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2014年7月 3日 (木)

ドヴォルザーク チェロ協奏曲ロ短調 アリサ・ワイラースタインの新しい名盤

モーツァルトの名曲特集はまだまだ続いているのですが、このところ別ネタ記事が多くなっています。ということで、今回もまた別ネタです。(笑)

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アリサ・ワイラースタイン独奏、イルジー・ビエロフラーヴェク指揮チェコ・フィル(2013年録音/DECCA盤)

ドヴォルザークのチェロ協奏曲って本当に名曲だと思います。あまたの協奏曲の中でも特に優れた曲の一つですね。望郷の寂寥感、ほの暗く激しい情熱、瑞々しい抒情性などが、いかにもドヴォルザークらしい美しい旋律の数々によって織り成されてゆきます。

この曲は、過去に素晴らしい名盤が幾つか有りますので、最近は新しいCDを購入することも滅多に無くなりました。けれども、気になっていた演奏を一つ聴いてみたところ、その素晴らしさにすっかり参りました。川平慈英風に言えば「ムムム!クゥ~!」ってところです。

それは、アリサ・ワイラースタインという1982年ニューヨーク生まれの、まだ30代初めのチェリストの新録音なのですが、これは彼女の2枚目のディスクです。彼女は5年前ぐらいからベルリン・フィルやアメリカのビッグ5、サンクトペテルブルク・フィル、パリ管などの層々たるオーケストラと共演していて大変に注目されているそうです。

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彼女の才能を真っ先に買っていたのがバレンボイムのようです。バレンボイムといえば、悲劇の天才チェリスト、ジャクリーヌ・デュ・プレのかつての夫として有名ですが、どうも女性チェリストと縁が深いようですね。
今回のCDでは、ビエロフラーヴェク指揮チェコ・フィルという理想的な組み合わせと共演をしています。その理由でCDを購入する気になったというのも事実です。

さて、その演奏ですが、驚くほど力強く表現力の豊かなチェロです。男勝りと言っても過言ではありません。その点はデュ・プレと共通しています。テクニックは互角と言って良いでしょうが、ワイラースタインのほうがより丁寧に細部まで完璧に弾いている印象を受けます。歌い回しも素晴らしく美しいですが、幾らか抑制が感じられます。
二人を比べると、デュ・プレの方が本能の命ずるままに弾いている印象なのに対して、ワイラースタインは理知的に弾き込んでいる印象を受けます。
デュ・プレのほうが感情をストレートに激しく表出していますし、情念の濃さもワイラースタインを凌ぎます。ただ、そのデュ・プレの表現が余りに濃過ぎると感じられる人にとっては知と情のバランスが抜群にとれているワイラースタインが理想的となる可能性は充分にあります。

二人の個性の違いに優劣を付けることは不可能でしょう。どちらにしても、この曲の独奏チェロのマイ・フェイヴァリットの一つとなりました。

一方、オーケストラ伴奏に関しては、昨年来日して素晴らしいドヴォルザークを聴かせてくれたビエロフラーヴェクとチェコ・フィルのコンビですので文句無しです。堅実ですが、チェコ・フィルの素朴で美しい音がたっぷりと味わえます。やはりドヴォルザークやスメタナは、チェコもしくはスロヴァキアのオーケストラに限ります。但し、この曲の録音にはズデニェク・コシュラーが同じチェコ・フィルを指揮して堤剛のチェロをサポートした最高の演奏が有りますので、さすがにそれを越えることは出来ませんでした。

チェロ独奏とオーケストラの総合的な魅力で言えば、過去の名盤と充分に肩を並べるディスクだと言えます。

このCDには協奏曲の他に、ピアノ伴奏に寄る小品数曲(歌曲、家路、スラヴ舞曲など)が収められていますが、どれもが心の襞に触れるような美しい演奏です。

ところで、ビエロフラーヴェクはチェコ・フィルと最近ドヴォルザークの交響曲全集を出しましたが、その中にもこの協奏曲の演奏が収められているようです。交響曲全集はチェコ・フィルとしてはヴァーツラフ・ノイマンの二度目の録音以来ですので、これは是非ともいずれ聴き比べてみたいものです。

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ドヴォルザーク(協奏曲)」カテゴリの記事

コメント

今晩は。
ドヴォルザークのチェロ協奏曲ですか。本当に良い曲ですね。私も、フルニエ、ロストロ、デュ・プレ(2種類)持っています。ドヴォルザークにはヴァイオリンやピアノの協奏曲がありますが、いまいちマイナーな曲ですね。メロディ・メーカーであるドヴォルザークにしては少し渋い旋律でできています。それに比べこのチェロ協奏曲は全編メロディに溢れていますね。でも、私は最近殆ど聴いていません。新しいアルバムも買っていません。今持っているので十分だと思っているからでしょうか?
このワイラースタインのアルバムがデッカから出たというのも、時代なのでしょうね。昔ならスプラフォンですね。今ははアーティストを見ても、レーベルと結びつきません。
さて、最近のチェリストは女性が多いですね。チェロという楽器は男性向きかと思われましたが、そうではないようです。最近、「Duo」というタイトルでグリモーと共演している、ガベッタというチェリストがいます。彼女も若いですが、シューマン、ブラームス、ドビュッシー、ショスタコーヴィチとなかなか意欲的な曲に取り組んでいて、いつかドヴォルザークも聴きたいと思っています。

投稿: クレモナ | 2014年7月 3日 (木) 20時37分

ハルくんさん、こんばんは。
偶然にも 昨日 ビエロフラーヴェクの交響曲全集・協奏曲集を注文したばかりです。(笑)
 
全国的に梅雨空みたいですが、7月に入ると ドヴォルザークが聴きたくなります。
チェロ協奏曲ももちろん 大好きな作品です。あの "望郷の念"にも似た 少し哀愁の漂う美しい旋律……。たまりませんね。
CDは デュ・プレのライブ盤、堤/コシュラー盤、A・マイ/ノイマン盤を聴いていますが、やはり チェコ・フィルが演奏したコシュラー盤とノイマン盤を良く聴きます。
(デュ・プレの演奏は感動的ですが、ドヴォルザークの音楽とは 少し違う気がします。)
ワイラースタインとビエロフラーヴェクが どんな演奏を聴かせてくれるのか、ハルくんさんの記事でますます楽しみになりました。

投稿: ヨシツグカ | 2014年7月 3日 (木) 21時55分

クレモナさん、こんばんは。

ドヴォルザークの他の協奏曲と比べても、このチェロ協は群を抜いていますね。
ただ、よほどこの曲に入れ込んでいなければ、お手持ちのCD以上に必要だとは思われないでしょうね。

確かにこのCDもそうなのですが、チェコフィルの交響曲全集がデッカレーベルからとは驚きです。
とどのつまり、世界のレコード会社はユニバーサルとワーナーの二社に集約されてしまったということでしょうか。

ガベッタというチェリストは聴いていませんが、デュ・プレやこのワイラースタインの演奏を聴いていると女流でも全く遜色ありませんね。

投稿: ハルくん | 2014年7月 3日 (木) 23時40分

ヨシツグカさん、こんばんは。

ビエロフラーヴェクの交響曲全集をいち早くオーダーされたとはさすがですね!
そうなんです。ボヘミア音楽が聴きたくなる季節ですからね。良いですよね。

デュ・プレの演奏は昔は”ぞっこん”だったのですが、最近はフルニエや堤さんなんかのほうに惹かれます。デュ・プレだと爽やかさが薄れて熱過ぎに感じるからでしょうね。
堤さんのコシュラー/チェコPOも最高だと思います。

ワイラースタインの協奏曲もですが、交響曲全集のご感想を楽しみにしています。

投稿: ハルくん | 2014年7月 3日 (木) 23時48分

 ハルくんさん、こんばんは。今日は七夕だというのに雨模様で少しがっかりです。
 ドヴォルザークのチェロ協奏曲はフルニエ&セル盤しか持っていません(デュ・プレは借りて聴きました)が、ほとんど満足しているので別の録音を買おうとはしてきませんでした。フルニエのチェロもさることながらセルも素晴らしく、彼ほどソリストにピッタリ合わせる指揮は滅多に望めないのではないかと思います。本当に聴いていて気持ちの良い録音です。
 しかし、当たり前のことですが、演奏家も次々と素晴らしい人が出てくるのですよね。ワイラースタインという名前は初めて耳にしました。フルニエとはタイプが違うようですが、デュ・プレと比較できるほどとなると少し気になります。

投稿: ぴあの・ぴあの | 2014年7月 7日 (月) 21時57分

ぴあの・ぴあのさん、こんばんは。

せっかくの七夕ですが星は全く見えませんね。

フルニエ/セル盤は僕も大好きです。もしも1枚だけ他人に奨めるならば有力候補ですね。
デュ・プレは凄いのですが、記事に書いた通り長短が紙一重というところです。
ワイラースタイン/ビエロフラーヴェク盤はホント良いですよ。機会あれば聴いてみて下さい。

投稿: ハルくん | 2014年7月 7日 (月) 23時01分

またまたお邪魔します。ワイラースタインのCDがオークションに出品されていたので、入札していたのですが、締切まで起きていられなくて、もう少しのところで、残念でした。まあ、思い切って高めの金額を最初に入れておけば良かったのでしょうがね。もしかして、ハルくんさんのブログを見た人が是非聴いてみたいと、入札したのかも知れません。まあ、今度別な場所で探したいと思っています。因みに、落札額は600円台だったと思います。本当に残念でした。
ところで、もう一つの名盤、堤剛/コシュラーは近くのブックオフで250円で購入しました。名曲全集のようなシリーズのものですが、ハイドンのチェロ協奏曲第2番との組み合わせでした。堤剛は昔から知っていましたが、CDを買うのは初めてです。デュ・プレやロストロに比べやや弱弱しい印象で、女流チェリスト?と思わせる印象でしたが、聴きこんでいくと、コシュラーのバックと相まって、これは名演だと感じました。敢えていえば、チェロはフルニエに近いかな?と思いました。何度でも聴きたくなる盤ですね。教えてもらって本当に有難うございました。感謝、感謝です。

投稿: クレモナ | 2014年7月 9日 (水) 06時30分

クレモナさん
いつもコメントありがとうございます。

ワイラースタイン盤、残念でしたね。
オーケストラも録音も良いですから是非聴かれてみてください。

堤さんはデュ・プレやロストロのようなヴィルティオーゾと比べると弱くは感じますが、録音バランスも影響していると思います。実際のコンサートではレコードのようにチェロが突出して大きく聴こえることは有りませんから。堤さんの録音のほうがむしろ生演奏に忠実だと思います。
仰られるように、この演奏は聴き込むにつれて良さがじわりじわりと増してゆくように感じられますね。お気に入られてとても嬉しいです。

投稿: ハルくん | 2014年7月 9日 (水) 09時44分

こんばんは。

聴いてみましたが、優れた演奏だと感心しましたが
残念ながら、感動するには至らなかったのが
正直な感想です。

ソロはまったく文句ないのですが
オケの伴奏にもう少し多彩なニュアンスが欲しいところです。

協奏曲よりもフィル・アップのピアノ伴奏の小品の方が、
この奏者の良さが出ている気がします。

なんにせよ、今後期待の奏者には間違いありませんね。

投稿: 影の王子 | 2015年1月31日 (土) 19時52分

影の王子さん

チェコPOのドヴォルザークですので表情づけは控え目ですが、ローカルの空気感は良く出ていると思います。それでもコシュラー盤の表情、ニュアンス最高の演奏と比べるとやはり負けてしまいますけれど。
ワイラースタインの才能には疑問をはさむ余地は有りませんね。

投稿: ハルくん | 2015年2月 1日 (日) 11時36分

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