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2013年10月19日 (土)

ブラームス ヴァイオリンとチェロの為の協奏曲 ツェートマイヤー&メネセス ザンデルリンク/ケルン放送響

今年新しく聴いたブラームスのヴァイオリン協奏曲のCDでは、リサ・バティアシュヴィリの新盤が驚きの名演でしたが、その感想は既に記事にしてしまいました。
一方、ヴァイオリンとチェロの為の協奏曲については、これまで聴いて来たCDに加えて、また一つ素晴らしいCDが加わりましたのでご紹介します。

このCDを聴いた理由はただ一つ。”ブラームス演奏の神様”クルト・ザンデルリンクが指揮をしているからです。「ブラームスと言えばザンデルリンク。ザンデルリンクと言えばブラームス・・・・」と、まるで念仏?のように唱え出してから、はや40年。この人の演奏を聴くたびに、その信仰心は高まるばかりでした。しかし、その教祖様も2年前に天上界へ帰られました。師が世に残していった多くの教え(=CDのこと)から、もっともっと多くのことを我々は学んでゆきましょう・・・って、何だか怪しい雰囲気になってしまいました。(笑)
とにかく、その洗礼を受けたファンにとっては、宗教に例えられるくらいザンデルリンクの演奏するブラームスは特別な存在だということです。

Ph08005トーマス・ツェートマイヤー(Vn)、アントニオ・メネセス(Vc)、クルト・ザンデルリンク指揮ケルン放送響(1985年録音/Profile盤)

 
ザンデルリンクの残した「ヴァイオリンとチェロの為の協奏曲」の録音は自分が記憶する限り、他には無かったと思います。これはケルンのフィルハーモニー・ホールにおけるライヴ演奏です。

第1楽章は一般的なテンポよりも遅めで、どっしりとした構えです。緊迫感よりはスケールの大きい広がりが感じられる点で、1990年頃に録音されたザンデルリンクのブラームスの交響曲全集の新盤に通じる印象を受けます。それは晩年のザンデルリンクのスタイルなのでしょうが、決して緊張感が失われているわけでは無いのが素晴らしいです。ヴァイオリン独奏のツェートマイヤーはオーストリア出身の実力派ですし、チェロ独奏のメネセスもこの曲をカラヤンのDG録音でムターと共に演奏した実績を持つ名手です。ですので二人ともザンデルリンクの立派な指揮に聴き劣りしない見事な演奏を繰り広げています。けれども、それは独奏者として突出して目立とうというタイプの演奏では無く、あくまでもザンデルリンクの創り出す巨大な音楽と一体化したような演奏です。例えてみれば”救い主に忠実な二人の使徒”とでも表現できるかもしれません。

第2楽章に於いては管弦楽と独奏との一体感は更に高まってゆき、柔かく溶け合った合奏の響きが、つくづくブラームスを聴くことの喜びを与えてくれます。うーん、やっぱりザンデルリンクは神様だなぁ。

第3楽章もかなり遅いテンポですので、普段慣れ親しんだこの曲の印象とはだいぶ異なります。フレーズ毎に念押しをして重量感有るこの演奏を聴いた後だと、他の演奏が恐らく足軽に感じられることと思われます。もちろん好みの問題は有りますが、このスケールが巨大で滋味に満ち溢れた演奏は他の演奏とは完全に一線を画しています。

このディスクの録音は音質的には悪くありませんが、コンサート会場のずっと後方で聴くようなライブ感に溢れる音ですので、聴き手の好みは分れるかもしれません。個人的にはもう少し残響が押さえられても良いように思いますが、分離が特別に悪いということでもないのでこれで良しとします。あるいは使用するオーディオ機器によっては逆に満足出来るかもしれません。

この演奏は、これまでの愛聴盤のシェリング/シュタルケル/ハイティンク盤、シュナイダーハン/シュタルケル/フリッチャイ盤、レーン/トレスター/Sイッセルシュテット盤、メニューイン/トルトゥリエ/ベルグルンド盤などに充分伍するか、あるいはそれ以上の名演奏だと思います。

なお、このCDは二枚組で、もう1枚には同じ日のべートーヴェンの「田園」が収められていますが、そちらも同じように巨大なスケールで滋味溢れる素晴らしい演奏です。

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コメント

ハルくんさん、こんにちは。
私は、シュタルケルの演奏するブラームスが大好きなので、「ドッペル」は フリッチャイ盤を第1にハイティンク盤を第2に 愛聴しているのですが、"ヨハネス=ザンデルリンク教"(笑)の信者として、この教典は 是非 聴かなくては・・・。(笑)
CDのご紹介,ありがとうございました。

投稿: ヨシツグカ | 2013年10月19日 (土) 11時59分

ヨシツグカさん、こんにちは。

シュタルケルのブラームスはイイですよね。
男性的な引締まった音も魅力的ですが、演奏には背筋を伸ばしてスックと立った中年の紳士のような雰囲気を感じます。

ザンデルリンク盤には、フリッチャイ盤やハイティンク盤とはまた一味も二味も違った魅力が有ります。
”念仏”を唱えながら、是非この経典を聴かれてください。神様は敬虔な信者には必ず”倍返し”してくれると思いますよ。(笑)

投稿: ハルくん | 2013年10月19日 (土) 13時28分

ハルくんさん、こんばんは。
先日、この「ドッペル」や ジュリアードの「弦六」、エマーソンの全集等、ブラームスのCDを5組ほど購入して、気分は"ブラームス収穫祭"のようで ただいま、至福の時を迎えています。(笑) う~ん 秋は やっぱりブラームス・・・。
さて、神様 ザンデルリンクの "ドッペル"聴いてみました。最初 聴いた時 特に第1楽章のテンポに驚いたものの だんだん"神様"の虜になっていき、何度も繰り返し聴くうち、その ブラームス演奏の"神髄"に聴き惚れています。第2楽章の 二人の使徒と共に紡ぎだす 味わいの深さや 第3楽章の あのコラールのようなフレーズは まるで 晴れた秋の日の夕映えのような なんとも心に染み入る"音楽"を感じました。
ブラームスファンで本当に良かったです。

投稿: ヨシツグカ | 2013年11月 8日 (金) 22時26分

ヨシツグカさん、こんばんは。

気分は"ブラームス収穫祭"。本当にそうですね。今年の収穫に感謝して、また来年の豊作を祈るという、正にブラームジアーナーの秋の祭礼です。

それにしてもこれは、二人のソリストが少しも前面に出ないで、完全に"ザンデルリンクのドッペル"というユニークな名演ですね。
お気に入られて良かったです。

投稿: ハルくん | 2013年11月 8日 (金) 23時28分

こんばんは。

ザンデルリンクの「田園」、本当に素晴らしいです。
響きは立派ですが決して厚ぼったくならない
テンポは速すぎず遅すぎず、リズムも確か、脱帽です。
私はザンデルリンクについて詳しくは知りませんが
並々ならぬ苦労があったと忍ばれます。
終楽章はまさしく、人間の精神の勝利ではないでしょうか?

同じことを書いて申し訳ないのですが
こうした名演・好録音を聴くと
ブラームスの交響曲全集の新盤の録音の
マズさが残念でなりません。

投稿: 影の王子 | 2016年7月10日 (日) 21時22分

影の王子さん、こんにちは。

「田園」の演奏の方ですね。晩年のザンデルリンクはの演奏は特に立派でしたね。
ブラームスにも素晴らしい演奏が幾つも有りますが、交響曲全集の新盤はおっしゃる通り録音が遠すぎて感心しませんね。オケもSKドレスデンと比べるとかなり落ちます。それを残響の多さで隠そうとしているように感じてしまいます。

投稿: ハルくん | 2016年7月13日 (水) 12時48分

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