこそがウイーン風なのでしょう。古いステレオ録音ですが、当時のデッカの音造りは優秀なので不満無く素晴らしい演奏を楽しめます。

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カール・ベーム指揮ウイーン・フィル
エーリッヒ・クンツ(Br)、イルムガルト・ゼーフリート(S)、D・Fディースカウ(Br)、エリザベート・シュヴァルツコップ(S)、クリスタ・ルードヴィヒ(Ms)他(1957年録音/伊GDS盤)

1957年ザルツブルグ音楽祭でのライブ収録です。オルフェオからもリリースされましたが、自分の所有しているのはイタリア盤です。モノラル録音ですが、歌手の声は良く録れていますし音質は良好です。ウイーン・フィルとの演奏の為か、6年後のベルリン・ドイツオペラと比較すると、ベームの手綱の引き締め方が随分緩く感じます。これはウイーンとベルリンの性格の違いだと思います。リズムの刻み方もベームにしては甘さを感じますが、これはオペラ・ブッファですし、ベルリン・ドイツ盤に堅苦しさを感じる場合には、こちらのウイーンの柔らかい雰囲気は楽しいかもしれません。歌手ではクンツのフィガロとゼーフリートのスザンナともまずまずです。シュヴァルツコップの伯爵夫人には期待したいところですが、第2幕冒頭のカヴァティーナなど感銘はいま一つです。ルードヴィヒのケルビーニは男役としては良いのですが、声に可憐さは感じられません。

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カール・ベーム指揮ベルリン・ドイツ・オペラ管
ワルター・ベリー(Br)、エリカ・ケート(S)、D・Fディースカウ(Br)、エリザベート・グリュンマー(S)、エディット・マティス(S)他(1963年録音/伊PONTO盤)

記念すべきベーム初来日となったベルリン・ドイツ・オペラの東京、日生劇場でのライブ収録です。かつてポニーキャニオンからリリースされていましたが、自分が所有しているのはイタリア盤です。ステレオ録音ですし、当時の生録としてはかなり明瞭な音質です。ベームの指揮が素晴らしく、引き締まった全体のアンサンブルとドラマの造り上げ方が絶妙です。但し、歌手に凸凹が有るのが気になります。特にケートのスザンナが声質が子供っぽく気品が全く感じられないので残念です。ベリーのフィガロはまずまずです。素晴らしいのは情感籠るグリュンマーの伯爵夫人と可憐なマティスのケルビーノでとても印象的です。ステージ上の音や聴衆の拍手、笑い声が盛大に聞こえますが、これは生の舞台を彷彿させていて個人的には気になりません。これは国内正規盤で再リリースされると良いと思います。

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カール・ベーム指揮ベルリン・ドイツ・オペラ管
ヘルマン・プライ(Br)、エディット・マティス(S)、D.F=ディースカウ(Br)、グンドゥラ・ヤノヴィッツ(S)、タティアーナ・トロヤノス(S)他(1968年録音/グラモフォン盤) 

これは「フィガロ」の歴史上に残る録音です。日本でのライブのような勢いは無いものの、スタジオ録音による緻密さと歌手陣の優れていることが繰り返しの鑑賞に適しています。プライのフィガロ、マティスのスザンナには文句なし。F=ディースカウの伯爵、ヤノヴィッツの伯爵夫人も万全です。あえて欠点を上げればトロヤノスのケルビーノで、これは残念。ベルリン・ドイツ・オペラ管はベームの指揮に忠実に緻密な演奏をしていますが、元々特に上手い楽団では無いですし、ウイーン風の柔らかな音や華麗さを求めるのは無理な話です。ウイーン・フィル、あるいはドレスデン歌劇場管の演奏の音と比べてハンディにならないかと聞かれれば到底否定できるはずは有りません。にもかかわらず、ベームが造り出す音のドラマには効し難い魅力を感じます。これがウイーン・フィルであったらとは思いますが、そこはひとまず忘れましょう。

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オトマール・スウィトナー指揮ドレスデン国立歌劇場管
ワルター・ベリー(Br)、アンネリーゼ・ローテンベルガー(S)、ヘルマン・プライ(Br)、ヒルデ・ギューデン(S)、エディット・マティス(S)他(1964年録音/Berlin Classics盤) 

スウィトナーのモーツァルトのオペラ録音では「魔笛」と並ぶ名演だと思います。しかも歌手がすこぶる充実していることでは「魔笛」以上です。ベリーのフィガロとプライの伯爵は正に適役。ローテンベルガーのスザンナは凛々しく、マティスのケルビーノも可憐です。出番が少ないながらバジーリオを歌うシュライヤーも光っています。全体は例によってスウィトナーらしい快速テンポで躍動感に溢れていますが、音符を完璧に弾き切るドレスデンのオケの実力には凄みすら感じます。もちろん緩徐部分ではじっくりと落ち着きをみせて、ソロ奏者の妙技がじっくり味わえます。全体のスタイルは毅然としたドイツ風でウイーン風の甘さこそ有りませんが、この歌劇場の持つ古雅な響きによる味わいはそれを補って余りあります。これはドイツ語による演奏ですが、違和感はほとんど感じません。

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ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ウイーン・フィル
ホセ・ファン・ダム(Br)、イレーナ・コトルバス(S)、トム・クラウセ(Br)、アンナ・トモワ・シントウ(S)、フレデリカ・フォン・シュターデ(S)他(1978年録音/DECCA盤)

「フィガロ」を演奏してウイーン・フィルほど魅力的な団体は無いと思います。1950年代までのあの陶酔的な音はこの頃既に失われていますが、それでも他の団体と比べれば質が全く異なります。この録音はカラヤンの意図が徹底的に反映されている印象を受けます。序曲は速いテンポでダイナミクス巾の大きい演奏でカラヤンらしく常套的です。全体的には歌手にレガートを強調させて歌わせているのが少々不自然さを感じさせます。これはカラヤンのシンフォニー演奏とも共通しています。その歌手ではホセ・ファン・ダムのフィガロが声質が重すぎて(偉そうに聞こえて)唯一のハズレですが、コトルバスのスザンナ、トモワ・シントウの伯爵夫人、シュターデのケルビーノと実力派が揃っていて各自の声質も含めて満足できます。他の歌手も非常に粒が揃っています。デッカの録音も良く、非常に長所も多いので、カラヤンの欠点とダムのフィガロに目をつぶれば中々に楽しめる全曲盤だと思います。

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リッカルド・ムーティ指揮ウイーン・フィル
トーマス・アレン(Br)、キャスリーン・バトル(S)、ヨルマ・ヒュニネン(Br)、マーガレット・プライス(S)、アン・マレイ(Ms)他(1986年録音/EMI盤)

これもウイーン・フィルの演奏で、速いテンポでダイナミクスの大きい点はカラヤンと共通していますが、異なるのはムーティにはカラヤンのような演出臭さは余り感じられないことです。演奏に勢いを感じる反面、ウイーン・フィルにしては僅かに粗さを感じられなくも有りません。歌手ではバトルのスザンナが声質からしてチャーミングで魅了されます。アレンのフィガロは主役としては幾らか物足りませんが、大きな不満は有りません。プライスの伯爵夫人も夫から相手にされない妻の役にぴったりの声質で良いです。マレイのケルビーノもまずまずです。歌手全体にはハズレが無い代わりにやや小粒でまとまった感は有ります。EMIの録音はカラヤンのデッカ盤よりも新しいわりに僅かに混濁感が有るのが残念です。

最後に映像を収録したDVDもご紹介しておきます。

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カール・ベーム指揮ウイーン国立歌劇場
ヘルマン・プライ(Br)、ルチア・ポップ(S)、ベルント・ワイクル(Br)、グンドゥラ・ヤノヴィッツ(S)、アグネス・バルツァ(S)他(1980年収録/NHK盤)

ベームの最後の来日となったウイーン国立歌劇場の引っ越し公演のライブで、会場は東京文化会館です。奇しくも初来日のときに披露した「フィガロ」を最後の来日でも演奏したのでした。最晩年のベームですので指揮の動きは非常に少なくテンポもゆったりとしているのですが、それにもかかわらず音楽の生き生きとしていることには驚かされます。歌手ではルチア・ポップのスザンナが声も顔もチャーミングの極みで最高です。プライのフィガロももちろんハマり役ですが、特筆すべきはヤノヴィッツ円熟の伯爵夫人で、第2幕のカヴァティーナではウイーン・フィルの伴奏と共に余りに感動的なのでとても言葉にはなりません。他の歌手陣も特に欠点は見当たらず満足ができます。画面は4:3ですし、画質も明瞭とは言えません。けれども音は放送用の録音を映像に重ねているので悪くありません。これは出来れば音だけでCD化して欲しいと思います。
尚、ベームにはジャン・ピエール・ポネル演出の有名な映像作品も有りますが、テレビ映画仕立てであることと、スザンナを映像で観る場合にはフレーニよりもやはりポップの方に魅了されます。

というわけで、CDでは何と言ってもエーリッヒ・クライバー/ウイーン・フィル盤を迷わずに選びます。もう一つ選ぶとすればオーケストラの魅力の全く異なるスウィトナー/ドレスデン国立歌劇場盤でしょうか。何種類か有るベーム盤の其々の格調の高さにも惹かれますが、むしろベームはDVDの日本公演盤で楽しみたいです。

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2014年10月 1日 (水)

第3回クラシック鑑賞会 in シェア奥沢

先週日曜日(9月28日)にシェア奥沢で催した第3回目のクラシック鑑賞会では 「初期ロマン派音楽」をテーマとしました。 ロマン派の最初期に活躍したドイツのシューベルト、ウエーバー、それにイタリアのパガニーニ、ロッシーニの4人を取り上げてポピュラーな名曲ばかりを集めましたが、演奏には出来るだけこだわりを持って選んだつもりです。せっかくですので、ちょっと当夜のプログラムをご紹介してみます。

前半 

シューベルト

 歌曲集「美しき水車屋の娘」から水車職人の花 ヴンダーリッヒ(Tr)、ギーゼン(Pf)(DG)

 歌曲集「冬の旅」から菩提樹=ディースカウ(Br)、ブレンデル(Pf)(フィリップス)

 歌曲集「白鳥の歌」からセレナーデ” シュライヤー(Tn)、オルベルツ(Pf)(DG)

 ピアノ五重奏曲「ます」から第4楽章 バドゥラ=スコダ(Pf)、バリリ四重奏団員(ウエストミンスター)

劇付随音楽「ロザムンデ」から序曲” ミュンヒンガー/ウイーン・フィル(デッカ)

ウエーバー

 ⑥歌劇「魔弾の射手」から序曲、婚礼の合唱狩人の合唱  コリン・デイヴィス/ドレスデン国立歌劇場(フィリップス)

後半

パガニーニ

 「24のカプリース(奇想曲)」から第13番、20番、24番 ルジェーロ・リッチ(Vn)(デッカ)

 ヴァイオリン協奏曲第2番から第3楽章「ラ・カンパネラ」 ギトリス(Vn)、ヴィスロツキ/ワルシャワ・フィル(フィリップス)

ロッシーニ

 歌劇「セビリャの理髪師」序曲 トスカニーニ/NBC交響楽団(RCA)

 歌劇「セビリャの理髪師」から私は町の何でも屋 レオ・ヌッチ(Br)、パターネ/ボローニャ歌劇場管弦楽団(デッカ)

 歌劇「ウイリアム・テル」序曲 ムーティ/ニューフィルハーモニア管(EMI)

ざっと以上です。

解説、ティータイムを含めて約2時間半という制約がありますので、選曲から外れた名曲も沢山有りました。そのうちにいつかまた取り上げたいと思っています。

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