« モーツァルト 「レクイエム」 続々・名盤 ~個性的な演奏にゾクゾク~ | トップページ | モーツァルト 交響曲第29番イ長調K.201 名盤 »

2014年4月15日 (火)

モーツァルト 交響曲第25番ト短調K.183 名盤 ~シュトゥルム・ウント・ドラング~

モーツァルトのシンフォニーについては、2年前に6大交響曲を記事にしてから随分と間隔が空いてしまいました。久々の登場です。

モーツァルトの交響曲で聴き応えを感じるのは、第25番以降の作品ですが、その中でも、第40番ト短調に対して『小ト短調』と呼ばれる第25番の魅力はやはり格別です。第1楽章でいきなり開始される切り裂く様なシンコペーションは正に”シュトゥルム・ウント・ドラング(ドイツ語=疾風怒濤)”の典型的表現で、このような音楽を弱冠17歳で、モーツァルト以外の一体誰が書き得たでしょうか。初めてこの曲を聴いた時の印象は決して忘れられません。第40番の冒頭の旋律で受けた驚きにも劣らなかったような気がします。

モーツァルトの交響曲は、もちろんウイーンに移ってからの作品である第35番「ハフナー」から第41番「ジュピター」までの6大交響曲が格段に優れていることは言うまでもありませんが、それに匹敵する個性的な輝きを放っているのが、この第25番ト短調K183です。

曲についてはこの程度にしておいて、さっそく愛聴盤のご紹介に移ります。

51v9fr97jxl ブルーノ・ワルター指揮コロムビア響(1954年録音/CBS盤) 当然モノラル録音です。この”コロムビア響”というのは一説ではステレオ時代の西海岸のそれでは無く、ニュヨークPO主体の東海岸のオケらしいです。ワルターがこの曲から引き出す”疾風怒濤”の音楽は、昔からこの曲の一つのリファレンスになっていますが、おかげで世の中の並みの演奏が、何を聴いても物足りなく感じられるほどの影響を与えてしまいました。思えば罪作りな演奏です。

4104090365ブルーノ・ワルター指揮ウイーン・フィル(1956年録音/SONY盤) 余りにも有名な、ウイーンでの40番にカップリングされた録音です。こちらはザルツブルク音楽祭で「レクイエム」の前プロとして演奏されましたが、当日の組み合わせはオルフェオ盤から出ています。但し音質はSONY盤が上です。小編成による室内楽的な演奏ですが、白熱した各楽器パートの息詰まるようなからみ合いが圧巻です。この凄まじい緊迫感の前では、コロムビア響盤さえも”並みの”演奏に感じられてしまうほどです。

9528aad8eb5aa6add4cd619595c9df9fカール・ベーム指揮ベルリン・フィル(1968年録音/グラモフォン盤) ベームの交響曲全集からです。こじんまりとした室内楽的な演奏では無く、大編成のそれです。ドイツ的な厳格なリズムを基調とした、極めて構築性の強い引締まった演奏ですので、贅肉でふやけた印象は全く受けません。それよりも、立派で重厚な音楽を感じられて非常に聴き応えが有ります。当時のベルリン・フィルのほの暗い音色がこの曲に向いていて素晴らしいです。

858ヨーゼフ・クリップス指揮コンセルトへボウ管(1972年録音/DECCA盤) ウイーン出身のクリップスはウイーン・フィルと組むと、それ以上は望めないほどに柔らかい演奏をしますが、コンセルトへボウと組んだ場合には、そこにキリリと引き締まった感覚が加わります。極めて格調が高く、疾風怒濤のワルターとは全く異なる印象です。けれども、心を落ち着けてじっくりと味わえる小ト短調として決して悪くありません。

014レナード・バーンスタイン指揮ウイーン・フィル(1984年録音/グラモフォン盤) バーンスタインはウイーン・フィルと25番以降の主要な交響曲を録音してくれました。もちろんウイーン・フィルの演奏は素晴らしいのですが、後期の作品に関しては、どうも含蓄の乏しさが感じられてしまいました。その点、初期の曲ではそれが余り気にも成らず、若きモーツァルトの”感情の揺れ”がストレートに表れていて素晴らしいです。切迫感もしっかりと感じられますが、ワルターほどの怒涛ぶりは見せません。これはワルターの呪縛から自分を解き放してくれた名演奏でした。

ということで、ワルター/ウイーンPO盤は歴史的な凄演として絶対に外すことは出来ませんが、現在のフェイヴァリットはバーンスタイン/ウイーンPO盤です。

|

« モーツァルト 「レクイエム」 続々・名盤 ~個性的な演奏にゾクゾク~ | トップページ | モーツァルト 交響曲第29番イ長調K.201 名盤 »

モーツァルト(交響曲)」カテゴリの記事

コメント

ははあ、この曲ついに来ましたね。映画「アマデウス」の冒頭部分で使われて鮮烈な印象を残したことも思い出します。大好きな曲です。クラリネットは入らない時代の曲なので、邪念なく聴く側に専念できる曲です(笑)

投稿: かげっち | 2014年4月15日 (火) 12時36分

かげっちさん、こんにちは。

映画「アマデウス」は場面場面での曲の使い方が抜群でしたが、この曲も実に印象的でしたね。確かネヴィル・マリナーの演奏だったと思います。

なーるほど、クラリネットが無いと鑑賞に徹することが出来ますか。「邪念」の起こりようがないのですね。(笑)

投稿: ハルくん | 2014年4月15日 (火) 15時01分

やはりきましたね。ワルターの二種類。
近年ワルターのモーツァルトというと新録音の方ばかり取り上げられていますが、個人的には万人向けなのは旧録音ではないかと思います。
テンポも遅すぎず、模範的といっていいのでは。
もちろんVPOとのライヴは別格ですが。
バーンスタインは29番なんかも良かった記憶がありますね。

投稿: ボナンザ | 2014年4月15日 (火) 21時14分

ボナンザさん

ワルターの25番であれば、確かに演奏が整っていて万人向きなのはスタジオ盤ですね。ライヴ盤は一発勝負の凄さは有りますが、日頃何度も聴くのは躊躇われてしまいます。
バーンスタイン/VPOは29番も良いですね。好きな人にとってはどの曲の演奏も良いと思いますよ。

投稿: ハルくん | 2014年4月15日 (火) 23時01分

ハルくんさん、こんばんは。
LP時代、モーツァルトと言えばベームだった私に ワルターの"凄さ"を教えてくれたCDが この「第25番」のウィーン・フィル盤です。 元々「40番」目当てで買ったのですが 「25番」の"衝撃"は ワルターに対する考え方を変えてしまう程でした。
この演奏に出逢えて 本当に良かったと思っています。

投稿: ヨシツグカ | 2014年4月16日 (水) 20時48分

ヨシツグカさん、こんばんは。

僕はLP時代、モーツァルトはワルターでした。この曲はコロンビア響盤で聴いていましたが、ウイーン・フィル盤が出た時には愕然としましたね。何という凄い演奏なのかと。
しかし時を経て、最近ではバーンスタインの”ほどほどの”表現がお気に入りではありますが、ワルター/VPOが生涯の愛聴盤であることに変りは有りません。

投稿: ハルくん | 2014年4月16日 (水) 21時54分

こんばんは。

大作曲家ブリテン指揮イギリス室内管弦楽団は
古さをまったく感じさせないDECCAの優秀録音
と相まって素晴らしいです。
激烈さはまったく無く、淡々としていますが
オケの音色がたまらない魅力をたたえており
音楽が心に染みてきます。
かつてのイギリスの栄光ですね!

投稿: 影の王子 | 2016年7月30日 (土) 20時40分

影の王子さん、こんにちは。

ブリテンの指揮するモーツァルトは素晴らしいですね。指揮者としても第一級だと思います。

25番のCDは持っていませんが、昔聴いたはず。
改めてちゃんと聴きたいです。
ありがとうございました。

投稿: ハルくん | 2016年8月 1日 (月) 12時45分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1080200/55589791

この記事へのトラックバック一覧です: モーツァルト 交響曲第25番ト短調K.183 名盤 ~シュトゥルム・ウント・ドラング~:

« モーツァルト 「レクイエム」 続々・名盤 ~個性的な演奏にゾクゾク~ | トップページ | モーツァルト 交響曲第29番イ長調K.201 名盤 »