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2013年11月 4日 (月)

ビエロフラーヴェク/チェコ・フィルハーモニー管弦楽団 2013 日本公演

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昨夜は、ミューザ川崎にチェコ・フィルハーモニーのコンサートを聴きに行きました。日本シリーズの最終戦が有るので家でテレビ観戦もしたかったのですが、それは諦めて出かけました。

今回指揮をするのはチェコ・フィルの首席指揮者に再び返り咲いたイルジー・ビエロフラーヴェクです。自分が名門チェコ・フィルの生演奏を聴いたのは、これまでにたったの一度だけ。今から30年以上も昔の、確か1976年のことです。自分は20代前半でした。その時の指揮者はヴァーツラフ・ノイマン。会場は東京文化会館。曲目はRシュトラウスの「ドン・ファン」とドヴォルザークの交響曲第8番だったのですが、オーケストラがよほど調子が良かったのか、弦の透明感あふれる瑞々しさも管楽器の輝かしさも最高でした。これまで聴いたウイーン・フィルやシュターツカペレ・ドレスデンの音ともまた違う、けれども魅力の上では全く遜色の無い印象でした。その時以来の生演奏を聴くので本当に楽しみでした。

曲目は、グリンカ「ルスランとリュドミラ」序曲、ラフマニノフ「ピアノ協奏曲第2番」、ドヴォルザーク「新世界より」という、典型的な名曲プログラムですね。ピアノ独奏は日本人の河村尚子です。

イルジー・ビエロフラーヴェクはやはり自分の学生時代に日本フィルに客演したコンサートを聴いた記憶が有ります。ステージに登場した姿を見ると、すっかり貫禄が付いていて、時の流れを感じます。

さて、演奏が始まりましたが、「ルスランとリュドミラ」序曲はごく普通の前プロという印象。弦のアンサンブルの難しいこの曲ですが、特に完璧というほどでも無く、全体の音の厚みもそれなりでした。

「おっ」と思ったのは、二曲目のラフマニノフです。オケの音に非常に厚みが出て、各パートが良く歌います。とくにヴィオラの活躍する部分での押し出しの強さには感心しました。この曲の演奏には、甘くたっぷりと歌うハリウッド・スタイルと、暗く土着的に歌うロシアン・スタイルが有ると思いますが、この演奏は正にスラヴ的とでも呼べる印象です。河村さんのピアノは特別にロマンティックに没入するようなタイプではありませんが、この曲の魅力を中々に伝えていたと思います。まずは好演と言えるのではないでしょうか。

ここで休憩を挟みますが、楽天VS巨人の試合経過をワンセグでチェック。おおっ、楽天が2点のリードです!頑張れ!

後半はいよいよ「新世界より」です。チェコの楽団の演奏するドヴォルザークは言うまでもなく本場もの。本場ものの大好きな自分は最近では、どちらかいうとチェコ・フィルよりも更にローカル色の濃厚な、スロヴァキア・フィルやブラティスラヴァ放送響といったオケの音を好んで聴いています。しかしチェコ・フィルの音色はやはり素晴らしいです。現代的なオケの輝かしい極彩色の音とは全く異なる、ずっと暖色系のくすみがかった響きです。それはドイツの重量感のある音とも違います。チェコの爽やかな弦楽カルテットがそのまま大きくなったような弦楽器群の音に、重くなり過ぎない管楽器の音が絶妙にブレンドされているのです。昔、東京文化会館で聴いた音には、透明感と輝かしさを非常に感じたものですが、今日はそれよりもずっと古風な響きに感じられたのはホールや座席の違いも影響しているのかもしれません。けれども極めて魅力的な音であったのは確かです。ホルンの音色は本当に美しいですし、例の第2楽章のイングリッシュ・ホルンのソロの歌わせ方なども絶品です。ともすれば爆演になってしまう終楽章でも、騒々しさとはまるで無縁でハーモニーを”美しく”鳴り響かせる充実し切った演奏でした。

ビエロフラーヴェクの指揮はもちろん極めてオーソドックスなのですが、100%オケ任せで何もしないわけではありません。微妙なテンポの変化、楽器同士のバランスの扱い、聞かせどころでの楽器の目立たせ、アクセントなど、意外なほどコントロールしています。けれどもそれが全て適度な範囲なのですね。大袈裟にならないので全く違和感を感じません。それをみな消化して、伝統的な演奏スタイルを聞かせるチェコ・フィルという楽団。彼らが世代も越えて一体どれだけ演奏したかしれない「新世界より」という名曲。これを聴いていると例えてみれば、歌舞伎十八番の出し物を観ているかのような満足感を得られます。やはり、本場ものの伝統芸からは圧倒的な説得力と感銘を受けずにはいられません。

アンコールは、ブラームス「ハンガリア舞曲第5番」、ドヴォルザーク「スラヴ舞曲第3番」、日本の歌「ふるさと」でした。こういうオーソドックスな選曲、演奏がやはり良いのです。心から満足出来ました。

演奏会場を出て再び日本シリーズをチェックすると、楽天が3点リードをして、最終回に田中マー君が登場するではありませんか。電車の中で固唾を飲んで試合を見守っていると、ピンチを迎えたものの抑え切りゲームセット。やりましたね!

コンサートの余韻と日本シリーズの喜びとが混じり合って、なんとも心地良かったです。ジャイアンツは残念でした。でも今年も優勝してしまったら世の中から憎まれますよ。今年はこれで良かったのですよ。

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ドヴォルザーク 交響曲第9番「新世界より」 名盤

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コメント

ハルさん、お久し振りです。
チェコ・フィルの生演奏を聴かれたとのことで、羨ましい限りです。
私も2度生でチェコ・フィルの演奏を聴いたことがあります。ただ、どちらの演奏もチェコ以外の指揮者でした。勿論、チェコ・フィルのサウンドを堪能すろことが出来ましたが、チェコやスロバキアの指揮者であれば、よりチェコ・フィルらしいサウンドを聴けたかもしれませんね。
ビエロフラーヴェクが首席指揮者になって、よりローカル色を押し出した演奏をして欲しいです。

投稿: たろう | 2013年11月 4日 (月) 14時16分

たろうさん、お久しぶりです!
でも、お元気そうでなによりです。

近年ではチェコ人以外の指揮者に多く首席指揮者を任せていたチェコ・フィルですが、これでしばらく落ち着くと良いですね。
新鮮味は無いかもしれませんが、主席はやはりオーソドックスに自国ものを演奏して欲しいです。新鮮味のある指揮者は客演で幾らでも招けますからね。

投稿: ハルくん | 2013年11月 4日 (月) 16時27分

こんばんは。
演奏中にメモなどは取らずに記憶だけの文章なら脱帽です。

勝っていれば最後1イニング限定で出て来ると予測してました。リーグとCSでの胴上げ投手ですし、ファンも田中投手には気持ち良くシーズンを終えて欲しいと思っていただろし登板を期待してたのでは。星野監督はロマンチストですね。

投稿: source man | 2013年11月 4日 (月) 19時15分

source manさん、こんばんは。

演奏中にメモを取るのは不可能ですので、もちろん記憶だけです。記事を書いたのも今日に成ってからです。
記憶を文章にするのは中々に難しいもので、そんなに驚かれるほどの内容では無いと思いますよ。でもありがとうございます。

僕も予想していました。勝負で考えれば美馬が7回までで、則本を8、9回がベターのように思いますが、田中を使うところは星野監督ならではでしょうね。野村克也氏が、星野さんを称して「古いタイプの人だ」と言ったのは面白かったです。現代的なばかりが良いとは限りませんね。
とにかくこんなにドラマティックでハラハラして感動させられたシリーズは久しぶりです。
伝説が生れましたね。

投稿: ハルくん | 2013年11月 4日 (月) 19時41分

ハルくん、今晩は。昨夜はコンサートで晶子様見逃しちゃいましたか。残念!さらに、ニセ晶子様に怒られてしまいましたね。ご相談なんですが、11/13にチェコ国立ブルノフィルハーモニーが新潟に来るのですが、このオケの実力はどんなものかご存知ですか?
「モルダウ」「新世界」と申し分ない演目なんですよ。
チェコフィルには及ばないまでも仲々だよというハルくんの後押しがあれば、福沢先生を差し出す勇気が出るかも…なんですが。

投稿: from Seiko | 2013年11月 4日 (月) 19時49分

Seikoさん、こんばんは。

いやぁ、ホントに惜しいことをしました。
コンサートと日本シリーズと晶子様が重なるとは、盆と正月とGWが一緒に来たようなものです。

チェコ国立ブルノフィルの名前は知っていますが、残念ながら実際に聴いたことは無いのです。
ですのでハッキリしたことは何も分かりませんが、たぶん考えようだと思います。上手いオケを聴きたければ少々リスクが有りそうですが、チェコの田舎食堂の郷土料理のようなローカルな味わいにありつける可能性は有るかもしれません。新世界やモルダウならそういう演奏は僕は好きですけどね。
でも必ずしもそうだとも言えませんし、ボンビーサラリーマンの僕だと福沢先生はちょっと惜しいかも・・・

投稿: ハルくん | 2013年11月 4日 (月) 23時13分

ハルさん
はじめまして。
いつもblogを楽しく拝見しております。クラシックを聞き始めてまだ1年弱と日も浅いため大変参考になります。
昨日、バーミンガム市響の新世界も聞いたこともあり、初めて投稿いたします。

私もチェコフィル行ってました。
記事にして頂いたとおりですが、チェコフィルの音は素晴らいですね。生で聞くと明らかに他のオケと違う音色がよく分かり、新世界の名盤にて記事にして頂いた点が府に落ちました。
たぶんblogを読んでいなければ出会えなかったであろう音に触れることができ、大変感謝です。

ちなみに、昨日のグリモーさんのブラームスピアノ協奏曲1番も大変素晴らく、すっかりやられてしまいました。泣けますね。

投稿: ワト | 2013年11月21日 (木) 21時15分

ワトさん、はじめまして。
コメントを頂きまして大変ありがとうございます。とても嬉しく思います。

チェコ・フィルをお聴きになられたのですね。良かったですね。僕も昔、初めてチェコ・フィルを生で聴いた時には、やはりクラシックを聴き始めて間もない頃でしたが、音の素晴らしさに感激しました。
色々なオーケストラの音の違いを聴き比べるのは本当に楽しいです。これから多くのオーケストラを聴かれるのが楽しみですね。

グリモーのブラームスのP協1番の演奏は素晴らしいですからね。僕はCDでしか聴いていませんが、それを生で聴かれたとは本当に良かったですね。

これからもお気軽に何でもコメント下さい。楽しみにお待ちしています。

投稿: ハルくん | 2013年11月21日 (木) 23時17分

ハルくんさん、こんばんは。
ビエロフラーヴェクの全集盤が昨日 届いたので、とりあえず 大好きな 8番、「新世界」、チェロ・コンを聴いてみました。 
まず、8番の出だし…。ノイマンの"ス~…"と入ってくる演奏に対して、何か "ふわっと"音が漂ってくるような感じがして、なかなか良いです。その後も 共感に満ちた チェコ・フィルの演奏に心奪われて最後まで聴いていました。(ビエロフラーヴェクは管楽器の扱いが 非常に上手いですね…。)
次に「新世界」ですが、ここでも管と弦のバランスが素晴らしく、良くブレンドされたサウンドが たまりません。さらに、ビエロフラーヴェクの表現が 所々でアンチェルを彷彿とさせるものがあり、少し嬉しくなりました。
ワイラースタインと組んだ「チェロ協奏曲」は 指揮者とソロの 音楽表現が 同じ方向に向いていると感じさせ、とても気持ちよく ドヴォルザークの音楽に入っていけました。
 
まだ 全部を聴いたわけではありませんが、非常に質の高い全集盤だと思います。     私は ドヴォルザークの全集は 他に ヴァーレクのものを持っていますが、この2組だけで 十分満足できそうです。

投稿: ヨシツグカ | 2014年7月 6日 (日) 20時19分

ヨシツグカさん、こんばんは。

ビエロフラーヴェク/チェコ・フィルの交響曲全集をお聴きになったのですね。
ビエロフラーヴェクの「新世界より」は来日ライブと旧録音盤で聴いていますが、どちらも良かったです。新録音も良いでしょうね。
良い意味での”オーソドックス”が最大の美点なのではないでしょうか。
全集盤、いずれ聴いてみようと思います。

ヴァーレクも中々のものですが、ノイマンの新旧両全集は捨て難いですよ。ただ、方向性からビエロフラーヴェクとかぶるかなぁ。DECCAの録音も非常に良いですしね。

投稿: ハルくん | 2014年7月 6日 (日) 22時05分

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