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2013年12月29日 (日)

ベートーヴェン 交響曲第9番「合唱」 テンシュテット/ロンドン・フィルの1992年ライブ ~年末ご挨拶~

昨日は有楽町の劇場まで歌舞伎シネマの「野田版・鼠小僧」を観に行きました。この作品を観るのは二度目です。野田秀樹の脚本と演出が最高に面白くて、最後には泣かされます。けれども、それを生かせるのも今は亡き中村勘三郎さんの類まれな演技が有ればこそです。もう二度とこのコンビの芝居が観られないのかと思うと本当に残念です。

それにしても、今年も残すところあと三日。一年は早いものですね。今年のブログのマニュフェスト(死語か?)には、欲張って八つの目標を掲げましたが、達成できたのは、結局ベートーヴェンの弦楽四重奏曲だけです。これは酷い!民主党のことを悪くは言えませんね。(苦笑)

でも、皆様には本当にお世話になりました。コメントの書き込みを頂いてる方も、そうでない方も、このようなブログにいつもお越し頂いて心から感謝しています。来年も可能な限り色々と記事をアップしてゆきたいと思っていますので、宜しくお願い致します。

ということで、いよいよ今年のフィナーレです。最後を飾るのは、もちろんこの曲です!ベートーヴェンの交響曲第9番「合唱」!それでは、クラウス・テンシュテットさんに演奏して貰いましょう!(って何だか紅白みたい??)

511zvlveddlクラウス・テンシュテット指揮ロンドン・フィルハーモニー/合唱団
ルチア・ポップ(ソプラノ)
アン・マレイ(メゾ・ソプラノ)
アントニー・ロルフ・ジョンソン(テノール)
ルネ・パーペ(バス)
(1992年録音/LPO盤)

これは、テンシュテットの最後の活動時期となる1992年10月8日、ロイヤル・アルバート・ホールでのライブです。この年にはテンシュテットがせっかく来日したのですが、急病で指揮が出来なかったということが有りました。

けれども、この第九の演奏は凄いです。病魔に侵されて、死を目の前にしていたにもかかわらず、これほどの演奏が出来るとは本当に驚きです。島倉千代子も凄かったが、テンシュテットもやはり凄い。

第1楽章冒頭から凄まじい迫力と集中力を感じます。最初からこれで最後まで体力が持つのかと心配になるほどです。テンポを崩すことはしませんが、ひとつひとつの音に何と命がこもっていることでしょう。強いて言えばティンパニの音が幾らか安っぽい(録音のせいか?)わりに、強打をし過ぎる為に、うるさく感じます。常に叩き続けていては気迫が逆効果になってしまいます。このあたりの加減は、やはりフルトヴェングラーには敵いませんね。フォルテで金管が長く吹き続け過ぎるのも、ベートーヴェンというよりはワーグナーの音を想わせます。それが良いと言うファンもおられることとは思いますが。

第2楽章も鋭いリズムで気迫にあふれます。この楽章では音楽の性質から、ティンパニが過剰に感じることもありません。

第3楽章は元々厳かな音楽なので、普通に演奏されても感動します。しかし、この演奏は、極めてゆっくりと、まるで時が止まっているような印象を受けます。テンシュテット自身も、そしてオーケストラのメンバーたちも、一緒に音楽が出来る時間はもう余り残されていないことを理解していたのでしょう。そんな特別な思いが、録音を通してでも痛いほど伝わって来ます。

終楽章も凄まじい気迫の音で始まります。第1楽章でも感じたことですが、いきなりストレートの150Kmの速球を投げ込まれると、最初は驚きますが、だんだん速い球に慣れてしまいます。決め球は「ここぞ」というところで使うので効果が出るのです。3分程度の「リュスランとリュドミラ」序曲のような短い曲ならば、リリーフ・ピッチャーのように全て速球勝負でも構いませんが、長い曲の場合には、やはり緩急を使った完投型の投球が理想です。ヘンな例えでしたが、しかしここでのテンシュテットは最後まで剛速球を投げ切ってしまいます。人間死ぬ気になると信じられないような力が出るものです。
ちなみに、歌手陣と合唱は非常に優れています。オーケストラと合唱との録音バランスも良いと思います。

全体的に鬼気迫る熱演なのは確かですが、ティンパニや金管が部分的に騒々しく感じますし、ロンドン・フィルがオーケストラそのものの音の魅力で勝負できる水準だとは言い難いのが少々心残りです。

第九というと、何人(なにびと)も越えられないフルトヴェングラーの壁が有ります。フルトヴェングラーの凄さというのは、山あり谷ありの一大スペクタクルでありながらも、全体があたかもアルプス山脈のような有機的な連なりを感じさせる点です。こんな矛盾したことを両立できるのは後にも先にもフルトヴェングラーただ一人です。ですので、いかにテンシュテットが死んだ気になっても越えられないものは越えられません。けれども、その神の領域に限りなく近づいた凄い演奏であることは確かです。それが、どれだけ凄いことかは、フルトヴェングラーの偉大さを知っている人こそ良く理解できるものだという気がします。

くどくどと書きましたが、この演奏はフルトヴェングラーを別格とすれば、シュミット=イッセルシュテット/北ドイツ放送響の1970年ライブ(ターラ盤)やクーベリック/バイエルン放送響の1982年ライブ(オルフェオ盤)に次ぐ愛聴盤のひとつに加わりそうです。

それでは皆様、どうぞ良いお年をお迎えください。

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ベートーヴェン(交響曲第7番~9番)」カテゴリの記事

コメント

こんにちは。
昨日からCDプレーヤーの読み取りが悪くなり、開始数秒で「ピッピッ」と鳴って勝手に巻き戻り、10秒位進むとまた数秒巻き戻り...。これまでは、多少?と感じたらCD型クリーナーを再生すれば戻ったのですが、今回はクリーナー自体も再生が巻き戻る状況。音楽三昧予定の年末年始に最悪です...。泣ける。第九も聴けまセン。

投稿: source man | 2013年12月29日 (日) 10時21分

source manさん、こんにちは。

自分の経験からは、CDプレーヤーの寿命だと思います。これまで自分が買い替えた時も、大体同じ症状でした。お年玉として購入されるしかないかもですね。
師走に店に買いに走るか、アマゾンするか。御決断の時期でしょう。

投稿: ハルくん | 2013年12月29日 (日) 10時30分

ハルくんさん、こんにちは。
今年も このブログで 色々な演奏に出会い、 また、ハルくんさんはじめ皆様の熱いコメントに刺激を受け、大変 充実したCDライフをおくる事が出来ました。
本当にありがとうこざいました。
今年は やはり ベートーヴェンの弦楽四重奏曲を集中して聴けたのが 私にとって一番の収穫ですね。(私には"あまちゃん"や"半沢直樹"なみに「熱かった」です。(笑))
さて、今年購入した"第9"は ベームとケンぺの全集盤と、フルトヴェングラーの1942年盤ですが、このフルヴェンの戦争時の演奏の物凄い事!私は 久しぶりにCDを聴いていて 涙が止まりませんでした。
このような演奏は二度と出来ないと思うし、似た状況を作ってはいけないと思います。
来年は どうか「そういう」状況になりませんように……。
 
それでは 良いお年を。

投稿: ヨシツグカ | 2013年12月29日 (日) 13時12分

ハルくんさま、source manさま

こんばんは!
CDプレーヤーの件なのですが、レーザーピックアップの寿命だと思います。
ピックアップは、数万時間で交換する消耗品です。
販売店、あるいはメーカーサービスに持っていけば、10日位で交換調整してくれますよ。

投稿: よーちゃん | 2013年12月29日 (日) 19時40分

ハルくんさん
今年もお世話になりました。
マニュフェストですがベートーヴェンの弦楽四重奏曲を達成されただけでもスゴイです。
読み逃げ野郎でしたけど本当に参考にさせていただきました。
良いお年をお迎えください。

投稿: はるりん | 2013年12月29日 (日) 20時53分

ヨシツグカさん、こんにちは。

こちらこそ1年間ありがとうございました。
ベートーヴェンのカルテットには熱くなりましたね。(笑)
これだけお互いに刺激し合えると言うのは本当に素晴らしいことですね。

フルトヴェングラーの戦時中演奏は本当に特別ですよね。確かに、あのような状況を再び造り出すことだけは絶対にいけませんね。

どうぞ良いお年をお迎えください。

投稿: ハルくん | 2013年12月30日 (月) 11時05分

よーちゃんさん、こんにちは。

ピックアップの交換という方法も有るのですね。
アドヴァイスを頂きありがとうございました。

投稿: ハルくん | 2013年12月30日 (月) 11時13分

はるりんさん、ありがとうございます。

今年はベートーヴェンの弦楽四重奏曲に尽きますが、これはブログを開始した時からの願望でしたので、そういう点では良かったです。千里の道も一歩からですしね。

はるりんさんも、どうぞ良いお年をお迎えください。

投稿: ハルくん | 2013年12月30日 (月) 11時17分

今年1年ありがとうございました。

個人的にはまたしても辛い年でしたが
音楽が聴ける喜びは感謝あるのみです。

さて、年末の第9はベートーヴェンではなく
ブルックナーかマーラーで締めたいです。

年始はやはりベートーヴェンでしょうか?

それではよいお年をお迎えください。

また随時コメントさせていただきます。

投稿: 影の王子 | 2013年12月30日 (月) 12時03分

よーちゃん様 こんばんは。
ピックアップの件、ご親切に有難うございます。
実は...ボクのプレーヤー、パイオニアの1991年製なのです。高校入学祝で買って貰った当時20万円のセットです。

中古屋からビックカメラやらへ試聴と相談に行ったのですが、全ての店で言われたのは、まず部品が無いだろうという事でした。見積りは無料らしいので、年明けに出してみるつもりですけど。

Blog主様、御礼にこの場を使わせて頂きました。

投稿: source man | 2013年12月30日 (月) 18時10分

影の王子さん、こちらこそ有難うございました。

人生は決して良いことばかりではありませんが、それだからこそ生きている証なのだと思います。自分も色々と有りますが、恐らく皆さんもそうだと思いますよ。
本当に音楽を自由に聴ける喜びには感謝したいですね。

1年の締めにブルックナー、マーラーもまた良いですね。
そして年の初めにベートーヴェン!うーん、多分そうなりそうです。

良いお年をお迎えください。来年もどうぞよろしくお願い致します。

投稿: ハルくん | 2013年12月31日 (火) 15時34分

こんにちは。
ティーレマンは少しずつ聴いているところです。
ところでテンシュテットですが、ハルくんの言われる常に全力投球というのが実は昔からだと思うのです。晩年だけじゃないと思います。
そしてそれが私の大嫌いな所なのです。特にマーラーでは、作曲者が精魂込めて書き分けた微妙なニュアンスを全部フォルテッシモにしてしまうというデリカシーの無さに呆れてしまいます。
マーラーはもちろんのこと、これはベートーヴェンでもやはり許せないところなのです。

投稿: まっこい | 2014年9月 2日 (火) 21時48分

まっこいさん、こんにちは。

テンシュテットの全力投球スタイルは昔からですよ。といっても1970年代半ば以降の演奏しか知りませんが。
しかし、”微妙なニュアンスを全部フォルテッシモにしてしまうというデリカシーの無さ”というのは必ずしも当てはまらない気がします。確かに手兵のロンドン・フィルは優秀なオーケストラと比べると劣りますから、ニュアンスの表現もいま一つです。しかし優秀なオケと組んだ演奏にはそのような欠点は感じられません。
マーラーについては最も優れたマーラー演奏家の一人だと思います。
ベートーヴェンについてはいわゆる「ドイツ的」なスタイルとは異なりますね。あくまでもこの人独自のスタイルです。「力が入り過ぎている」という点も記事本文に書いた通りです。
でも、ウイーンフィルと演奏した「英雄」なんかは本当に素晴らしかったなあ。

投稿: ハルくん | 2014年9月 2日 (火) 22時33分

ご無沙汰しております。

この度、ハルくんさんもよくご存じ某M大オケのOBオケで「第九」を演奏することになり、私は合唱を務めることになりました。

「第九」は今までカラヤン・ラトルしか聞いたことがなかったので、これをきっかけに色々と聴きこもうじゃないかと思い、ハルくんさんおススメのフルトヴェングラーを含めいくつかのCDを買ったり借りたりしました。

すると、大好きなテンシュテットさんが残したライブ録音がいくつかあるというので、この1992年ライブ盤をはじめ、1985年盤、そして1991年盤(CDR)を買い揃え、聴き比べをした次第です。

結果から言いますと、1991年盤のCDは絶対にハルくんさんにも聴いてほしい演奏でした。
あくまでも私見ですが、この1992年盤より、そしてフルトヴェングラーの演奏と肩を並べるぐらい(自分の中ではフルヴェン以上の)凄まじい演奏でした。

投稿: パズー | 2017年10月15日 (日) 12時54分

この1992年盤も、激静あわせ持った(まるでマーラーのような)好演だとは思うのですが、ハルくんさんの仰るように、ところどころでティンパニがうるさ過ぎます。
ハルくんさんと同じように、まるでワーグナーのような演奏だと感じました。
もちろん、1992年盤もワーグナーのようなスタイルを含めて魅力がありますし、最終楽章の崇高さ、神々しさは比例がないと思います。

しかし、激しさ、そしてハルくんさんのブログで気付かされた「ドイツ風」をあわせ持つと私には感じられた1991年盤の演奏の前には、1992年盤も物足りなく感じますし、巷では爆演で有名な1985年盤もどこか大人しく、表現が薄く感じられます。(1985年盤の距離が多少遠い録音の影響もあると思いますが)

当の1991年盤は、基本的にインテンポなのですが、アタックが激しくタメも効いていて、音楽が非常に躍動している印象を受けました。(特に今回の聴き比べで大好きになった一楽章が)

先ほど申したように1992年盤はティンパニが突出しており、それが音楽の推進力につながっている部分もあったとは思いますが、1991年盤ではオケ全体のノリが非常に熱く、重厚さを保ちつつ、基本インテンポのまま物凄い推進力で突き進み、タメてほしいところはちゃんとタメる。そんな劇的かつ重厚な演奏になっています。

Memoriesから出ているテンシュテットのベートーヴェン全集にも含まれているので、ぜひ<重厚で激しい演奏>がお好きなハルくんさんに、聴いていただきたい演奏です。

長文失礼いたしました。

最後になりましたが、500万PVおめでとうございます!
新しい曲を聴き始める際は、このブログをいつも拝見しており、クラシック音楽歴がまだまだ浅い私にとって、まさに<羅針盤>のようなブログです。
感謝申し上げます。
これからも楽しみにしております。

投稿: パズー | 2017年10月15日 (日) 14時23分

バズーさん、お久しぶりです。

1991年盤の詳細なご紹介ありがとうございます。
確かに世評の高さから聴いてみたい演奏なのですが、いかんせん今となっては入手性の悪さがネックです。いまだ正規盤が出ない理由が有るのか無いのか知りませんが、いつか出て欲しいものですね。
プライヴェート盤でも運良く出くわしたら是非聴いてみます。

しかしOBオケの第九に出たかったですね。なにしろマーラーとブルックナーの第九に乗ったことが有るにもかかわらずベートーヴェンには無いのです。生きてるうちに出たい!(笑)

応援ありがとうございます。そのように仰って頂けるのは本当に嬉しいです。これからもどうぞ宜しくお願いします!

投稿: ハルくん | 2017年10月17日 (火) 00時42分

コメントいただき有り難うございます。

プライベート盤ですと、ヤフオクに新品CDが格安で出品されているのでぜひチェックしてみてください。
恐らく、プライベート盤の販売サイトとリンク?しており、私が購入したあとにまた出品されていました。

その販売サイトで購入しても良かったのですが、ヤフオクの方がポイントを利用してさらに安くできたのでそちらで購入しました(笑)

また、アマゾンでMemoriesから出ているテンシュテットのベートーヴェン全集も購入したのですが、そのなかにも1991年盤が含まれているので、そちらも要チェックですね。
先ほど届いたのですが、ウィーンフィルとの3番、フルヴェンの再来と巷では言われているキールフィルとの5番、そして1991年盤の第九と、名盤が詰め合わせになっているので今から聞くのが楽しみです!

アマゾンで売っている全集の値段が下がることがわかっていたのなら、新品の1991年盤を単品で買わないで済んだのですが、こればかりはわからないですもんね…苦笑

投稿: パズー | 2017年10月17日 (火) 20時04分

そうだったのですね!
自分はマーラーは5番の5楽章だけ、ブルックナーに至っては演奏したことないですね。

今回の第九は合唱で出るので、機会があればトランペットでやってみたいです。

投稿: パズー | 2017年10月17日 (火) 20時22分

パズーさん、こんばんは。

ウイーンフィルとのエロイカは1982年のザルツブルクのはずですが、これも大好きな演奏です。楽しみが沢山ですね。

投稿: ハルくん | 2017年10月18日 (水) 00時23分

ハルくんさん

そうですね、毎日の楽しみが増えました!

もし宜しければ、今までの感謝と500万PV達成のお祝いも兼ねて1991年盤のCDを1枚お譲りしたいと思ったのですが、如何せんブログだと連絡先のやり取りができませんものね。
残念です…

では失礼したします!

投稿: パズー | 2017年10月23日 (月) 18時09分

バズーさん、こんにちは。

お気遣いを頂きましてありがとうございます!
一応”プロフィール”の中にメールアドレスは表記してありますよ。
rsa54219@nifty.com です。

1991年盤を頂けるとあればそれは大変嬉しいのですが、それではなんだか申し訳ないです。
お任せいたしますので、もし宜しければご連絡ください。

投稿: ハルくん | 2017年10月26日 (木) 12時54分

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