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2014年4月 8日 (火)

モーツァルト モテット「アヴェ・ヴェルム・コルプス」 K.618 名盤

Sky

『音楽は、より単純素朴で、かつ純粋な美しさを持っているものが、最終的には人を最も深く感動させるのではないか。音楽を聴く時、いつもそんなふうに思っている。』 渡邊學而氏が本の中でこのようにお書きになっていました。

自分が宗教音楽を聴くときに、往々にして技術的に優れた大人の合唱団よりも清純な歌声の少年合唱団を好むのも正に同じ理由からです。

もちろん曲についても全く同じことで、モーツァルトのモテット「アヴェ・ヴェルム・コルプス」K618などは、それがそのまま当てはまる典型ではないかと思います。

モーツァルトがウイーンに移った後に書いた宗教音楽は僅かに3曲ですが(もう1曲有るという説も有ります)、未完成に終わった大作「大ミサ曲」「レクイエム」がそのうちの2曲で、残る1曲が僅か46小節のモテット「アヴェ・ヴェルム・コルプス」K618です。これは、モーツァルトが亡くなる半年前にコンスタンツェの静養先であるバーデンを訪れたときに、当地の合唱指揮者アントン・シュトルに贈った曲です。

「アヴェ・ヴェルム・コルプス」

めでたし、処女マリアより生まれ
人々のために十字架にかかりて犠牲となり給えし御身よ
御わき腹は刺し貫かれ血と水を流し給えり
願わくば死の審判の時にあたり我らに御身を受けしめ給え

この曲はモーツァルト最晩年の死を前にした「彼岸の境地」を示しています。静寂に包まれた深い祈りが感動的です。それは澄み渡った青空を見上げたときに感じるあの気持ちと良く似ています。モーツァルトのファンであれば誰しもが、この曲にクラリネット協奏曲K622の第2楽章を想い重ねることだろうと思います。

それでは愛聴盤のご紹介です。

01333 ゲルハルト・シュミット=ガーデン指揮ヨーロッパ・バロック・ソロイスツ、テルツ少年合唱団(1990年録音/SONY盤) もちろん少年合唱は大好きですし、モーツァルトはウイーン風の柔らかい歌が合っていると思います。ただ、この彼岸の曲の場合には、ウイーン少年合唱団だと、ちょっと「声で歌われている」印象を受けてしまいます。その点で、テルツ少年合唱団の方が、この曲の雰囲気には適しているように思います。何とも美しい讃美歌です。

Cci00036 ペーター・ノイマン指揮コレギウム・カルトゥジアヌム、ケルン室内合唱団(1990年/ヴァージン盤) ペーター・ノイマンのモーツァルト宗教曲選集に収録されています。この曲の場合には、必ずしも少年合唱が向いているという気はしません。むしろ「人の歌声」から離れた、天に漂う澄んだ空気のような雰囲気こそがこの曲の核心では無いでしょうか。どこまでも静寂に包まれていて、演奏効果をこれっぽっちも感じさせないノイマンの素晴らしい演奏には称賛の言葉さえも白々しくなりそうで躊躇われるほどです。

51rfit8heml シギスヴァルト・クイケン/ラ・プティット・バンド、オランダ室内合唱団(1985年録音/ドイツ・ハルモニア・ムンディ盤) バッハの演奏のイメージの強いクイケンも素晴らしいモーツァルトを聴かせてくれます。美しいコーラスはノイマン/ケルン室内合唱団と優劣を付けるのが難しいほどです。個人的には抑揚の少ないノイマン盤を好んでいますが、クイケン/オランダ室内合唱団の歌を好む方も多いかもしれません。

Mozart_sacredmusicニクラス・アーノンクール指揮ウイーン・コンツェントゥス・ムジクス、アーノルド・シェーンベルク合唱団(1986年録音/テルデック盤) アーノンクールのモーツァルト宗教曲全集に収録されています。優秀なアーノルド・シェーンベルク合唱団も素晴らしいと思います。ですが、ノイマンのケルン室内合唱団に比べると、やはり人間の声で歌われている印象を受けてしまいます。単純素朴な演奏で人を感動させることの難しさをつくづく感じます。

ということで、マイ・フェイヴァリットはペーター・ノイマン盤ですが、少年合唱で聴きたい場合にはシュミット=ガーデン盤です。

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モーツァルト(声楽曲)」カテゴリの記事

コメント

ハルくんさん、こんばんは。
この、僅か3分足らずの作品には、モーツァルトの宗教音楽の"粋"を凝縮したような時間が流れています。
それは、"良く晴れた秋の日の どこまでも高い 青空" や "ふと、見上げた冬の日の 澄み切った夜空に またたく星々" のような 優しくも、凛とした感動を与えてくれます。
私は この曲を聴くたび 涙が流れそうになります。
この曲 演奏が本当に難しいようですね…。
P・ノイマンの全集BOXを入手して 毎日聴いています。なるほど 素晴らしい全集ですね。私は モーツァルトの ミサ曲が益々好きになりました。
しかし、このK・618、私には クイケンとオランダ室内合唱団の 包み込まれるような演奏が忘れる事ができません。

投稿: ヨシツグカ | 2014年4月10日 (木) 21時00分

ヨシツグカさん、こんばんは。

>"良く晴れた秋の日の どこまでも高い青空"

自分も正に同じような言葉で、クラリネット協奏曲やピアノ協奏曲第27番について表現したことがありました。
モーツァルトの最高の姿がここには有りますね。

クイケンとオランダ室内合唱団の演奏・・・ついノイマンを取り出してしまう為に忘れていました!(汗)
ノイマン盤の方が「人間の歌声に感じられない」ので好んではいますが、それはもしかしたら録音の影響も有るかもしれません。クイケン盤も本当に美しく素晴らしいです。
さっそく記事に追記しました。どうもありがとうございます。

投稿: ハルくん | 2014年4月11日 (金) 00時15分

ハルくん様
モーツァルト名盤案内本でH・I様が、この作品は選ばれた天才的な資質を持つ演奏家によってのみ、その魅力が明らかにされるといった物ではない。音程が正しく取れる合唱団体なら、美しく演奏することができる。だから、レコード店の店頭で、『アヴェ・ヴェルム・コルプスのCDは、ありますか?』と、言うだけで良いのではないか?と、仰有ってましたです。

投稿: リゴレットさん | 2018年5月28日 (月) 09時33分

リゴレットさん

まあ店頭に並ぶぐらいのCDであれば失敗することは無いのでしょうが、どのCDで聴いても同じということにはならないと思います。
その著者さんにとっては同じだったのでしょうけれども。

投稿: ハルくん | 2018年5月28日 (月) 12時45分

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