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2013年6月21日 (金)

マーラー 交響曲第2番「復活」 アバドとレヴァイン ウイーン・フィルの2つのライブ盤

我が青春の想い出の曲、マーラーの「復活」のディスクは、これまでに色々と聴いては来ましたが、マーラーゆかりのオーケストラであるウイーン・フィルの演奏というのはやはり特別だと思います。古いところではブルーノ・ワルターの1948年のライブ録音が有りましたが、この大編成の曲を聴くには演奏の良し悪しを語る以前に音の限界を感じてしまいます。スタジオ録音ではズビン・メータ、ロリン・マゼールがそれぞれ自分の個性を前面に出した演奏で悪くありませんでした。比較的新しいところではブーレーズ盤が有りますが、これは聴いていません。

そこで今回は、ウイーン・フィルでも、二つのライブ録音を取り上げてみたいと思います。どちらも1990年頃の録音ですので、音質的にも全く問題がありません。

20110329001917957_3クラウディオ・アバド指揮ウイーン・フィルハーモニー
シェリル・シュターダー(ソプラノ)
ワルトラウト・マイヤー(コントラルト)
1992年録音/グラモフォン盤

アバドは特別に好きな指揮者というわけでは有りませんが、グラモフォンに録音したウイーン・フィルとの「第3」「第4」「第9」の演奏はいずれも気に入っています。それはウイーン・フィルという特別な音を持つオケとの演奏だからであって、いわゆるヴィルティオーゾ・オケの代表のシカゴ響やベルリン・フィルとの録音には余り食指を動かされません。これは全くの個人的な好みの問題です。

この演奏はウイーンでのライブです。グラモフォンによる録音が優秀で、レンジの広さは驚くほどです。小さな音量で聴くには不向きですが、条件の良い機器で聴きさえすれば、実際のホールでの生の迫力をそのままに味わえるのではないかと思います。

第1楽章は、全体的に遅めのテンポでスケールの大きさを感じます。テンポは余り揺らすことが無く一貫しています。煽り方も比較的緩やかです。従って、感情の起伏の少ない、精神的に落ち着いたマーラーに聞えます。また、ユダヤ的な粘着質な要素が感じられませんので、ある意味スッキリと淡白な味わいです。但し、録音の優秀さから、音そのものの持つ迫力はとてつもないものですこぶる圧倒されます。ウイーン・フィルの音の柔らかさと美しさも言わずもがなです。

第2楽章ではウイーン・フィルの弦の柔らかさに絶大な期待をしたいところですが、それに充分に応えてくれる美しさです。必ずしも陶酔的ではありませんが、淡々と流す中にもニュアンスがこぼれるようで非常に素晴らしいです。

第3楽章はメルヘン的な楽しさの陰で難しいアンサンブルが要求される演奏の難しい楽章です。ウイーン・フィルはライブでも余裕で破綻なくこなすのはさすがです。

美しい第4楽章を経て、マーラーの分裂気味な精神をよく表すような第5楽章では、非常にパースペクティブの良い演奏となっています。悪く言えば一本調子なのでバーンスタインのようなスリルは味わえませんし、聴いていて中々胸が揺すられないかもしれません。けれども、体の奥底からじわりじわりと突き上げられてくるような感覚が徐々に高まってゆきます。確かに録音の良さと音の迫力が大きく貢献しているのだとは思いますが、アバドの指揮がそれを充分に生かし切っているというのもまぎれの無い事実です。

81y9tobpn6l__aa1404_ジェームス・レヴァイン指揮ウイーン・フィルハーモニー
キャスリーン・バトル(ソプラノ)
クリスタ・ルードヴィヒ(メゾ・ソプラノ)
1989年録音/オルフェオ盤

アバド盤の僅か3年前のライブ録音です。ジェームス・レヴァインは、かつてメトロポリタン歌劇場時代にイタリア・オペラ、ドイツ・オペラを問わずに相当の演目を演奏していましたし、同時にコンサートも、レコーディングも多くこなして、正にオールマイティ指揮者として華々しい活躍ぶりでした。マーラーも得意にしていたようなので、録音も多く行いました。ところが、どういうわけかこの人のディスクを購入した記憶が殆んどありません。なぜか?「まとも」で「面白みに欠ける」というイメージを自分で勝手に持っていたからだと思います。いわゆる「巨匠風」の演奏家が好き(あと、美人演奏家も好き)だったので、あのアフロヘア?でメガネの風貌が、「巨匠」にも、当然ですが「美人」にも見えないので興味を持たなかったのでしょう。でも繰り返しますが、演奏そのものには決して悪い印象は持っていませんでした。

そんなレヴァインの指揮したマーラーの「復活」ですが、ザルツブルク音楽祭でウイーン・フィルを指揮した演奏です。レヴァインは、この音楽祭で「復活」を1977年と1989年の二度演奏しているのですね。もちろんどちらもウイーン・フィルとの演奏です。これは二度目の1989年の録音です。

レヴァインはユダヤ系ですが、バーンスタインのような粘着質の要素は薄い方です。全体的にテンポは遅めでスケールの広がりを感じます。第1楽章での気迫と音の迫力は相当なものです。ライブですが音に厚みが有り、充分にレンジの広さも有り、まとまりの良い録音に不満は感じません。また、歌うべきところではたっぷりと歌います。典型は第2楽章で、懐かしさを感じさせていじらしいほどに歌い切ります。第3楽章のリズム感は中々良いです。レヴァインの指揮のソツの無さを改めて感じます。第4楽章のルードヴィヒの歌にはベテランの貫禄を感じます。第5楽章は、スケールの大きさに加えてドラマティックさを感じさせます。レヴァインの指揮がこれほど面白いとは思いませんでした。バーンスタインの劇場型には、時に大げさ過ぎて煩わしさを感じる場合も(その時の自分の体調によっては)ありますが、レヴァインはそこまで極端では無いのが美点です。それでも中間部ではテンポを速めて、続くぺザンテ(重く)の部分での巨大さを演出して興奮させられ心ニクさを感じます。バトルがからむ後半もルードヴィヒの声と絶妙なハーモニーです。そしてフィナーレの壮大な盛り上がりには心が震わされます。レヴァインの実力を再認識させられた素晴らしい「復活」です。

ということで、今回の二つの「復活」は、ウイーン・フィルのライブの素晴らしさを堪能した演奏でした。録音の優秀さと音の迫力が際立つのはアバド盤ですが、音楽の感動の度合いでは逆にレヴァイン盤が勝っているように感じます。

これまで聴いた「復活」のディスクでは、現在ではテンシュテット/北ドイツ放送響のライブ盤を第一としますが、それに次ぐものとして、同じテンシュテット/ロンドンPOのロンドン・ライブ、それにバーンスタイン/ニューヨークPOのCBS盤とグラモフォン盤の2種類が上げられます。今回のアバドとレヴァインの二つのウイーン・フィルのライブ盤はそれに新たに加えて良いと思います。

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コメント

ハルくんさん、こんばんは。
「復活」の レヴァイン/ウィーン・フィル盤、聴きました。
この曲は バーンスタインの新旧盤や テンシュテットのライブ海賊盤など、指揮者のカリスマ性が凄い演奏で良く聴いていますが、 レヴァインの職人的な演奏も なかなか良いですね。第2楽章などは やはりウィーン・フィルが素晴らしく、ずっと聴いていたいです。「原光」でのルートヴィッヒは もしかしたらバーンスタイン新盤より良いかも知れません。もちろんバトルのソプラノも天下一品だと思います。
私の愛聴盤が、また1つ増えました。。

投稿: ヨシツグカ | 2013年6月26日 (水) 21時29分

ヨシツグカさん、こんばんは。

このレヴァイン盤良いですよね。この人、こんなに良かったかのかと認識を改めました。
ウイーンフィルや歌の美しさはもちろんですが、ライブならではの熱気がムンムンしていて思わず惹き込まれてしまいます。
マーラーやブルックナーの愛聴盤が増えるのは嬉しいですね。

投稿: ハルくん | 2013年6月26日 (水) 23時36分

ハルくん様
ロンドン交響楽団、シカゴ交響楽団、フィラデルフィア管弦楽団とのRCAへのマーラー・ツィクルス、第2、第8、大地の歌が未収録でしたね。大地の歌はDGに、ベルリン・フィルにS・イェルザレム、J・ノーマンと録音したようですが。
御紹介下さいましたように素晴らしい出来栄えなら、早速Amazon検索をかけてみます。

投稿: リゴレットさん | 2018年3月 4日 (日) 06時06分

リゴレットさん

ウイーンフィルのマーラーですから、それだけでもう魅力的です。
しかしレヴァインは最近セクハラ事件で訴えられたりしたので、またまたイメージが悪くなりました。音楽に直接関係ないと言えばそうなのですが・・・

投稿: ハルくん | 2018年3月 5日 (月) 11時10分

J・L氏、以前にも未成年の少年に手を出して発覚、ヨーロッパの某オケに客演の為空港にいる時に、手錠をかけられた前科があるらしいですから…。
いい加減にしてくれよ…ですね。

投稿: リゴレットさん | 2018年3月 7日 (水) 08時37分

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