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2014年5月14日 (水)

モーツァルト フルート協奏曲&オーボエ協奏曲 名盤

Flute_and_obe

モーツァルトは父レオポルトへ送った手紙の中で、「嫌いなフルートのために曲を書くのは苦痛です。」と書いています。どうやらお気に入りの楽器ではなかったようです。ところが、実際は「フルートとハープの為の協奏曲」や「フルート四重奏曲集」、あるいは歌劇「魔笛」のようにフルートが大活躍する傑作を幾つも書いています。楽器の好き嫌いとは別に名曲を書き上げてしまうというのは、正に”プロフェッショナル”の仕事だと言えますね。

そんなモーツァルトが独奏フルートのために書いた協奏曲が2曲存在します。

フルート協奏曲第1番ト長調K.313
フルート協奏曲第2番ニ長調K.314

この2曲は、モーツァルトがマンハイム=パリ旅行中に知り合った、外科医で裕福な音楽愛好家のドジャンから、フルートのための”協奏曲”と”四重奏曲”の注文を受けたために作曲をしました。第1番も良い曲ですが、第2番の魅力の方が上回っている様に感じます。但し、この第2番は既作品である「オーボエ協奏曲ハ長調」に僅かに変更を加えて移調しただけの作品です。

オーボエ協奏曲ハ長調K314

20世紀に入るまでは、フルート協奏曲の第2番と、どちらが先に書かれた曲なのかが謎とされていましたが、現在ではマンハイムのオーボエ奏者に提供したオーボエ協奏曲ハ長調のほうが先だったことが判明しています。もっとも、これも新曲では無く、原曲はザルツブルク時代に書かれた作品だと推測されています。

それはともかくとして、このような場合に大抵はオリジナルの方が魅力的であるケースが多いように思うのですが、この作品に関しては全くの互角。いずれかの楽器を自分で演奏する人でも無い限りは、軍配を上げるのにとても迷うのではないでしょうか。そこでモーツァルトを愛する人は、それぞれの曲を奏でる楽器の音色の違いを味わい楽しむことが出来ます。この曲は、例えてみれば”1つぶで2度おいしい”アーモンド・グリコのような作品ですね。そう言えば、グリコはお菓子も食品も、まろやかな味付けが得意ですからね。モーツァルト=グリコ説。新しい論文をネイチャー誌に投稿しましょうか??

ということで愛聴盤のご紹介ですが、やや変則的に成ります。

Mozart038フルート協奏曲第1番ト長調K.313
フルート協奏曲第2番ニ長調K.314
オーボエ協奏曲ハ長調K314

ヨハネス・ワルター(Fl)、クルト・マーン(Ob)、ヘルベルト・ブロムシュテット指揮シュターツカペレ・ドレスデン(1973年録音/キングレコード:シャルプラッテン原盤)
フルート協奏曲2曲とオーボエ協奏曲が収められていて便利です。しかもどちらもこの名楽団の首席奏者が独奏を務めています。それにしてもヨハネス・ワルターのフルートが実に美しいです。まるで木製のような滋味溢れる音色が心に浸み入って来ます。現代的なテクニックと古楽器の魅力を兼ね備えたかのような印象です。クルト・マーンのオーボエも同様の傾向で派手さは有りませんがやはり素晴らしいです。但し、ワルターのフルートの方が魅力において勝るような気がします。ブロムシュテットはオーケストラの典雅で美しい響きを生かして独奏を見事に支えています。

1197081051フルート協奏曲第1番ト長調K.313
オーボエ協奏曲ハ長調K314

ヴェルナー・トリップ(Fl)、ゲルハルト・トレチェク(Ob)、カール・ベーム指揮ウイーン・フィル(1974年録音/グラモフォン盤)
オリジナルのフルート協奏曲1番とオーボエ協奏曲との組み合わせですが、他にK299が収められています。トリップとトレチェクのそれぞれの美しい音と独奏は曲の魅力を十二分に引き出していて申し分ありません。それをウイーン・フィルの甘く柔らかい音が包み込んでいます。ベームの指揮はギャラント風の華やかさは有りませんが、ゆったりとした風格が有ります。若きモーツァルトの演奏としては立派過ぎるという批評は有るでしょうが、ここにある音楽の深みは実に得難いと思います。特に幾らかレガート気味に奏されるオーボエ協奏曲での美しさは尋常ではありません。

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フルート協奏曲第2番ニ長調K.314

ペーター=ルーカス・グラーフ(Fl)、レイモンド・レッパード指揮イギリス室内管(1984年録音/クラ―ヴェス盤)
フルート協奏曲2曲として収録されています。フルートの音の粒立ち、輝かしさで言えばランパルの右に出る人は居ないように思いますが、演奏によっては饒舌に感じる場合が有ります。逆にニコレはモーツァルトには生真面目過ぎるように感じます。その点、グラーフは太めの音で逞しいですが、饒舌さを感じることは有りません。この2曲でも豊かな表現力とギャラント風の華やかさを持ちながら、落ち着いた風情をも感じさせる素晴らしい演奏です。若きモーツァルトの演奏として完全無欠の名演奏ではないでしょうか。レッパード/イギリス室内管の伴奏も緻密で美しく非常に素晴らしいです。

どのディスクも魅力的なのですが、好みで選べば、フルート協奏曲としてはワルター/ブロムシュテット盤とグラーフ/レッパード盤が互角。オーボエ協奏曲としてはトレチェク/ベーム盤を取りたいと思います。

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コメント

ハルくんさん、こんばんは。
モーツァルトが「フルートが嫌い」と書いていますが、当時のフルートが 音程が安定せず、彼を満足させるような演奏が出来なかった事がひとつの原因だったのかも知れませんね。
フルートを伴う作品は結構書いていますし、実際に聴いていると ホントはそんなに嫌いじゃないのかも……と思えてきます。
オーボエ協奏曲を編曲した フルート協奏曲第2番など、編曲物として匹敵するのは ブラームスの晩年の"あの"クラリネット→ヴィオラの名品しか思いつきません。
(なんと美味しいグリコなのでしょう…。(笑))
CDは オーボエ協奏曲が トレチェク/ベーム盤(私のCDのカップリングは、ファゴット協奏曲とクラリネット協奏曲です) と ホリガー/マリナー盤、フルート協奏曲は ランパル/グシュルバウアー盤と グラーフ/レッパード盤で聴いています。

投稿: ヨシツグカ | 2014年5月15日 (木) 22時17分

ヨシツグカさん、こんにちは。

オペラ「魔笛」の時には曲を書いていて愉しくて仕方が無かったように思えますものね。あそこには確かにフルートに「愛」を感じます。

ホリガー/マリナー盤、ランパル/グシュルバウアー盤は所有していませんが、このクラスの演奏家を聴いて愉しめないことは絶対に有りませんね。

投稿: ハルくん | 2014年5月16日 (金) 15時57分

「嫌いなフルート」というのは特定の奏者のことだったのかもしれませんし、それまで良い奏者に恵まれなかっただけかもしれませんね。ウィーンフィルのオーボエは楽器の型やリードが他のドイツ圏と異なるので、その特徴について好みが分かれるかもしれませんが、この曲については特徴が非常にプラスに出ていると思います。

投稿: かげっち | 2014年5月26日 (月) 12時47分

かげっちさん

「嫌いなフルート」という理由は段々そんな風に思えてきましたね。良い演奏家の音はやはり素晴らしいですからね。

ウイーンのオーボエは良いですね。少なくともウイーンの音楽家の曲の演奏では本当に魅力的ですね。

投稿: ハルくん | 2014年5月26日 (月) 14時48分

三度こんにちは。

送料無料にすべく笑、パドヴァのゴルトベルクと同時購入したのが、トレチェク/ベーム/VPOの西ドイツ盤です。

オーボエの入りで、自分にクラシックへ向かうキッカケのひとつ「のだめ」で使われた曲と判りました。

>レガート気味に奏されるオーボエ協奏曲での美しさ

重心も低くて柔らかく美しいオーボエ、まさにVPOな厚み...最高です。

投稿: source man | 2015年2月28日 (土) 16時40分

source manさん、こんにちは。

送料無料の為の”おまけ”(苦笑)にしては勿体無さ過ぎる名演奏ですよね。オーボエのソロも美しいですが、なんと言ってもベーム/VPOの素晴らしさですね!

投稿: ハルくん | 2015年3月 1日 (日) 13時19分

こんばんは。

オーボエ協奏曲はR.シュトラウスも名作ですね。
名手・ホリガーで聴くと、とろけそうです。
20世紀でこのような曲が作られたとは!
この曲の他、ホルン協奏曲第2番、メタモルフォーゼン
4つの最後の歌、と晩年のシュトラウスは珠玉の名作揃いです。

投稿: 影の王子 | 2017年5月 9日 (火) 20時30分

影の王子さん、こんにちは。

そういえばR.シュトラウスのページ無かったですね(苦笑)。
もちろん嫌いなわけでは無く、ただ優先順から言えばやや下がるのです。
「ばらの騎士」「4つの最後の歌」「英雄の生涯」「死と変容」あたりは特に好きですけど。

オーボエ協奏曲は良いですね。私はケンぺ/SKD盤で吹くマンフレート・クレメントが好きです。この人も本当に上手いと思ます。

投稿: ハルくん | 2017年5月10日 (水) 12時40分

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