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2013年11月 1日 (金)

ブラームス 弦楽六重奏曲第1番&2番 ジュリアード四重奏団のライヴ盤

僕は基本的にはサッカー・ファンなので、プロ野球にはそれほど興味が湧かないのですが、今年の野球は面白いですね。メジャーリーグではボストン・レッドソックスが優勝しましたが、田沢が活躍し、上原が胴上げ投手となりました。直前に、かつてボストンで活躍した小澤征爾さんが二人を激励したのが良かったのかな?

日本シリーズでも、東北楽天ゴールデン・イーグルスと読売ジャイアンツが熱戦を繰り広げていますね。連日テレビで観戦して声援を送っています。東京育ちの自分は一応はジャイアンツ・ファンなのですが、今回ばかりは楽天に肩入れしています。未曽有の大震災が起きて、いまだに元の生活を取り戻せないでいる多くの人を含めて、東北の人たちの大きな励ましに成っていると思うからです。東北に力を!頑張れ!

そんな今年の秋もいよいよ深まってきました。”秋のブラームス祭り”はまだまだ続きます。ということで、今日のお題は、弦楽六重奏曲です。

51mbmz9qbalジュリアード弦楽四重奏団、ワルター・トランプラー(Va)、レスリー・パーナス(Vc:第1番)、バーナード・グリーンハウス(Vc:第2番)(1964-65年録音/Dremi盤)

ジュリアード弦楽四重奏団と言えば、自分が初めてその名前と演奏スタイルを知ったのは吉田秀和さんの著書からでした。確か高校生の頃だったと思います。その著書によれば、『ブダペスト四重奏団の正確無比なアンサンブルを更に研ぎ澄まして、まるで精密機械のような演奏を行う』というような紹介だったと思います。そこで、実際に吉田さんのお薦めのベートーヴェンの中期弦楽四重奏セットを購入して聴いてみたのですが、自分にとっては当時好きだったブッシュ四重奏団やブダペスト四重奏団に比べると、余りにも味気の無い演奏に感じられたので余り好きには成れませんでした。

そのイメージが強かったので、その後も余り積極的に彼らの演奏を聴くことは有りませんでした。ところがそんな彼らのイメージが大きく変わったのは、1990年代に録音された、ブラームスのクラリネット五重奏曲を聴いてからです。この団体で50年もの長い期間、第一ヴァイオリンを弾いてリーダーを務めたロバート・マンの奏でる音楽が、以前とは違って何か非常に大きなものに感じたからです。「これは、まるでヴァイオリンの大巨匠の音楽ではないか!」というようにです。それをきっかけに弦楽四重奏や五重奏を聴きましたが、どれもやはり同じように気宇の大きな音楽でした。更にベートーヴェンの弦楽四重奏曲の二度目の全集録音を聴いてみたところ、ライヴ録音ということもあって、かつての精密機械みたいで味気の無い演奏とは全く異なりました。正確さや緻密さは後退していますが、ここには偉大なベートーヴェンの魂しか感じさせないような真に音楽的な演奏が有ったのです。

ところが、更に改めて、かつての1960年代から70年代にかけて録音された旧全集盤を聴き直してみると、表面的には精密機械のようではあっても、ロバート・マンのロマンティックな資質がそこに見え隠れていることに気付きました。高校生の頃にはとてもそれを聞き取る耳は持っていなかったということですね。

今回ご紹介するCDは、カナダのDremiレーベルからリリースされた、1964年と65年にワシントンの米国議会図書館のホールで行われたライブ録音です。世界有数のこの図書館には室内楽ホールが併設されていて、昔から多くの大物演奏家がコンサートを行っています。かつてはホールのレジデンス・カルテットとして、ブダペスト四重奏団が担当をしていましたが、その後を引き継いだのがジュリアード四重奏団です。それは正に、ニ十世紀の最も偉大なカルテットのバトン・タッチだとも言えるのかもしれません。

何しろ、彼らはこの二曲のスタジオ録音は一度も行っていません。それを聴けるというのは大変に貴重です。もちろん六重奏ですので、ジュリアードSQの四人に加えて、ヴィオラとチェロが一人づつ加わります。ヴィオラには名手として有名なワルター・トランプラーが、そしてチェロにも名手レスリー・パーナスが第1番に、バーナード・グリーンハウスが第2番に参加しています。

演奏を聴いてみると非常に興味深いものでした。1960年代当時の彼らはスタジオ録音では、あれほどまでに機能的に研ぎ澄まされた演奏を行なっていましたが、それよりも晩年の演奏に近いようなロマンティックな情緒を感じさせます。とは言っても、精度が高く、ダイナミックで切れ味の良いスタイルは、やはりジュリアードSQです。全盛期の機能性と晩年の情緒性の両方を兼ね備えた演奏は、ライヴのせいかもしれません。どの団体も実演では、自然な高揚感に溢れる演奏を行う傾向にありますので。

第1番には、パブロ・カザルス、アイザック・スターン達の破格の演奏や、アマデウスSQとアルバンベルクSQのメンバーが合同で行った名演奏が有りますので、それ以上だということは有りません。けれども充分に存在感の有る演奏です。一音一音を噛みしめるように演奏して、熱い青春の息吹を感じさせて感動的です。ジュリアードSQのイメージとは余り重ならないこの曲がこんなに素晴らしいとは驚きです。終楽章の立体的な造形性もすこぶる聴き応えが有ります。

第2番では、アマデウス&アルバンベルクSQのライブ録音盤が、この曲の控え目な曲想に対しては幾らか大袈裟な気がしていて、むしろ昔のウイーン・コンツェルトハウスSQたちの演奏が好きでした。ジュリアードSQたちの演奏は、よく歌ってはいても表情の度をわきまえているように感じます。第2楽章スケルツォのあのいじらしい主題が何ともチャーミングです。第2番に関しては、W.コンツェルトハウスSQたちの名盤に並ぶ魅力を感じます。

この録音は恐らくCBSが行ったのだと思います。同時代のブダペストSQやジュリアードSQの録音での、残響が控え目で楽器の分離の良い音と非常に似かよっています。個人的には残響過多なEMIの録音あたりよりもずっと好きです。音揺れも有りません。特に第1番の録音が明瞭で快感です。第2番の方は1年古いだけなのに少々鮮度が落ちている印象です。

一見マニアライクなディスクに思えそうですが、聴いてみれば非常に魅力的な演奏ですので、広くお勧めしたいと思います。

<関連記事>
ブラームス 弦楽六重奏曲集 名盤 ~恋人達~

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ブラームス(室内楽)」カテゴリの記事

コメント

ハルくんさん、こんばんは。
ブラームスの弦楽六重奏曲といえば、映画"恋人達"で有名になった 第1番ですよね。この曲に関しては、カザルス達の超弩級の演奏は 確かに "これ以上ない" と思いますが、時々、「ブラームスの音楽を越えちゃっている・・・?」と感じる事があるので、私は コンツェルトハウスQ他のCDも聴いていますが、ジュリアードQ盤も良さそうですね。なんと言っても ヴィオラにトランプラーが入るのは か・な・り 魅力的です!(笑)
貴重な情報を、ありがとうございます。
さっそく、Amazonに・・・。(笑)

投稿: ヨシツグカ | 2013年11月 1日 (金) 22時21分

ヨシツグカさん、こんばんは。

最近は2番もとても好きですが、やはり1番の熱い情熱は魅力的です。

カザルス達の演奏がブラームスの音楽をはみ出しているというのは正しいかもしれません。しかしあれほど強い説得力が有ると有無を言わせませんね。
その点では、アマデウス&アルバンベルクやこのジュリアード達はブラームスの音楽の範囲内に収まっての名演だと思います。

Amazonで検索される場合に、もしも見つからないときには、アルバム・タイトルの「Live at the Library of Congress 3」だと直ぐに見つかると思います。ご参考までに。

投稿: ハルくん | 2013年11月 1日 (金) 23時49分

こんにちは。

ジュリアードSQはグールドとの共演でシューマンのピアノ四重奏がありましたが、正確無比という点では相性がいいのでしょうかね。

六重奏曲一番のスターン/カザルス盤はやはり凄いです。カザルスもさることながらスターンの熱演は感動的です。

第二楽章は作曲者によるピアノ版があり、演奏はかなり難しいのですが、たまにアマチュアも弾いていますね。ピアノ版では弱々しい演奏が多いです。弦楽と併せて聴いてみると、本来フォルテで始まるべき情熱的な音楽なのだなあと改めて思います。

投稿: NY | 2013年11月 2日 (土) 22時06分

NYさん、こんばんは。

ジュリアードSQもグールドもスタジオ録音には非常に完成度にこだわったというところは似ているかもしれませんね。

カザルス盤ですが、若きスターンと、そのスターンを呼び寄せたシュナイダーの二人のヴァイオリンも最高ですね。精神的な支柱は、もちろんカザルスなのでしょうけれど。

作品18のピアノ版ですよね。名曲はどのようなアレンジでもやはり名曲ということですね。
演奏スタイルが変わるのは、もしや楽譜の指示が異なるのでしょうか?見たことはありませんが。

投稿: ハルくん | 2013年11月 2日 (土) 23時28分

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