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2013年6月 2日 (日)

マーラー 交響曲第3番 テンシュテット/ロンドン・フィルのライブ盤

60e3c738クラウス・テンシュテット指揮ロンドン・フィルハーモニー(1986年録音/ICA Classics盤)

早いもので今年も梅雨入りの季節ですねぇ。じめじめした梅雨が明ければもうじき夏の到来です。晴れて気温の上がった日には汗ばむほどですし、我が家の近くから眺める丹沢の山並みも刻々と夏の装いを増しているように見えます。毎日愛犬の散歩に出かけるときには、移りゆく景色を眺めるのがとても楽しいです。

さて、マーラーの音楽は暗くて精神分裂的な曲が多いので(そこがまた魅力なのですが)、夏には不向きのようですが、交響曲第3番だけは全曲に渡ってすこぶる人生肯定的で幸福感や自然の生命力に溢れています。特に第一部(第1楽章のこと)には、構想段階で「牧神が目覚める、夏が行進してやってくる」とタイトルが付けられていました。本格的な夏の到来を前にして聴くには正にうってつけの曲です。

この交響曲については、以前の記事「マーラー 交響曲第3番 名盤」で愛聴盤をご紹介しました。その中で、クラウス・テンシュテットのロンドンでのライブを非正規盤ながらも中々に良い演奏なので触れていましたが、昨年ついにその正規盤がリリースされました。音質が見違えるほど良くなった為に、演奏の素晴らしさを再認識しました。是非ご紹介したいと思います。

イギリスBBCによる録音なのですが、驚くほどの音質の素晴らしさです。全集録音を行なったEMIの貧弱な録音とは雲泥の差です。それは、同時代の数々のEMI録音にも共通している点ですが、要は音に対するフィロソフィーの問題なのだと思います。その本家EMIの悪癖を東芝EMIが更に増幅させていたのには、つくづく閉口させられたものです。

話がそれましたが、この正規盤は本当に優秀な音造りです。基本的にホールトーン傾向の録音ですが、響きはどこまでも柔らかさを失わず、耳に刺激的な成分が有りません。もちろんそれは演奏が迫力不足なのではなく、テンシュテットならではの巨大さと力強さを充分に持っています。その巨大なスケール感はバーンスタイン/ニューヨークPOに次ぎますが、バーンスタインには幾らか踏み外した過剰さを感じてしまう(それもまたレニーの魅力ではあるのですが)自分にとっては、テンシュテットの大きさには許容範囲内での最高の充実感を覚えます。重低音の量感が素晴らしいので、柔らかい高域音とのバランスの良さは抜群です。ティンパニーも極めて力強いですが、決して騒々しくは無く、この上ない快感を得られます。

もちろん、ロンドン・フィルのオケとしての性能はここでも100%万全とは言い難く、ウイーンPOやチェコPOの個々の奏者の上手さや音の美しさには及びません。この曲ではヴァイオリン独奏が活躍しますが、コンサート・マスターの上手さも少々聴き劣りします。けれども、全体として聴いた場合には、録音も含めた響きの美しさでは、この曲の名盤であるアバド/ウイーンPOやノイマン/チェコPOを凌ぐようにさえ思えます。そして何しろ音楽の気宇の大きさに感動します。あの元々感動的な終楽章での息の長い壮大な盛り上がりは、ただただ素晴らしいの一言です。非正規盤では、正直言ってこれほどの感動は与えられませんでした。正に演奏の真価が初めて世に表されたと言って良いのでしょう。個人的には、現在のこの曲のマイ・フェイヴァリット盤に躍り出ました。

本当にテンシュテットは凄い指揮者でした。この人が、もしもの話ですが、ウイーン・フィルを指揮してマーラー全集を残していたら、間違いなくマーラー演奏史が変わっていたことでしょう。

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コメント

お久しぶりです。

マーラーはふだんあまり聴かないのですが、実はこの曲だけ乗ったことがあります。そのときどの演奏を聴いて勉強したのだったか、家に帰らなければ思い出せないですが、テンシュテットでなかったことは確かです。

この曲は異形の交響曲だと、乗ってみてますます思うようになりました、それを仕上げるには揺るがぬパトスが必要です。その点、テンシュテットならば納得できそうです。

投稿: かげっち | 2013年6月 5日 (水) 16時15分

かげっちさん、こんにちは。

マラ3に乗られましたか。それは希少な経験ですね。自分はマーラーだと2番と9番に乗りましたが、これも中々に得難い経験でした。マーラーの曲は演奏者の立場から言えば非常に面白かったですね。

ホント、マーラーの曲は異形が多いですね。その代表的な2、3、7、8番と半分は異形ですね。そういう曲への適性では、テンシュテットはバーンスタインに匹敵すると思います。

投稿: ハルくん | 2013年6月 5日 (水) 20時40分

ハルくんさん、こんばんは。 テンシュテットの 「マラ8」のライブ盤を買ったものの 聴くには かなり覚悟がいるため 最近ようやく聴く事が出来ました。確かに 感動的な演奏で、バーンスタイン新盤に匹敵すると思います。
その興奮が醒めない中、この記事を読んでしまった私は、「いつ買うの?」「今でしょ!」と、このCDを購入してしまいました。(笑)
今まで「マラ3」は あの美しい ノイマンの新盤で聴いていたので 第1楽章あたりは、ノイマンの方が良いかな?と思っていたのですが 聴き進んでいくうちに じわじわと感動的になり、最終楽章では なんだか極楽浄土にでも居るように思えました。すごい演奏ですね。
このCDを買って良かったです。
ご紹介、ありがとうございました。

投稿: ヨシツグカ | 2013年6月 6日 (木) 22時13分

ヨシツグカさん、こんばんは。

テンシュテットの「千人」のライブも凄かったですが、この「第3」も良いですよね。
ノイマン/チェコPOは大好きですが(それとアバド/VPOも)、このテンシュテット盤は聴き進むうちに他の演奏を忘れさせるぐらい引き込まれますね。凄い人です。

残る「第9」「大地」の正規ライブ録音がどこかに残っていないものですかね。

投稿: ハルくん | 2013年6月 6日 (木) 23時20分

こんにちは。

テンシュテットの3番(1979年?)は柴田南雄さんも著書で推薦されていました。1979年と1986年の二つがあるのでしょうか。本邦初演は1935年あたりらしいですね。あまりにも長いので私は21世紀になっても全部を把握しておりませんが(汗)、最終楽章は感動的です。

最近は通勤時間が2時間以上もあり、そうした時間を利用したいものだと思っています。音楽でも聴いていないと長距離通勤は本当に辛いです。それにしても、この頃は電車でもイヤフォンとかマスクをした人が増えましたね。

投稿: NY | 2013年6月15日 (土) 21時40分

NYさん、こんばんは。

この1986年盤は昨年出たばかりなので、柴田さんが書かれたのは旧盤の方だと思います。テンシュテットは総じて晩年のほうがスケールが大きく深化していますね。

マーラーの中でも特に長大な作品ですが、ロシアの長編小説を読むようなつもりで聴いてみると、刻々と変化する曲想が面白く感じられます。でもやはり長いですけどね。(笑)
終楽章は本当に感動的ですよね。

僕も2年前までは片道2時間の遠距離通勤でした。ホントに辛いですよね。僕はもっぱら読書か、ひたすら寝ていました。音楽鑑賞、なんでしなかったのかな。

投稿: ハルくん | 2013年6月15日 (土) 23時03分

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