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2013年8月10日 (土)

ベートーヴェン 弦楽四重奏曲第13番変ロ長調 作品130 &「大フーガ」作品133 名盤

いやはや今年の夏は暑いですね!こう暑くては記事を書く筆(キーボード?)もすっかり鈍ります(汗)。いえ、本当はベートーヴェンの後期弦楽四重奏曲の凄さ、深さに改めて感じ入ってしまい、同じ演奏を何度も繰り返して聴いてしまって進まないだけなのです。2週間ぶりですが、ようやくアップできました。アップ、アップ・・・(笑)

ベートーヴェンの後期弦楽四重奏曲の、第13番から第15番までの3曲は楽譜が出版された順に作品番号が付けられたために、実際に書かれた順序とは異っています。第15番と第13番はほぼ並行して作曲が進められましたが、完成した順でいうと第15番→第13番→第14番です。

3曲の大きな特徴としては、それまでの古典的な4楽章構成ではなく、曲を追うごとに楽章の数が増えてゆくことが上げられます。それはベートーヴェンが既に外面的な形式から解き放たれて、自らの心の奥底へと深く入り込んで行った結果では無いでしょうか。実際、ここで聴かれる音楽の自由さ、深淵さは、既に書き終えていた9曲のシンフォニーをも凌駕すると思います。

ブログの記事としては一応、作品番号順に進みたいと思いますので、今回は第13番です。

第13番は全6楽章形式ですが、この曲には大きな問題が有ります。最初に書かれた楽譜では終楽章に大規模なフーガが置かれていましたが、余りに難解で長大であったことから、出版される段階で周囲に説得されて、新しい終楽章と入れ替えられました。それが現在の作品番号130です。削除された最初の終楽章は、単独で作品番号133「大フーガ」として出版されました。

弦楽四重奏曲第13番変ロ長調 作品130

第1楽章 アダージョ・マ・ノン・トロッポ~アレグロ

第2楽章 プレスト

第3楽章 アンダンテ・コン・モト・ノントロッポ

第4楽章 アレグロ・アッサイ

第5楽章 カヴァティーナ アダージョ・モルト・エスプレッシーヴォ

第6楽章 フィナーレ アレグロ

「大フーガ」変ロ長調 作品133

ということから、大フーガが終楽章のものが初稿、アレグロに置き換えられた現在のものは云わば改訂版となるわけですが、いかんせん改訂版が作品番号130として楽譜出版され、大フーガは単独で作品番号133となったために、長いこと初稿は日の目を浴びずにいました。けれども、徐々に見直されるようになり、現在では大フーガを終楽章に置いた初稿が演奏されるケースも珍しくは無くなりました。

比較的短く(それでも長いですが)馴染み易い改訂版の終楽章よりも、最初の大フーガのほうが聴きごたえが有るのは事実です。新しい終楽章も自由闊達で愉悦感に富み、非常に魅力的なのですが、大フーガの仰ぎ見るような立体感と崇高な祈りの感動の前には少々影が薄くなります。

改定版になって全体のバランスは整いましたが、後期のベートーヴェンらしいずしりとした手ごたえは失われて、作品が軽くなった感が有ります。もしも大フーガが終楽章のままであれば、第13番は第14番、第15番に遜色が無かったと思います。周囲の助言を聞き入れて、解り易く書き替えてしまい、本来の良さが失われるというのはブルックナーの場合と同じですね。

終楽章の話ばかりに成りましたが、第3楽章アンダンテ、第4楽章のドイツ舞曲(レントラー)風のアレグロも美しい旋律が何か懐かしい気分にさせられるので、とても好んでいます。第5楽章カヴァティーナでのベートーヴェンの心の哀しみには大変胸を打たれます。

楽章の数が多く、比較的短い曲が並びますので、この曲と第14番は全体的にディヴェルティメントか組曲のような印象も受けますが、それだけベートーヴェンの魂の自由な飛翔だと言えるのかもしれません。

CDでは多くの演奏家は改訂版で演奏を行い、その後に付属の形で大フーガを収録するというのが慣例です。もちろん楽譜上で文句は有りませんが、何度も聴いていると、この曲があたかも7楽章構成であったかのような気になってきます。一方、初版を選ぶ演奏家も少なくありません。終楽章を大フーガで演奏して、その後に新しい終楽章を収録するという、初稿主義を示しています。たとえばヴェーグ、スメタナ、ラサール、アルバン・ベルク、エマーソンなどです。演奏家のポリシーを知るのは興味深いことです。

個人的には、やはり改定(改悪?)版よりも初稿が優れていると思うので、第6楽章までを鑑賞するのであれば、初稿で聴くのが好きです。ただ、その場合、大フーガの後に新しい終楽章を聴くことになってしまうので、これはどうしても頂けません。改定版、すなわち作品130を聴いてから、続けて大フーガを最後に聴く分には余り抵抗を感じないので、結局は改定版+大フーガという7楽章の曲として鑑賞するのが一番好きです。

実は、ウイーン・ムジークフェラインSQのCDのライナーノートを書いている近藤憲一氏によると、この曲は元々全7楽章構成で書かれていて、初演も7楽章で行われたとあります。その楽譜は第5楽章までは同じですが、第6楽章が作品130の終楽章アレグロ、第7楽章が大フーガであったとされています。出版される際には、難解な大フーガを削除して、第6楽章のコーダを手直しして作品130の形となったと書かれています。通説とは大きく異なりますし、真偽のほどは分りませんが非常に興味深い説ではあります。

それでは僕の愛聴盤のご紹介です。

00143708ブッシュ弦楽四重奏団(1941年録音/CBS盤) ブッシュ達がアメリカに移住後の録音です。LP時代には弦楽合奏による大フーガがカップリングされていましたが、CDではラズモフスキー1番とカップリングされて、大フーガは省かれています。全体的に速めのテンポで颯爽と演奏していますが、ポルタメントを多用して表情は極めて濃厚。甘い歌いまわしが、とても懐かしい雰囲気を醸し出します。ベートーヴェンの肉声を代弁しているかのような、実に人間的で素晴らしい演奏です。カヴァティーナが何と感動的なことでしょうか。

Barylli_1012リリ弦楽四重奏団(1952年録音/MCAビクター盤) ウエストミンスター録音です。ブッシュほど濃厚ではありませんが、やはり味わいの深い歌は、とても懐かしさを感じさせてくれます。特に第3~5楽章では大きな魅力です。終楽章は改定版ですが、喜びに溢れて弾むような生命力が素晴らしいです。カップリングの大フーガの演奏も立派ですが、余り晦渋さは感じられずにゆったりと歌うのが非常に魅力的です。この曲が少しも難しく無く、自然に良さが感じられるのが凄いと思います。

90650dc0bfe3c81c14f641d351d90ca5ブダペスト弦楽四重奏団(1961年録音/CBS盤) 全集盤です。色気のまるで無い禁欲的な音からは、まるで禅の修行僧のような厳しさを感じます。第1楽章や改訂版による終楽章では、それが圧倒的な聴きごたえとなって迫り来ます。第3、第4楽章では曲想から、幾らか穏やかさが欲しい感が有りますが、大フーガでの気迫と厳しさは尋常では無く、一種近寄り難い雰囲気です。ベートーヴェンの音楽の核心に限りなく迫っていますが、普段そうそう気軽には聴けない演奏だと思います。

151ジュリアード弦楽四重奏団(1970年録音/CBS盤) 旧盤の全集からです。同じ旧盤でも60年代前半の録音のラズモフスキーとは印象が幾らか異なるように思います。もちろん精緻で完成度が高い点は変わりませんが、機能面から情緒面に傾きだす兆しを感じるからです。要するに後年の彼らへの序章です。カヴァティーナでの深い沈滞が正にそれです。それでも大フーガの完璧な合奏による構築性は正に彼らの真骨頂で圧巻の聴きものです。新しい終楽章は大フーガの後に収録されています。

51jrjljelラサール弦楽四重奏団(1972年録音/グラモフォン盤) 後期四重奏曲集での最初の録音です。アメリカの団体は楽譜に忠実で完成度が高い反面、往々にして無味乾燥に陥りやすいのですが、この演奏は非常に美しくデリカシーに溢れています。カヴァティーナでの高貴さも驚くほどで、非常に胸を打たれます。第6楽章を大フーガで演奏しますが、これがまた立体感と峻厳さを持った演奏で素晴らしいです。リリース当時、あれほど注目された存在だったのに改めて納得です。一方、改定版の終楽章の演奏も素晴らしいので、聴く順番に迷ってしまいます。

V4871ヴェーグ弦楽四重奏団(1973年録音/仏Naive盤) 全集盤です。初版による演奏で、新しい終楽章が後に収録されています。ヴェーグのヴァイオリンを中心とした、ブッシュSQタイプの演奏です。アメリカの団体のように完璧性を求めるのではなく、伝統に基づいた感覚で奏している印象が強いです。ところがそれが実に強い説得力と感銘を与えてくれます。ベートーヴェンの内面がそのまま音化されているかのようです。第3、4、5楽章で滲み出る深い情緒には惚れ惚れさせられます。大フーガでの構築性は幾らか弱いですが、演奏の気迫は凄いです。改定版の終楽章の演奏も実に魅力的です。

Suske_beethoven_late_2ズスケ弦楽四重奏団(1979年録音/Berlin Classics盤) 全集盤です。いかにもドイツの団体らしく、堅牢なリズムで一点一画も疎かにしない、がっちりとした演奏です。レトロな味わいとは異なりますが、大袈裟さの無いオーソドックスな表現の中にも味わい深さを感じます。かつて彼らを実演で聴いた時には音が柔らか過ぎる感も有りましたが、録音では美しい音の割に充分聴きごたえが有ります。ドイツ伝統の四重奏の最良の姿がここに存在します。終楽章は改定版によりますが、併録された大フーガとどちらも素晴らしい演奏です。

D0021969_10143431アルバン・ベルク弦楽四重奏団(1982年録音/EMI盤) 全集盤です。残響過多で分離の悪いEMIの録音は諦めるとして、先鋭的な演奏の中に、ウイーンの団体らしい柔かさを垣間見せます。決して悪い演奏では無いのですが、問題は大フーガです。気迫が凄さまじいのは良いとしても、音のアタックが激し過ぎてヒステリックに感じるのです。少なくとも僕の耳の許容範囲を越えています。その後に収録された、改定版の終楽章も同様に激し過ぎて、本来の愉悦感を損なっています。

G7138122wスメタナ弦楽四重奏団(1982年録音/DENON盤) 全集盤です。終楽章は初版を用いています。オーソドックスな点ではズスケSQと並びますが、ズスケにはドイツ的な堅牢さを感じるのに対して、スメタナにはしなやかさをより強く感じます。それでも決して生ぬるいわけでは無く、第1楽章や大フーガなどには相当の気迫と緊迫感を感じます。速めのテンポの大フーガの立体感も中々のものです。続く改定版の終楽章も、速めで生命力が漲っていて見事です。

51065xicuplジュリアード弦楽四重奏団(1982年録音/CBS盤) ワシントン国会図書館ホールでのライブ録音による新盤です。ジュリアードと言えば機能性に徹した完璧な演奏の印象が有りますが、この新盤ではライブということもあってかなり異なります。テンポは伸び縮みの自由さが有りますし、大胆な音のタメが随所に見られます。多分にロマンティックに傾いた演奏だと言えます。これは恐らく晩年のロバート・マンの持つ音楽性なのでしょう。個人的にはこのようなタイプは非常に好みます。終楽章は初稿ですが、カヴァティーナと両終楽章の間がディスクで分かれているのは困りものです。録音の残響は少ないですが、ステージを目の当たりにするような臨場感が有ります。

Melos_beethoven_lateメロス弦楽四重奏団(1985年録音/グラモフォン盤) 厳格に刻まれるリズムと甘く成り過ぎない音が、やはり彼らがドイツの団体であることを認識させられます。ウイーン的なベートーヴェンも魅力ですが、ドイツ生れの楽聖の毅然とした姿を想像させるドイツ的なスタイルも良いです。もっともその分、4楽章のリズムが重く流れないのと、改定版の終楽章に洒落っ気が不足するのが気に成ります。但し、大フーガには気迫が満ち溢れていて、音に凄みすら感じさせます。これは非常に素晴らしいです。

338アルバン・ベルク弦楽四重奏団(1989年録音/EMI盤) 二度目の全集の第1巻に含まれます。但し、こちらは作品130のみで、大フーガは第2巻に収められています。何故このような編集に成るのか大いに疑問です。演奏そのものは意外に普通で、旧盤で感じられたヒステリックさも有りませんし、彼らのセンスの良い面が出ています。個人的には旧盤よりもずっと好きですが、大フーガと分かれているのが惜しいです。

61vvfzeifl__sl500_aa300_ウイーン・ムジークフェライン弦楽四重奏団(1991年録音/PLATZ盤) 全集盤からです。ウイーンの団体の演奏には独特の甘さと柔かさが有るのが魅力です。本当はウェラーSQが全集を残してくれていればと思うのですが、それは無い物ねだりというものです。この演奏もウイーン的な味わいに先進性を加えていて悪くはありません。大フーガは熱演ですが、全体的には仕上げに幾らか雑さが見られて弾き込み不足を感じます。室内楽専門の団体では無いハンディが出てしまったようです。

Emersonbeethovenエマーソン弦楽四重奏団(1995年録音/グラモフォン盤) 全集盤からです。これがライブとは信じられないほどの完璧さです。4人の奏者は全員が唖然とするほど上手いですが、音楽センスも抜群です。激しいダイナミックスとデリカシーが見事にブレンドされていて、ドイツ的でもウイーン的でも無い普遍的な音楽美を表出しています。聴きものの大フーガでは、厳しい構築性もさることながら、まるで現代音楽のような独特な雰囲気を醸し出しています。非常にユニークかつ圧倒的な名演奏だと思います。

312ゲヴァントハウス弦楽四重奏団(2002年録音/NCA盤) 全集盤からです。厳格にリズムを刻むドイツ風の演奏です。ウイーンの団体のように甘く柔らかく歌い崩したりはしないので、表面的には情緒が薄いようですが、そこはドイツ伝統の血を引く団体ですので滋味溢れる味わいが有ります。音楽そのものを安心して聴いていられる感が有ります。決して古めかしくは無く、新鮮さも持ったとても良い演奏だと思います。終楽章は改定版です。続いて大フーガが収められていますが、これは単に気迫が有るだけでなく、充実仕切った音の素晴らしい演奏です。

後期のこの辺りの作品となると、そう簡単に優劣を語るのも憚れます。けれども個人的な好みで言えば、ヴェーグSQの演奏に最も癒しを感じます。彼らの晩年の録音なので技術的には衰えが見られますが、音楽が限りなく豊かです。そして、もう一つ絶対に外せないのがエマーソンSQです。先鋭的な鋭さに加えて音楽的なセンスの良さには脱帽です。それ以外にもブッシュは別格ですし、バリリ、ラサール、メロス、ゲヴァントハウス・・・みな良いのではありますが。

<追記> ジュリアード四重奏団の旧盤を後から加筆しました。

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ベートーヴェン(弦楽四重奏曲:後期)」カテゴリの記事

コメント

ハルくんさん、こんにちは。
ベートーヴェンの弦楽四重奏曲の中で 13、14、15番は「 深さ」という点では あらゆるクラシック音楽の中でも"特別な"存在だと私は思います。
この第13番は、ご指摘の通り、「大フーガ」の位置付けが難しい作品ですが、私の場合は 現行版(改訂版)プラス「大フーガ」の演奏を 「2部構成の作品」として聴いています。さらに言えば私は この曲のポイントというか、「キモ」の部分を第5楽章のカヴァティーナに置いているので 一般的な聴き方とは違うかも知れませんね・・・。(笑)
ですので 愛聴盤も第5楽章が素晴らしい、ズスケQ盤や ブッシュQ盤になります。この2つの団体による "カヴァティーナ"は なんて感動的なのでしょうか!
(ちなみに、ブッシュQですが、米EMIの後期四重奏曲BOXでは 四重奏曲の後に大フーガ(弦楽合奏版 )を収録しています。)
この作品を書いた ベートーヴェンに感謝ですね。

投稿: ヨシツグカ | 2013年8月11日 (日) 11時13分

 たびたび失礼します。
 大フーガは技術的に尋常でないほどの難しさらしいですね。以前ある四重奏団の実演を聴いたときは、それこそ音を追うだけでアップアップという感じでした。
 アルバン・ベルクは良く言えば迫力がありますが、やはりおっしゃるとおり少々ヒステリックに聴こえてしまいますし、物凄い技術を持つフェルメール四重奏団でさえも苦戦しているようです。多くの録音を聴いたわけではありませんが、聴いた中ではメロスの録音が素晴らしいなあと思います。響きの点では完全に他の四重奏団を圧倒していますね。エマーソンの全集は評判がとてもいいのですが、まだ聴いたことがないので、余裕が出来たら手に入れたいです。

投稿: ぴあの・ぴあの | 2013年8月11日 (日) 14時27分

 ちなみに、大フーガにはベートーヴェン自身によるピアノ連弾への編曲版があります。超絶的に難しいです…(泣)。この版での素晴らしい演奏は、まだ耳にしたことがありません。そもそも弾く人が少ないので…。
 しかし、なんだかんだ言ってもこの曲は音楽史上に輝く傑作ですね!

投稿: ぴあの・ぴあの | 2013年8月11日 (日) 14時34分

ハルくん様

morokomanです。

自分はズスケ、ラサール、ブダペストを聴いたことがあります。

ここでは紹介されていませんが、イギリスのフィッツウィリアム四重奏団のCDを持っています。

ですが、今回の文を読むと、やはりエマーソンですね。聴きたいなぁ。でも調べてみると、ジャケットは今一新されているようですね。ハルくん様ご紹介のジャケットのほうがカッコいいのに。

『シベリウス 親愛の声』以後、自分はエマーソンの追っかけになりそうな感じですね。

さて『大フーガ』といえば、『敬愛なるベートーヴェン』という映画が思い出されます。

エド・ハリスがベートーヴェンを演じた映画ですが、話の途中まで『第九』を機軸に、それ以後は『大フーガ』が基軸になります。

映画では『大フーガ』の初演は散々な評価で、失意のあまりベートーヴェンは気を失ってしまいます。

映画の評価では「なんでこんな構成に?」「第九で終われば、めでたしめでたしで終わるのに、おかしいじゃないか」という意見が満ち満ちていました。

でも、映画監督はここに、創造する芸術家の宿命を表現したかったようですね。

「作曲家は、死ぬまで作曲を続ける。たとえ最高傑作(この場合は第九)をものにしたとしても、彼は作曲することをやめるわけにはいかない。そしてもっと高く、もっと孤独な世界に足を踏み入れていく……。アンナ(映画の主人公)がベートーヴェンから学んだのは、その姿勢なのです」といったことを映画監督がインタビューで話していたのを覚えています。

『大フーガ』は当時の聴衆には理解されませんでした。「もっと高い世界」であるがゆえ、誰もついていけなかったのだと思います。

現在の私達は聴いて感動できますが、これとて優れた録音がいくつもあって、何度も何度も聴き返せるからだと思います。

現在、私のような凡人でも理解できるようになるくらい、さまざまな録音を何度も聴き返せるという、そのありがたさをかみ締めたいものですね。

投稿: morokoman | 2013年8月11日 (日) 22時01分

ヨシツグカさん、こんばんは。

13、14、15番は本当に凄いですね。
何度聴いても新しい発見が有りますね。

仰る通り、現行版(改訂版)プラス「大フーガ」の演奏を 「2部構成の作品」として聴くのが正解なのでしょうね。もし6楽章構成で聴くのならば、断然初稿版を支持しますが、それは正式には存在しない訳ですからね。

キモですねぇ。本心は「大フーガ」と言いたいところですが、作品133ですしね。
ただ、僕は第3、4楽章も相当に好きなのですよ。大フーガ以外は案外フラットなんです。

ブッシュの弦楽合奏版はLPでは持っていますが、やはりカルテットで聴きたかったですね。

投稿: ハルくん | 2013年8月11日 (日) 22時13分

ぴあの・ぴあのさん、こちらへもコメントありがとうございます。

初演の時に大フーガの評判が悪かったのは、演奏が良く無かったせいも多分に有るでしょうね。仮に熱演をしていても、良い演奏とは限りません。メロスは他の楽章は特別ではありませんが、大フーガは素晴らしいと思います。
エマーソンはお聴きになられてみる価値は有ると思いますよ。

ピアノ版は自分も聴いたことが有りません。弦楽合奏版はありますけど。

投稿: ハルくん | 2013年8月11日 (日) 22時25分

morokomanさん、こんばんは。

『敬愛なるベートーヴェン』という映画は観ていませんが観てみたいですね。

そうですね、難曲は良い演奏があって始めて理解されるのでしょうからね。その点、我々は幸せです。この感謝の気持ちを忘れてはいけませんね。

エマーソンの全集良いですよ。再発盤は廉価ですが、確かにジャケットはどうかと思いますね。他のものとシリーズで共通化してコスト削減なのでしょうね。
最初のボックス盤も中古なら結構安く手に入りますけどね。

投稿: ハルくん | 2013年8月11日 (日) 22時37分

私自身、室内楽は本当に手薄なので、現在、進行中のベートーヴェンの弦楽四重奏曲のシリーズは大変楽しみにしています。
私自身が所持しているベートーヴェンの弦楽四重奏曲全集は、安価で手に入れた、こちらでも紹介されているゲヴァントハウス弦楽四重奏団の2002年の録音のみという情けない状態。
ただベートーヴェンの崇高な精神は十分に伝わっているとは思っていますが・・・。
金銭的に余裕がでたら他の全集も手に入れたいと思っていますが、その時、どの全集にするのか、こちらの記事で参考にしたいと思っています。

投稿: オペラファン | 2013年8月12日 (月) 22時06分

ハルくんさん、おはようございます。

いよいよ、ベートーヴェンの後期弦楽四重奏曲も~、佳境の第13番になりましたね。しかしながら、私も弦楽四重奏曲に関しては素人同然なので~、これから貴殿のお薦めのCDをいろいろ聞いてみたいですね~、ただし財布の中身と相談してからですが~。〔笑〕

それにしても、ベートーヴェンの晩年の四重奏曲は余人の及ばない、非常に高く深遠な芸術的・精神的な境地に到達していると思います。それが故に~、特に今回取り上げられた第13番は理解しがたい難曲です。作品133の大フーガはなおさらですね。

投稿: kazuma | 2013年8月13日 (火) 09時06分

ハルくんさん、連続コメントですみません。

実を申しますと~、私は第13番をアルバン・ベルク四重奏団でしか聞いていません。なので~、この曲の醍醐味というか真髄を知るには、どのCDがいいのか教えて頂けませんか?

投稿: kazuma | 2013年8月13日 (火) 11時33分

オペラファンさん、こんばんは。

ゲヴァントハウス弦楽四重奏団の全集は非常に素晴らしいと思います。じっくりと聴き込むのに充分値する名全集だと思っています。
もちろん複数の全集を聴き比べるのも楽しいので、検討されたうえで何か選ばれると良いですね。
個々の曲の最後に全集盤についてまとめようかと思っていますので、少しでもご参考になれば嬉しいです。

投稿: ハルくん | 2013年8月13日 (火) 22時52分

kazumaさん、こんばんは。

ベートーヴェンの16曲の弦楽四重奏曲は、9曲の交響曲を凌駕しているのではないかと思っています。とりわけ7番(ラズモフスキー1番)以降は、信じ難いほどの内容の深さが有ると思います。是非色々と聴かれてみて下さい。

第13番については、個人的には記事に書いた通りヴェーグSQとエマーソンSQですが、他人に勧めるならエマーソンの方でしょうか。

投稿: ハルくん | 2013年8月13日 (火) 22時59分

こんにちは。

大フーガのピアノ版は最近になって自筆譜が発見されたようで大変興味深いです。2億円以上の値がついたとか。動画で聴いた印象ではハンマークラヴィーアの終楽章と双璧の難曲みたいですが、曲そのものは大フーガのほうが難解だと思います。途中で拍子がとれなくなるのは私だけでしょうかね。楽譜がないと追跡不能です。

投稿: NY | 2013年8月14日 (水) 17時02分

NYさん、こんにちは。

ピアノ版を聴いてみましたが、ソロピアノは編曲版ですよね。これは無理が有るようです。
4手用でもよほど上手い奏者が弾かないと音が混濁して訳が分からないですね。むしろ優秀な弦楽四重奏団の演奏の方が綺麗に聞こえますね。
4手版ではLucia HuangとSebastian Eulerの二人の演奏が良いように思いました。他にもまだ良いのが有るのかな?

投稿: ハルくん | 2013年8月14日 (水) 23時29分

ハルくん様

morokomanです。

手持ちのフィッツウィリアム四重奏団の演奏を聴きました。比べる形で、図書館にあったラサール四重奏団のも聴いています。

やっぱり、格が違いますね。フィッツウィリアムは、メンバーの若さが出てしまっていて、カヴァティーナや大フーガなどの超難曲を弾きこなせていません。

カヴァティーナはベートーヴェン自身が「自分が作った最も美しい旋律」と言ったらしいのですが、私はピンとこず、「どこが美しいの?」などと思ってしまっていました。

ところが、ラサールは美しさは当然のこととして、曲に内在する「哀しみ」も見事に表現しています。「なるほど、こんな凄い曲だったのか」と納得できます。やはり、ベートーヴェンの後期弦楽四重奏曲ともなると、弾きこなすにもそれなりの高い実力がなければ、とうてい曲の素晴らしさを引き出すことなどできないものだ、と思います。

ハルくん様おすすめの、そして私自身「おっかけになってもいいなぁ」と思っているエマーソン四重奏団のCDですが、ハルくん様ご紹介のジャケットはいかにも格調高く、見るだけでありがたみがわくデザインなのですが、現在のジャケットは「トホホホホ……」と脱力してしまい、購買意欲が薄れてしまいます。

古いジャケットのものを中古で買おうと思うのですが、現在、とんでもない高値なので手がでません。入手するのも、だいぶ後になりそうです。(涙)

投稿: morokoman | 2013年8月16日 (金) 21時27分

morokomanさん、こんにちは。

フィッツウィリアム四重奏団は聴いたことがありませんが、ラサール四重奏団はかつて非常に注目されただけあって、やはり素晴らしいですね。
後期の曲を聴かせるのは相当な実力と表現力が求められるのでしょう。

エマーソンの旧ボックスはそんなに高かったですか?
僕が中古で安いものを捜す場合には、たとえばディスクユニオンの店頭在庫WEB検索を利用して、遠い店の場合には通販で購入します。手数料は必要ですが、価格設定はリーズナブルな場合が多いです。特に海外盤ですと安いかな。
あるいは海外のアマゾン(利用しやすいのはUKとUSAです)で捜すのも方法です。国内のアマゾンよりも格段に安いものも有ります。手数料と為替計算が有りますので確認は必要ですが、これまでトラブルはほとんど有りません。

どちらにしても安値で見つかると良いですね。

投稿: ハルくん | 2013年8月17日 (土) 09時20分

出版時には出版社の意向が働きますからね。
私が学生のころ、英語の授業でなぜかベートーベンの伝記を読ませた先生がいて(なぜかって、彼が好きだからなんでしょうが)後期四重奏を書いた頃の話で半年続きました。授業があまにりマニアックなので、出席学生も多くは後ろの席に座り、私だけ一番前でサシで授業を聞いていました。「私は15番h一番好きだけれど、君はどうだね?」などという授業です。試験は易しかったので、スコアの冒頭を余白に書いてあげました。成績はAでした。

投稿: かげっち | 2013年9月 4日 (水) 12時43分

かげっちさん

素晴らしい先生がいらっしゃいましたね。
自分もそういう授業だったら一生懸命聴くでしょう。

かげっちさんのような熱意のある学生なら、万一試験の点数が悪くてもやはりAをあげてしまうでしょうね(笑)

投稿: ハルくん | 2013年9月 4日 (水) 23時35分

こんばんは。
アマチュアチェロ弾き女子です。
最近、ベートーヴェン後期のSQ勉強会を発足させ、第一回のお題として13番を選びました。
一楽章しか通す時間がありませんでしたが、さすが後期というだけあって、難しい箇所が各所にありながら、全体的にはすごい曲だなぁと感心しつつ弾くことができました。
音源を調べていてこちらの記事に出会いました。是非リンクを貼らせてください。
よろしくお願いいたします☆

投稿: morpheus-cello | 2015年1月26日 (月) 21時59分

morpheus-celloさん、はじめまして。
コメントありがとうございます。

僕も昔はアマチュアヴィオラ弾き男子でした。ベートーヴェンのカルテットはラズモフスキー第3番の終楽章、第14番の終楽章などを余興でやりました。第13番は弾いたことは有りません。
どちらにしても後期はアマチュアで容易に太刀打ちできるような内容ではありませんね。でも実際に弾いてみるのは良いことだと思います。
ベートーヴェンは聴いても楽しいですが、弾いても凄く楽しいですからね。あの凄い音楽の内容を理解するのにはとても良いことだと思います。

リンクの件、光栄です。どうもありがとうございます。

カルテットの勉強会、頑張って下さい。
いつでもまたどうぞお気軽にコメント下さい。

投稿: ハルくん | 2015年1月28日 (水) 21時00分

今日閑却され気味の、渡米後のブッシュSQのアメリカ・コロンビアの録音を、強力にプッシュして戴き、篤く御礼申し上げます。さすがにお耳が高いです!
現在のSMEのCBSのモノーラル名盤への冷遇ぶり、何とかならんかや…とぼやく昨今でございます。

投稿: リゴレットさん | 2018年3月 9日 (金) 12時16分

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