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2013年7月 6日 (土)

マーラー 交響曲第1番&3番 エーリヒ・ラインスドルフ/ボストン響

Leinsdorf_mahler_13エーリヒ・ラインスドルフ指揮ボストン響(第1番:1962年録音、第3番:1966年録音/RCA盤)

昔からエーリヒ・ラインスドルフという指揮者には特に興味を持っていませんでした。二流とまでは言わずとも、大巨匠とは呼べない中堅指揮者ぐらいの認識だったのです。そのイメージを大きく覆されたのは、晩年にバイエルン放送響に客演したマーラーの第6番のCD(オルフェオ盤)を聴いた時でした。これは正に大家の芸と呼ぶにふさわしい、極めて味わいの深い名演奏だったからです。

ラインスドルフはウイーンのユダヤ系の家に生まれ、ザルツブルグとウイーンで音楽を学んだ、生粋のオーストリア出身の指揮者です。20代の頃にアシスタントとして就いたのがワルターとトスカニーニですので、この人の指揮の基盤になっているのは二人の大巨匠なのかもしれません。マーラーを得意にしたのも、単にユダヤの血筋だというだけではなく、ワルターから受けた影響ではないのかと想像されます。

ラインスドルフはオペラも非常に多く演奏しましたが、コンサート指揮者として一番記憶に残っているのは、シャルル・ミンシュの後任としてボストン交響楽団の首席指揮者になった頃です。ベートーヴェンの交響曲全集なんかも完成させているのですが、どうもミュンシュ時代の栄光の陰に隠れてしまい損をしていたようです。このベートーヴェンは聴いていませんが、マーラーに関しては前述の第6番の他に、先日記事にしたボストン響時代の第5番も素晴らしかったので、更に1番と3番のディスクを聴いてみました。昔はもちろん別々にアナログLP盤でリリースされたのでしょうが、現在は2曲が2枚のCDに収録されています。

この演奏には、すっかりハマってしまいました。演奏のダイナミックレンジが広いか狭いかと言えば「狭い」。テンポや表情の激変が大きいか小さいかと言えば「小さい」。深刻か温厚かと言えば「温厚」。要するに、新しいか古いかと言えば「古い」のです。けれども演奏を聴いていて、妙に「安心感」を感じます。既に多くの演奏家がマーラーを演奏し尽した現代では、指揮者は往々にして「自分はマーラーをこんな風に演奏するんだぞ」という「力み」を感じさせます。それが全く無いのですね。既にワルター、クレンペラー、ミトロプーロス、バーンスタイン達によって世に認められたマーラーの音楽を演奏する喜びに満ちているような気がします。ラインスドルフにとっては演奏を出来るだけで幸福だったのではないでしょうか。ですので、決して刺激的では無くとも、聴いていて少しも余計な事を考えずに音楽に浸っていられます。「安心感」と「幸福感」を聴き手も同じように享受できます。

第1番はブルーノ・ワルター盤の印象に似ているでしょうか。バーンスタインのような劇場(激情)型のマーラーでは全く無いのです。怖れを抱く様な超人的にスケールの大きい「巨人」では無く、甘く弱い心を持つ若者の青春賛歌のような味わいの深い演奏です。この曲を聴いてこれほど幸福感に浸れたのは、本当にワルター以来かも知れません。なお、ボストン響の音は非常にポップな印象です。ミュンシュ時代のフランス的な明るさが多分に残っているようです。アンサンブルは優秀ですが、シカゴ響のような砥ぎすまされた緊張感は有りません。どちらか言えばニューヨーク・フィルのように神経質にならない大らかさを感じます。

第3番も特徴は全く同じです。幾らか速めのテンポで快適に進みます。しかしラインスドルフはウイーンやザルツブルクで学んだだけあって、ドイツ・オーストリアの音楽の伝統が体の血となっているのでしょう。これ見よがしな表現が全く無いのに、どこを聴いても物足りなさが無く、自然に演奏に引き込まれてゆきます。あのフィナーレでさえも、圧倒されるような巨大さは少しも有りません。この長大な曲を、とても心地良く感じているうちにいつの間にか終わってしまうのです。これまでに聴いたどの演奏よりも、良い意味で「早く」終わってしまう演奏のように感じます。ワルターは第3番の録音を残しませんでしたが、もしも残していたら、似た演奏だったのではないかと想像すると愉しいです。

このCDはデジタルコンバーターUV22を使って24ビットでリマスターされています。RCAの録音が元々優れているのでしょうが、リマスターの音質は素晴らしい出来栄えです。

ラインスドルフのマーラー録音には、ボストン響との1番、3番、5番の他には6番が有ります。6番はバイエルン放送盤が素晴らしいので、ボストン盤は聴いていませんが、これも機会が有ればと思っています。更に欲を言えば、2番と9番が聴きたかったですね。どこかのライブ録音は残されていないのでしょうか。

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