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2014年4月27日 (日)

モーツァルト ヴァイオリン協奏曲第4番ニ長調K.218 名盤

モーツァルトのヴァイオリン協奏曲第4番は、フランス的なギャラント・スタイルの第3番に続いて作曲されましたが、前作に比べると幾らかドイツ・オーストリア的な色彩が強くなりました。とは言え、やはり若きモーツァルトの作品だけあって、非常にチャーミングなことには変わり有りません。個人的には第3番と第5番が特に好きなのですが、第4番にもやはり惹かれます。この曲は第1楽章冒頭に登場する旋律から、よく「軍隊」の名で呼ばれます。

第1楽章アレグロ 冒頭の提示部の管弦楽による第1主題の勇壮な旋律が軍隊ラッパを想わせるのが、「軍隊」の呼び名の起こりです。但し、この主題が曲中で展開して使われることは無く、全体的には”軍隊”と言うには余りに華麗です。

第2楽章アンダンテ・カンタービレ ”セレナード”にでも使われそうな落ち着いた雰囲気のアンダンテですが、独奏ヴァイオリンは淡々としていながらも魅惑の極みです。

第3楽章ロンド 優雅さの有る軽やかなロンドですが、中間で出てくる変奏曲がとてもチャーミングで魅了されます。

それでは、愛聴盤をご紹介します。

Ferras8c_2 クリスチャン・フェラス独奏、アンドレ・ヴァンデルノート指揮パリ音楽院管(1960年録音/EMI盤) フェラスの弾くモーツァルトは本当に魅力的です。彼の清潔感の漂う美しい音は若く美しいパリジェンヌを連想させます。それは、まだ男性を手玉に取るような術を覚える前の初々しさを感じさせます。ヴァンデルノートの伴奏もまた、若く誠実な青年のようであり、”パリの散歩道”をピタリ寄り添ってエスコートしている雰囲気です。2楽章ではそんな二人が甘く恋を語らっているかのようであり、とても幸せな気持ちになってしまいます。いやぁ、若いっていいなぁ。これはEMIのボックスです。

61rtc442gfl アルトゥール・グリュミオー独奏、コリン・デイヴィス指揮ロンドン響(1962年録音/フィリップス盤) グリュミオーの弾くモーツァルトも実に魅力的です。やはり若い美人パリジェンヌを連想させますが、フェラスよりも艶っぽさがずっと増しています。この辺りは好みでしょうが、オトコとしては両方とも彼女にしたいところです。デイヴィスの伴奏は毅然とした立派なもので、正に青年将校のような風格が有り「軍隊」らしさが出ています。当時のフィリップスのアナログ録音は非常に柔らかく美しいです。

41wcfg0pb0l ヴォルフガング・シュナイダーハン独奏、指揮ベルリン・フィル(1965-7年録音/グラモフォン盤) ウイーン出身のシュナイダーハンとベルリン・フィルの組み合わせですと、パリの空気がすっかり消え去さって、ドイツ/オーストリア風に聞こえますが、こちらのほうがこの曲の本来の姿ではあるでしょう。特にシュナイダーハンのヴァイオリンがウイーン風に柔らかく奏でられていて素晴らしいです。2楽章などはさしずめ、”ウイーンの森での語らい”です。これだけのソロを聴かせられる人が果たしてその後のウイーンに現れたでしょうか。

51fi6elzyl モニカ・ハジェット独奏、指揮エイジ・オブ・インライトゥメント管(1993年録音/ヴァージン盤) ハジェットにしては表現が控え目で端正な演奏です。古楽器による演奏としては充分に満足できる出来栄えなのですが、彼女であれば更にモーツァルトらしい自由奔放さと愉悦感を期待してしまいます。2楽章の歌も余りに淡々とし過ぎていて食い足りなさを覚えます。但し、オーケストラの響きは古雅でとても美しく文句無しです。

ということで、この曲のマイ・フェイヴァリットとしては、”パリの散歩道”のクリスチャン・フェラス盤と”ウイーンの森”のヴォルフガング・シュナイダーハン盤、ズバリこの二つです。

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モーツァルト(協奏曲:ヴァイオリン)」カテゴリの記事

コメント

ハルくんさん、こんばんは。
冒頭部分に登場する "軍楽調"のメロディーは当時流行していた"トルコ風"と言う事でしょうね。
モーツァルトとしては「ためしに入れちゃいましたscissors」(笑)的な、ノリだったのではないのでしょうか。
この曲と続く"第5番"は スケール感も少し大きくなり、ただのギャラント趣味ではない魅力がありますね。CDは グリュミオー盤しか持ってないので(これも十分美しいです。)、外の演奏でも聴いてみようと思います。

投稿: ヨシツグカ | 2014年4月27日 (日) 18時56分

ヨシツグカさん、こんばんは。

>「ためしに入れちゃいました」
まさに、そんな感じですよね。(笑)
3~5番の3曲はどれもイイですよね。
ホント好きだなぁ。

グリュミオーの演奏はどの曲も素晴らしいので、それだけでも充分満足できますが、他にも全集だとシュナイダーハンとかハジェットはとても気に入っています。

投稿: ハルくん | 2014年4月27日 (日) 23時40分

 ハルくんさん、こんばんは。
 モーツァルトのヴァイオリン協奏曲はあまり熱心に聴いたことがなく、私もヨシツグカさん同様にグリュミオー盤しか聴いたことがありません。しかし、この録音の頃のグリュミオーの音は素晴らしいですね。それだけで魅了されてしまいます。
 シュナイダーハンの演奏はゼーマンと組んだヴァイオリン・ソナタが素晴らしい名演だったので、余裕があれば聴いてみたいところです。

投稿: ぴあの・ぴあの | 2014年4月27日 (日) 23時45分

ぴあの・ぴあのさん、こんにちは。

このころのグリュミオーは本当に素晴らしいですね。フランス風の明るい音色が抜群です。

シュナイダーハンも大好きなヴァイオリニストで、ゼーマンとのソナタはとても良いですね。
グリュミオーよりもウイーン風のしっとりした音色なところに惹かれます。

投稿: ハルくん | 2014年4月28日 (月) 11時24分

モーツァルトのヴァイオリン協奏曲では
この第4が一番良いと思います。
溌溂として愉しいからです。

カルミニョーラ&アバド盤がそうした意向で気に入ってます。

もっとも、このコンビの全集は第3と第5が今一つなので
お薦めはしませんが…

投稿: 影の王子 | 2014年4月29日 (火) 21時50分

影の王子さん

モーツァルトのヴァイオリン協奏曲の3~5番の魅力はどれも拮抗していますが、完成度では5番を取りたいと思います。
ただ、4番も良いですねぇ。僕は2楽章アンダンテが非常に好きです。

カルミニョーラ&アバド盤は聴いていませんが、カルミニョーラのバロック演奏からすると、きっと自由奔放なのでしょうね。もっともアバドの伴奏だと余り自由に弾くことは出来ないのかな。
機会あれば聴いてみたいですね。

投稿: ハルくん | 2014年4月30日 (水) 12時31分

ハルくんさん、こんにちは。
楽しみにしていた シュナイダーハン盤を聴いてみました。
まず、ベルリン・フィルの重心の低い"カッチリ"とした響きが如何にもドイツ的で惹きつけられます。これは、なかなか良いですねぇ。 そこに シュナイダーハンのウィーン風のソロが絡んで とても素晴らしいです。
こうしたスタイルは やはり第4番や5番に合っていると思います。
特に この「第4番」は愛聴盤のグリュミオーの演奏よりも「良いな…」と感じました。(第3楽章など、ホント素晴らしいです。)
グリュミオー盤とシュナイダーハン盤の聴き比べは 私にとって とても有意義な時間になりました。

投稿: ヨシツグカ | 2014年5月 4日 (日) 13時13分

ヨシツグカさん、こんにちは。

シュナイダーハン盤、聴かれたのですね。
この演奏には正にドイツ・オーストリアを感じますよね。
フランス的なグリュミオー盤と対比して聴くには最上の組み合わせだと思います。
ご満足されたようですのでとても嬉しいです。

投稿: ハルくん | 2014年5月 5日 (月) 10時57分

ハルくんさん、はじめまして。

時々お邪魔させていただき、色々勉強させていただいております。。

私も4番の2楽章がとても好きです。
私は、オイストラフ/ベルリン・フィルで聴いていますが...
初めて2楽章を聴いた時に、瞬時に恋人達の優しく穏やかな語らいが浮かび....一昔前を想い出しました。。
モーツァルトのバイオリンコンチェルトは何枚か聴きましたが..オイストラフの語らいがなんとも優しく温かく..大好きな一枚になっています。

今回こちらにお邪魔させていただき、シュナイダーハン盤も是非聴いてみたいと思いました♪

またお邪魔させていただきます。。

投稿: mina. | 2014年5月 8日 (木) 14時26分

minaさん、はじめまして。
コメントに参加頂きまして大変嬉しく思います。

4番の2楽章って淡々としているのですが、とっても良いですよね。大好きです。

>恋人達の優しく穏やかな語らい
そう、それそれ。全く同じ印象です。

オイストラフ/ベルリン・フィル盤は未購入ですが、ちょっと聴いてみたくなりました。ご紹介ありがとうございます。

シュナイダーハン盤は入手性がそれほど良くないかもしれませんが、是非お聴きに成られてください。オイストラフとは異なる魅力がきっと有ると思いますよ。

また、いつでもお気軽にコメント下さい。楽しみにお待ちしています。

投稿: ハルくん | 2014年5月 8日 (木) 15時58分

ハルくん様
モーツァルトのVn協奏曲では、女性アーティスト好きの貴殿から藤川真弓のソロをW・ウェラーがサポートした、英国Deccaのディスクの御意見をお伺いしたいですね。
クレーメル&アーノンクールのDG盤は、さっぱり食指が動かないですね(笑)。某評論家が、21世紀の未来都市で奏でられるようなモーツァルトで、あと半世紀もすればこのCDも神格化されるであろう…と、書いていらっしゃいましたが…。

投稿: リゴレットさん | 2018年4月19日 (木) 01時00分

リゴレットさん

私は女性のアーティストが好きなわけではありません。単に女性が好きなだけです(笑)

だからというわけでもありませんが、藤川真弓盤は残念ながら聴いていません。

クレーメル/アーノンクール盤は聴いたことが有りますが、あれはあれで結構気に入りました。

投稿: ハルくん | 2018年4月19日 (木) 12時51分

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