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2014年4月22日 (火)

モーツァルト ヴァイオリン協奏曲第3番ト長調K.216 名盤

Mozart1

モーツァルトのヴァイオリン協奏曲は全部で5曲有りますが、第1番が書かれた翌々年に残りの4曲がまとめて書かれました。ですので、ほぼ同時期に書かれたことになりますが、曲の充実度においては第3番以降の3曲が圧倒的に優れています。モーツァルトの熱烈な愛好家としても知られたアインシュタインは、作品評については結構辛口ですが、この3曲については「モーツァルトの精神が生きている」と賛辞の言葉を記しています。

そのうちの第4番と第5番にはドイツ的な要素も感じられるため、最もフランス的で純粋なギャラント・スタイルの傑作が第3番ということになります。本当にチャーミングで、心から愛さずにはいられない作品です。

第1楽章アレグロ 冒頭から飛び出す第1主題が非常に印象的で、ヴァイオリンが提示部の後に再び第1主題を奏でますが、それだけでこの曲のとりこに成ってしまいます。

第2楽章アダージョ フランスの影響を受けた甘く夢見るような音楽の魅力に溢れていて、モーツァルトを聴く喜びに浸り切れます。

第3楽章ロンド、アレグロ やはりフランス風ですが、中間部で登場するアンダンテとアレグレットのチャーミングなことといったらありません。

51cjgczl1jl クリスチャン・フェラス独奏、カール・ミュンヒンガ-指揮シュトゥトガルト室内管(1954年録音/テスタメント盤) 昔、海外デッカのアナログ盤で愛聴した演奏です。モノラル録音とは思えない豊麗な音に耳を疑いました。これは最近テスタメントがリマスターしたCDですが、音の魅力はほぼ再現されています。ゆったりしたミュンヒンガーの伴奏に乗って、フェラスがこぼれるような美しい音と若々しい表情で曲を堪能させてくれます。いまだに魅力を失わない全くもって素晴らしい演奏です。

Cdh7649042 ウイリー・ボスコフスキー独奏、カール・シューリヒト指揮ウイーン・フィル(1960年録音/EMI盤) これはザルツブルク音楽祭でのライブ録音です。シューリヒトのテンポは意外にゆっくりで、ボスコフスキーが更にのんびりとした甘いウイーン節を奏でています。確かに古き良き時代のウイーンを感じさせますが、反面ギャラント風の味わいが消えてしまっていて多少戸惑います。録音は当時のライブとしては水準以上ですが、音色がどうしてもモノトーンに感じられるのが弱点です。

61rtc442gfl アルトゥール・グリュミオー独奏、コリン・デイヴィス指揮ロンドン響(1961年録音/フィリップス盤) この録音当時のグリュミオーは最高でした。明るく美しい音色に加えて、ヴィブラートやトリルなどの装飾音のセンスの良さには溜息が出ます。デイヴィスの若々しく切れの良いオーケストラ伴奏に乗ってヴァイオリンが自由自在に駆け回っていて、若きモーツァルトの最良の姿と言えます。ギャラント風の演奏として最右翼の一つだと思います。フィリップスの柔らかい録音も素晴らしく、古さを全く感じさせません。

41wcfg0pb0l ヴォルフガング・シュナイダーハン独奏、指揮ベルリン・フィル(1965-7年録音/グラモフォン盤) シュナイダーハンもウイーン出身のヴァイオリニストですが、ボスコフスキーが生粋のウイーンっ子という感じなのに比べると、ややドイツ的に感じます。どうせギャラント風で無いのであれば、ウイーン風に徹し切って欲しかったところですが、さりとて、この3曲をまとめて録音したウイーンの人も思い当らないのでやはり貴重です。楽器の音も相変わらず美しいです。自作のカデンツァはベートーヴェン的で微妙ですが、まぁファン・サービスだと思いましょう。

189 フランク・ペーター・ツィンマーマン独奏、ヴォルフガング・サヴァリッシュ指揮ベルリン・フィル(1995年録音/EMI盤) オール・ドイツ演奏家キャストなので洒落っ気やユーモアには乏しいですが、ツィンマーマンの美しい音と端正な弾き方はモーツァルトに適しています。サヴァリッシュがベルリン・フィルをがっちりと引き締めていて少々厳し過ぎるようには感じますが、立派で上手い伴奏ではあります。個人的には、ギャラント風の味わいが欠けるのがやはり物足りないような気がします。

51fi6elzyl モニカ・ハジェット独奏、指揮エイジ・オブ・インライトゥメント管(1993年録音/ヴァージン盤) こちらはオール・イングランド演奏家キャストによる古楽器演奏ですが、自由奔放な表現がフランス的でギャラント・スタイルの味わいを感じさせます。ハジェットはバッハでも自由に演奏しますが、モーツァルトの音楽との相性は抜群です。洒落っ気やユーモアが一杯に溢れていて、モーツアァルト自身がヴァイオリンを弾いたらこんな感じではないかと思えるほどです。現代楽器、古楽器の領域を越えて非常に素晴らしい演奏だと思います。

ということで、マイ・フェイヴァリットとして、クリスチャン・フェラス盤、アルトゥール・グリュミオー盤、モニカ・ハジェット盤の3つを上げます。

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コメント

ハルくんさん、こんばんは。
モーツァルトの いわゆる"フランス趣味"の作品を聴いていると K番号の200番台と300番台では 聴いた感じが微妙に変わってきて、興味深いです。
(私の感覚では 若干ウェットなものから カラッとした曲調になっているような気がします。)
私としては 200番台の路線を変えずに行って欲しかったですが……。(笑)
この「第3番」には "春の日、雨上がりのパリの街を歩いていると 爽やかな風が吹いてくるような"趣がありますね。
大好きな作品の一つです。
愛聴盤は LP時代から グリュミオーの演奏を ずっと聴いています。C・デイヴィスの指揮もまた最高ですね。

投稿: ヨシツグカ | 2014年4月22日 (火) 22時32分

ヨシツグカさん、こんにちは。

>K番号の200番台と300番台では 聴いた感じがウェットなものから カラッとした曲調になっているような気がします。

同感です。もちろん個々の曲に違いは有りますが、大きな流れとしては言い得ているように感じます。あのウエットな感じ、本当に良いですよね。

グリュミオー/デイヴィスの演奏は素晴らしいですね。全集としてはやはりこれ以上のものは有りませんね。

投稿: ハルくん | 2014年4月23日 (水) 13時04分

今この曲を娘が半ギレになりながらレッスン受けてます。先生はもっと大変そうです(笑)。モーツァルトをいちおう「らしく」弾くだけでも、ほんとに大変なことだな・・と感じるこのごろです。
もちろん私自身もピアノではやってきたことではありますけど、弦は弦の難しさがありますよね。ご紹介の音源、参考にしたいと思います。

投稿: 仮装ぴあにすと | 2014年5月15日 (木) 21時07分

仮装ぴあにすとさん

娘さん、ヴァイオリンのお稽古頑張っているんですね。ハン切れしないように応援してあげてくださいね。

モーツァルトを「らしく」弾くのはプロの演奏家にとっても大変なことだと思いますよ。なにせハッタリの効かせようが無い音楽ですからね。
アマチュアの場合にはむしろ気楽に楽しく弾ければ良いと思います。

投稿: ハルくん | 2014年5月16日 (金) 15時50分

お早うございます。

中古屋で見かけたのが、シェリングが3CDを占めるフィリップスの4CDでした。Vn協奏曲自体が初めてで、聴かず嫌いでなく、ナゼか縁が無かったのです苦笑。

Theシェリングそのものの音色、伴奏は入ってこない位に浸れるのですが笑、バッハに聞こえてくる錯覚感があるのです。

コレまたTheフィルハーモニアの音色も原因なのか、検索してもブログ等が全く引っ掛からない録音なのです苦笑。

弾き振りだったら、また違っていたのかな...とか思ったり。

投稿: source man | 2017年6月 1日 (木) 09時20分

source manさん、こんにちは。

シェリングは最も好きなヴァイオリニストの一人ですし、三大Bの演奏については最高なのですが、ことモーツァルトの演奏は真面目すぎて愉悦感や茶目っ気が不足するように思います。
ですので何となくバッハに聞こえるのでしょうね。恐らく弾き振りをしても変わらないのではないでしょうか。

でも、どんな曲でもそれなりに器用に演奏してしまう人よりもずっと信頼できますね。
真に芸を極める道というのはそんな生易しいものではないと思います。

投稿: ハルくん | 2017年6月 1日 (木) 10時35分

この曲は、晩年のワルターがコロンビア交響楽団を振って、フランチェスカッティが付き合った録音は、不思議に名盤扱いされませんね(笑)。
初出の35DCシリーズは御値段が張りすぎたので(笑)、最近我らがタワレコ様が、リイッシューして下さった、SICC1698~99で聴いております。世評では、指揮者が主導権を握り、ソリストが萎縮してしまった演奏とされているようですが、過度に甘いムードにならず、しっかり作品を描きあげた演奏とも言えると思います。勿論、グリュミオー&C・ディヴィスと並ぶとまでは申せませんが、私的に味わっている一枚と言う事で、ご紹介まで。弦楽五部に、オーボエ、ホルン各2の二管編成で、こんなに深々とした響きがするのか…と思う指揮ぶりでございます。

投稿: リゴレットさん | 2018年3月11日 (日) 04時36分

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