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2014年2月13日 (木)

チャイコフスキー 後期三大交響曲 チェリビダッケの名盤、迷盤? 

ソチ・オリンピックで日本選手が連日活躍をしていますね。スノーボード、ハーフパイプの平野君と平岡君、素晴らしかったです。スケートやジャンプ競技のようにマスコミに大騒ぎをされなかったことも平常心で戦えた理由の一つのような気がします。ノルディック複合ノーマルヒルで20年ぶりのメダルを獲得した渡部選手も素晴らしいです。高梨沙羅ちゃんは余りにも周りが騒ぎ過ぎて可哀そうでした。でも17歳で4位入賞なんてとても凄いことだと思います。
表彰台に手が届かなかった選手たちは本当に悔しいことでしょう。けれども無理は有りません。日本以外の国の選手たちも血の滲む努力をしているわけですし、なにせ一発勝負のオリンピックの舞台で普段の力が出せること自体が極めて難しいことなのだと思います。

さて、ロシアのカーリングチームに脱線していないで、継続中の「ロシア音楽特集」に戻ります。今日は定番中の定番、チャイコフスキーの後期三大交響曲です。但し演奏は、恐らく定番からは幾らか外れるであろうセルジュ・チェリビダッケです。

チェリビダッケは何しろ個性的なので、熱狂的なファンが居ますが、一方でアンチ派も多いと思います。その点は読売ジャイアンツと同じです。「嫌いだ」とわざわざ言うことが、既にその存在を強く意識しているのです。ですので、僕も「嫌いだ」と言いながら、実はやはりファンなのかもしれません。

チェリビダッケの設定するテンポが何故あれほどまでに極端に遅いのか?ひとつの理由は「響き」にあるような気がします。極端に遅く、普通なら管楽器の息が切れてしまうようなテンポでも息を切らさず、しかも透明なハーモニーを保つことが出来る。これはオリンピック選手並みの鍛え方が無ければ無理だと思います。チェリビダッケは間違いなくジャイアンツ以上の鬼の監督です。チェリビダッケの美学を実現する為には無くてはならない条件なのでしょう。

しかしチェリビダッケの演奏を聴いて、全く別の曲を聴いているような面白さや驚きを得られることは度々有りますが、「ああ良い音楽を聴いたな」と思うことは案外少ないです。何の曲を聴いても、「作曲家の音楽」を聴いているというよりも、「チェリビダッケの音楽」を聴いているような気がしてしまうのです。それで中々「好きだ」と言えないのかもしれません。それでも気になってしまうというところが実に稀な存在です。

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チャイコフスキー交響曲第4番(1993年録音)
チャイコフスキー交響曲第5番(1991年録音)
チャイコフスキー交響曲第6番「悲愴」(1992年録音)

前置きが長過ぎました。このEMIからリリースされた「フレンチ・アンド・ロシアン・ミュージック」というボックスセットには、チャイコフスキー以外にももちろんフランス音楽やショスタコーヴィチやプロコフィエフなどのロシア音楽が収められています。けれどもメインとなるのはやはりこの三大交響曲です。
演奏はもちろん手兵のミュンヘン・フィルハーモニーで、3曲とも演奏会場はミュンヘンのガスタイクのフィルハーモニーホールです。

第4番は、まず第1主題がとにかく遅いです。「でた!」という感じのチェリビ調ですが、リズムが完全に停滞して旋律の味わいと切迫感が消え去っています。しかし展開部では地の底でもだえ苦しむような雰囲気がユニークで、じわじわとファンファーレのクライマックスまで盛り上がってゆくのには興奮させられます。後半は再び遅いテンポが足かせとなって緊迫感を失ったままです。終結部で一般的な速いテンポに変えるのも一貫性に欠けます。
第2楽章も遅く重いテンポで歌われますが、ここは元々緩徐楽章なのでさほど抵抗は有りません。ただ、中間部はやはり遅過ぎで胃にもたれます。
第3楽章も極めて遅く、こういう音楽を遅く演奏する意味は一体何だろうと悩みます。
第4楽章も遅いです。スピードレースのような演奏が多いことを考えると、希少価値ですが、音楽としては異質に感じられます。ところが終結部に向かってテンポが段々と速まるのでいつの間にか普通の演奏に変わっています。

第5番は、第1楽章では導入部の遅さはともかくも、主部の遅さと重苦しさが驚くほどです。但し音楽自体も元々重い運命を背負ったようなところが有るので、意外に違和感を感じません。むしろ胃にもたれながらもズシリとした聴き応えが有ります。
2楽章のテンポの遅さはもう想定通りなので驚きません。でもやはり遅い・・・。音は管も弦もとても美しく、中間部のファンファーレ部分でも響きの美しさを失いません。
3楽章のワルツもかなり遅いですが、こういう暗く沈んだ解釈は有りだと思っています。でもやはり遅い・・・。
終楽章はチェリビダッケの本領発揮で金管をとても美しく響かせます。良くも悪くも「爆演」とは程遠いコントロール下にあります。問題は意外にテンポを動かすことで、基本は遅いのですが、突然速くなったり元に戻ったりする部分が有り、幾らか構築性が失われた印象です。

第6番「悲愴」は、第1楽章第1主題のテンポはもちろん遅く、旋律を歌わせている割にはフリッチャイの「哀しさ」やポリャンスキーの「虚しさ」のような感情への訴えかけが希薄に感じられます。アレグロ・ヴィーヴォの展開部ではテンポの変化が見られます。速くなってみたり、粘って重くなったり、突然元に戻したりと一貫性の無さが少々矮小さを感じさせたりもします。
第2楽章はゆったりとした普通の演奏です。中間部を最弱音に抑えるのも常套的な表現です。
第3楽章のマーチは遅めのイン・テンポで淡々としています。特別な面白みは有りません。
第4楽章は、うって変わって冒頭から人生の虚しさに溢れるような雰囲気に溢れていて胸を締めつけられます。最弱音で始まりゆっくりゆっくりと高まりをみせる歌がとても効果的です。楽章全体が約13分なので、テンポはかなり遅い部類に入ります。バーンスタインの17分が恐らく最長なので、最遅王座は奪われた形です。

ということで、部分的や楽章ごとには聴きどころが多く有るのですが、通して聴くと余り感銘は受けません。最大の原因は、やはりチェリビダッケがチャイコフスキーの音楽を演奏しようというよりも、自分の音楽を演奏しようとしているからだと思います。

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コメント

始めまして
チャイコフスキー 交響曲 第4番 のブログを見つけておじゃまいたしました。
小生 SP,LP,CD とクラシックを聴き続けて65年以上になりました。
暖かい季節には蝶の写真を撮ってブログに載せています。
チャイコフスキー 交響曲 第4番 を1958年 ガウク指揮、レニングラード交響楽団の演奏を東京日比谷公会堂で聴きました。
天井桟敷の音の聞こえにくい場所に、大音響の金管が聴こえて来たのに驚嘆した経験があります。演奏は詳しくは覚えていません、只大きな音が出るものだと驚きました。
 この来日の録音がCD化されて発売されているそうですが、聴いていません。
チェリビダッケのチャイコフスキーは聴いていません。他の曲の実演での私の印象は、一般の評と違って、一音一音の音は素晴らしく綺麗なのですが、それがつながらないと感じました。
 元々感情の流れのままに情緒的に聴くのが私の聴き方なので、分析的に又は熱情的に聴くことは苦手のタイプと思っています。
チャイコフスキー 交響曲 第4番 の定番は貴兄も述べられているように、ムラビンスキー指揮 でしょうね。定評を頼りに購入したLPがありましたので、久しぶりに聴きました。厳格で厳しさを感じる演奏で、やっぱり私には合いませんでした。
 他にはロストロポービッチ指揮のLPがありました。
 最近たまに聴くのは プレトニョフ指揮 ロシア・ナショナル交響楽団 のCDです。
自宅の装置で聴くと、いい音で鳴ってくれます。厳しさには欠けるかと思いますが、聴きやすいです。
 印象しか書けませんが、久しぶりにクラシックのお話がしたくて筆を取りました。
 共に聴き語らった友も少なくなり、一人で聴くこの頃です。
 長文失礼しました。宜しくお願いいたします。
  「 蝶 旅の友 」

投稿: 蝶 旅の友 | 2014年2月14日 (金) 10時26分

蝶 旅の友さん、はじめまして。
コメントを頂戴して誠にありがとうございます。とても嬉しく思います。

ガウクの演奏とは凄いですね。私などはまだ生まれて間もない頃です。
日比谷は残響が少ないので、最近はクラシックにはほとんど使われませんが、あそこで大音響とは凄いです。

チェリビダッケのご印象は、概ね私の持つ印象に近いと思います。もっとも聴き方、好みは人それぞれですので他人がとやかく言うことではありませんね。
ムラヴィンスキーのチャイコフスキーの4番とて、当然好みが有って当たり前です。

私も好き嫌いを決めるのは、結局のところ「感情的に響くかどうか」です。学問ではありませんので、分析、理屈で聴いても面白くは無いですからね。

私も普段、好きな音楽のことを語り合える友人が近くに居る訳でも無いのでこのブログを始めました。
これからいつでもお気軽にコメント下さい。楽しみにお待ちしております。
今後ともどうぞよろしくお願い致します。

投稿: ハルくん | 2014年2月14日 (金) 11時39分

こんばんは。

「悲愴」をCD初出以来聴きなおしてみました。
まるでダイヤモンドダストを思わせる弦は美しいですし
オケの響きは素晴らしいです。
両端楽章は良いですが中間楽章の緊張感の無さが残念です。
チェリビダッケは実演で聴いてるし、大好きな指揮者ですが
この演奏はあまり彼の名誉ではない思いです。

投稿: 影の王子 | 2017年10月22日 (日) 20時38分

影の王子さん、こんにちは。

チェリビダッケは熱烈なファンが多いですが、私は特に好んでいるわけではありません。
演奏に「恣意的」とは言えなくてもやはり常に「人工的」な匂いを感じてしまうからでしょうか。
残念ながら実演に接していないので余計そう思えるのかもしれませんね。

投稿: ハルくん | 2017年10月26日 (木) 12時49分

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