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2013年12月 4日 (水)

テミルカーノフ/サンクトペテルブルグ・フィル&エレーヌ・グリモーのライヴ盤 チャイコフスキー「悲愴」/ラフマニノフ ピアノ協奏曲第2番

もうじき冬将軍の到来ですね。北海道や東北、北陸地方では来週あたりから雪の降る日が増えるようです。皆さん、お風邪など召されませぬようにお気を付け下さい。
でも、音楽鑑賞では冬の季節を味わうことにしましょう。しばらくは「冬のロシア音楽祭り」で行きたいと思います。

ロシア音楽といえば何と言ってもチャイコフスキーですね。現在、チャイコフスキーのシンフォニーを演奏して、これ以上のコンビは絶対に無いと思えるのが、ユーリ・テミルカーノフとサンクトペテルブルグ・フィルのコンビです。彼らは1990年代の前半に後期三大シンフォニーをRCAレーベルにCD録音していて、それは良い演奏には違いないのですが、最近の彼らの演奏の凄さはとてもとてもそんなレベルでは無いからです。

比較的最近の彼らの来日公演で聴いたのは、2008年の「悲愴交響曲」と2011年の「交響曲第5番」です。どちらも戦慄が走るぐらい凄みのある演奏でした。特に「悲愴」の素晴らしさは正に言葉を失うほどで、この歴史あるオーケストラの前任シェフであるムラヴィンスキー(その当時は”レニングラード・フィル”の名称でした)のライブ録音と比べても、どちらが凄いかとても判断が付かないほどに思えました。当然、最新録音盤が期待されるところですが、実現していません。ただ、幸いなことに海賊盤CD-Rながらも、2009年のライヴ録音が出ています。これには、同じ日に演奏されたエレーヌ・グリモーが独奏するラフマニノフのピアノ協奏曲第2番も収められているのが嬉しいです。

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ユーリ・テミルカーノフ指揮サンクトペテルブルグ・フィル、エレーヌ・グリモー(ピアノ)(2009年9月17日録音/DIRIGENT DIR-0677)

このCD-Rは米国の海賊レーベルDIRIGENTが出していますが、このレーベルは音質が優れたものが多いことで知られています。このライブは2009年にハンガリーのブカレストで録音されたものですが、非正規盤にしては音質はかなり良い方です。弦楽器の音に僅かにざらつき感が有りますが、ほんの些細な程度なので演奏の良さに気にならなくなるレベルです。

それにしても、この「悲愴」の演奏は素晴らしいです。ムラヴィンスキーはチャイコフスキーをライブで演奏する場合に、意外にリミッターを外してしまい”爆演”になることも多かったのですが、テミルカーノフはオーケストラを完全に制御統率したうえで、それでいて劇的な演奏を行っています。その点では、ムラヴィンスキーよりも上なのかもしれません。この前年に自分が接した生演奏と全く同じ凄さです。オーケストラのアンサンブルは完璧で、個々の奏者達も最高レベルの上手さです。ムラヴィンスキー時代のあの高いレベルをそのままに維持しています。テミルカーノフというマエストロは職人タイプの指揮者で、大袈裟に大見得を切るような表現は有りませんが、創り出す音の充実度と音楽性の高さは本当に驚くほどです。例えて言うならば、それはギュンター・ヴァントが演奏した一連のブルックナーに匹敵すると思います。
もちろん、実際には生演奏で受けた感動には及ばないのですが、家で鑑賞できるディスクということでは、フリッチャイやムラヴィンスキー、ポリャンスキーといった名盤に肩を並べると思います。

ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番の演奏も素晴らしいです。グリモーは2000年にアシュケナージ/フィルハーモニアと録音した正規録音CDがとても良い演奏でしたし、2008年のルツェルン音楽祭でアバドと共演した際の演奏もDVD化されていますが、それは彼女のピアノの更なる進化が感じられる素晴らしい演奏でした。
そのルツェルンの翌年になるこの演奏ですが、グリモーの弾くピアノの素晴らしさはルツェルン盤と同格に思います。異なる点は、アバドとルツェルン祝祭管の音と演奏が非常にゴージャスでグラマラスなラフマニノフの印象なのに対して、テミルカーノフとサンクトペテルブルグPOの音は、非常に暗い印象で、荒涼としたロシアの大地を想わせる響きだと言えます。これはベルリン・フィルのメンバーを母体とするヴィルティオーゾ・オケであるルツェルン管と生粋のロシアン・オケのサンクトペテルブルグ・フィルとの違いでもあるでしょう。僕はハリウッド的なラフマニノフ演奏も好きなのですが、ロシア的な演奏にはやはりそれ以上に強い共感を覚えます。グリモーのピアノの音もとても美しく捕えられていますし、オーケストラの音とのバランスもとても良く取れています。これがもしも正規盤であれば、間違いなくベスト盤の一つに入ります。
2曲の演奏のどちらもが最高レベルの素晴らしさですし、音質も優れているこの海賊盤CD-Rは、古今の名盤と同等か、あるいはそれ以上の素晴らしさだと思います。

DIRIGENTの海賊盤は幾つかの輸入取り扱い店が有りますが、今回購入したのはこちらからです。一応ご参考までに。

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コメント

ハルくんさん、こんばんは。
この海賊盤は「当たり」でしたか。(笑)
「悲愴」のCDは名盤が多いですよね。"ご当地演奏"が大好きな私ですが、この作品は それ以外の演奏でも楽しんで聴いています。良く聴くものは、フリッチャイ/ベルリン放響盤、スヴェトラーノフ'90年盤、メンゲルベルク'37年盤で、"作品"を聴きたい時には フリッチャイ盤。"ロシア"を感じたい時は スヴェトラーノフ盤。"甘美な歌"をロマンティックに浸りたい時は、やはりメンゲルベルク盤を……。といった具合に 気分によって聴き替えています。
クラシック音楽を聴く醍醐味ですね。
このテミルカーノフのCDRも入手出来たら 聴いてみようと思います。

投稿: ヨシツグカ | 2013年12月 5日 (木) 19時27分

ヨシツグカさん、こんにちは。

これは「当たり」でしたよ。(笑)
自分も人後に落ちぬ”ご当地演奏好き”ですが、「悲愴」は確かに余り限定されませんね。
フリッチャイ、メンゲルベルク、アーベントロート、フルトヴェングラーなど、皆良いと思います。
一方で、ムラヴィンスキー、スヴェトラーノフ、ポリャンスキーなどのロシア勢も大好きです。そんな中で、テミルカーノフも実に素晴らしいですよ。新しい録音が正規盤で出ればいちばん良いのですがねぇ。

投稿: ハルくん | 2013年12月 6日 (金) 12時27分

こんにちは。

グリモーをはじめ、昨今の女性ピアニストの活躍には目覚しいものがあります。贔屓目でしょうかね(笑)。最近はブラームスのパガニーニ変奏曲とかリストのソナタとか難曲を弾きこなす女性も多く、もう感服するばかりです。先日は浅井純さんという方の動画を見ていて、その演奏の質の高さに時代の流れとしか言いようがない進歩を感じました。現代はラフマニノフとかリスト本人より上手いのではないかと思われる人もざらにいますので、質の高い演奏をするのは並大抵の仕事ではないのだろうなあと思います。

投稿: NY | 2013年12月 7日 (土) 06時40分

NYさん、こんにちは。

有能な女性ピアニストは増えているように思いますね。ヴァイオリニストはそれ以上に増えているような気がします。要するに音楽界全般で女性の活躍が増えているのでしょう。それは社会全般についても言えそうですが。

浅井純さんというピアニストはご自分で動画投稿をしているようですね。良くは知りませんがアメリカ国籍なんですって?日本で弾いたことはあるのでしょうか。
リストを得意としているようですが、非常に力強いピアノで凄いですね。

投稿: ハルくん | 2013年12月 7日 (土) 10時10分

こんにちは。

そうなのです。個人で健闘されている方を見ると贔屓にしたくなります。ネット時代になってソリストが有力者に頼らなくても活動できるようになるといいと思います。浅井純さんは表現に芯があり、質実な感じがとてもいいですね。

ウクライナ出身で在米の女性ピアニストであるリシッツァも動画で知名度が上がった人ですが、この人のショパンのエチュードはポリーニを超えたのではないかと思われるほど凄いものです。世界は広いですね。あ、また女性でしたが、男性の演奏家もちゃんと聴いてますよ(笑)。

投稿: NY | 2013年12月 9日 (月) 12時36分

NYさん、こんばんは。

リシッツァさんはラフマニノフの協奏曲全集を出していますね。この演奏はどうもオケ伴奏ともども、ややアッサリしていていまひとつかなと感じましたが、YouTubeのラフマニノフのエチュードは凄まじいですね。グリーグのピアノ協奏曲も中々凄かったです。
テクニックは申し分無いように思いますが、あとは音楽の表現そのものですね。いや、決して悪いと言うことでは無くて、自分がまだ余り聴けていないだけの話です。
確かに音楽の世界は広いです。

投稿: ハルくん | 2013年12月 9日 (月) 17時40分

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