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2013年4月 8日 (月)

~クラシック音楽館~ N響定期からエレーヌ・グリモーのブラームス ピアノ協奏曲第2番

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今年1月のNHK交響楽団のB定期演奏会(サントリー・ホール)には、エレーヌ・グリモーがソリストとして登場してブラームスのピアノ協奏曲第2番を弾くと言うので是非とも聴きたかったのですが、平日なので休暇を取らないと行けないなぁ、などとちょっと迷った隙にチケットが完売してしまいました。もう後の祭りです。「いつチケット買うの!今でしょ!」と先生に言われた気がしました。(苦笑)

そのコンサートの録画がついに、Eテレ新番組の「クラシック音楽館」で放送されました。ホント楽しみだったのですよ。なにしろ現役のピアニストで一番好きなのはグリモーです。(ビジュアルでは仲道郁代ですけれども。いえ、もちろんピアノも良いですけどネ。)

グリモーが以前、クルト・ザンデルリンクの指揮で録音したブラームスの協奏曲第1番のCDは本当に素晴らしかったです。ブラームスの晩年のピアノ小品集も素晴らしかったです。どうしてフランス娘の彼女がブラームスをこれほど得意にするのか不思議でなりませんが、なんでも彼女は狼を飼育していて、自分は狼の血をひいていると(本気で?)思っているとかいないとか、ちょっと常人離れした感覚を持っているみたいです。

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演奏が始まる前のインタヴューで、グリモーが興味深いことを話していました。

「第1番はすぐに自分に無くてはならない曲に思えましたが、第2番は中々そうは思えませんでした。最近ようやくそう思えるようになったので演奏会で弾き始めたのです。私はそう思えない曲は弾きませんから。そして面白いことに気が付きました。これはブラームスと同じだからです。彼はこの曲を書くのに大変長い時間がかかったからです。」
そんな内容でした。

ちなみに指揮をするのはデーヴィッド・ジンマンです。正直言って、指揮者は誰でも良かったのです。もしもザンデルリンクが生きているなら話は別ですけれど。まぁ、そんな風に言っては元も子もないので期待して聴きましょう。

そして演奏が始まりました。(前プロについては省略します。ブゾーニの短い曲とシェーンベルクの「浄夜」です。もちろんオケだけの演奏です。)第1楽章はグリモーはよく弾いてはいますが、何かいつものインスピレーションが感じられません。難しいスケールも完全に音になっていないように聞こえます。それにしてもこの曲は本当に難しいですね。テクニックだけ有ってもどうにもなりませんが、テクニックが無くても音楽になりません。グリモーの演奏は、まだ充分に弾き込んでいないような未完成さを感じました。第2楽章は第1楽章よりも上出来でしたが、彼女にはもっと期待したいところです。第3楽章はいかにもグリモーらしい深々と沈滞した素晴らしい演奏だったと思います。第4楽章は軽やかなのだけど、もっとブラームスらしい含蓄が欲しかったです。

全体を聴き終えて思い出したのが初めのインタビューです。彼女にとってはこの曲はまだ完成途中なのではないかと。更なる時間が必要なのではないでしょうか。彼女にはもっともっと閃きに溢れた演奏を期待しますし、それが可能になった時にレコーディングを行ってくれることと思います。現在の彼女の演奏を聴けたことは大変嬉しいのですが、この程度では決して満足できません。彼女のファンであればこそ更なる高みの演奏を期待するのです。

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ブラームス(協奏曲:ピアノ)」カテゴリの記事

コメント

私も聴きました。狼の話は知りませんでしたが、ビジュアル的にもけっこういけてるんじゃないですか?
ただ演奏のほうは、ふだん愛聴しているポリーニに比べると、ちょっと未消化の感がありましたね。コンツェルトでは、見栄を切るような箇所は演奏が容易なものです、とくにテクニック十分の一流奏者の場合。しかしこの曲にはそいう箇所が少ない、どうやって弾いたらいいのだろうという箇所がたくさんあります。もっとsoto voceでつぶやいてほしい箇所、抵抗感なく流れるように弾いてほしい箇所、いくつかありました。
オケも良い演奏だったと思うのですが、ここぞという箇所でピアノとずれることが多く、気になりました。ソリストが練習と違う演奏をしてしまったのか、指揮者の責任かわかりませんが。でも、今後のグリモーのブラームスは一層期待できますね。

投稿: かげっち | 2013年4月 8日 (月) 12時59分

ハルくんさん、こんばんは。 私も かなり期待して観てましたが 正直、「?」 が残る演奏だったように感じました。
私は技術的な事はわからないので、彼女の他のブラームスと聴き比べての感想ですが、何かが足りないんですね・・・。
彼女のブラームスはこんなものではないと思うので グリモー自身が納得出来る演奏のCDの登場を 何年でも気長に待とうと思います。
それまでは バックハウス/ベーム盤とアンダ/フリッチャイ盤を聴きながら 感動に浸ろうと思います。(笑)

投稿: ヨシツグカ | 2013年4月 8日 (月) 19時25分

かげっちさん、こんにちは。

グリモーはビジュアル的にもイケてますよ。自分にとっては仲道郁代がナンバーワンだと言っただけです。ブニアティシヴィリの次ぐらいにイケてるかなぁ。

彼女は絶対に天才だと思います。今回の演奏は実力が100%出ていませんし、まだまだ曲が未消化です。理由は分りませんが、狼の世話で忙しかったのかもしれませんね。
いずれにしても次回に期待します。

投稿: ハルくん | 2013年4月 9日 (火) 09時22分

ヨシツグカさん、こんにちは。

彼女ならではの「閃き」が足りなかったですよね。こんなものでは無いはずです。

そこへいくとバックハウス、アンダは曲を完全に手中に収めています。もっとも、演奏をしている際の年齢が違いますからね。やはりブラームスの後期の作品をものにするにはある程度の年輪が必要とされるのかもしれません。
晩年の小品集も、もしも再録音してくれれば、また一味違う演奏になりそうです。

投稿: ハルくん | 2013年4月 9日 (火) 09時29分

こんにちは。

うーむ、残念でしたね。私は見逃したので、なんとも言えませんが、これはぜひ見たかったです。2番は跳躍が多い超難曲。完璧に弾いているのはツィマーマンとブニアティシヴィリくらいではないでしょうか。二人とも爆演です。バックハウス盤は我が家にもありますが、3楽章は綺麗だなと思うものの、世代が違うせいか全体としてはあまり好きではありません。名演と言われてますけど.....まあ、好みなんでしょうね。

投稿: NY | 2013年4月 9日 (火) 18時00分

NYさん、こんばんは。

もちろん演奏ですから好みの問題ですよね。
でも、バックハウスは83歳、ルービンシュタインは84歳の時の録音ですから、それは凄いことですよ。人間国宝の至芸を目の当たりにするような趣が有るので、そんな風に楽しむのも一興ではないでしょうか。

投稿: ハルくん | 2013年4月 9日 (火) 21時34分

ハルくんさん、私も聴いています。いや見ましたが少し消化不良君ですかね???多分指揮者が良くなかったかあるいは準備不足だったかでしょう。後者だとすれば三楽章以降はあっさりしすぎた感がありました。この三楽章がこの曲のある意味要ですからここはもう少しじっくりと演奏して欲しかったとおもいます。四楽章はそれを引き継いだ感じで私はガッカリしてしまいましたよ。あれほどザンデルリングとの一番はすばらしいのに・・・・・。しかしすごい演奏家には変わりないし二年前に行ったリサイタルの衣装と同じだったかなあ、少なくとも色はおなじだった。堅実家なのでしょう。彼女が衝撃を受けたアラウのものを聞きたくなりました。彼女の話は実演でしょうけどねっ! まつやす

投稿: まつやす | 2013年4月 9日 (火) 22時20分

まつやすさん、こんばんは。

皆さん、この曲とグリモーには感心が高いのですね。
僕は3楽章は良かったと思いますが(独奏チェロはチョットですが)、やはり4楽章は物足りませんでした。

僕は指揮者の問題では無いような気がします。まだ曲が未消化ということが考えられますが、いつかモノにして欲しいものです。
彼女は奢侈なドレスなどには興味の無い堅実家なのでしょう。本当は色っぽいドレスでも着てくれたら嬉しいのですがね。

アラウはマルケヴィチ/フランス国立管と組んだ1976年のライブCDを愛聴しています。これは市川団十郎の大見得切りのような演奏です。凄いですよ。

投稿: ハルくん | 2013年4月 9日 (火) 22時53分

ハルくんさん、こんにちは。
梅雨のじめじめした時期が続きますが(今日も別府は雨です・・・)、こういう時期でも 我が溺愛するブラームスの音楽は 無性に聴きたくなりますねぇ。(笑)
最近は 密かに入手した(?・ 笑)テンシュテット/北ドイツ放響の「ブラ1」('92年ライブ・海賊盤)と ラローチャ/ヨッフムの「ピアノ協奏曲第2番」のライブ盤を聴いています。
どちらも素晴らしい演奏ですが、この「第2協奏曲」は 今まで聴いてきた演奏の中でもトップクラスに入ります。ゆったりとしたテンポ、決して煩くならないオケ、お互いに寄り添うかのような ラローチャとヨッフム・・・。確かに ベルリン放送響(現在のベルリン・ドイツ響)は技術的には万全ではありませんが(素人の私にも判ります(笑))、ヨッフムの棒に一生懸命応えようとしています。感動的です。
特に第2楽章は(ラローチャのピアノを含めて) バックハウス盤やアンダ盤より 私の心に響きました。
こんなCDに出逢えて 非常に嬉しいです。

投稿: ヨシツグカ | 2013年6月30日 (日) 15時30分

ヨシツグカさん、こんにちは。

実はこのところマーラーづいているので、ブラームスは休憩中です。ベートーヴェンのカルテット特集も中断中ですが、中期と後期の間には長い作曲のブランクが有るので、まぁこれも許されるかなと。(笑)

ラローチャ/ヨッフム盤の情報ありがとうございました。以前から聴いてみたい演奏の一つです。今年の秋の特集には是非入れたいですね。

テンシュテット/北ドイツ放響の「ブラ1」も良さそうですね。僕はSKD、ゲヴァントハウス、北ドイツ放送がブラームス演奏の三大オーケストラだと決め込んでいます。これも聴いてみたいものですね。

投稿: ハルくん | 2013年6月30日 (日) 17時00分

エレーヌ・グリモーのピアノ独奏でブラームスのピアノ協奏曲集がドイツグラモフォンから発売予定です。
指揮はアンドリス・ネルソンス。
オケは第1番がバイエルン放送響、第2番がウィーン・フィル。
ウィーンフィルとの第2番が、たいへんな聴きものです。
私は購入するつもりです。

投稿: オペラファン | 2013年7月 5日 (金) 23時12分

オペラファンさん、こんばんは。

このディスク、僕も早速予約を入れてあります。
先日のN響定期での2番は必ずしも良いとは言えませんでしたが、彼女のことです、きっと自信が有って出すのでしょう。
1番も旧盤との違いを聴き比べてみたいです。

投稿: ハルくん | 2013年7月 6日 (土) 00時23分

ハルさんこんばんは。
グリモーのジンマンとの共演、私もたまたま見ましたが皆さん不出来とおっしゃてますが私は良かったですよ。グラモフォンの新盤、私も予約しました。楽しみです。指揮者は初耳なのですが?ハルさんご存知でしたら教えてください。
なお、グリモーのラフマニノフ2番も最近買っちゃいました。振り向きショットが抜群だったのでジャケ買いでしたが演奏も素晴らしかったです。パソコンにも入れて永久保存盤になりました。

投稿: DICK | 2013年7月 6日 (土) 01時51分

DICKさん、こんにちは。

N響とのグリモーは、もちろん良かったのですが、彼女の実力からすればあんなものでは無いはずだとどうしても思ってしまいます。録画を残してありますので、新盤の演奏を聴いてみたうえで、改めて聴き直してみたいと思っています。

アンドリス・ネルソンスについては知識は有りません。まぁDGで指名されるのですから悪いことは無いのではないかな。これも演奏を聴いてみての上ですね。

投稿: ハルくん | 2013年7月 6日 (土) 12時25分

ジョージ・セルがカーゾンと組んでニュヨークフィルと演奏したライブ盤をご存知でしょうか。こんな組み合わせの演奏がのこされているのですねえ・・・。1953年だそうです。その後クナッパーツブッシュと2年後に録れなおしですがこの2年前の演奏は同じ人とは考えづらいほど爆発しています。指揮者セルともども燃えていて第一楽章が終わるとすぐに熱烈な拍手が起こっていました。第2楽章もすこぶる豪快で第2楽章が終わっても拍手が起こっているのです。録音も当時のライブを考えればまずまず、カーゾンが指揮者によってこれほど違うことに驚いています。有名なロンドン交響楽団との第1番の録音は確か1960年、カーゾンとセルは相性が良かったのでしょうか。そういえば素晴らしいモーツァルトもありましたよね。是非とも聴いてみてください。

投稿: まつやす | 2013年11月23日 (土) 22時20分

まつやすさん、こんばんは。

カーゾンとセルの2番ですか。そんな録音も残っているのですね。
セルはゼルキンとのCBS録音も実に素晴らしかったです。
これは聴いてみたいですね。どうもありがとうございます。

投稿: ハルくん | 2013年11月24日 (日) 00時05分

ハルくん様

morokomanです。

上記でまつやす様がご指摘なさったカーゾン/セル盤、私も聴いたことがあります。

第1楽章、第2楽章でそれぞれ音楽が終わると、感極まった聴衆から絶賛の拍手が贈られていた記憶があります。

こんな凄いことを可能にする曲、果たして他にあるでしょうか? -いや、存在しない! と思わず断言したくなります(が、ほぼ真実だと思っています)。

まさに、ピアノ協奏曲というジャンルの最高傑作だと思います。

第1番と併せて聴くたびに「(ピアノ協奏曲のジャンルで)ブラームスは、ベートーヴェンを超えた!」とか「人類史上初のベートーヴェン超え達成!!!!」などと、思わず声に出してしまいたくなるほどです。

私が好きな演奏は、実はギレリス/ヨッフムなのです。ハルくん様のお好みとは違い、申し訳ありません。ド迫力系ですね。セル/カーゾンも確かそんな感じだったと思います。

ですが、こうした「力技」で人を感激させることができるのも、別の表現で感激させることができるのも、ともにこの曲がもっている潜在的なポテンシャルの巨大さを証明するものだと思います。

やはり、ブラームスのこの2曲(とりわけ第2番)は、人類が手にした最高のピアノ協奏曲だと思います。

投稿: morokoman | 2013年11月26日 (火) 20時58分

morokomanさん、こんにちは。

この第2番が古今のピアノ協奏曲の中で最高だというご意見には全面的に賛成で、僕もブログの中で何度も書いています。
そればかりかブラームスのシンフォニーにさえ、規模的にも内容的にも並び立つ存在だと思います。こんなピアノ協奏曲は他に無いですね。
第1番も相当なものですが、スケールの広がりと気宇の大きさから言えば、やはり第2番でしょう。
誰の演奏で聴いても好みは別として、それはいつでも感じられますね。

投稿: ハルくん | 2013年11月27日 (水) 09時29分

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