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2014年2月17日 (月)

仲道郁代 ピアノ・リサイタル ~ロマンティック極まる~

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人生は探求のかたまりです。
赤ん坊は母の乳を探し、生きる力を見出す。
若者は人生とは何かと、生きる意味を探す。
熟年は人生を振り返り、自分の生きざまの意味を探す。
どこにも答えなどなく、誰も答えを見つけられないのに・・・
そんな探究こそがロマンだと思うのです。
夢、渇望、自己との対話、果てしない”もがき”。

大作曲家は後世に残る素晴らしい作品を書きました。けれでも、その時、その瞬間は、等身大の”人生にもがく人”だったのです。それは偉大な作曲家の特別な何かではなくて、私たち一人一人が知っている”もがき”なのです。
そうです。私たちも、同じロマンに生きているのです。

  ―仲道郁代―(プログラムの「ご挨拶」からの引用)

仲道郁代さんは自分のアイドルですが、昨日は、まだ羽生君の金メダルと葛西選手の銀メダル、それに大雪の余韻が残る中をサントリーホールへピアノ・リサイタルを聴きに行きました。

なんたってタイトルが”ロマンティック極まる”ですよ。素敵ですよねぇ。
しかも、「ご挨拶」がまた気が利いています。演奏家としての智と心がこもっていますね。

演奏曲目を記しますと、

モーツァルト:ピアノソナタ第3番変ロ長調K281
シューマン :交響的練習曲作品13
ブラームス :3つの間奏曲作品117
     ―休憩―
ショパン   :バラード全曲

どーですか!いいでしょー!(⇒頭のてっぺんに抜ける高音になる:ジャパネットたかた風)(笑)
”ロマン”がジャパネットになってしまってはいけません。

とにかく郁代さんのピアノで聴いてみたい曲目ばかりだと思いました。プログラムには、各作曲家の亡くなった年齢と、曲を作曲したときの年齢がとても見やすく記されています。うーん、細かい配慮ですね。さすがは郁代さん。
それではそのリサイタルの様子をご紹介します。

曲を演奏する前にマイクで曲について解り易く解説するのはいつも通りですが、今日は特に曲の背景が解り易くて良かったです。

モーツァルトのソナタ第3番は、続く4番、5番ほど聴くことはありませんが良い曲です。僕がモーツァルトの演奏でポイントにするのはアレグロの16分音符がどれぐらい明確に美しく弾かれているかです。これは昔、ワルター・バリリ教授がモーツァルト演奏について強調していた点で、凄く重要なことだと思っています。その点では、今日の演奏では音が明確に聞こえませんでした。たぶんテンポの速さ、タッチ、ペダルの深さ、それらの組み合わせが必ずしも適当では無かったものと思います。大きな会場ですからこういう曲は難しいのでしょうね。緩徐楽章ではもちろん問題ありません。

シューマンの「交響的練習曲」。これは期待していました。郁代さんが一番向いているのはシューマンじゃないかと思っているからです。主題の美しさから非常に惹きつけられました。正に郁代ワールドです。ただ、第三変奏や最終変奏などのフォルテの音が非常に強く弾かれていたのは幾らか過剰なように感じました。彼女の最大の美点は”優しさ”だと思うのでここまで頑張らなくても・・・という印象です。ブリリアントな曲だからかなぁ。

ブラームスの「3つの間奏曲」では、一番良かったのはやはり美しい1曲目です。詩人ヘルダーの”不幸な母の子守歌”の詩を引用して、息子を亡くしたばかりのクララへの慰めの為にこの曲を捧げたブラームスの気持ちが一杯に滲み出ていました。子供の好きな郁代さんならではの共感溢れる演奏です。

休憩を挟んでの、後半のショパンの「バラード」。これは素晴らしかったです。特に大ピアニスト達の演奏で耳ダコの第1番が良かったのには驚きました。フレージング、ダイナミクス、タッチのどれも文句が無く、正直こんなに魅力的なショパンを聴けるとは思いませんでした。

アンコールは2曲。まず、ショパンのノクターン第20番嬰ハ短調<遺作>。これは「戦場のピアニストのラストシーンの曲ですね。そして最後はエルガーの「愛の挨拶」。コンサートの締めくくりに幸せな余韻を残すのには最上の曲ですね。

ということで、幸せなひと時を愉しめました。

それにしても彼女は2月13日の誕生日でもう51の齢を迎えたはずですが、美しさは少しも変わりませんね。本当に”儚い憧れ”を感じてしまいます。
自分は、あと二年足らずで還暦を迎えようという齢ですが、年齢的には郁代さんと丁度お似合いの齢なんですけどねぇ。人生のすれちがい。ああ、儚い・・

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コメント

まぁ、ハル様。素敵なリサイタル楽しまれた様子ですね。以前、私が行った郁代様のリサイタルはオールベートーヴェンでした。“熱情”が特に素敵でしたね~。私は昨日、朴葵姫(パク・キュヒ)さんのリサイタルに行きました。素晴らしいギタリストですね。技術は申し分ないし、良い意味で癖のない演奏です。トレモロの美しさは絶品ですよ!
連日ソチでのメダル獲得に舞い上がっております。結弦くん金メダルおめでとう!葛西選手銀メダルやった~!団体戦は金メダルだぜ!礼留飛くん大ジャンプで日本チームに弾みをつけてください。歩夢くんに続いて新潟を更に湧かせて欲しいです(奥様が高田出身ならレルヒの名前の由来ご存知ですよね)私、LET IT BEのメロディーで「レルヒ~レルヒ~レルヒ~レルヒ~」と歌って応援します!

投稿: from seiko | 2014年2月17日 (月) 16時35分

Seikoさん、こんにちは

Seikoさんはギター・リサイタルを楽しまれた様子で良かったですね!
パク・キュヒさん、演奏を聴いたことは無いのですが、憶えておきます。ありがとうございます。

ジャンプの団体戦では礼留飛くんがキーマンになるそうですね。
彼はお隣の妙高市の出身らしいです。
高田の金谷山スキー場には行ったことがありますよ。雪は無い時でしたが。
日本のスキー発祥の地として確かにレルヒ少佐の銅像が有りました。
礼留飛くん、若さの勢いで飛んで欲しいです。
無心のまま、♪レルヒ~レルヒ~♪ですね!

投稿: ハルくん | 2014年2月17日 (月) 18時23分

こんにちは。

仲道さんはお歳を召してから綺麗になられましたよね。最近の英雄ポロネーズの動画はとてもいいです。表現に余裕がありますし、こう言っては何ですが、演奏中の険しいお顔が艶かしいです。

モーツァルトのピアノソナタ3番はあまり重要な曲ではないと思いますが、久しぶりにグールドで聴いてみました。モーツァルトのソナタはかなり個性的に弾かないとちょっと退屈してしまいます。グールドはモーツァルトが嫌いだったようですね。それでもなんだかんだと言いながらソナタは全部録音しています。奇演か名演かは好みがかなり分かれると思いますが。

投稿: NY | 2014年2月23日 (日) 20時32分

NYさん、こんにちは。

仲道さんの英雄ポロネーズいいですね。
ええ、険しい表情が何とも魅力的なので惹かれます。(笑)

モーツァルトのピアノソナタは案外と難しいですね。中々これといって好きなものに出会いません。グールドもどちらか言えば苦手の方です。一番気に入っているのはバックハウスの演奏なのですが、数曲しか録音がありません。とくに個性的では無いと思いますが好きなのですよねぇ。


投稿: ハルくん | 2014年2月23日 (日) 22時56分

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