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2013年6月

2013年6月30日 (日)

マーラー 交響曲第5番 続・名盤

これまでの人生で一番聴いた回数が多い曲は、マーラーの第5番かもしれません。マーラーなら曲そのものは第9番が最高ですが、滅多やたらには聴けないので、回数としては第5番がトップになります。他にもブラームスの1番、3番、4番やベートーヴェンの「エロイカ」、「第九」、あるいはドヴォルザークの「新世界より」やチャイコフスキーの5番、「悲愴」と思いつく曲は多々有りますが、おそらくはマラ5ではないかと思うのですね。
まあ、この曲はそれぐらい良く聴いたわけです。愛聴盤もバーンスタイン、テンシュテット、クーベリック、コバケン、ベルティーニなどなどと色々有りますが、最近は昔よりも好みの巾が広がる傾向にあり、以前なら興味を示さなかったものでも聴いてみたくなり、それを実際に聴いてみると案外気に入ってしまうのです。そこで、マラ5の愛聴盤の続編として3つほどご紹介します。

S4722481エーリッヒ・ラインスドルフ/ボストン響(1963年録音/RCA盤) ラインスドルフを愛聴したことは無かったのですが、バイエルン放送響との第6番が非常に良かったので、ボストン響時代のマラ5も聴いてみました。ラインスドルフはウイーン出身のユダヤ系ですので、マーラーを得意にするのも何ら不思議ではありません。しかしこのマラ5はなかなかユニークでした。まず冒頭のトランペットが随分と派手なのです。これから闘牛?でも始まるような明るさです。主部は速めのテンポでほぼイン・テンポですが、楽器の出し入れやバランスに気が配られているので、決して無味乾燥ではありません。ことさら悲劇の主人公のように深刻ぶらないマーラーも悪く無いですね。楽章を通してトランペットがずっと目立つので、トランペット協奏曲のようです。これはラインスドルフの解釈なのでしょうか。第2楽章も速めのテンポで嵐のように吹き荒れます。シャルル・ミュンシュの後を継いで間もないボストン響は非常に優秀ですが、神経質では無くどことなく大らかさを感じます。これもミュンシュ譲りなのかもしれません。とにかく音楽に勢いを感じます。アメリカのオケらしく音色は明るいですし、ラインスドルフもバーンスタインのようなしつこいほどのユダヤ色は出していません。但し、それでも同じ血を持つマーラーへの共感というものはやはり感じられます。第3楽章のテンポも速めで、この楽章では元々ホルンがオブリガート・ソロを吹きますが、それが非常に目立ちます。これは第1楽章でのトランペットとペアに考えているのかもしれません。中間部の各楽器の歌い方は実にチャーミングですし、後半の高揚感も見事です。そして面白いのは、続くアダージョです。速いテンポで歌い方の起伏が大きいので、まるで「アイ・ラブ・ユー」と何度も繰り返しているようです。この曲はマーラーが愛妻アルマに愛を捧げたのだということが、初めて実感させられたような気がします。第5楽章は解放された明るさで躍動しており、自然な高揚感に惹かれます。録音は年代が古い割には明瞭で優れています。

Mehta_mahler5ズービン・メータ/ロサンゼルス・フィル(1976年録音/DECCA盤) メータのロス・フィル時代はとにかく勢いが有りました。当時のDECCAのマーラー演奏の看板はショルティ/シカゴ響でしたが、パワー溢れるサウンドの割にクールなショルティとは対照的な、若き血潮を感じさせる演奏が魅力的でした。このマラ5も一言で称すると「若々しい」演奏です。ユダヤの粘り気は皆無で、足早に進みます。第2楽章が典型で、速いテンポで颯爽極まりないです。ただ、彫の深さとダイナミズムが有るので聴きごたえは充分です。ロス・フィルの性能は最高レベルではありませんが、メータの意図に忠実に応えた豊かな表現を聞かせます。第3楽章もほぼ同様で、軽快なリズム感が実に心地よいです。中間部も極めてチャーミングです。マーラーがこんなに楽しくて良いのかなぁとも思いますが、まあ良いでしょう。4楽章アダージョは、比較的速めのテンポであっさりしています。綺麗ですが少々BGM的に聞こえます。第5楽章も軽快で楽しさの極みですが、曲が曲だけに余り後に残るものは多く無いように思います。全体的に少しも深刻で無く楽天的ですので、マーラーの音楽は暗くドロドロしていて嫌だとか、バーンスタインの演奏はしつこくて嫌だと言う方に対してはまっさきにお勧めしたいと思います。優秀なDECCAの録音が最新リマスターで更に明瞭な音質になっているのもプラスだと思います。

Boulez_mahler5ピエール・ブーレーズ/ウイーン・フィル(1996年録音/グラモフォン盤) ブーレーズのマーラーは決して嫌いなわけでは無く、ウイーン・フィルとの第6番やクリーヴランド管との第7番などは一頃良く聴いていました。反面「大地の歌」なんかは気に入らなかったので、それほどは熱心な聴き手では無かったです。ウイーン・フィルを指揮した録音には第5番が有って、これは考えてみればブーレーズ向きの曲のような気がしたので聴いてみました。そうしたら凄く良かったのです。もちろんブーレーズがバーンスタインのような演奏をするはずは有りません。あくまでもブーレーズ流の演奏です。それにしても、マーラーゆかりのオーケストラであるウイーン・フィルの醸し出す美しい音は何物にも代えがたいです。弦も管もその音色を聴いているだけですっかり魅了されてしまいます。現在のウイーン・フィルは、その美音に加えて、非常に優れた機能も持ち合わせているので、ブーレーズのコントロールするアンサンブルは非の打ちどころが無いほどに完璧です。これはマラ5を演奏する場合には、非常にアドヴァンテージになります。往々にしてヴィルトゥオーゾ・オケが完璧ではあっても無機的に聞こえるようなことがよく有りますが、そう感じさせないのはウイーン・フィルの美徳です。この録音は音質が優秀で、極めて力強く迫力あるフォルテを響かせますが、騒々しく感じることは一度も有りません。本当に綺麗なハーモニーです。ブーレーズはバーンスタインの劇場(激情)型の演奏のように、テンポを大きく揺らすことは無く、イン・テンポに近いです。そんなマーラーは嫌だと仰られる方には向きませんが、この美しい響きを味合わないのは余りにもったいないです。アダージョの美しさも並みではありません。静かな水面に小さなさざ波がゆっくりとゆっくりと広がりゆく様な豊かな詩情に溢れています。これはウイーン・フィルの力も大ですね。そして第5楽章も輝かしい響きが実に素晴らしいです。あくまでもクールに、しかし無機的な冷たさでは無い充実仕切った音を高らかに響かせています。

というわけで、この3つはどれも個性を表していますが、特にお薦めしたいのはブーレーズ盤です。このウイーン・フィルの充実した響きはちょっとやみ付きになりますよ。

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ウインブルドン2013、そして八重の桜 ~日本女性のチカラ~

昨夜のウインブルドンのテレビ放送。アラフォーなでしこ(??)クルム伊達公子と世界ナンバーワンのセリーナ・ウイリアムスの試合を見届けました。試合前に相手を「怖い」と称した伊達さんでしたが、確かに同じコートに立ったら、そう思うでしょうねぇ。セリーナは長身で筋肉隆々、なにかサイボーグかターミネイターのような雰囲気ですからね。現在の女子テニス界では強過ぎて向かう処敵無しですし。それに立ち向かう伊達さんは体格では子供のように見えます。武蔵坊弁慶をやっつける牛若丸になれれば良いのですが、まあ勝ち目が無いのは最初から明らかでした。

試合の結果は6-2、6-0とスコアからみれば完敗です。セリーナの強烈なサービスとリターンで全ては決まってしまいました。それでもラリーの攻防では、伊達さんも大いに善戦していました。というよりむしろ優っていたぐらいかな。そもそも、42歳9カ月でウインブルドンのセンターコートで世界ナンバーワンと戦うこと自体が既に奇跡です。試合後の伊達さんのインタヴューですが、完敗を認めながらも、「今度はハード・コートで闘ってみたいと思います。」と語っていました(ウインブルドンはサーブでボールが加速する芝のコートですが、ハードコートではサーブだけでは試合が決りにくいからですね)。なんというあくなき闘争心のアラフォーなのでしょうか!いやぁ、日本の女性は本当に頼もしい。

女性の闘争心と言えば、今夜はNHKの大河ドラマ「八重の桜」の放送が有ります。主人公の山本(新島)八重さんは、戊辰戦争で銃を持って会津のお城に立てこもって、男と一緒に新政府軍と闘ったのですね。この時は他に中野竹子さんも女性の薙刀(なぎなた)隊を編成して、新政府軍と戦いました。昔から日本には勇敢な女性が居たのですねぇ。

この「八重の桜」、昨年に続いて視聴率では余り芳しく無いようですが、その昨年の「平清盛」に並ぶぐらい面白いと思っています。この二つの大河は近年では双璧の傑出した出来だと思うのですが。
今夜からはいよいよ前半のクライマックス、お城での戦いです。八重役の綾瀬はるかさんの凛とした熱演が楽しみです。もちろん中野竹子役の黒木メイサさん、それに他の役者さんたちも。

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2013年6月28日 (金)

サッカー、それにテニス、ウインブルドン2013

つい先日までは、サッカー日本代表のW杯最終予選とコンフェデレーション杯で熱く盛り上がっていました。コンフェデ杯では、世界の一流国と戦うにはまだまだ多くのものが足りないことを思い知らされた感が有りますが、1年後のW杯本番に向けてこれまで以上に日々是精進をして貰いたいところです。

一方Jリーグではリーグ戦もさることながら、贔屓の柏レイソルが唯一アジア・チャンピオンズ・リーグで決勝トーナメントに残っています。これから決勝進出をかけてホーム・アンド・アウェイでの対決が予定されています。これは本当に楽しみです。

で、今は連日、ウインブルドンに熱中しています。今から30年前には楽器(ヴィオラ)のケースに封印をして、テニス・ラケットに持ち替えたぐらいのめり込んだ競技です。当時はボルグ、マッケンロー、コナーズ、レンドル、ベッカーといったスタープレイヤーの面々を生で観戦しましたよ。何年か前に、ロジャー・フェデラーに惚れ込んで、テニスにカムバック(観戦とプレーの両方です)しましたが、最近はやはり錦織選手が良いですねー。日本男子では過去最強ですからね。昨日も勝利して好調のようです。そして何と言っても伊達選手!僕らには伊達公子の名前が馴染み深いですが、クルム伊達の名前もすっかりお馴染みになりました。彼女は42歳ですよ。僕と少しも変らない(こともありませんが・・・)年齢で、コート上でのあの活躍!「まだまだ出来るぞ。がんばれ!」と彼女にも自分自身にも言いたくなってしまいます。しかも次の相手は世界ナンバーワンのセリーナ・ウイリアムズです。まさかカムバックした伊達さんが、ウインブルドンの舞台に再び立ち、セリーナと対決する姿が見られるとは思ってもいませんでした。もちろん、試合はさすがに厳しいでしょうが、昨夜彼女がインタヴューで語った言葉、「怖いですけど楽しみです。コートの上で自分がどれぐらいやれるか見てみたいですよ。」と本当に嬉しそうでした。勝ち負けの結果はともかく、ウインブルドンのセンターコートで世界ナンバーワンに挑戦する姿は絶対に見逃せません。ああ~明日の夜が楽しみです!

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2013年6月25日 (火)

「ホテル・カリフォルニア」 イーグルス

イーグルスといっても楽天イーグルスではありませんぞ。1970年代に一世を風靡したアメリカのロック・バンドです。彼らの最大のヒット曲といえば「ホテル・カリフォルニア」ですが、特別にロック・ミュージックのファンということでなくとも、年配の方ならば誰でもご存じだと思います。楽天イーグルスしか知らない若い人でも、きっとこのメロディは耳にしたことが有るのではないでしょうか。カリフォルニアを題材にしている割には、曲想は明るくなく、ほの暗い哀愁が一杯に漂っていますが、一度聴いたら忘れられない非常に印象的な曲ですので、世界中で広く親しまれたのでしょう。

ところで、この曲に登場するホテル・カリフォルニアというのは実際に存在するホテルでは無く、架空のホテルなのだそうです。そのホテルに宿泊する登場人物から、商業主義に堕落してしまったロック・ミュージック、しいてはアメリカ社会を揶揄しているのだそうです。

この曲については、そんな背景が有るのですが、実は6年前に仕事でアメリカに出張したときに、ロスアンジェルスに住んでいる協力会社の人に案内されて、北方面に一時間ほどドライブしたサンタ・バーバラという古い町に遊びに行きました。彼が言うには、この町が一番”カリフォルニア”っていう感じがするのではないか、とのことでした。

確かにこのサンタ・バーバラという町は西海岸の海に面していて、大きなハーバーが有りますし、街には相当に古い立派な教会が残っていますし、町がとにかく美しいのです。ウエストコーストの明るい陽射しが空から降り注いでいて、爽やかな風が常に吹いています。

そんな風に街をブラブラと気持ちよく歩いていたのですが、「あれっ、有るではないですか。ホテル・カリフォルニア!」 それはなんとも曲のイメージそのものなのですよね。これが正面からの写真です。

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いかにも流行っていない雰囲気ですし、よーく見ると「ホテル・カリフォルニア」なのですが、まあイイでしょう。細かいことは気にしない。(笑)

その後は「ホテル・カリフォルニア」の鼻歌を歌いながら散歩しました。それにママス&パパスの「夢のカリフォルニア」とかアルバート・ハモンドの「カリフォルニアの青い空」なんかも歌いましたけれど。

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2013年6月21日 (金)

マーラー 交響曲第2番「復活」 アバドとレヴァイン ウイーン・フィルの2つのライブ盤

我が青春の想い出の曲、マーラーの「復活」のディスクは、これまでに色々と聴いては来ましたが、マーラーゆかりのオーケストラであるウイーン・フィルの演奏というのはやはり特別だと思います。古いところではブルーノ・ワルターの1948年のライブ録音が有りましたが、この大編成の曲を聴くには演奏の良し悪しを語る以前に音の限界を感じてしまいます。スタジオ録音ではズビン・メータ、ロリン・マゼールがそれぞれ自分の個性を前面に出した演奏で悪くありませんでした。比較的新しいところではブーレーズ盤が有りますが、これは聴いていません。

そこで今回は、ウイーン・フィルでも、二つのライブ録音を取り上げてみたいと思います。どちらも1990年頃の録音ですので、音質的にも全く問題がありません。

20110329001917957_3クラウディオ・アバド指揮ウイーン・フィルハーモニー
シェリル・シュターダー(ソプラノ)
ワルトラウト・マイヤー(コントラルト)
1992年録音/グラモフォン盤

アバドは特別に好きな指揮者というわけでは有りませんが、グラモフォンに録音したウイーン・フィルとの「第3」「第4」「第9」の演奏はいずれも気に入っています。それはウイーン・フィルという特別な音を持つオケとの演奏だからであって、いわゆるヴィルティオーゾ・オケの代表のシカゴ響やベルリン・フィルとの録音には余り食指を動かされません。これは全くの個人的な好みの問題です。

この演奏はウイーンでのライブです。グラモフォンによる録音が優秀で、レンジの広さは驚くほどです。小さな音量で聴くには不向きですが、条件の良い機器で聴きさえすれば、実際のホールでの生の迫力をそのままに味わえるのではないかと思います。

第1楽章は、全体的に遅めのテンポでスケールの大きさを感じます。テンポは余り揺らすことが無く一貫しています。煽り方も比較的緩やかです。従って、感情の起伏の少ない、精神的に落ち着いたマーラーに聞えます。また、ユダヤ的な粘着質な要素が感じられませんので、ある意味スッキリと淡白な味わいです。但し、録音の優秀さから、音そのものの持つ迫力はとてつもないものですこぶる圧倒されます。ウイーン・フィルの音の柔らかさと美しさも言わずもがなです。

第2楽章ではウイーン・フィルの弦の柔らかさに絶大な期待をしたいところですが、それに充分に応えてくれる美しさです。必ずしも陶酔的ではありませんが、淡々と流す中にもニュアンスがこぼれるようで非常に素晴らしいです。

第3楽章はメルヘン的な楽しさの陰で難しいアンサンブルが要求される演奏の難しい楽章です。ウイーン・フィルはライブでも余裕で破綻なくこなすのはさすがです。

美しい第4楽章を経て、マーラーの分裂気味な精神をよく表すような第5楽章では、非常にパースペクティブの良い演奏となっています。悪く言えば一本調子なのでバーンスタインのようなスリルは味わえませんし、聴いていて中々胸が揺すられないかもしれません。けれども、体の奥底からじわりじわりと突き上げられてくるような感覚が徐々に高まってゆきます。確かに録音の良さと音の迫力が大きく貢献しているのだとは思いますが、アバドの指揮がそれを充分に生かし切っているというのもまぎれの無い事実です。

81y9tobpn6l__aa1404_ジェームス・レヴァイン指揮ウイーン・フィルハーモニー
キャスリーン・バトル(ソプラノ)
クリスタ・ルードヴィヒ(メゾ・ソプラノ)
1989年録音/オルフェオ盤

アバド盤の僅か3年前のライブ録音です。ジェームス・レヴァインは、かつてメトロポリタン歌劇場時代にイタリア・オペラ、ドイツ・オペラを問わずに相当の演目を演奏していましたし、同時にコンサートも、レコーディングも多くこなして、正にオールマイティ指揮者として華々しい活躍ぶりでした。マーラーも得意にしていたようなので、録音も多く行いました。ところが、どういうわけかこの人のディスクを購入した記憶が殆んどありません。なぜか?「まとも」で「面白みに欠ける」というイメージを自分で勝手に持っていたからだと思います。いわゆる「巨匠風」の演奏家が好き(あと、美人演奏家も好き)だったので、あのアフロヘア?でメガネの風貌が、「巨匠」にも、当然ですが「美人」にも見えないので興味を持たなかったのでしょう。でも繰り返しますが、演奏そのものには決して悪い印象は持っていませんでした。

そんなレヴァインの指揮したマーラーの「復活」ですが、ザルツブルク音楽祭でウイーン・フィルを指揮した演奏です。レヴァインは、この音楽祭で「復活」を1977年と1989年の二度演奏しているのですね。もちろんどちらもウイーン・フィルとの演奏です。これは二度目の1989年の録音です。

レヴァインはユダヤ系ですが、バーンスタインのような粘着質の要素は薄い方です。全体的にテンポは遅めでスケールの広がりを感じます。第1楽章での気迫と音の迫力は相当なものです。ライブですが音に厚みが有り、充分にレンジの広さも有り、まとまりの良い録音に不満は感じません。また、歌うべきところではたっぷりと歌います。典型は第2楽章で、懐かしさを感じさせていじらしいほどに歌い切ります。第3楽章のリズム感は中々良いです。レヴァインの指揮のソツの無さを改めて感じます。第4楽章のルードヴィヒの歌にはベテランの貫禄を感じます。第5楽章は、スケールの大きさに加えてドラマティックさを感じさせます。レヴァインの指揮がこれほど面白いとは思いませんでした。バーンスタインの劇場型には、時に大げさ過ぎて煩わしさを感じる場合も(その時の自分の体調によっては)ありますが、レヴァインはそこまで極端では無いのが美点です。それでも中間部ではテンポを速めて、続くぺザンテ(重く)の部分での巨大さを演出して興奮させられ心ニクさを感じます。バトルがからむ後半もルードヴィヒの声と絶妙なハーモニーです。そしてフィナーレの壮大な盛り上がりには心が震わされます。レヴァインの実力を再認識させられた素晴らしい「復活」です。

ということで、今回の二つの「復活」は、ウイーン・フィルのライブの素晴らしさを堪能した演奏でした。録音の優秀さと音の迫力が際立つのはアバド盤ですが、音楽の感動の度合いでは逆にレヴァイン盤が勝っているように感じます。

これまで聴いた「復活」のディスクでは、現在ではテンシュテット/北ドイツ放送響のライブ盤を第一としますが、それに次ぐものとして、同じテンシュテット/ロンドンPOのロンドン・ライブ、それにバーンスタイン/ニューヨークPOのCBS盤とグラモフォン盤の2種類が上げられます。今回のアバドとレヴァインの二つのウイーン・フィルのライブ盤はそれに新たに加えて良いと思います。

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テンシュテット/ロンドン・フィルのライブ マーラー「復活」

パーヴォ・ヤルヴィ/フランクフルト放送響 マーラー「復活」

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2013年6月19日 (水)

「ボクの音楽武者修行」 小澤征爾

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作家の村上春樹さんはクラシック、ジャズ、ポップスなど、音楽のジャンルを問わず驚くほどの物知りですが、それも「単に聴いて知っている」というだけではなく、いかにも作家ならではの深い洞察力と感性を感じてしまい感心します。氏の比較的最近の著書「小澤征爾さんと音楽について話をする」という対談形式の本の中では、小澤さんを相手にクラシック音楽の様々な鑑賞知識を出してきて、小澤さんを驚かせています。もっとも、有名指揮者というのは、恐らく同業者の出したレコード(CD)を熱心に聴き漁るようなことはしないでしょうから、小澤さんが驚くのは決して不思議なことでは無いのでしょう。村上さんがひっぱり出したレコードの大半は、古くからのクラシック・マニアにとっては大半がお馴染みのものだと思います。でも、この音楽対談が成り立っているのは、確かに村上さんの知識ですので、そういう点でもとても楽しめました。

この本で面白いと感じたのは、音楽のプロの小澤さんがアマチュアの村上さんに対して音楽の事、指揮の事などを非常に解り易く説明していることです。それによって、小澤さん自身の音楽への考えが方が明確に浮き上がってくることです。小澤さんはつくづくプロフェッショナルな音楽家だなぁと思う反面、いわゆる昔の「巨匠」的なタイプで無いことが改めて感じられます。普段、小澤さんの演奏を聴いていて感じていることが、そのまま言葉になっていました。

ところで、この本を読んだ後で無性に読みたくなった本が有りました。それは僕が高校生の頃に読んだ「ボクの音楽武者修行」という本です。これは、小澤さんが若くしてブザンソン指揮者コンクールで優勝して、名門ニューヨーク・フィルの副指揮者としてバーンスタインとともに日本に凱旋帰国した後の1962年に出版された、小澤さん自らのエッセイです。桐朋音大を出たばかりで全くの無名の若者が、クラシック音楽の本場のヨーロッパで勉強をしようと思い立ちますが、先立つ資金が無い。しかたなくスポンサーを求めて企業を回りますが、援助を申し出てくれた会社は唯一、富士重工業の一社だけ。それもスバルのスクーターを提供するための条件として、下記の3つが上げられました。

1.日本国籍を明示すること
2.音楽家であることを示すこと
3.事故を起こさないこと

この条件をかなえるために、小澤さんは白いヘルメットにギターをかついで、日の丸を付けたスクーターにまたがるという何とも滑稽な出で立ちでヨーロッパを走り回ったのだそうです。

ヨーロッパへの渡航方法も、現在のように飛行機ではなく船です。しかも客船に乗るお金が無いので、なんと大型貨物船にスクーターと共に乗せてもらいます。乗客は小澤さんたった一人だけだったそうです。途中アジアや中東の国々に何度も停泊して荷物を積み下ろししながらの航海なので、ヨーロッパに着くまでには一か月半の長旅でした。

そんな船旅の道中の様子、ヨーロッパについてから後の様々な出来事、コンクールへ出場するときの逸話、優勝後にシャルル・ミンシュやバーンスタインに指揮を習い、ついにニューヨーク・フィルの副指揮者に就任して日本へ凱旋帰国するまでの話が、面白おかしくつづられています。ここには現在の大指揮者小澤さんの姿からは、とてもとても想像がつかないようなエピソードでいっぱいです。この本は、どんな青春冒険小説にも負けない楽しさに溢れています。高校生の時には図書館で借りて読んだので、新しく単行本を買おうかと思ったら、現在は新潮社から文庫本で出ているだけでした。もちろん文庫本でも面白さは変わりませんが。

高校生の頃、当然小澤さんの大ファンに成り、レコードを購入しては愛聴していましたが、そのうちに「巨匠」的では無い氏の演奏が自分の好みとは段々と異なってしまって、聴くことが少なくなってしまいました。今回、本当に久しぶりに「ボクの音楽武者修行」を読み返してみて、小澤さんの演奏を改めて聴いてみたくなりました。

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2013年6月15日 (土)

ショスタコーヴィチ 交響曲第5番 ザンデルリンク/ロイヤル・コンセルトへボウ管のライブ盤

81hjtilpfpl__aa1500_クルト・ザンデルリンク指揮ロイヤル・コンセルトへボウ管(1999年録音/コンセルトへボウ管弦楽団アンソロジー第6集1990-2000より)

ロイヤル・コンセルトへボウ管弦楽団による自主制作CD第6集には、ザンデルリングが指揮したものとして、前回ご紹介のブルックナー交響曲第3番の他にショスタコーヴィチ第5番という一品が収められています。

ザンデルリンクが引退したのは2002年ですが、最晩年の録音には1999年にシュトゥットガルト放送響に客演したライブのブルックナー第7番が有り、それは正に天を仰ぎ見るような壮大な演奏であり、僕のブル7のベストを争う愛聴盤です。その同じ年にライブ録音されたのが、このショスタコーヴィチ第5番ですので、最晩年の巨匠の威容を聴けるという点で大変に貴重です。

ザンデルリンクは旧東ドイツ出身ですが、東西冷戦時代にはソヴィエトのレニングラードで、ムラヴィンスキーの下で指揮者をしていました。ですので、この人は純正ドイツもの以外にも、ロシアのチャイコフスキー、ショスタコーヴィチ、あるいは北欧のシべリウスなどをレパートリーとしています。それでも、やはりこの人はドイツものが最高ですし、晩年には心の故郷に戻ったかのように、ドイツものを多く演奏していましたが、最晩年に名門コンセルトへボウと演奏したショスタコーヴィチということであれば興味は尽きません。

この自主制作CDはどれも録音が優秀で、しかも変に音をいじくりまわしていないので安心です。この曲も冒頭の力強い響きにすぐに引き込まれます。

第1楽章では、山あり谷ありという派手なドラマの演出はしていません。このあたりはいつものザンデルリンクそのものです。最晩年ということで緊張感の減衰が心配ですが、このひとに関してはそんなマイナスは見られません。元々アンサンブルに必要以上に神経質になったりはしませんが、自然な指揮ぶりに名門オケが忠実に応えています。そして巨大なスケール感がじわりじわりと膨れてゆきます。けれどもテンポが極端に遅い訳では無く、聴感上ではむしろこの10年も前にベルリン響と録音したブラームス交響曲全集の新盤のほうがずっと遅く感じられます。

第2楽章も同様にスケールが大きく、凄く重量感は有るものの、少しももたれたり推進力が失われたりしません。

第3楽章はムラヴィンスキーのように凍りつく様な冷たさを感じることもなく、それほど暗い悲壮感に包まれているわけではないのですが、何か非常に深いものを感じます。コンセルトへボウの音はそれは美しいのですが、決して表面的な美しさでは無く、内面的な美を浮かび上がらせているような気がしてなりません。

第4楽章は冒頭から気迫に驚かされます。ザンデルリンクにしては意外に速めのテンポに感じますが、巨大なものがぐんぐんと迫り来るようであり、良い意味での威圧感に圧倒される思いです。表情も大きく、引退前の巨匠のどこからこれほどのパワーが溢れだしてくるのか不思議になります。終結部の巨大さはやはりザンデルリンクです。ムラヴィンスキー/レニングラードにも匹敵する充実ぶりで、「天空の城ラピュタ」(?)という感じでしょうか。終演後に収録されている拍手の大きさには聴衆の満足感が現れていると思います。

いやぁ、ザンデルリンクはホント最後まで凄かったのですね。

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2013年6月13日 (木)

「アンパンマン・マーチ」 ドリーミング

今日の「名曲」は楽しいですよ。

アンパンマンを知ったのは今からもう20年ぐらいも前のことです。二人の小さな子供を連れてデパートの屋上で観た「それゆけアンパンマン・ショー(?)」とかなんとかいったアトラクションでした。そこで流れた音楽が何とも心に響きました。

「なんという良い曲なのだろう。なんという良い歌詞だろう。」感心することしきりでした。それこそが「アンパンマンマーチ」なのです。

「アンパンマンマーチ」

そうだ うれしいんだ 生きる喜び 
たとえ 胸の傷がいたんでも

なんのために生まれて 何をして生きるのか
こたえられないなんて そんなのはいやだ!

今を生きることで 熱い心燃える
だから君は行くんだ 微笑んで

そうだ うれしいんだ 生きる喜び 
たとえ 胸の傷がいたんでも

アア、アンパンマン やさしい君は
行け みんなの夢 守るため

何が君のしあわせ 何をして喜ぶ
判らないまま終わる そんなのはいやだ!

忘れないで夢を こぼさないで涙
だから君は飛ぶんだ どこまでも

そうだ 恐れないで みんなの為に
愛と勇気だけが友達さ

アア、アンパンマン やさしい君は
行け みんなの夢 守るため

時は早く過ぎる 光る星は消える
だから君は行くんだ 微笑んで

そうだ 嬉しいんだ 生きる喜び
たとえどんな敵が相手でも

アア、アンパンマン やさしい君は
行け みんなの夢 守るため

(作詞:やなせたかし/作曲:三木たかし/編曲:大谷和夫/歌:ドリーミング)

それからは子供と一緒にテレビで「アンパンマン」を見ました。小さな子供が理解できる単純なストーリーなので、大人が見るには「ドラえもん」とか「クレヨンしんちゃん」のほうがはるかに面白いのですが、子供の喜ぶのを見ていると、それだけでこちらも楽しくなります。

子供が大きくなるにつれて、アンパンマンの存在も当然小さくなっていたのですが、つい先日、横浜のアンパンマン・ミュージアムへ行く機会がありました。20年前にデパートの屋上へ連れて行った長男に子供(すなわち孫です)が出来たので、一緒に出掛けたのです。そこで見たアトラクションに20年前のショーが重なり合い、年月の経つのは速いものだなぁと、つくづく感じました。ホントに「時は早く過ぎる 光る星は消える だから君は行くんだ 微笑んで~」なのですよね。

それにしてもこのマーチ、何度聴いても名曲ですね。しばらく職場で仕事をしながら口ずさんでしまいました。普段はクラシックなのですがね。(笑)

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2013年6月 9日 (日)

J.S.バッハ「ヨハネ受難曲」 堀 俊輔/合唱団アニモKAWASAKI 演奏会

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当ブログへ時々お越し頂いているlin2さんの所属する合唱団アニモKAWASAKIによるブラームスの「ドイツ・レクイエム」の演奏会を一年前に聴かせていただきましたが、毎回オーケストラ演奏を行なうのが東京交響楽団という本格的な演奏会ですので、今年のJSバッハの「ヨハネ受難曲」も是非聴きたいと思っていました。昨日その演奏会に行ってきました。

会場は、東日本大震災で大きな被害を受けたホール内部の修復をようやく終えて、この春にリニューアル・オープンしたミューザ川崎です。被災前には何度も訪れたホールですので、久しぶりに訪れるのも楽しみでした。

曲目の「ヨハネ受難曲」は、あの偉大な「マタイ受難曲」の影にどうしても隠れがちですが、大傑作であるにもかかわらず、「マタイ受難曲」や「ミサ曲ロ短調」ほどは広く聴かれていないのが何とも惜しまれます。この合唱団では、2006年に「マタイ受難曲」、2011年に「ミサ曲 ロ短調」を取り上げて、今回はバッハ三大傑作の最後として「ヨハネ受難曲」を取り上げたそうです。自分自身も、「ヨハネ」だけは生演奏を聴いたことが無かったので、今回は本当に楽しみにしていました。

合唱団の音楽監督であり指揮をする堀俊輔さんは、シュトゥットガルトのバッハ・アカデミーで指揮者部門の最優秀賞を得ているそうですし、期待も大きくなります。

静かにゆったりと始まる「マタイ」とは対照的に、「ヨハネ」は、急速な弦楽の分散和音の伴奏に乗って、いきなり「Herr!(主よ!)」という劇的なコーラスで始まります。緊張感を持った歌声にぐいぐいと引きこまれました。合唱団は全部で80名ほどですが、人数は女性の方が圧倒的に多いです。にもかかわらず、男性パートと女性パートの声のバランスが良く取れているのに感心します。合唱トレーナーがとても優秀なのでしょうね。

最近はプロの合唱では、バッハ演奏は少人数が主流なのですが、個人的には人数の多い厚みのある合唱が好きです。少人数のプロの透明なハーモニーも良いですが、アマチュアの真摯な合唱や、少年聖歌隊の素朴な歌声には大いに感動させられることが多いです。スケールの大きな厚みのある合唱で、バッハの音楽の大きさを感じるのも事実です。「バッハは小川にあらず。大海である。」と言ったのはベートーヴェンです。ドイツ語のBach=小川をかけてバッハの音楽の偉大さを表したのですね。第3曲のコラール「おお、大いなる愛」あたりからは、合唱の声が更に力を増していったように感じました。ヴァイオリン3プルトの比較的小編成のオーケストラの音ともバランスが絶妙です。これは指揮者の力でしょう。

それ以降も素晴らしい合唱で、コラールの比重の高い「ヨハネ」を心ゆくまで楽しめました。カール・リヒターのCDももちろん良いのですが、コンサート会場で生で聴く合唱は本当に良いものです。

けれども「ヨハネ」の最大の聴きどころは、最後に置かれる合唱曲「安らかに憩え、聖なるむくろよ」と、イエスに永遠の賛美を贈るコラールです。このフィナーレだけは、「マタイ」の終曲と比べても感動の質において全く遜色が無いと思います。そしてこの曲では、それまでと比べて一段も二段も充実した歌声に変わりました。それまでも素晴らしかったですが、このフィナーレには相当の力を入れて練習されたのではないでしょうか。ロマンティックな趣でスケールが大きく非常に感動的でした。

合唱のことばかりに触れましたが、ソリストたちも良かったです。特に素晴らしいと思ったのは福音史家役のテノール、櫻田亮(さくらだまこと)さんで、その美しく伸びやかな声には心底魅了されました。

アニモKAWASAKIの来年の公演予定は、モーツァルトの「レクイエム」だそうです。素晴らしい曲が続きますね。合唱団のメンバーの皆さんは忙しい中を一生懸命練習されるのでしょうが、こんな素晴らしい曲を順番に歌うことができるというのは本当に幸せですね。

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2013年6月 4日 (火)

祝・サッカー日本代表 ブラジル・ワールドカップ出場決定!

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やりましたね!ワールドカップ・ブラジル大会への出場が今夜決まりましたね。敗色濃厚の試合の最後の土壇場で、ようやく引き分けに持ち込めました。これまで順調すぎた道のりに神様から、「な~、オマエ~、W杯ちゅーのは、そんなにアマイものやおまへんのや~」と諭されたような気がします。

それにしても、これで5大会連続になるのですね。昔の長く出場できなかった時代を思い起こすと夢のようです。カガワ、ホンダ、ナガトモ、オカザキ、ヨシダ、ウチダ、ハセベ、エンドウ、コンノ、カワシマ、マエダ・・・・よく頑張りましたよ。
でも、もう本大会に出場できればそれで良しという時代では無いですね。ベスト16、ベスト8、ベスト4と目指すのであれば、まだまだ道は果てしなく遠いです。ザック・ジャパンの更なる飛躍に期待したいです。

隠れ(でもないかな?)サッカーファンのハルくんはACLで唯一活躍している柏レイソルにも声援を送っています。日本代表にレイソル、サッカー・ファンにとっては本当にたまらないです。オーレ!オーレ!

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2013年6月 2日 (日)

マーラー 交響曲第3番 テンシュテット/ロンドン・フィルのライブ盤

60e3c738クラウス・テンシュテット指揮ロンドン・フィルハーモニー(1986年録音/ICA Classics盤)

早いもので今年も梅雨入りの季節ですねぇ。じめじめした梅雨が明ければもうじき夏の到来です。晴れて気温の上がった日には汗ばむほどですし、我が家の近くから眺める丹沢の山並みも刻々と夏の装いを増しているように見えます。毎日愛犬の散歩に出かけるときには、移りゆく景色を眺めるのがとても楽しいです。

さて、マーラーの音楽は暗くて精神分裂的な曲が多いので(そこがまた魅力なのですが)、夏には不向きのようですが、交響曲第3番だけは全曲に渡ってすこぶる人生肯定的で幸福感や自然の生命力に溢れています。特に第一部(第1楽章のこと)には、構想段階で「牧神が目覚める、夏が行進してやってくる」とタイトルが付けられていました。本格的な夏の到来を前にして聴くには正にうってつけの曲です。

この交響曲については、以前の記事「マーラー 交響曲第3番 名盤」で愛聴盤をご紹介しました。その中で、クラウス・テンシュテットのロンドンでのライブを非正規盤ながらも中々に良い演奏なので触れていましたが、昨年ついにその正規盤がリリースされました。音質が見違えるほど良くなった為に、演奏の素晴らしさを再認識しました。是非ご紹介したいと思います。

イギリスBBCによる録音なのですが、驚くほどの音質の素晴らしさです。全集録音を行なったEMIの貧弱な録音とは雲泥の差です。それは、同時代の数々のEMI録音にも共通している点ですが、要は音に対するフィロソフィーの問題なのだと思います。その本家EMIの悪癖を東芝EMIが更に増幅させていたのには、つくづく閉口させられたものです。

話がそれましたが、この正規盤は本当に優秀な音造りです。基本的にホールトーン傾向の録音ですが、響きはどこまでも柔らかさを失わず、耳に刺激的な成分が有りません。もちろんそれは演奏が迫力不足なのではなく、テンシュテットならではの巨大さと力強さを充分に持っています。その巨大なスケール感はバーンスタイン/ニューヨークPOに次ぎますが、バーンスタインには幾らか踏み外した過剰さを感じてしまう(それもまたレニーの魅力ではあるのですが)自分にとっては、テンシュテットの大きさには許容範囲内での最高の充実感を覚えます。重低音の量感が素晴らしいので、柔らかい高域音とのバランスの良さは抜群です。ティンパニーも極めて力強いですが、決して騒々しくは無く、この上ない快感を得られます。

もちろん、ロンドン・フィルのオケとしての性能はここでも100%万全とは言い難く、ウイーンPOやチェコPOの個々の奏者の上手さや音の美しさには及びません。この曲ではヴァイオリン独奏が活躍しますが、コンサート・マスターの上手さも少々聴き劣りします。けれども、全体として聴いた場合には、録音も含めた響きの美しさでは、この曲の名盤であるアバド/ウイーンPOやノイマン/チェコPOを凌ぐようにさえ思えます。そして何しろ音楽の気宇の大きさに感動します。あの元々感動的な終楽章での息の長い壮大な盛り上がりは、ただただ素晴らしいの一言です。非正規盤では、正直言ってこれほどの感動は与えられませんでした。正に演奏の真価が初めて世に表されたと言って良いのでしょう。個人的には、現在のこの曲のマイ・フェイヴァリット盤に躍り出ました。

本当にテンシュテットは凄い指揮者でした。この人が、もしもの話ですが、ウイーン・フィルを指揮してマーラー全集を残していたら、間違いなくマーラー演奏史が変わっていたことでしょう。

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2013年6月 1日 (土)

鼓童 ワン・アース・ツアー2013 ~伝説

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今週水曜日の事ですが、和太鼓集団、鼓童の公演を観に行きました。これまで観たことは無かったのですが、家内の強い要望も有ったので一度ぐらいは観ても良いなぁと思い、職場からもほど近い相模女子大学グリーンホールの公演に仕事帰りに出かけてみました。

鼓童の芸術監督を2年前から坂東玉三郎さんが務めていますが、今回の「ワン・アース・ツアー2013~伝説」も玉三郎さんのプロデュースです。それにしても玉三郎さんはあちらこちらで演出を盛んに行って活躍していますね。

全部で2時間の公演でしたが、休憩をはさんで第一部は3曲、第二部は4曲という構成です。それぞれの曲で奏者の人数も太鼓の種類も変わりますし、洋楽器のティンパニも最後列で隠し味のように使用されます。笛や歌がからむ曲も登場しますし、実に変化に富んでいるので、思っていたよりも遥かに飽きさせません。

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それにしても太鼓の音の迫力がこれほどのものとは思いませんでした。鍛え抜かれた筋肉で力強く、かつ非常にしなやかさを感じる多彩な音の饗宴です。原始的なリズムでズシン、ズシンと響く音にはストラヴィンスキーの「春の祭典」とよく似たイメージを受けました。

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そして極めつけは何と言っても、直径三尺八寸というこの大太鼓。数百年の大木から切り出されたそうです。大ホールいっぱいにとてつもなく深い響きがとどろき渡ります。ふんどし姿で太鼓を叩く奏者のたくましい肉体美には男でも惚れますね。いや、決してアチラの気がある訳では無いのですけど(笑)。連れの家内もえらく魅了されていたようです。これからは我が身を見る目が変わってしまうかも・・・イヤですねぇ(苦笑)。

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女性の奏者も登場します。でも、さすがにふんどし姿というわけには行きませんよね(苦笑)。女性らしく舞踊のように美しく叩き、音そのものには男性の力強い音とは異なる繊細さを感じます。

ということで、日本古来からの伝統芸能に現代的、かつユニバーサル的な要素をブレンドさせた素晴らしいステージでした。一度と言わず、そのうちにまた是非観に行きたいです。

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