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2013年12月 8日 (日)

エフゲニ―・ムラヴィンスキー 「ライヴ・セレクション 1972、1982」

”ロシアの生んだ最高の作曲家”と言えば、何と言ってもチャイコフスキー、それにショスタコーヴィチというのが万人の認めるところではないでしょうか。もちろん好みは人それぞれ有るでしょうけれども。
そして、”ロシアの生んだ最高の指揮者”と言えば、エフゲニ―・ムラヴィンスキーです。これはちょっと他には考えられません。

そのムラヴィンスキーが演奏する機会の特に多かった曲として、チャイコフスキーとショスタコーヴィチの同じ「交響曲第5番」が挙げられます。正確な記録は有りませんが、少なくとも残された録音の多さから見れば、この2曲が断然他の曲を圧倒しているように思えます。

僕はムラヴィンスキーの”熱狂的なマニア”というほどでは無いので、その演奏録音の全てを保有しているわけではありません。けれども、今年入手した「ライヴ・セレクション 1972、1982」という2枚組のCDアルバムには、この2曲が収録されていて、どちらも非常に良い演奏でしたので改めてご紹介したいと思います。

51ssyqme4qlエフゲニ―・ムラヴィンスキー「ライヴ・セレクション 1972、1982」(ドリーム・ライフ盤)

収録されている曲目は下記の通りです。

ショスタコーヴィチ 交響曲第5番(1982年11月18日)
プロコフィエフ バレエ「ロミオとジュリエット」組曲第2番(1972年1月30日)
チャイコフスキー 交響曲第5番(1982年11月18日)

もちろん、オーケストラは全てレニングラード・フィルハーモニー(現在は名称が変わって、サンクト・ぺテルブルグ・フィルハーモニー)です。どの曲も過剰なエコー処理を施さない非常に生々しい録音です。特に1982年の2曲の録音は中々に優れています。高音域は幾らか刺激的に感じられますが、これはロシアのオケ特有のバリバリと鳴らす金管セクションの性格から余計にそう感じられるのかもしれません。それでも、低音域の量感がしっかりと確保出来ていますので、音のバランスがかなり良いと思いますし、ダイナミック・レンジも広く感じられます。1972年のプロコフィエフのみ音質がやや落ちますが、音質の傾向は似ていますので、さほど抵抗は感じません。

さて、肝心の演奏ですが、まずショスタコーヴィチの第5番が非常な名演奏です。ムラヴィンスキーのこの曲の演奏では、1966年録音のRussianDisc盤が統率力の素晴らしさと凄まじい切れ味で最も好んでいますが、それに迫る魅力を感じます。オーケストラの統率力は1966年盤の方が上ですが、こちらも晩年の1980年代の演奏とは思えない強い緊張感と迫力が有ります。金管の”粗さ”も”荒々しさ”に転じて、これはこれで悪くありません。愛聴盤として、RussianDisc盤に次ぐポジションを、1973年の初来日ライヴ録音盤(Altus)と並んで占めることになりそうです。

次にチャイコフスキーの第5番についてですが、ムラヴィンスキーはこの曲には毎回非常にこと細かく表情づけを行います。それが余りに旺盛であるがために、少々煩わしさを感じてしまうのです。個人的には、ムラヴィンスキーほどはやり過ぎないゲルギエフの方が好きです。その点が、圧倒的に素晴らしいムラヴィンスキーの第4番と第6番の場合とは大きく異なります。けれどもムラヴィンスキーの第5番の中では、この1982年の演奏は最も好ましいように思います。1960年のグラモフォン盤はセッション録音のまとまりの良さではベストなのですが、細部の表情づけに余りに手練手管を尽くし過ぎていて、姑息な印象を受けてしまいます。1970年代の幾つかのライヴ録音盤はどれも荒さと姑息感の両方を感じてしまい好みません。1983年のライヴ録音は、姑息な印象は受けないものの、逆に迫力不足を感じます。その点で、この1982年の録音は姑息な印象は少めで、ずっとストレートな表現による音楽の感動を誘います。金管の適度な荒々しさも伝統的なロシアのオケを彷彿させます。ということから、消去法でゆくとこの演奏が最後に残ります。

但し残念なことに、このCDは既に廃盤ですので、アマゾンなどではプレミア価格が付けられています。根気良く待っていればリーゾナブルな値段で出ることが有りますし、中古店に安値で出ることも有りますので、チャンスを見逃さないことです。それだけの価値は有るディスクだと思います。

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ショスタコーヴィチ 交響曲第5番 名盤
チャイコフスキー 交響曲第5番 名盤

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コメント

こんにちは。
無くなってしまったショスタコ研究会なるサイトで、5番はムラヴィン氏で最高の演奏との評に、scara(でしたっけ?)レーベルを探したものでした。でも、ドリームライフ社の復刻盤が音としても上と知り、安価で入手して寝かせてあります。貴blogで紹介されたので、聴くときがきたようです。

投稿: source man | 2013年12月 9日 (月) 08時16分

source manさん、こんにちは。

このCDの中古品が法外な高値で取引されているのは困りものですね。それに見合った価値が有るのかどうかは聴き手の判断が全てですけれど。
非常に良い演奏ですし、音質も中々に良いと思いますが、Russian Disc盤やAltus盤を所有していれば、それで充分と言う気もします。もちろんリーゾナブルな値段で買えるのであればゲット品なのは間違いないですが。

まだ聴かれていなかったのですね。
聴後のご感想楽しみにしています。

投稿: ハルくん | 2013年12月 9日 (月) 09時36分

こんばんは〜〜
お久しぶりです。
今日は縁があってこのチャイ5を聴く機会を得ました。
私はあまり得意でないチャイコフスキーですが、それでもかなり楽しめました。
では。

投稿: はるりん | 2014年11月24日 (月) 21時33分

はるりんさん、こんばんは。

ムラヴィンのチャイ5とはまた凄い御縁ですね~。
チャイコフスキーもイイですよ。チャイコ、スキ~、なんちゃって!(←また言ってる。古い・・・)

なにはともあれ、楽しめたとのこと。良かったですね。
コメントありがとうございました。

投稿: ハルくん | 2014年11月24日 (月) 23時43分

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