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2013年12月23日 (月)

チャイコフスキー バレエ音楽「くるみ割り人形」 名盤

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マリインスキー劇場での初演時の舞台装置スケッチ

チャイコフスキーの三大バレエでは、僕は「白鳥の湖」が一番好きなので、バレエ公演というと、ついついそちらを観に行ってしまいます。「眠りの森の美女」はとても美しいのですが、少々長過ぎるように感じます。ですので二番目に好きなのは「くるみ割り人形」です。ところが考えてみたら「くるみ割り人形」の生公演は、これまで一度も観に行ったことがありません。これはいけませんね。次回は「くるみ割り人形」に行くことにしましょうか。

それにしても、毎年クリスマス近くになると、バレエ公演は「くるみ割り人形」一色に染まりますね。これは皆さんもご存じの通り、台本がホフマンの童話に基づくデュマの小説によるクリスマス・イヴのお話だからです。

<バレエのあらすじ>

―第1幕―

第1場

クリスマス・イブの夜、ドイツのシュタールバウム家の大広間でパーティーが開かれている。広間の真ん中には大きなクリスマス・ツリーが飾られている。

少女クララはドロッセルマイヤー老人から、胡桃割り人形をプレゼントされる。ところが人形の取り合いになり、兄のフリッツが壊してしまう。そこでドロッセルマイヤー老人が壊れた人形を修理する。

パーティーが終わって客も帰り、皆が寝静まってから、クララは人形のベッドに寝かせたくるみ割り人形を見に来る。その時、ちょうど時計が12時を打つと、クララの体が小さくなって人形ほどの大きさになる。

すると、七つの頭を持った、はつかねずみの王様が指揮する、はつかねずみの大群が押し寄せて来る。それを、くるみ割り人形が指揮する兵隊人形たちが迎え撃つ。

両軍は激しく闘うが、最後はくるみ割り人形とはつかねずみの王様の一騎打ちとなる。くるみ割り人形が危ないところで、クララがはつかねずみの王様にスリッパを投げつけると、はつかねずみたちは退散する。

倒れたくるみ割り人形が起き上がると、美しい王子様になっていた。王子様はクララをお菓子の国に招待して二人で旅立つ。

第2場

雪が舞う松林に二人がさしかかる。(雪の踊り‐雪の精たちのコール・ド・バレエ)

―第2幕―

お菓子の国の魔法の城に到着した王子は、女王ドラジェの精(こんぺい糖の精)にクララを紹介する。お菓子の精たちによる歓迎の宴が盛大に繰り広げられる。

クララがクリスマス・ツリーの下で夢から覚める。(そのまま、お菓子の国のシーンで終わる演出も有る)

と、正に夢のように愉しいお話ですね。それでは、僕の所有するCDとDVDをご紹介します。

全曲CD

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エフゲニ・スヴェトラーノフ/ソヴィエト国立響(1988年録音/メロディア盤) 

さすがにスヴェトラーノフというべきか、重厚でシンフォニックな演奏です。テンポの緩急の幅が非常に大きいので、これでバレエを踊るのは不可能でしょう。弱音部での繊細な音と表情は良いのですが、強音部での豪放極まりない音は、チャイコフスキーの交響曲ではそれが大きな魅力になりますが、バレエ曲の中でも、特にこの「くるみ割り人形」では過剰に感じられてしまいます。この辺りは聴き手の好みにかなり左右されると思います。録音が比較的新しい割には、楽器の音に色彩感に不足するように感じられます。なお、自分は三大バレエのボックスセットで持っています。

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ワレリー・ゲルギエフ/キーロフ管(1998年録音/フィリップス盤) 

スヴェトラーノフの重厚なシンフォニーのような演奏と比べると、ずっとバレエの舞台に近いと思います。全体的に速めのテンポでキビキビと子気味良く進むので、音楽の流れを弛緩させることが無く、曲の長さを感じさせません。もちろん細部でデリカシーに溢れる表情づけは、さすがゲルギエフで素晴らしいですし、強音部でも決して強奏し過ぎることがなく、響きの美しさを失いません。録音の良さも有るでしょうが、各楽器の色彩感がふんだんに感じられて楽しいことこの上ありません。全曲が1枚のCDに収まっているのも有り難いです。

組曲CD

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ハンス・クナッパーツブッシュ/ウイーン・フィル(1960年録音/DECCA盤)

組曲での録音盤は数多く有るのでしょうが、僕が好きなのは、巨人クナッパーツブッシュの演奏です。ここには、クナ得意のブルックナーやワーグナーの演奏に通じるスケールの大きさを感じます。全体のテンポは緩やかで少しもせせこましさを感じない大人の余裕が有ります。ウイーン・フィルもこの余裕を心から楽しんでいるようで、元々オーケストラの持つチャーミングな音色も演奏の魅力を倍増させています。白眉は「花のワルツ」で、スケール巨大なワルツが、中間部で短調に転じると、翳りの濃さが極まります。組曲版で全曲にも劣らぬ聴き応えを感じさせる唯一の演奏です。なお、僕のCDは旧盤ですので、現在はカップリング曲目が変わっていると思います。

DVD

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キーロフ・バレエ(マリインスキー劇場)、ヴィクトール・フェドートフ指揮(1993年収録/フィリップス盤) 

ゲルギエフが芸術監督として君臨するサンクトペテルブルクのマリインスキー劇場は古くはロシアの宮廷劇場として設立されて、今もバレエ・ファンに絶大な人気が有りますが、演出は伝統的な保守路線を維持していて、モスクワの革新的なボリショイ劇場とは性格を異にします。それでも最近は少しづつ実験的な舞台演出も試みられていうようです。けれどもオジサンのようなバレエ・ファンは、やはり伝統的な舞台が好きなのですよね。これはオペラの舞台についても言えることなのですが。
そんな保守的なオジサンが安心して楽しめる「くるみ割り人形」が、この1993年に収録された公演です。正に子供の絵本から飛び出したような舞台装置と衣装と演出です。やはり童話の世界は、理屈無しに子供が喜ぶような舞台であって欲しいです。

指揮をしているのはヴィクトール・フェドートフです。キーロフ・バレエで指揮者デビューをしてから、その生涯をこの劇場のバレエ指揮者として捧げた、ミスター・キーロフ・バレエなのですね。コンサート指揮者には真似のできない、バレエ・ダンサーたちが本当に気持ち良く踊れるような演奏をしています。

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コメント

ハルくんさん、こんばんは。
私が初めて「くるみ割り人形」を聴いたのは 小学校の音楽の授業でしたが、その時は 。多分、組曲の中から何曲かを聴いたので あまり印象に残らなかったですね。
好きになったのは 何年か経った後、アンセルメの全曲版を聴いた時ですから、やはり こういう曲はきちんと聴かないと理解できませんね。
それにしても この作品から出てくる音楽の愉しい事! 少しくらい嫌な事があっても 聴き進めるうちに幸せな気分にさせてくれます。本当に素敵な作品だと思います。
愛聴盤は アンセルメ盤とゲルギエフ盤ですが、どちらも 私にとって 欠かす事のできないCDです。

投稿: ヨシツグカ | 2013年12月23日 (月) 20時49分

胡桃割り人形は、私は今月の7日に松山バレエ団の府中の森芸術劇場での公演を生まれて初めて見ました。本格的なバレエ公演なんてたぶん初体験でありまして大変感激いたしました。実はストーリーさえろくに知らなかったのですから、この歳で本当に感激したのです。でも今日の話はその時のことではなく、ムラヴィンスキーの胡桃割り人形のことを書きたいと思います。ムラヴィンスキーに胡桃割り人形の録音がどれくらい残されているかは全く知らないのですが(確か1949年のもあったように思いますが)、私の持っているロシアンディスクで素晴らしいものがありますのでそれをご紹介します。1982年11月24日に本拠地レニングラードで行われたもので通常の組曲とはことなる選曲で6局選ばれています。これがとても素晴らしくいつも聴いている組曲とはかなり違うので最初は戸惑いますがムラヴィンスキー独自の選曲、解釈、繊細極まる音楽作りはなんとも言えず、聴き終わると感動を覚えるのです。特に2曲目の戦闘シーンは優れもの、まるでいつもの組曲でないところがいいのです。そんなわけでムラヴィンスキーの胡桃割り人形、だいすきです。

投稿: まつやす | 2013年12月23日 (月) 21時34分

ヨシツグカさん、こんばんは。

ストーリーと舞台は子供でも楽しめるものですが、本当に愉しく幸福な気持ちになれる音楽ですよね。

アンセルメは「白鳥の湖」しか聴きませんでしたが、ドリーブのような愉しい音楽の演奏はとても素晴らしいです。「くるみ割り」も聴いてみたいです。

投稿: ハルくん | 2013年12月23日 (月) 22時17分

まつやすさん、こんばんは。

バレエ初体験、良かったですね。次回は「白鳥の湖」をご覧になられることを是非お勧めします。

ムラヴィンスキーの独自選曲の「くるみ割り人形」はどこかで聴いた覚えが有りますが、本当に意表を突く?選曲でした。いっそ全曲を演奏してくれていたらと思うのですが、あの方はそんなことはしないでしょうね。
機会あれば是非聴き直したいです。ありがとうございます。

投稿: ハルくん | 2013年12月23日 (月) 22時24分

バレエ音楽「くるみ割り人形」は子供向けの音楽のように思われているかもしれませんが、私は大人のメルヘンの世界だと思っています。
また組曲が有名ですが、組曲だけでは、魅力が十分に伝わってきません。やはり全曲盤で、できればバレエの舞台の映像で楽しみたい。
私は実際のバレエの公演による「くるみ割り人形」を2度見ています。
第1幕の後半、クララの部屋から雪の国への舞台転換。温かい家の中から、冷たい空気が伝わってくるような一面銀世界へ。
舞台裏からは児童合唱団によるコーラス。
チャイコフスキーの素晴らしい音楽。
正に劇場の中で体感できる陶酔感に酔うばかり。
なお私はDVDでは英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団による1994年の公演の映像を楽しんでいます。
美しい舞台装置、そして金平糖の精に扮する吉田都さんのきらめくような美しい踊りにも魅了されます。
長文になってしまいました。失礼しました。

投稿: オペラファン | 2013年12月24日 (火) 23時32分

オペラファンさん、ありがとうございます。

組曲版で充実感を得られるのはクナッパーツブッシュを唯一の例外として、まず難しいですね。
私も、やはり全曲版か映像ものが良いと思います。

大人にとっても心から楽しめるメルヘンの世界。それもこれもチャイコフスキーの素晴らしい音楽があってこそですね。

投稿: ハルくん | 2013年12月24日 (火) 23時47分

ハルさん、こんにちは。
ちょうど「くるみ割り人形」のCDを探していたところでしたので、タイムリーな記事ありがとうございます。
オススメのスヴェトラーノフ盤にしようかと思ったんですが見つからず中古で安かったのでゲルギエフ盤を購入しました。
秋はチェコフィルのおかげでボヘミアンでしたが最近はロシア物一色です。
サンクトペテルブルクフィルの公演が待ち遠しい今日この頃です。

投稿: ワト | 2013年12月25日 (水) 21時33分

ワトさん、こんにちは。

記事の書き方が紛らわしかったかもしれませんが、僕はゲルギエフが一番好きなのですよ。
演奏、録音、価格とどれも文句の無い決定盤と呼んで差支えないと思っています。

冬にはロシアン、イイですよね。
サンクトぺテルブルクPOは僕も聴きに行きますよ。とても楽しみですね。

投稿: ハルくん | 2013年12月25日 (水) 22時32分

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