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2013年11月29日 (金)

秋のブラームス祭り フィナーレ ~今年聴いたシンフォニーのCDから~

すっかり寒くなってきました。昨日は北国だけではなく西日本でも雪がちらついたそうです。”冬将軍”の足音もどんどんと大きくなって、晩秋も終わりを遂げようとしています。
ということで「秋のブラームス祭り」も、いよいよフィナーレですが、締めくくりはやはりシンフォニー特集と行きましょう。但し、今年は新しく聴いたブラームスの交響曲のCDが例年に比べて不作でした。これも異常気象と猛暑の影響なのでしょうか。夏の暑さがずっと続いて、秋の訪れが遅れてしまっては、さすがのブラージアーナーといえどもブラームスを聴く気分が減退させられても不思議は有りません。ブラームス愛好家の減少を防ぐためにも、世界の温暖化対策の実施は火急の責務でしょう。(ホント?)

などなどと、妙ちくりんな話をウジウジと並べたてる、こういう性格こそがブラームジアーナーたる所以なのですが。(苦笑)

ともかく、今年ご紹介するブラームスのシンフォニーCDは本当に少ないのですよ。フィナーレと呼ぶのもはばかれる枚数ですが、順にご紹介してゆきます。

交響曲第1番

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クリストフ・エッシェンバッハ指揮北ドイツ放送響(2000年録音/En Larmes盤)

いきなり海賊盤CD-Rが登場するあたり、今年の不作を物語りますが、エッシェンバッハのブラームスは昨年、ヒューストン響と録音した交響曲全集をご紹介しました。まるでドイツのオケと間違えるような響きを醸し出したスケールの大きな名演奏ですが、細部にこだわって聴いてみると微妙な違いにはどうしても気付かされてしまいます。そこで、北ドイツ放送響あたりとの再録音を望みたいと書いたのでしたが、その夢が多少でも適ったのが、この海賊盤です。海賊盤のCD-Rにはメジャーレーベルの正規盤以上の音質のものも数多く存在しますが、もちろん逆のものも有ります。En Larmesはレーベルとしては優秀な方だと思っていますが、実際に聴いてみるまでは分かりません。
で、このディスクの音質は最優秀では有りませんが、合格です。最強音時に僅かに音のざらつきをを感じますが、全体的にはバランスも良く、下手なアナログ・リマスター盤よりはずっとまともです。EMI録音のヒューストン響と比べても、やはりドイツのオケの音を聴いている実感が湧いてきます。実際に聴いたこのオケの生の音に近いのが嬉しいです。シュターツカペレ・ドレスデン、それにゲヴァントハウス管と並んで、ドイツの三大ブラームス・オーケストラと僕が考えている北ドイツ放送響のいかにも「プロシア的」な厚く暗い響きを聴くことが出来ます。エッシェンバッハの指揮は遅めのテンポでスケールが大きいですが、そこに微妙なテンポの加減を与えて情熱的に盛り上げます。全体のバランスや造形性を損ねたりしないのが実に素晴らしいです。あのフルトヴェングラーやカラヤンが失敗するブラームス演奏の愚を決して行なったりはしません。ますます、このオケとの組み合わせで全集録音を聴いてみたくなります。

交響曲第3番

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コリン・デイヴィス指揮シュターツカペレ・ドレスデン(1992年録音/Profile盤)

ディヴィスはSKドレスデンの首席指揮者にこそ就いたことは有りませんが、数多くの共演、録音を行ないました。これは1992年の本拠地ゼンパーオーパーでのライブ録音です。このオケのブラームスというと、どうしても不動の名盤であるザンデルリンクの全集録音と比べてしまうので気の毒です。それはともかく、ディヴィスの演奏のテンポは遅めですが、ザンデルリンクよりは速いです。リズムの腰の座り方もザンデルリンクのテコでも動かない安定感と比べれば遜色を感じます。それは単にテンポの問題では無く、リズムの刻みの深さの違いだと思われます。ただし、旋律をだらしなくベタベタと歌い崩さないのは理想的です。オケの響きについては、ザンデルリンクが正にこのオケの持つ古雅な響きが最も魅力的であった1970年代に録音しましたので、それを越えることは不可能です。それに実演のハンディでもあるのでしょう、頭の音に微妙なズレを感じることが幾度となく有ります。従って、どうしてもザンデルリンク盤には劣る印象ですが、”最高のブラームス・オーケストラ”という肩書きを返上する必要は有りません。同じ年代の録音で、これ以上のブラ3の演奏もそうそう思いつかないからです。それがシュターツカペレ・ドレスデンたる所以です。

交響曲第4番

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クルト・ザンデルリンク指揮スウェーデン放送響(1990年録音/WEITBLICK盤)

”ブラームス演奏の神様”ザンデルリンクのブラ4と言えば、代表的なところでは1972年のSKドレスデン盤、1984年のミュンヘン・フィル盤、1990年のベルリン響盤があります。今回のスウェーデン放送響盤と同じ年の録音であるベルリン響盤は、もたれるほどに遅いテンポによる沈み込むような味わいの名演奏でした。但し、聴いていて時に覇気に欠けるように感じてしまう部分も有ります。このスウェーデン放送響盤ではテンポは遅めですが、ベルリン響盤のようにもたれる印象は受けません。これは実演による流れの良さが有るからでしょう。特筆すべきは、旋律を大きく歌わせて、感情を思いきり吐露していることです。その点では、これまでの客観的で大袈裟に感情移入しない演奏スタイルとはだいぶ異なります。晩年においてもザンデルリンクは決して枯れることなく、非常にロマンティックなハートを持ち続けていたことの証明です。スウェーデン放送響の音はドイツ的というわけでも無いのですが、とても美しくブレンドされた厚みのある響きでブラームスを堪能させてくれます。やはり優れたオーケストラです。録音が生々しいのも理想的で、残響過多のベルリン響盤よりもずっと好みます。ザンデルリンクのブラ4では、これからSKドレスデン盤と並んで愛聴しそうです。カップリングされているのは「悲劇的序曲」ですが、交響曲全集の新盤にこの曲は含まれていなかったので大変貴重です。演奏も実に素晴らしいです。ということで、これを今年聴いたブラームスのシンフォニーのCDのベスト盤にしたいと思います。

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ルドルフ・ケンぺ指揮BBC響(1976年録音/BBC Music)

ケンぺは同じドイツの指揮者でもザンデルリンクのような重量級では無く、中量級のイメージです。リズムにテコでも動かないような念押しは有りませんし、表情を刻々と変化させてゆく軽妙なフットワークを持っています。それでももちろんドイツ人ですので音楽を上滑りさせるようなことはありません。特にこの晩年のライブでは、英国放送のオーケストラを感情豊かに歌わせて、聴き手の心に強く訴えかけています。元々ケンぺはスタジオ録音では冷静で居ても、実演になると気迫を前面に押し出して、聴衆を圧倒するタイプでした。カール・ベームに似ています。ここでも、その実演での良さが一杯に現れています。第1楽章では後半になればなるほど熱気が増してきて非常に充実感を感じさせます。第2楽章は中庸で引き締まったテンポですが、旋律が充分に歌い切れていて寂しい情感が心に深く染み入ります。第3楽章では他の楽章とのバランス的には幾らか遅めに感じます。爆演とはかけ離れた充実した響きと重みのある素晴らしい演奏です。ドイツのオケに比べて金管の音質が明るめなのと、トランぺットの音量が高めなのが少々引っ掛かりますが、許容範囲です。終楽章も好演です。イギリスのオケにこれだけのブラームスを演奏させるのは決して容易なことでは無いと思います。カップリングはシューベルトの交響曲第5番ですが、これも素晴らしい演奏です。

ということで、今年もまた「秋のブラームス祭り」にお付き合い下さいまして誠にありがとうございました。次回は、シベリアからやってくる冬将軍閣下の到来に合わせて「冬のロシア音楽祭り」をスタートします。

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ブラームス(交響曲第1番~4番)」カテゴリの記事

コメント

ハルくんさん、おはようございます

今回ご紹介頂いた中では、ケンペの4番だけを持っています。このCDは、昔あったクラシック音楽の“掲示板”で大変評判になったものですね。私は、英国系のオーケストラの少し“くすんだ”様な響きによるブラームスも好きですので、この曲を聴きたくなった時に、よくこのCDを引っ張り出します。但し、他の演奏でも、楽しめてしまいますが。

先日、FM放送でブロムシュテット指揮、NHK交響楽団の演奏が実況放送され、手作業しながら聴いていましたが、思わず手を止めて聴き入ってしまうほど見事な演奏でした。
HABABI

投稿: HABABI | 2013年11月30日 (土) 05時07分

HABABIさん、おはようございます。

ケンぺ/BBCの4番はそんなに評判になったのでしたか。知りませんでした。
確かにドイツ/オーストリア以外ではイギリスの楽団のくすんだ音色はブラームスの響きに一番有っているように感じますね。

ブロムシュテット/N響のFM放送は聴いていませんが、年末にTV放送が有るのかな?聴きたいですね。

投稿: ハルくん | 2013年11月30日 (土) 11時00分

ハルくんさん、こんにちは。
私も今年は 交響曲以外の作品のCDに目が行きがちで、交響曲は テンシュテット/北ドイツ放響のブラ1の1992年ライブ(海賊盤CDR)しか購入していません。(笑)
この演奏は ライブだからでしょうか、かなりテンポを動かしていますが 違和感はありません。不思議な名演奏です。やはり オケの力もあるのでしょうか?

投稿: ヨシツグカ | 2013年11月30日 (土) 11時37分

ヨシツグカさん、こんにちは。

海賊盤CDRは玉石混合ですので、余り積極的には購入していませんが、正規録音で聴けない素晴らしいものが数多く存在しますね。
宝くじを買うようなものなので、今後もそれほど買うつもりは無いのですが、良いものを聴いたあとには段々と麻薬中毒に陥ってゆくような怖さを感じます。(笑)

テンシュテット/北ドイツ放響のブラ1は聴いていませんが、このオケがブラームスに非常に適したオケであることは疑う余地が無いですね。フルトヴェングラーのブラ1の演奏の中でも、やはりこのオケとの演奏が一番違和感を感じさせませんでした。

投稿: ハルくん | 2013年11月30日 (土) 12時12分

 ハルくんさん、こんにちは。本格的な寒さが到来しましたね。今年の秋はブラームスよりバッハとリストばかりを聴いていた気がします。
 確かに北ドイツ放送響のブラームスは良いものが多いですね。僕はヴァントやギーレンが北ドイツ放送響と組んだ録音をよく聴いています。ギーレンの爽やかなロマンが感じられる演奏は、結構癖になります。
 ケンペは1番好きな指揮者と言ってもいいかもしれません。慣れないオケでも自由自在に操る彼の統率力には惚れ惚れします。ベルリン・フィルとの全集を初めて聴いた時の感動は忘れられません。

投稿: ぴあの・ぴあの | 2013年11月30日 (土) 15時59分

ぴあの・ぴあのさん、こんにちは。

本当に寒くなって来ましたね。音楽を集中して聴くにはとても良い季節です。

ヴァント/北ドイツ放送響盤はよく知られていますが、ギーレン盤が有ることは知りませんでした。レアな音源なのでしょうか。

ケンぺも職人タイプですね。そのわりに演奏は意外と出来不出来が有るように思いますが、ベルリンPOとのブラームスは良かったです。後年のミュンヘンPOとのものよりも良いと思いました。

投稿: ハルくん | 2013年11月30日 (土) 17時30分

 わああ~、大変な間違いをしてしまった、と気づいたら、すでに返信をいただいた後でした…。
 すみません、ギーレンが振っていたのは手兵の南西ドイツ放送交響楽団です。演奏が素晴らしいことに変わりはありませんがドイツの放送交響楽団という共通点があるとはいえ、音は全く違いますからね…大変失礼しました。

投稿: ぴあの・ぴあの | 2013年11月30日 (土) 18時29分

ぴあの・ぴあのさん

いえいえ、わざわざご訂正ありがとうございます。
南西ドイツ放送交響楽団であれば、コンビとしては納得できますが、それでもこの人のブラームスって珍しいですよね。
聴いてみたい気持ちには変わりありません。ちょっと気に留めておきます。

投稿: ハルくん | 2013年11月30日 (土) 18時38分

ブラームス祭りですか、私も第3交響曲ばかり聴きあさっていましたが、そのなかではディビスとSKDのものに一応引かれました。あのザンデルリンクのあの演奏とはどう違うのだろうと。それが大部違うのですね、同じオケでなぜにこうも違うのでしょうか?。
そう言えば、アバドにもSKDとの3番がありますが、こちらの方はもっと違うというか、こうではないと言うか??去年だったか日本で行われたティーレマンの演奏会でのものも、やはり私には満足出来るものではなかったのです。そうするとやはりザンデルリンクのものは最高である理由もわかって来るような気がします。適切な表現かどうかですが無骨なのです。そこがいいのでしょうか?先日、家の中、PCの中をあさりましたが出てこなかったのでそのうちまたゲットしようかと思っています。とまあここまで昨日書いていたのですが、今日買ってきちゃいました。ザンデルリンクの旧全集を。やはりなんとも言えぬ味わい、やはりこれなのでしょうか、第3交響曲の最高峰は。ブロムシュテットのNHK交響楽団とのものをこれからテレビで放送します。今2番が流れています。会場にい合わせた私ですが、VTRどんなでしょうか。楽しみです。評判はなかなかよかったようですが。

投稿: まつやす | 2013年12月 1日 (日) 21時24分

実はブロムシュテットのゲヴァントハウスでブラームスの2番が発売されていますよねえ5枚組のライブセットです。そちらも今日、手にいれましたのでNHKの放送が終わった後に聴いてみようとかと思います。こちらは演奏時間からして第一楽章の提示部繰り返しをしているようです。4番も聴いてみたいなあ、デッカの録音が有りますよね、3番はケルンWDRとのものがあるようです。そちらも聴いてみたいなあ。

投稿: まつやす | 2013年12月 1日 (日) 21時48分

ブロムシュテットとNHK交響楽団のブラームス第3交響曲を聴き終わりました。いや見終わりました、がただしいでしょうか。やはり非常にむずかしいのですねえ、この曲は。第一楽章はおお、これはすごい演奏になるかもと思わせるものでしたが続く第二、第三楽章が今一でしたでしょうか。 最終楽章はそのハンディを吹き飛ばすかのように突進していくようで立派な演奏でしたが、素晴らしく気に入ったというほどではありませんでした。やはり演奏も聴き方も難しい曲なのです。ブロムシュテットは楽章のあいだにほぼ指揮棒を下ろしませんでした。でもN響、頑張っていましたね。ケルンWDRとの2009年のものがインターネットで聴けるようです。ブラームスの3番で検索してみて下さい。ブラームス第3交響曲キチガイからのお知らせでした。

投稿: まつやす | 2013年12月 1日 (日) 22時45分

まつやすさん、コメントを沢山ありがとうございます。

”ブラ3キチガイ”ですか。(笑)
正に「ブラ3祭り」ですね。恐れ入ります。

そうなのですよね。ブラ3の演奏はディスク購入したものや、そうでないものやら随分色々と聴いてはみましたが、結局ザンデルリンクの旧盤以上のものにはお目にかかれていません。本当に演奏の難しい曲だと思いますね。

同じオケだと言っても、70年代のSKDと90年代以降のSKDとは全く同じではなさそうです。もちろん現在でも素晴らしいオケですが、70年代に持っていた味わいは特別ですね。ソロ奏者の魅力は、当時のウイーンPOをも凌ぐような気がしてなりません。
そのオケとブラームスを指揮して最高の指揮者との一期一会の出会いがあったので、あのような演奏に成ったのでしょう。そんな風に思っています。

昨夜のブロムシュテットとN響のTVは2楽章から観ました。良い演奏でしたね。生で聴けばかなり満足できたのではないでしょうか。ただ、テレビ放送だと、やはり限界を感じますね。
しかしブロムシュテットの元気さには驚きます。ピンと真っ直ぐ立って、スタスタと歩いていて、とても高齢を感じさせません。
現役をまだまだずっと続けてほしいものですね。

投稿: ハルくん | 2013年12月 2日 (月) 11時59分

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