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2014年9月21日 (日)

モーツァルト 歌劇「コジ・ファン・トゥッテ」K588 名盤

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モーツァルトの歌劇「コジ・ファン・トゥッテ」K.588の正式なタイトルは「Così fan tutte, ossia La scuola degli amanti」で、訳すと”女はみなこうしたもの、または恋人たちの学校”となります。台本は「フィガロの結婚」「ドン・ジョヴァンニ」と同じダ・ポンテの手によります。

ストーリーは、二人の姉妹のそれぞれの彼氏が、彼女らの貞節を試すために互いの相手を口説いてみたところ、二人とも心変わりをしてしまう。けれども、どちら側にも言い分が有るので、そのままお互いに認め合うしかないものだという内容です。
そんな内容から、長い間この作品は不道徳であるとして低く評価されて来ましたが、20世紀になると再評価されて、現在では「フィガロの結婚」「ドン・ジョヴァンニ」「魔笛」の三大オペラに加えて”四大オペラ”と称されるようになりました。

―あらすじ―

時代:18世紀末
場所:イタリアのナポリ

第1幕
青年士官のフェルランドとグリエルモは、老哲学者ドン・アルフォンソの「女は必ず心変わりするものだ」という主張に対して、「自分たちの恋人に限ってそんなことはない」と反論する。そこでドン・アルフォンソは、自分の主張を証明するために二人と賭けを行なうことを提案する。フェルランドとグリエルモはドン・アルフォンソの提案に同意する。

彼らの恋人のフィオルディリージとドラベッラの姉妹が登場して、愛を讃える歌を歌うと、そこへドン・アルフォンソが現れて、フェルランドとグリエルモが国王の命令で戦場に向かうことになったと伝える。

フェルランドとグリエルモが現れて、彼女たちとの別れを悲しむ芝居をする。四人の恋人たちが愛を誓い合い、やがて兵士たちが出発する。

舞台はフィオルディリージとドラベッラの家に変り、女中のデスピーナが愚痴をこぼしながら働いていると、姉妹が悲しみに打ちひしがれて帰ってくる。デスピーナは、「男は他にも居るでしょう」と姉妹に浮気を勧め、「男や兵士の貞節なんて」と歌う。

ドン・アルフォンソはデスピーナを芝居に巻き込み、フェルランドとグリエルモをアルバニア人に変装させて家に連れて来て、フィオルディリージとドラベッラに「彼らは自分の古い友人たちだ」と偽り紹介をする。変装した二人は姉妹に求愛をして愛の歌を歌うが、姉妹は求愛を受け入れずに立ち去る。

フェルランドとグリエルモは「賭けに勝った」と笑うが、ドン・アルフォンソは芝居を続け、デスピーナと共に姉妹を陥落させる計画を進める。

姉妹は庭で恋人を想う二重唱を歌うが、そこへ変装したフェルランドとグリエルモが現れて、絶望の余り毒を飲んだふりをする。すると姉妹は驚いて、変装をした二人に同情をし始める。

そこへ医者に変装したデスピーナが現れて、苦しみもだえる二人を支えるように姉妹に指示する。意識を取り戻したふりをして二人は姉妹にキスを迫り、混乱のうちに幕を閉じる。

第2幕
デスピーナは姉妹に気晴らしをすることを勧め、「女の子は恋の手管を覚えなければなりません」と歌う。
そこで姉妹は互いに「二人のどちらを選ぶ?」と尋ね、ドラベッラは「ブルネット」(グリエルモ)の方、フィオルディリージは「ブロンド(フェルランド)の方」と実際の恋人とは逆の相手を選んでしまう。

ドン・アルフォンソは姉妹を庭へ誘い、そこへ変装したフェルランドとグリエルモが現れる。ドン・アルフォンソとデスピーナは四人をくっつけようとする。
フェルランドとフィオルディリージが庭に散歩に出かけると、残されたグリエルモがドラベッラを口説くと、ドラベッラは陥落してしまう。一方、フィオルディリージはフェルランドの求愛を拒絶する。

フェルランドとグリエルモは互いの結果を報告する。グリエルモはフィオルディリージの貞節を喜ぶが、フェルランドはドラベッラの心変わりにショックを受ける。グリエルモはフェルランドを慰めて「女はたくさんの男と付き合うものだ」と歌うが、フェルランドは「裏切られた」と悲しむ。
ドン・アルフォンソは更に芝居を続けることにする。

悩むフィオルディリージに対して、ドラベッラは恋の楽しさを陽気に歌う。フィオルディリージは貞節を守るために恋人のいる戦場へ行こうと決意して軍服を着るが、そこに現れたフェルランドに激しく求愛をされてついに陥落してしまう。

賭けに勝ったドン・アルフォンソは、互いに認め合いそれぞれの恋人と結婚すれば良いと提案し、「女はみなこうしたもの」と歌う。

結婚式の祝宴の準備が進められ、フィオルディリージと変奏したフェルランド、ドラベッラと変奏したグリエルモの二組のカップルが登場する。公証人に扮したデスピーナが現れ、4人はそれぞれの結婚の証書にサインをする。

そこへ突然、兵士たちの歌声で「婚約者たちが戻ってきた!」と知らされたので姉妹は呆然とする。変装を止めたフェルランドとグリエルモが現れて結婚証書を見つけ激怒するふりをする。姉妹は平謝りするが、そこですべてが種明かしをされて、一同が和解して幕となる。

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というわけで、非常にナンセンスなドタバタコメディなのですが、モーツァルトの音楽は例によって極めて美しい旋律に溢れています。この作品は登場人物が6人に限られていて、歌も独唱よりも重唱が非常に多いのが特徴です。管弦楽も派手さが無く、すこぶる緻密な書き方なので、まるで室内楽のようです。4大オペラの中では特に室内楽的な作品だと言えます。作品番号から判るように、この作品はモーツァルトの最後のオペラ・ブッファであり、円熟の業を如何なく発揮した素晴らしい作品です。

それでは愛聴盤のご紹介ですが、ディスクはごく少数に限られます。

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カール・ベーム指揮ウイーン・フィル
エーリッヒ・クンツ(Tr)、アントン・デルモータ(Br)、リーザ・デラ・カーザ(Sp)、クリスタ・ルートヴィヒ(Ms)(1955年録音/DECCA盤)

1955年には翌年のモーツァルトの生誕200年記念の為のレコーディングが多く行われましたが、デッカがウイーン・フィルを使って録音したエーリッヒ・クライバーの「フィガロ」、ヨーゼフ・クリップスの「ドン・ジョヴァンニ」、そしてこのベームの「コジ」という一連のオペラ全曲盤では、現在では失われてしまった古き良きウイーン・フィルの甘く柔らかい音と、その管弦楽の響きにまろやかに溶け合う当時のウイーンで活躍した名歌手たちの饗宴が最高の味わいを与えてくれます。ベームは「コジ」には相当な思い入れを持っていたようで、スタジオ録音ではこのデッカ盤から7年後の1962年にEMIに再録音をしています。大物歌手を揃えたEMI盤も確かに歌唱の魅力は素晴らしいのですが、オーケストラがフィルハーモニア管というのが惜しいです。ベームの引き締まった音造りがストレートに出過ぎていて、このオペラの愉悦感が少なくとも管弦楽からは聞こえて来ません。その点、このデッカ盤の夢見るような美しさに一度魅入られてしまったら絶対に離れられません。録音年代から低域の音像がかなり甘いですが、全体的には明瞭な録音で聴き辛さは感じません。

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カール・ベーム指揮ウイーン・フィル
ペーター・シュライヤー(Tr)、ヘルマン・プライ(Br)、グンドゥラ・ヤノヴィッツ(Sp)、ブリギッテ・ファスベンダー(Ms)(1974年録音/グラモフォン盤)

カール・ベームが80歳の誕生日にザルツブルクで行った公演の収録です。全体にゆったりとしたテンポですが、それでいてライブならではの高揚感をしっかりと持ちます。オーケストラは厳しく統率されていて一点一画も揺るがせませんが、ウイーン・フィルの持つ柔らかい響きが演奏を硬直させることも無く素晴らしいバランスをもたらしています。オペラ・ブッファにもかかわらず格調の高さにおいて比類が無く、これぞ晩年のベームの至芸です。歌手陣は実力者揃いですのでライブにもかかわらずキズも少なく、スタジオ録音では得られない生き生きとした見事な歌のアンサンブルを繰り広げます。録音も優れていて、実際の舞台を目にするような臨場感が感じられます。同じザルツブルグ収録でも、放送用に録音されたものとはレベルが異なります。ベームの記念すべき公演にかける出演者やスタッフ全員の意気込みが伝わる素晴らしい名盤だと言えます。

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オトマール・スウィトナー指揮ベルリン国立歌劇場
ペーター・シュライヤー(Tr)、ギュンター・ライブ(Br)、チェレスティーナ・カーサピエトラ(Sp)、アンネリース・ブルマイスター(A)(1969年録音/エテルナ原盤:DENON盤)

スウィトナーはやはりモーツァルトの演奏に一番魅力を感じます。シンフォニーでもオペラでもその演奏スタイルは全く変わらず、速めのテンポによる弾むようなリズムが心地良いです。管楽器が16分音符で幾らか転んでいるのが気にはなりますが、オーケストラ全体の統率としては素晴らしいです。とにかく大きく歌い崩さないにもかかわらず微細なニュアンスの変化に富んでいるのがスウィトナーの最大の美徳です。典型的なドイツスタイルの演奏ですので、ウイーン風の甘さや、イタリア風の明るさを聴きたい場合には必ずしも向いてはいませんが、かっちりとした室内楽的な演奏としてお勧め出来そうです。聴いていてどことなく当時のコンサートマスターのズスケが主催するベルリン弦楽四重奏団の演奏を連想してしまうのは自分だけでしょうか。歌手陣は水準以上を保っていますが、フィオルディリージを歌うカーサピエトラが他盤に比べ少々聴き劣りするのが残念です。フェルランドを歌うシュライヤーもベーム盤と比べるとまだ未成熟な印象を受けます。

もちろん上記の3種とも愛聴していますが、やはりベームの2種には効し難い魅力を感じます。これをどちらか一つに絞るのは難しいですが、個人的にはDECCA盤を上げます。ただ、他人に奨めるならグラモフォン盤を上げるかもしれませんし、オーケストラの音色や味わいに特にこだわらなければEMI盤も選択肢に上げられるでしょう。

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モーツァルト(歌劇)」カテゴリの記事

コメント

ハルくんさん、こんにちは。  「コジ・ファン・トゥッテ」を聴いていると、私は どうしても '90年代の"トレンディー・ドラマを連想してしまいますが、あれほど"ドロドロ"にならないのは、日本人とイタリア人の違いでしょうかねぇ~。(笑)
このオペラは やはり 主役の フィオルディリージとドラベッラ姉妹が魅惑的でなければいけませんね。私は ドラベッラはルートヴィッヒで、フィオルディリージは デ・ラ・カーサ か シュヴァルツコップで聴きたいです。
ということで 私の愛聴盤は ベームの デッカ盤と EMI盤になります。
あと、EMI盤と ほぼ同じキャストでの ザルツブルク音楽祭のライブが あるようなので(オケはウィーン・フィル、モノラル)、是非 入手したいです。

投稿: ヨシツグカ | 2014年9月21日 (日) 17時17分

ヨシツグカさん、こんばんは。

このドタバタ話、トレンディードラマというよりは吉本新喜劇並みではないでしょうか。(笑)

ベームのEMI盤の歌手陣も素晴らしいですね。ただオーケストラの音については本文に書いた通りです。
ザルツブルク音楽祭ライブは1954年ですから、フルトヴェングラーの「ドン・ジョヴァンニ」と並ぶ公演だったのですね。凄い時代です。
一度は聴いてみたいですが音質的には余り期待できないでしょうね。

投稿: ハルくん | 2014年9月21日 (日) 23時42分

歌劇「コジ・ファン・トゥッテ」の大きな筋書は何と言っても「恋人の取り換えっこ」。
これが現代劇だったら、大変なことになるでしょうなあ。そんな筋書を6人の歌手によるアンサンブルだけでオペラにしてしまったモーツァルトはやっぱり天才!
さて私はベーム指揮の1974年のライブ録音が、やっぱり一番好きです。
ザルツブルグ音楽祭で1972年から6年間ベーム指揮でドン・アルフォンソ以外は不動の顔ぶれで続いた公演だけに最高のアンサンブルを聴くことが出来ます。
なお、最初のドン・アルフォンソ役はフィッシャー=ディースカウ。プライ、シュライヤー、F=ディースカウの顔ぶれで聴いてみたかったものです。

投稿: オペラファン | 2014年9月23日 (火) 18時35分

オペラファンさん

”恋人の取り換えっこ”
現実には有り得ない話ですが、そんなドタバタコメディにあの素晴らしい音楽を付けて傑作オペラにしてしまうというのは、正にモーツァルトにしか出来ない芸当ですね。

やはり「コジ」はベームですか。
1974年ライブも素晴らしいですよね。
プライ、シュライヤー、フィッシャー=ディースカウの組み合わせでは聴いてみたいですね。オルフェオあたりからリリースされないものですかね。

投稿: ハルくん | 2014年9月24日 (水) 23時08分

楽しく読ませてもらってます。
どうでもいいことだと思いますが、
細かいことが気になるのが私の悪癖なので。

モーツァルトが生まれたのは、七年戦争開始と同年、1756年だと思います。
ペルルミュテールのピアノソナタも1956年ですし。

投稿: シグレイン | 2014年9月26日 (金) 22時10分

シグレインさん、コメントを頂きましてありがとうございました。

『1955年には(翌年の)モーツァルトの生誕200年記念の為のレコーディングが多く行われました』という意味なのです。1956年に録音したのでは発売が間に合わなくなりますからね。

またいつでもお気軽にコメント下さい。楽しみにお待ちしています!

投稿: ハルくん | 2014年9月26日 (金) 22時29分

ハルくんさん、こんばんは。
前々から気になっていた、ベームの'62年 ザルツブルクライブを入手。(8月の録音とあるので、音楽祭ではないようです)
モノラルなので聴く前は心配でしたが、意外と良い音で このオペラを十分楽しむ事が出来ました。
キャストは 女声が シュヴァルツコップ、ルートヴィッヒ、シュッティ というベームの60年代お気に入りのメンバー、男性陣も クメント、プライ、カール・デンヒと文句のつけようのない豪華なもの。ベーム指揮するウィーン・フィルも「お見事!」というしがありません。
本当に素晴らしいです。
この演奏を聴く事が出来て 良かったな~…と思いました。

投稿: ヨシツグカ | 2014年9月29日 (月) 19時37分

ヨシツグカさん、こんばんは。

ベームの62年のザルツブルク・ライブというのが有ったのですね。このメンバーの歌手でオケがウイーン・フィルであればきっと素晴らしいでしょうね。
お手持ちはGalaレーベル盤でしょうか?オルフェオあたりが正規盤を出す可能性も無いとは言えなそうですが、是非聴いてみたいものです。
情報ありがとうございました。

投稿: ハルくん | 2014年9月29日 (月) 23時34分

愚生も、このオペラ作品が大好きで、カラヤン、ベーム&フィルハーモニア、クレンペラー、ショルティ&ロンドン・フィル、C・ディヴィス、エストマンと手元にございます。
美しいアリアや重唱が惜しげもなく繰り出され、愉しさ極まりない名作ですが、配役が高いレヴェルで粒揃いと言うディスクに、なかなか巡り会えませんね。ドン・アルフォンソはベリーよりバキエが良いですし、ドラベッラはルートヴィヒよりベルガンサが好きです。デスピーナはポップを一番好みますし、グリエルモは、タッディ、クラウゼ、エヴァンスと横一線並びの好勝負。はてさて…(笑)。

投稿: リゴレットさん | 2018年3月 9日 (金) 11時02分

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