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2014年5月18日 (日)

モーツァルト ホルン協奏曲集 名盤

Horn_natural2

モーツァルトのホルン協奏曲集を語るのには、モーツァルトの親しい友人であったホルン奏者のロイドゲープ(本名はヨーゼフ・ライトゲープ)を語らない訳にはゆきません。

モーツァルトよりも20歳ほど年上のロイドゲープは、ザルツブルクの宮廷楽団の名ホルン奏者でしたが、モーツァルトよりも早い時期にウイーンに移りました。それというのも、ロイドゲープの妻の実家のチーズ屋がウイーンに有ったので、それを手伝いながらオーケストラで働いたのです。4年遅れてモーツァルトがウイーンに移ると、二人の間の親交は増々深まりました。

モーツァルトはこの友人ロイドゲープの為に4曲のホルン協奏曲を書きました。かつて4曲には、作曲されたと推測される順番にそれぞれ番号が第1番から第4番まで付けられていました。ところが1980代に入ると学者の研究によって、作曲の順番が大きく訂正されました。かつての曲番号を入れ替えて作曲された順に並べますと、以下の通りになります。

①第2番変ホ長調K417
②第4番変ホ長調K495
③第3番変ホ長調K447
④第1番ニ長調K412

そのために、新全集では曲番号の表記は行われずにケッヘル番号のみとなっています。演奏録音についても1970年代までのものは大半が番号順に並べられていましたが、1980年代以降のものは、作曲順に並べられていたり、番号の表記を行なわないものが多くなりました。

さらに、”第1番”と言われてきたK412は実際はモーツァルトの死の年に書かれた作品で、第2楽章ロンドは未完成だったのを、弟子のジュースマイヤーが書き直したものであることが分かりました。現在ではこのジュースマイヤー版のロンドニ長調はK514とされています。ですので、現在はモーツァルトの未完成楽譜を基に新たに研究補筆したもので演奏されることが多くなりました。なお、良く知られたように初稿楽譜にはモーツァルトの手で五線譜の至る所にロイドゲープをからかうコメントが書き加えられています。このことからもモーツァルトとロイドゲープの親しさをうかがい知ることが出来ますね。

当時のホルンは現代のホルンと違って音程を操るバルブが無かったので、独奏楽器として演奏するのは非常に困難でした。ですので、他の管楽器と比べると、どうしても単調な曲に成りかねません。ところが、モーツァルトは伴奏の管弦楽をとても上手に使って、逆に”狩りの楽器”としてのホルンの魅力と楽しさを余すところなく引き出しています。天才ですね、モーツァルトは本当に。

4曲はどの曲も魅力的ですが、旋律の魅力、充実度から言えばやはりK447(第3番)が頭一つ抜けているように思います。ただ、K412(第1番)がモーツァルトの手で完成されていれば、K447に肩を並べた可能性はあります。

ホルンの為の協奏曲は決して多くは有りませんが、リヒャルト・シュトラウスの”英雄的な”2曲とは全く対照的な、美しく愉悦感に溢れた名作としてモーツァルトの4曲は輝きを放っています。

それでは愛聴盤のご紹介です。

Mozart_brain デニス・ブレイン(Hr)、ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮フィルハーモニア管(1953年録音/EMI盤) 昔、東芝EMIのアナログ盤で聴いた時には音の悪さで話になりませんでしたが、CD化されて随分と音がしっかりしました。ブレインの輝くばかりのテクニックと歌い回しは、やはり一聴に値します。カラヤンの指揮伴奏も意外にゆったりとしたテンポで旋律を甘く歌わせていて素晴らしいです。この曲集の歴史に残る演奏ということでとても価値が有ると思います。

Uccg5269m01dl ギュンター・へーグナー(Hr)、カール・ベーム指揮ウイーン・フィル(1978-80年録音/グラモフォン盤) ”狩りの楽器”あるいは”ウインナーホルン”を連想させる音が魅力的です。ナチュラル・ホルンでなくても、これだけ深い味わいの音が聴けるのですね。ウイーン・フィルの柔らかい音色も非常に魅力的ですが、それをゆったりと風格の有る指揮で支えるベームの芸格の高さが最高です。作曲の順番が訂正される直前の録音ですので、1番から順に並んでいます。

Nhorn05 アントニー・ハルステッド(Hr)、クリストファー・ホグウッド指揮エンシェント室内管(1993年録音/DECCA盤) イギリスの名手ハルステッドによる二度目の録音です。ナチュラル・ホルンでの演奏ですが、非常に上手く吹きこなしているのに驚かされます。表情の豊かさ、細やかさに感心します。また、しばしば現れる大胆に音を割った思い切りの良さも快感です。ホグウッドが指揮する管弦楽は清純な音が魅力的ですし、リズムもキビキビしていて古楽器演奏としてはおよそ理想的だと思います。

ということで、この三つの演奏はどれも特徴と魅力が有るので順番を付けるのは不可能です。

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モーツァルト(協奏曲:管楽器)」カテゴリの記事

コメント

ハルくんさん、こんばんは。
ホルン協奏曲というと 私は なぜか "夏の朝の風景"を思い浮かべます。 というのも、「K.412」の出だしを聴くと、夏休みの"ラジオ体操の歌"に聴こえてくるからです。(笑)
(似てると思いませんか?)
まぁ、いずれにしても、爽やかな名曲達ですよね。
CDは、ヘーグナー/ベーム盤、ダム/ブロムシュテット盤、古楽器の グレア/マギーガン盤で聴いていますが、やはり ペーター・ダムのホルンは素晴らしいです。

投稿: ヨシツグカ | 2014年5月18日 (日) 20時34分

やはりデニス・ブレインはうまいです。カラヤンの指揮も後年と違ってソリストを引き立てる演奏で素晴らしいと思います。勝手にカラヤンも権力を得て全部自分でやりたいと思うようになってしまったのかな、と思っています。
ご存じかもですが、49年のウラッハとのクラリネット協奏曲(EMI,オーパス)も名演ですよ。

投稿: ボナンザ | 2014年5月18日 (日) 21時13分

ヨシツグカさん、こんにちは。

「K.412」の出だし=夏休みの"ラジオ体操の歌"説ですか。うーん、なるほど。
英ネイチャー誌に論文投稿してみますか?(笑)

ペーター・ダムの音は大好きですが、この曲のCDは持っていません。次回購入するときの候補には含めたいですね。ありがとうございます。

投稿: ハルくん | 2014年5月19日 (月) 00時27分

ボナンザさん

デニス・ブレインの上手さは最高ですね。
カラヤンも良いですし、曲が適しているのだと思います。
クラリネット協奏曲はホルン協奏曲ほどはカラヤンに適していないような気がします。ウラッハはもちろん素晴らしいのですが。

投稿: ハルくん | 2014年5月19日 (月) 00時32分

ヘルマン・バウマンのホルン
アーノンクール指揮
コンツェントゥス・ムジクス・ヴィーン
盤で聴いています。

R.シュトラウスの2曲もそうですが
ホルンの音色って、どうしてこう幸せな
気持ちにさせてくれるのでしょうか?

やはり第3番はいいですね!

投稿: 影の王子 | 2014年5月19日 (月) 22時47分

影の王子さん

ヘルマン・バウマン盤は持っていませんが、ナチュラルホルンの先駆けの演奏だったので随分と話題に成ったのを覚えています。聴いてみたいですね。

ホルンの音は神経質なところが無いのでホントに愉しいですね。

投稿: ハルくん | 2014年5月20日 (火) 13時11分

ふだんはブレインを聴いていますが、どれも素晴らしい演奏ですね。気持ちの良い曲です。

投稿: かげっち | 2014年5月26日 (月) 12時43分

かげっちさん

クラリネット、ホルン、ヴィオラ、いずれも中音域をカバーする”中間管理職”のような楽器ですね。これらの楽器奏者には強く我を押し通すタイプは余り居ないような気がするのですが。
そんなホルン奏者の性格ピッタリの曲ばかりです。

投稿: ハルくん | 2014年5月26日 (月) 14時38分

おはようございます。

前月のTVで、バボラークのソロによる
第1番の「レヴィン補筆版」を聴きました。
問題の第2楽章は、曲想こそ変わりませんが
実に陰影の濃い、落ち着いた音楽に変貌していました。
「補筆」というより、よりモーツァルトらしく「改造」した感じです。
まぁ、これは「好みの問題」になりますが
僕は気に入りました。

投稿: 影の王子 | 2015年9月22日 (火) 08時11分

影の王子さん、こんにちは。

レヴィンの版は原曲に忠実のようにも言われていますが実際はどうなのでしょうね。
ジュースマイヤー版も悪い訳では無いですし楽しめます。
作曲者の未完成曲は結局のところどれも「本物」ではないので、仰る通り「好み」で聴いて居れば良いものだと思っています。

投稿: ハルくん | 2015年9月22日 (火) 11時32分

ハルくんさん、お久しぶりです。
モーツァルトというとホルン協奏曲第2番第1楽章の冒頭オケのメロディを思い起こします。
というのは、私の幼少期、80年代後半から90年代の前半、ゼクシィかなブライダルのCMかで、流れていた記憶がありましたので。フィガロの結婚、ピアノソナタ第16番第1楽章冒頭K545と並んで
聴いていたメロディでして。知ったのは、つい2週間ほど前です。
2週間ほど前youtubeで聴いた、ディル・クレヴェンジャー独奏ヤーノシュ・ローラ指揮リスト室内管弦楽団の演奏です。
リンクは、https://www.youtube.com/watch?v=-YF14AD3YXM

ここから入り、youtubeでも色々と聴いて、ピンと来なくて、もっと深く聴いてみたいと思い手に取ったのは、ベーム指揮ヘーグナー独奏ヴィーンフィル演奏のものと先日引退宣言したアーノンクール指揮ヘルマン・バウマン独奏コンツェントゥス・ムジクス・ヴィーン演奏デス。
デニス・ブレインをネット上で聴いてパスした理由は、クレヴェンジャーと比較してテクニックに差を感じず、明るくまろやかなトーンが似た印象であったからです。アメリカスタイルの方が、暗くくすみがちとのことですが、リンクの演奏は、そういう印象はありませんでした。
アーノンクール、ヘルマン・バウマンがことの他好印象でした。ホルン協奏曲は、クレヴェンジャーもナチュラル・ホルンに挑んでいますが、安定感、歌わせ方は1枚上手で、世界一と称されたのも納得。ヘルマン・バウマンが収録していない曲以外が蚊帳の外に。ヘルマン・バウマンは、贅沢を言えば、伴奏が。ヴィーンフィルであれば、ヘーグナーもナチュラル・ホルンを聴くとナチュラル・ホルンのための作品だなと思えてきたリ。伴奏も、ベームよりクリップスの方が、ヴァルター流の歌心と、家父長的結束とルービンシュタインのピアノ協奏曲で魅せたいい意味での緊張感が両立できたかも等。それでも、リズムにキレがない代わりに、美音に振り切った伴奏は、不思議と安らぎと落ち着きと多幸感を与えてくれるように思えてきます。遺作であるホルン協奏曲第1番は、クラリネット協奏曲とことなり、ライトゲープに合わせて、長調なのに物悲しいがない、清澄に思えてきますが、楽天的で屈託のない明るさが印象的です。明るくても悲しいは、モーツァルトの特徴で、フルートとハープのための協奏曲にも感じてしまうのですが、この一連の協奏曲及びホルン5重奏曲は、感じません。アクセントで短調になるときもあるのに不思議ですね。ホルンの音色の影響かもしれませんね。気が付けばもともとホルン好きでしたが、ソロもいいなと思えるようになりました。長くなりましたが以上です。

投稿: Kasshini | 2015年12月15日 (火) 11時24分

Kasshiniさん、ご無沙汰しました。
お元気そうで何よりです。

モーツァルトの協奏曲はどの楽器を使用しても本当に天才的な閃きを感じますね。
この曲集の楽しさは格別です。
ホルンを演奏する方にとってもまたとない贈物になったのではないでしょうか。

投稿: ハルくん | 2015年12月22日 (火) 00時29分

リゴレットさん
ブレイン&カラヤン盤、2C051-00414と言う番号のフランスPathe盤LPで、今も所持しております。全く、日本のクラシック・ファンのLP棚やCDラックに、何枚行き渡っているのか…と思うくらいの人気盤じゃ、ないでしょうか。
ウォルター・レッグの製作したアルバムでは、デ・サバータ&カラスの、プッチーニのトスカと並ぶ金字塔で、ありましょう。

投稿: リゴレットさん | 2018年4月23日 (月) 06時32分

リゴレットさん

ブレインのホルンはいま聴いても魅力的ですし、やはりこれはエヴァーグリーンのレコードですね。

投稿: ハルくん | 2018年4月23日 (月) 16時11分

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