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2014年1月20日 (月)

プロコフィエフ バレエ音楽「ロミオとジュリエット」全曲 ワレリー・ゲルギエフ/キーロフ管弦楽団

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シェイクスピアの戯曲「ロミオとジュリエット」は余りにも有名ですが、自分は青春時代に観たフランコ・ゼフィレッリ監督の映画がどうしても忘れられません。オペラの演出も手掛けるゼフィレッリ監督の映像が古典的かつリアルで、本当に中世の街や城の中に居るような錯覚を覚えたほどです。それに加えて、主役の二人、オリヴィア・ハッセーとレナード・ホワイティングの初々しく可憐な美しさには魅了されずにいられませんでした。そのうえニーノ・ロータの音楽が何と素晴らしいことか。中世のイメージを上手く生かした美しいメロディの数々がまるで魔法のようでした。
ということで、あの映画は自分の「ロミオとジュリエット」体験の原点です。

それはひとまず脇に置くとして、音楽のジャンルにも数多く用いられたこの戯曲ですが、ベルリオーズの劇的交響曲やチャイコフスキーの劇的序曲といった有名な作品と並び、バレエ音楽として最も有名なのは、やはりセルゲイ・プロコフィエフのものでしょう。

プロコフィエフがパリからロシアに戻り、たまたま接したシェイクスピアの悲劇的な戯曲にひどく感激して、バレエ音楽の創作を決意しました。作品は僅か4か月という短い間に一気に書き上げられました。それにもかかわらず、彼の書いたバレエ音楽の中で最も長大で、ドラマティックな作品であることからも、プロコフィエフがどれほど、この題材に強い意気込みを持ったかが窺い知れます。

面白いのは、最初に書き上げた脚本では、終幕でロメオが1分早く駆けつけてジュリエットが生きていることに気付いたために、ハッピー・エンドとなるという内容に変更されていました。その理由は、バレエの振付で、生きている人は踊ることができるが、死者は踊れない、ということだったからです。
けれども、その後に振付家たちと再度相談して、悲劇的な結末を踊りで表現できるということになり、原作どおりの悲劇的な結末に終曲を書き改めました。

この作品は組曲版も有って気軽に楽しめますが、やはり全曲版で鑑賞したいと思います。生の舞台でバレエ鑑賞するのは理想だと思いますが、家で楽しむ場合は、個人的には映像版のDVDよりもCDで音楽に集中して鑑賞するのを好んでいます。

全曲版CDの愛聴盤は一つだけです。

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ワレリー・ゲルギエフ/キーロフ管弦楽団(1990年録音/フィリップス盤)

最近ゲルギエフはロンドン交響楽団との録音が多いですね。首席指揮者としての契約上の問題なのでしょうが、母国の楽団では無く、イギリスの団体とチャイコフスキーやプロコフィエフなどロシア音楽の録音を行うのは、個人的には非常に残念です。そう言えば、「ロミオとジュリエット」もロンドン響と再録音を行なっています。

もちろん僕が所有するのはキーロフ管弦楽団との旧盤の方です。旧録音と言ってもフィリップス録音ですから、音質は最新のものと全く遜色ありません。

ゲルギエフが名を知られるようになったきっかけはカラヤン・コンクールで優勝してからですが、その為かどうかは知りませんが、この人は一世代前のロシアの爆演系指揮者とは異なりますね。指揮の師匠がテミルカーノフであるのも影響がありそうです。二人ともロシア的な迫力を持ってはいても、決して音量のリミッターを外すような真似はしません。多彩な音色の変化を持つことも共通しています。特にゲルギエフの繊細な音色感覚はCDでは中々聴き取ることが出来ませんが、実際の生の音を聴くと驚くほど感じられます。
ですので、プロコフィエフというのはゲルギエフにとって最善のレパートリーだと思います。いわばホーム・グラウンドの手兵オーケストラ、キーロフ管を駆使して、繊細で美しい音とリズミカルで生き生きした演奏を繰り広げています。不協和音でも決して騒々しく感じられることが無く、斬新な響きを楽しむことが出来ます。プロコフィエフはやはりこうでなければ面白くありません。これはとても素晴らしい全曲盤だと思います。

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プロコフィエフ」カテゴリの記事

コメント

こんにちは、ハルくん。
ゼフィレッリ監督の“ロミオとジュリエット”素晴らしい映画でしたね。 主役の二人の美しさ、映像の美しさ、ニーノ・ロータの音楽の美しさ。全てが美しく切ない名作ですよね。
残念な事に主役の二人は、その後あまり作品に恵まれず、何本か公開された作品を見ましたがヒットまでは至らず、レナードは一発屋で終わり、オリビアは布施明との再婚で話題になったくらい?後年マザーテレサで健在ぶりを見せてくれましたが大ヒットとまでは至りませんでしたものね。
ディカプリオ主演の「ロミジュリ」よりオリビアとレナードの方が数段上の作品だと私は思っています。ハルくんと同じくこれが私のロミオとジュリエットの原点と言えます。
ゼフィレッリ監督の作品では「ブラザーサン・シスタームーン」も素晴らしい映画でした。
考えてみると最近あまり洋画を見なくなりました。
プロコフィエフにスルーでごめんなさい。ソフトバンクのCMで聞くくらいだなぁ…(失礼)

投稿: from Seiko | 2014年1月21日 (火) 17時29分

Seikoさん、こんにちは。

ゼフィレッリ監督の「ロミオとジュリエット」は本当に良いですよね。好きな映画という意味では五指に入るかもしれません。
主役の二人は、あの若さだからこそ、あの純粋無垢な役柄をこなせたのでしょう。若さは美徳だ!?

「ブラザーサン・シスタームーン」も素晴らしかったですね。とても懐かしいです。

プロコフィエフはいいんです。実は、特に好きだという訳ではありませんので。(言っちゃった!)(笑)
でも、この曲は好きです。

投稿: ハルくん | 2014年1月21日 (火) 17時56分

こんにちは。

プロコフィエフは日本ではシニカルで乾いたイメージ(芸風?)が定着したせいか、なかなか受容が難しいところがあるのではないでしょうか。私は管弦楽ではこの組曲版とピーターと狼くらいしか聴いたことがないので真髄はまだよくわかりませんが。

室内楽ではかなり抒情を感じます。ヴァイオリンソナタ、とくに1番は暗い情熱をたたえた傑作だと思います。古今東西のヴァイオリンソナタでもベスト10に入るのではないかと思うのですが(言い過ぎかな?)。

投稿: NY | 2014年1月22日 (水) 17時25分

NYさん、こんにちは。

自分も特に好きだということではありませんから、プロコフィエフの真髄は分っていないと思いますよ。

今のところは、どちらか言うと管弦楽作品の多彩な響きの方が愉しめるように感じています。
そういう意味ではヴァイオリンソナタであれば管弦楽的な第2番の方が愉しめてはいます。

でも、そのうち自分の中での評価が変わることは有るのかなぁ?

投稿: ハルくん | 2014年1月23日 (木) 11時10分

ヴァイオリンソナタ第二番は最初フルート版で聞き、その後ヴァイオリン版で聴きました。非常に印象的な曲です。(どちらかというとスバイスがほどよくなじんだプロコフィエフといった感じがします。交響曲第七番やヴァイオリン協奏曲第二番がこのイメージかな?)初期の名作であるビアノ協奏曲第2番、交響曲第3番、ヴァイオリン協奏曲第1番…メロディーを頭に入れてしまうとそんなに難解には聞こえません。又、中期の名曲であるビアノ協奏曲第3番や第5番は寝付けないときのBGMとしてうってつけです。最近ビアノ協奏曲第1番にハマっています。コーダで第1主題が回帰される箇所など涙ものです

投稿: k | 2014年11月17日 (月) 20時54分

Kさん

プロコフィエフの音楽は特に難解とは思いませんし、好きな曲も有りますが、総体的にはそれほど好きな音楽家ではありません。ショスタコーヴィチも同じです。
”肌”というか”感性”というか、要するにそれがあまり合わないのですね。

投稿: ハルくん | 2014年11月17日 (月) 21時09分

プロコフィエフとショスタコのヴァイオリン協奏曲をyoutubeでよく聞きます
レーピンのヴァイオリンでライブです
迫力がありリズミカルでメロディーも素晴らしい
レーピン、熱演だと思います
私としてベートーベンやチャイコフスキーより面白くて楽しめます

あと、マーラー交響曲7番最終楽章をアバドで聞きます
youtubeでルチェルンライブです
精緻さが魅力です

投稿: pp | 2016年6月14日 (火) 20時53分

PPさん、コメント有難うございます。

レーピンのプロコフィエフとショスタコは良いでしょうね。しかもライヴということで熱演となっているのでしょう。

アバドのマーラーは以前のウイーンフィルとの演奏は大抵の場合(かなり)好きなのですが、それ以外は余り聴いていません。でもルツェルンでの演奏はお好きな方がとても多いですね。
知ってはいるのですが・・・

投稿: ハルくん | 2016年6月15日 (水) 16時03分

ゲルギエフ盤は未聴ですが、全曲盤では
マゼール&クリーヴランド(DECCA)が良いです。
リズムや色彩感が鮮やかで、私は大好きです。

マゼールは宇野氏(同年生まれ)が忌み嫌っていましたが
その宇野氏が「10年に一度出るかどうかの名演」と讃えた
ウィーン・フィルとのチャイコフスキーの組曲第3番(DECCA)
もオススメです!

投稿: 影の王子 | 2016年8月25日 (木) 17時16分

影の王子さん、こんにちは。

プロコフィエフやストラヴィンスキーは特にロシアのオケでなくても楽しめますね。また別の良さが出てきますね。

マゼールに関しては、特に好きな指揮者ではありませんが、ウイーン・フィルとのマーラーとか好きな演奏はあります。チャイコフスキーの交響曲は余り好みませんでしたが、組曲第3番は良いですか。一度聴いてみたいですね。

投稿: ハルくん | 2016年8月25日 (木) 23時16分

こんばんは。

本日1/14のクラシック音楽館のコンサート・プラスにて
この曲のピアノ編曲版の「10の小品」op.75が放送されました。
大ピアニストであった作曲家自身の編曲の腕の冴えもあるでしょうが、曲の素晴らしさがストレートに伝わってきました。
美しく着飾った女性がカジュアルな服装に着替えても
美人は変わらず美人・・・な印象でした。
「ピアノ編曲版」と侮れません!
しかし、良い曲ですよね。感傷的なのがなんとも胸に来ます。

投稿: 影の王子 | 2018年1月15日 (月) 00時07分

影の王子さん、こんにちは。

その放送はうかつにも最後まで観ませんでした。
特に好きでもないプロコフィエフですが、この曲は実に良いです。まだ聴いていないこの人の良い曲は案外沢山ありそうです。
編曲版もしかりですね。

投稿: ハルくん | 2018年1月16日 (火) 14時25分

プロコフィエフのヴァイオリン協奏曲2番の終楽章を聞いてます。
やはり、レーピンですね。
躍動感、キレ、スピード、緊迫感、迫力。。
他のヴァイオリニストを聞くと軟弱で躍動感を出すには力不足のように思えます。
特に日本人ヴァイオリニストは、サッカーと同じようにスピリットが違うように思います。
獲物を狙う躍動感(リズム感)が根本的に違うように感じます。

投稿: pp | 2018年6月16日 (土) 19時34分

私は、中学生の頃ロック、R&Bなどを聞いていたんですが、日本と欧米、黒人との躍動感(リズム感)の差を感じてました。
アース・ウインド&ファイアーのR&Bなど、音楽の躍動が日本とは別世界でした。
宇多田ヒカルが出た時は、日本も来たと感じましたが、相変わらず躍動感のない現在です。
それは、日本のオーケストラにも同じように感じてます。躍動感がなくバネや瞬発力がなく。。

投稿: pp | 2018年6月16日 (土) 20時07分

PPさん

プロコフィエフのヴァイオリン協奏曲2番ですか。余り聴かないので誰のCDを持っていたかなぁ。チョン・キョンファとオイストラフだったでしょうか。。。
レーピンなら凄く良いでしょうね。

狩猟民族と農耕民族の違いというのはスポーツでも音楽でも中々簡単に越えることは出来ないのかもしれませんね。
アフリカンリズムなど日本人には遠く離れてい過ぎます。

投稿: ハルくん | 2018年6月18日 (月) 12時45分

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