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2013年12月20日 (金)

チャイコフスキー ピアノ協奏曲第1番 グリゴリー・ソコロフ&ゲルギエフ/キーロフ管のライヴ盤

またしても海賊CD-R盤を取り上げるのは幾らか気が引けますが、特筆大書しなければならない物凄い演奏が有りますのでご紹介します。

Grigorysokolov904_1

ロシアのグリゴリー・ソコロフは、知る人ぞ知る名ピアニストであり、”現役最高のピアニスト”とも称賛されています。演奏を聴いてみる前は、「そんなオーバーな・・・」と思っていましたが、実際に幾つかの録音を聴いてみると、それが少しもオーバーで無いことが納得できます。もっともソコロフはレコーディングが嫌いなようで、録音が非常に少なく、しかもその大半がリサイタルのライブ盤に限られています。協奏曲の録音も無いわけではありませんが、ごく若い頃の録音が僅かに残るだけです。ヨーロッパでは協奏曲を演奏することも決して珍しくは無いようなので、なんとかディスク化してほしいところです。

さて、そんなソコロフが、ワレリー・ゲルギエフ/キーロフ管弦楽団と共演したチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番の演奏を聴けるとは思いもしませんでした。これは1993年の、恐らくはサンクトペテルブルグでのコンサートだと思います。

P1010085グリゴリー・ソコロフ独奏、ワレリー・ゲルギエフ/キーロフ管(1993年録音/En Larmes盤 ELS 00-16)

第1楽章冒頭の有名な管弦楽の音は幾らか軽めに聞こえます。これは海賊盤である為に、録音が万全では無いせいかもしれません。
続く弦楽の旋律は非常に良く歌わせていて、さすがはゲルギエフです。ところがソコロフのピアノは管弦楽よりも更に悠然とした足取りのために、オーケストラとのズレを感じます。いや、正確に言えば、ズレないようにゲルギエフがソコロフのテンポに合わせようとしていますが、ソコロフはお構い無しといった調子です。ここまでを聴いても、現代の機械的にテンポを合わせたような演奏とはまるで異なる、正に巨人同士の綱引きが感じられて、非常に興奮します。

ピアノの音はレンジも広めで、綺麗に捕えられていますが、オーケストラの方の特に弦楽器の音にはザラつき成分が多く感じられます。マスターがアナログ録音らしいので、その影響かもしれません。鑑賞に支障が有るほどでは無いのですが、気になる人には気になるかもしれません。

展開部に入ると、ピアノとオケとの丁々発止の掛け合いが増々スリリングになってゆきます。ソコロフのテクニックはもちろん素晴らしいのですが、この人の本当の凄さは単に指が回るとか、音の粒が揃っているとかいう次元の問題ではありません。音楽性の素晴らしさです。表現力の豊かさや気迫の凄さなど全てにおいて圧倒される思いです。弱音部で繊細の限りを尽くした、いじらしいほどの表情も見事の一言です。後半に入ると、ゲルギエフとキーロフ管も、時に大見得を切るソコロフのピアノに慣れてきたようでピタリと合わせています。そして、大きな波がうねりとなって押し寄せるような終結部の迫力は尋常ではありません。

第2楽章はゆったりとした構えで、ソコロフ節全開の極めて抒情的なピアノが奏でられます。キーロフ管の繊細な木管や弱音器を付けた弦の伴奏も実に素晴らしいです。ロシアの情緒や憂愁が一杯に溢れているのが良いです。やはり、この曲はロシア人チャイコフスキーの音楽ですね。

第3楽章は速めのテンポで切れ良く疾走します。それでもソコロフのピアノは余裕のヨッちゃんです。ミスがゼロではありませんが、実演でこれだけ完璧に弾き切れる人はそうは居ません。ゲルギエフのオケ伴奏もいよいよ表情豊かに最高に上手くピアノに合わせてゆきます。そして終結部のスケールが大きく息の長い盛り上がりは最高にドラマティックです。

これは本当に凄い組み合わせの演奏です。もしもですが、この録音が正規盤でリリースされればこの曲のベスト盤として推すのを少しも躊躇わないほどの名演奏です。ですので、海賊盤であることを承知の上で、思い切りお薦めしておきます。

なお、聴かれてみたい方は、こちらから購入が可能です。親切に対応して貰えます。

なお、補足ですが、ソコロフは1966年のチャイコフスキー・コンクールに若干16歳の若さで優勝しています。その時に録音された同じ曲の演奏をメロディア盤で聴くことが出来ます。自分の持っているCDは、以前シューマンの「幻想曲」の演奏をご紹介した4枚組BOXです。

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グリゴリー・ソコロフ独奏、ネーメ・ヤルヴィ/ソヴィエト国立響(1966年録音/メロディア盤)

1960年代のメロディア録音とは言っても、正規録音ですので海賊盤よりは音がシャープです。この時のソコロフのピアノを聴くと、これが本当に16歳の演奏なのかと、とても信じられません。テクニックも素晴らしいですが、何よりもあの若さで演奏の表情づけがとても豊かです。テンポ・ルバートや思い切った音のタメなどは、既に将来のソコロフの片鱗を伺わせています。ただ、1993年の演奏に比べると当然ですが、まだまだ成長途中であることも確かです。あの有無を言わせぬ説得力にはまだ程遠いと言わざるを得ません。それは円熟期のこの人が余りに凄い高みに登ってしまったので、そのように感じるだけでしょう。そもそも世の中には円熟期を迎えても、このレベルに至らないピアニストは大勢居ることでしょうし。
オーケストラ伴奏は、名匠ネーメ・ヤルヴィが珍しくソヴィエト国立響を指揮しています。荒々しい響きが面白いですが、演奏は「中の上」といった出来栄えでしょうか。

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