« 人間の感情を理解する犬 | トップページ | モーツァルト 「レクイエム」 続・名盤 ~ゴースト・ライターの傑作~ »

2014年3月 1日 (土)

ドヴォルザーク 交響曲第8番 ジョージ・セル/チェコ・フィルの1969年ライブ ~決定盤~

068_2

ドヴォルザーク 交響曲第8番 チェコ・フィル(1969年録音)
ブラームス 交響曲第1番 ルツェルン祝祭管弦楽団(1961年録音)

このルツェルン音楽祭におけるライブ録音のCDは昨年9月に発売されたのですが、すぐに飛びつかなかったのはHMVとタワーレコードの紹介記事に騙されたからです。オーケストラが”ルツェルン祝祭管弦楽団”と書かれていたからです。最近のルツェルン管は”ベルリン・フィルの仮の姿のオーケストラ”とも呼べる優秀なヴィルトゥオーゾ・オケですが、当時はそれほどではなかったのでスルーしていたのです。
ところが、後からオーケストラはチェコ・フィルであることを知りました。製造元のauditeのCDケースには正しく記載されているのですが、どうやら輸入販売元のキング・インターナショナルが、カップリングのブラームス1番と混同したようです。そうなれば話は変わります。

1969年といえばセルがクリーヴランド管とEMI盤を録音する前の年です。あのEMI盤はそれ以前のCBS盤のメカニカルな冷たさを感じさせる演奏とは違って、温もりと立派さを兼ね備えた名演奏なので、自分の愛聴盤の一角を占めています。

さっそく今回のチェコ・フィル盤を入手して聴いたところ、これは大変な名演奏でした。EMIのクリーヴランド管盤と比べてみると、基本的にイン・テンポを通したクリーヴランド管盤に対して、テンポの緩急の巾の広さと呼吸の深さを感じます。歌い方も表情が豊かであり、かなり情緒的に感じられます。ロマンティックな度合いでは、ヴァーツラフ・ノイマンを大きく凌駕しています。例えば第3楽章は遅いテンポで陰影の非常に深い演奏ですが、特にあの美しい主題が中間部を過ぎて再び戻ってきたときの情緒的で翳の濃い歌には体がゾクゾクするほどです。
それでも、もちろんセルのことですから、全体の造形が崩れた感じは全くしません。終楽章では、じわりじわりと高揚感を増してゆきますが、クーベリックのライブのような爆演スタイルにはなりません。それでも終結部ともなると恐ろしいぐらいにたたみ掛けますので、これでもう充分に興奮、満足ができます。

ドヴォルザークの録音はステレオですが、非常に優秀なことが大きなポイントです。EMI録音のように過剰なエコーがかけられていない、とても自然な響きです。チェコ・フィルの美しい木管の音が分離良く忠実に捉えられています。弦楽にも音の伸びと潤いが感じられてとても良いです。実際のホールの真ん中あたりの席で聴いているような臨場感が有るのが素晴らしいです。EMI盤はもちろんのこと、ノイマン/チェコ・フィルの1981年デジタル録音盤よりもむしろ優れていると思います。

演奏のみで比較すれば、アンチェル/チェコ・フィルの1960年ライブ盤が最高だとは思いますが、この演奏もそれに匹敵する素晴らしさです。それに何しろ録音が良いので、総合的にはベストワンにしたいです。ドヴォルザークのファン、チェコ・フィルのファンには宝物のようなこのCDは絶対のお勧めです。

ご参考までに、このドヴォルザークはYouTubeで聴くことができます(こちら)。

カップリングされているルツェルン祝祭管弦楽団を指揮したブラームスの第1番も中々に良い演奏ですし、中々に優れたモノラル録音(疑似ステレオと表記)ではありますが、これはやはりドヴォルザークを聴くためのCDでしょう。

それにしても、こんな素晴らしいCD紹介を誤訳する輸入販売元には呆れかえります。プロの意識の欠如としか言いようが有りません。

<関連記事>
ドヴォルザーク 交響曲第8番 名盤
ドヴォルザーク 交響曲第8番&9番 マッケラス/プラハ響のライブ
ドヴォルザーク 交響曲第8番 アンチェル/コンセルトへボウ管のライブ
ドヴォルザーク 交響曲第8番 コシュラー/プラハ響のライブ

|

« 人間の感情を理解する犬 | トップページ | モーツァルト 「レクイエム」 続・名盤 ~ゴースト・ライターの傑作~ »

ドヴォルザーク(交響曲)」カテゴリの記事

コメント

ハルくんさん、こんにちは。
ドヴォルザークの第8番、良いですねぇ~。聴いていると ボヘミアの爽やかな自然が 目に浮かぶようです。私は もしかすると「新世界」よりも好きかもしれません。
この曲にはチェコ・フィル以外のボヘミア系の演奏も良いものが かなり有りますが、(ヴァーレク盤やマッケラス盤等。)やはり チェコ・フィルで聴きたいです。
現在の愛聴盤は ノイマンの'72年盤と'82年盤ですが、アンチェル盤が中古でも 入手困難なので、この セルのライブ盤は まさに朗報です!
ご紹介ありがとうございます。
早速、注文しようと思います。

投稿: ヨシツグカ | 2014年3月 2日 (日) 11時57分

ヨシツグカさん、こんにちは。

自分は基本的には「新世界より」のほうが好きなのですが、「8番」を無性に聴きたくなる時があるのです。どちらも本当にイイですよね。
あっ、「7番」も大好きですけど。(笑)

記事中ではあのように書いてはいましたが、ノイマンの幾つかの演奏は皆とても好きです。”リファレンス”とするに実に相応しいです。

しかし、このセル/チェコ盤には驚きました。驚くほど情緒的なのが良いんですね。
聴後のご感想を楽しみにしています。

投稿: ハルくん | 2014年3月 2日 (日) 14時58分

ハルくんさん、こんばんは。
セルのライブ盤、聴いてみました。 まず、音質の優秀さに びっくり! これが本当に'69年の録音でしょうか? 弦楽器の"艶"と言い 管楽器の"柔らかさ"と言い、最新のデジタル録音より 生々しく聴こえます。すごいです。
演奏も 同じセルのクリーヴランド管盤より オケの曲への共感が高いことが良く解ります。
やはり ご当地演奏でこその 味わい深さですね。(チェコ・フィルが 本当に美しい……!)
これは 今まで聴いてきたCDでは ノイマンの'72年盤を抜いて この曲のベストになりそうな気がします。

投稿: ヨシツグカ | 2014年3月12日 (水) 19時08分

ヨシツグカさん、こんにちは。

セル/チェコのライブ盤を聴かれたのですね。
演奏、録音共に本当に素晴らしいですよね。

完成度ではクリーヴランドが上でしょうが、そもそもドヴォルザークにそこまで必要とも感じません。チェコフィルの響き、それに共感の方が断然魅力的に思います。

ノイマン/チェコの数種も素晴らしいですが、僕もこの演奏はそれ以上に感じます。アンチェル/チェコも絶賛しましたが、どれか一つを選ぶとすれば、今はこのセル/チェコ盤です。

こういう有名曲のベストが入れ替わるのはそれこそ十年、ニ十年に一度のことですので、これは大変なことですね。

投稿: ハルくん | 2014年3月13日 (木) 10時12分

ハルくんさん、こんにちは。お久しぶりです。

貴重な情報を信じて、CDを購入し、今、聴いたところです。まさに感動の余韻に浸っています。フィナーレ、凄いですね。セルがこんなにテンポを自在に動かしながら、演奏するとは。晩年のセルは素晴らしいです。もっと長生きして、10年後、80歳過ぎの演奏を聴いてみたかったところです。この3年前、1966年にシュワルツコップと録音した《4つの最後の歌》を聴いて、セルの素晴らしさに目覚めたところでした。チェコ・フィルも熱い演奏で素晴らしかったです。
素晴らしいCDを紹介していただき、ありがとうございました。

投稿: sarai | 2014年11月 5日 (水) 18時53分

saraiさん、こんばんは。
こちらこそご無沙汰してしまい申し訳ありません。

セルの晩年やライブ演奏では通常の冷たいイメージとは変わった自由さが感じられますが、この演奏は客演ということもあって特に強く感じられますね。
さんざん聴き込んだこの曲のマイベストが今ごろ現れるとは思いもしませんでした。

投稿: ハルくん | 2014年11月 6日 (木) 00時07分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1080200/55135239

この記事へのトラックバック一覧です: ドヴォルザーク 交響曲第8番 ジョージ・セル/チェコ・フィルの1969年ライブ ~決定盤~:

« 人間の感情を理解する犬 | トップページ | モーツァルト 「レクイエム」 続・名盤 ~ゴースト・ライターの傑作~ »