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2014年3月20日 (木)

フルトヴェングラーと同時代の作曲家 ~エルンスト・ペッピング&ハインツ・シューベルト~

ドイツの大指揮者フルトヴェングラーが同時代の作曲家の作品をどれぐらいの頻度で取り上げたのかは詳しく有りませんが、フルトヴェングラー自身が作曲も行なっていたわけですし、演奏会では案外と取り上げていたのかもしれません。
ただ、我々が現在聴くことができる録音はそれほど多いわけではありません。

実は今月初めのことだったのですが、東京フルトヴェングラー研究会の鑑賞ゼミに参加する機会が有りました。その日のテーマの一つが「珍しいフルトヴェングラーを聴こう」ということでしたので、フルトヴェングラーと同時代の作曲家の作品の演奏を鑑賞しました。

その日に鑑賞したのは下記の4作品です。

1.エルンスト・ペッピング:交響曲第2番へ短調
2.ウォルフガング・フォルトナー:ヴァイオリン協奏曲
3.ハインツ・シューベルト:「賛歌的協奏曲」
4.イーゴリ・ストラヴィンスキー:「妖精の接吻」から

このうち、1.と3.に使用したCDを発表者の方からお借りして来ましたので、ちょっとご紹介してみたいと思います。

Furtwangler_pepping

ヴィルヘルム・フルトヴェングラー/ベルリン・フィルハーモニー(ARKADIA盤)

エルンスト・ペッピング 交響曲第2番へ短調(1943年10月30日録音)

ペッピングは1901年にドイツに生まれて、ベルリン音楽大学で作曲を学びました。1934年からベルリンの教会音楽学校で教鞭を取るようになりました。ぺッピングはプロテスタント教会音楽家として多数のミサ曲やモテットを作曲しましたが、それ以外にも3曲の交響曲や、ピアノ協奏曲、管弦楽のための変奏曲、オルガン曲、ピアノ曲などの器楽曲を書いています。ちなみにこの人は1981年まで存命しました。

交響曲第2番は戦火真っ只中の1943年に書かれた作品で、フルトヴェングラーが初演者なのかどうかは定かでありませんが、これが世界最初の録音とのことです。曲は保守的な4楽章構成ですが、全体に悲劇的で重苦しい雰囲気を漂わせています。後期ロマン派のマーラーの作品に近いものが感じられます。

ハインツ・シューベルト 「ソプラノ、テノール、オルガン、管弦楽のための賛歌的協奏曲」(1942年12月6日録音)

シューベルトと言っても有名なフランツ・シューベルトではなく、20世紀生まれのハインツ・シューベルトです。この人は1908年にドイツに生まれて、ミュンヘン音楽院で音楽を学び、作曲と指揮の両方で活躍をしました。
作風はやはり後期ロマン派風で「大管弦楽のためのシンフォニエッタ」、「ヴァイオリンと管弦楽のための協奏的組曲」などを書いています。

「賛歌的協奏曲」は1939年に書かれた作品ですが、このフルトヴェングラーがベルリン・フィルを指揮し、それにエルナ・ベルガー(ソプラノ)、ヴァルター・ルートヴィヒ(テノール)、フリッツ・ハイトマン(オルガン)と行ったこの演奏が世界で最初の録音だったようです。よく”世界初演”と書かれているのを見受けますが、指揮者でもあったシューベルト本人がそれ以前に初演した可能性も有り得ると思いますが確証は有りません。

この曲は単楽章構成で、”協奏曲”と言っても二人の独唱歌手とオルガンのための協奏曲という非常に珍しい編成です。更には弦楽器による独奏も用いられています。”賛歌”というのは教会音楽的な厳粛なものではなく、”苦悩を背負った人間が人間らしく生きられるような強い祈りの気持ち”が込められているように感じます。
ところが、この人は1944年に徴兵されて、翌年の1945年に戦死してしまいました。楽譜もほとんど戦火で焼失されてしまったそうです。

それにしてもぺッピングとシューベルト、どちらの曲も全くの後期ロマン派風の音楽で、ワーグナーやマーラーなどの影響を強く感じます。同じ時代のロシアの革新的な音楽と比べれば、随分と保守的な音楽に聞こえます。もっとも、それはナチス・ドイツによって「退廃的な音楽だ」という烙印を押されて迫害を受け、国外に亡命せざるえを得なかったパウル・ヒンデミットの例に代表されるように、ドイツ国内に留まって音楽家として生き残るためには、このようなナチスの意向に沿った保守的な音楽を書く道しか無かったのかもしれません。
従って、フルトヴェングラーと同時代の作曲家の作品であるにもかかわらず、「現代の音楽」というよりは「前時代の音楽」という気がしてなりません。

ただ、これらが陳腐な音楽かと言えば、決してそのようなことは無く、現代音楽の無味乾燥なものに比べれば遥かに音楽の体を成しています。革新的な新鮮さは持たなくとも、心に自然と浸みこんでくるような親しみ易さが有ります。あの佐村河内氏も好むかもしれません??

ARKADIA盤はCD2枚組で、他にブラームスの交響曲第4番やベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番(コンラート・ハンゼン独奏)といったフルトヴェングラーの第二次大戦中の定番とも言える録音が収められています。
録音はもちろんお世辞にも明瞭とは言えませんが、アナログ的で柔らく聴き易い音だと思います。1枚ものではメロディアやロシアン・ディスクなどのレーベルからぺッピングとシューベルトの2曲が組み合わされた形でリリースされていますので、ご興味の有る方は一度お聴きになられてみても決して損は無いと思います。

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コメント

 同時代の音楽を取り上げるというフルトヴェングラーの姿勢は素晴らしいと思います。お書きになっているペッピングとハインツ・シューベルトについては、不勉強ながら聴いたことがありません。「保守的な前時代的な音楽」とのことですが、ハルくんさんのおっしゃるとおり、それが必ずしもマイナスであるとは限りませんし、とりあえずYouTubeで探してみることにします(CDを購入するかは未定ですが)。
 ただ、「無調の無味乾燥な現代音楽」という部分について、ハルくんさんの書き方ですと、すべての無調の現代音楽がつまらないものだという意味にとられかねないと感じました。好みと言ってしまえばそれまでなのですが、無調でも独特のドラマ性を持った名曲があることだけ、ここに書かせていただきたいと思います。
 もっとも「調性をなくしただけ」の無味乾燥な無調音楽が、かなりの数存在することは事実だと思います。前衛的な試みが「実験のための実験」に終わっている曲よりは、いい意味で「保守的」な音楽の方がよほど素晴らしいと感じます。

投稿: ぴあの・ぴあの | 2014年3月27日 (木) 16時54分

ぴあのぴあのさん、こんにちは。

フルトヴェングラーは当時、ユダヤ系の音楽も良いものは取り上げようとしましたし、ヒンデミット事件ではナチと本気で闘ったのが凄いと思います。

そうですね、無調の現代音楽が全て無味乾燥だと言うつもりは無かったのですが、日本語は難しいです。ご助言により、さっそく文章を訂正しました。ありがとうございます。
まぁ、調性音楽でも無味乾燥なものも多くある訳ですしね。要するに書法が問題では無く、良いものは良い、本物は本物、ということでしょうね。

投稿: ハルくん | 2014年3月27日 (木) 17時53分

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