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2013年4月10日 (水)

チャイコフスキー ヴァイオリン協奏曲 サラ・ネムタヌ 待望の新盤

005798サラ・ネムタヌ独奏、クルト・マズア指揮フランス国立管弦楽団(2012年録音/仏Naive盤)

待ちに待った新盤がようやくリリースされました。世界中で大ヒットした映画「オーケストラ」(原題:Le Concert)でヒロインが弾くチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲を、実際に演奏していたヴァイオリニストであるサラ・ネムタヌさんのCDです。

あの映画の中のコンサートで奏されるヴァイオリンは非常に印象的でした。この曲のCDを飽きるほど聴いて来た人間でも感動するような素晴らしい演奏だった(ように感じた?)からです。これはクラシック愛好家の友人に聞いてもやはり同じ感想でした。ですので、この人の弾く全曲を是非とも聴いてみたかったのです。映画で感動したような演奏を本当に行うのかどうか?それとも、もしやあの感動は映画の中だからそう感じただけだったのだろうか?それを確かめたかったからです。

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サラ・ネムタヌさんの名前は、映画公開当時はほとんど知られていませんでした。けれども、今ではかなりの方が知っていると思います。フランス国立管弦楽団の第1コンサート・マスターです。1981年生れで、出身はルーマニアですが、現在はフランスとルーマニアの二つの国籍を持っているそうです。
まだ30代前半の若手ですが実力が有り、ソリストとしても一流のオケと指揮者の演奏会に招かれています。それに、(ココが肝心!)何と言っても彼女は美しい!ルーマニアもまた美女の宝庫なのですね・・・(羨)

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今回のCDはライブ演奏による録音です。この難しい曲をライブとはよほど自信が有るのでしょう。オーケストラは、彼女の所属するフランス国立管弦楽団で、指揮をするのは、ミスター堅実?ことクルト・マズアです。せっかく映画がヒットしたのですから、ここはロシア出身の指揮者を起用すれば、ずっと映画のイメージに近くなったと思うのですが。人選としてはちょっとマズアかなぁ。

まあ、ともかくCDを聴いてみましょう。

第1楽章冒頭のヴァイオリンの歌わせ方は、映画の時よりもややアッサリと感じます。コテコテのロシア風ではありませんし、さりとて小粋でお洒落なフランス風でもありません。でも味わいが無いわけでは無いのですね。強いて言うと彼女の生まれ故郷のルーマニア風?よく判りませんが、ルーマニアには一部ジプシーの血が混じっていますし、わずかに民族的な味わいを感じないこともありません。
彼女のテクニックは非常に素晴らしいです。オーケストラのコンサートマスター・レベルでも、この難しい曲をこれだけ弾ける人はそうは居ないと思います。それほどの演奏者であれば、ソリストとして独立を目指すのではないでしょうか。

オーケストラの伴奏は普通です。オケはともかくとして、マズアの指揮が相変わらず堅実一本やりで面白みに欠けます。

第2楽章は非常に美しいです。ロシア風の情緒綿々たるエレジーというよりも、いくらか控え目なルーマニア風の「望郷のバラード」といった感じですが、静寂の中を時がゆっくりと流れてゆくような、とても深い味わいを感じます。

第3楽章では、彼女のパッションが全開です。ハッタリは無く、丁寧なのですが、映画での熱狂ぶりを彷彿させる素晴らしさです。ライブでこれだけ、ほぼ完璧に弾けるのは凄いことです。マズアとオーケストラも。ここではピッタリと合わせ健闘していますし、フィナーレの追い込みは荒々しさも加わって映画での興奮を誘います。

と言うことで、全曲を聴き終えてみると、とても満足できる良い演奏でした。ただ、映画で感動したイメージをそのまま期待すると、裏切られてしまう可能性が有ります。あれは、やはり映画によって感動がかなり増幅されていたようです。そして、この演奏が、オイストラフやコーガン、トレチャコフ、レーピンといったロシア出身の名人達を越えるかというと、それは少々難しいです。そういう尺度で聴くと失望しかねません。それでも、録音は生演奏を聴いているような臨場感の有る優れたものですし、映画のシーンを思い浮かべながら聴いていると、とても楽しめる好CDであることは確かです。

繰り返しになりますが、こんなに上手い人がオーケストラのコンサートマスター席に座られていたら、下手なソリストはちょっと演奏しにくいのではないでしょうか。ホントに。

なお、カップリングにはネムタヌさんを中心に、フランスで活躍するメンバーを集めて、同じチャイコフスキーの弦楽六重奏曲「フィレンツェの想い出」が収められています。これもとても充実した素晴らしい演奏です。

以上、ご興味が有って、このCDの購入を考えておられる方に少しでも参考になればと思います。お聴きになれた方のご感想を楽しみにお待ちしています。

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チャイコフスキー(協奏曲)」カテゴリの記事

コメント

「ハルくん」さん、こん○○は。
このCDは、NAXOS Music Libraryでも聴くことが出来ますね。http://ml.naxos.jp/album/v5325
で、聴きましたが、残念ながら私は「ハルくん」さんとは全く反対の感想です。映画のことは知りませんし、他の演奏は知りませんが、このチャイコフスキーに関して言えば、この人はまだソリストをやるような人ではないと思いました。それはテクニックもそうですし、舞台の中心に立ち自ら音楽を創り上げるという意思が確立できていません。この曲に対する解釈がはっきり出来ていないため終始表現にムラがあり、そのためテンポ感が希薄で演奏に説得力がなく、色々な奏法も雑で重く、最後盛り上がる箇所は技術的に限界で遅れぎみでオケと合っていませんね。オケ奏者の域を脱していません。
テクニックがある、とは、せめてこういうヴァイオリンだと思います。http://www.youtube.com/watch?v=9m0Fx8wX3U0
良い演奏かどうかは別として。
また、マズアのせいではありませんね。彼はとてもよいアシストをします。http://www.youtube.com/watch?v=YJTiOPJ6g28

投稿: gutsy | 2013年4月11日 (木) 00時52分

gutsyさん、コメントを頂きまして有難うございました。

意見は十人十色ですから、多様なご意見は貴重だと思います。
ですが、誰々の方が上手い下手、あるいは良い悪いというのはさして重要とは思いません。
僕がネムタヌさんを上手いと書いたのも、あくまで「コンサートマスターとして」ということで、彼女より上手い人なら他に幾らでも居るのは(実際に色々と聴いたうえで)承知の上です。さらにセッション録音とライブ録音という条件の異なる演奏における細部のキズを指摘するのも余り意味が有りません。
でも彼女はオケ奏者の域は間違いなく脱していますよ。
というのが、僕の考えなのです。どうぞご理解頂ければと思います。
ついでにですが、映画面白いですよ。ご覧になられてみてはいかがでしょうか。

マズアについては、いつも「堅実な」良いアシストをしていますね。そのような指揮者だと認識しています。「面白くない」というのは僕の好みの問題なのですね。

どうもありがとうございました。またのコメントをお待ちしております。

投稿: ハルくん | 2013年4月11日 (木) 02時10分

『オーケストラのコンサート・マスターで、この難しい曲をこれだけ弾ける人はそうは居ないと思います。何故なら、そういう人は皆ソリストとして独立してしまうからです。』


演奏から受ける印象はそれぞれでしょうが、上記記述はちょっと事実とは違うように思います。多くの誤解を招きかねません。
オーケストラにはコンサートマスターに限らず、素晴らしい才能をもった方が大勢います。「ソリスト的」に凄い方が、オーケストラで弾いていることも珍しくありません。それに今は(昔もかな?)ソロとオケを上手に両立することはごく自然なことになっています。
ステレオタイプにならず、「音楽」はその人の内なるものとして接していただきたいというのが、オケマンとしての願いです。

投稿: オケマン | 2013年4月11日 (木) 14時10分

オケマンさん

もちろん自分がプロの演奏家になったことが有るわけでは無いですし、プロの世界の実情は分りませんので、御指摘頂いた記述は確かに短絡的であったかもしれません。
ただ、一口に「ソリスト」と言っても、情感重視派、技術重視派、あるいは人気優先派と様々ではありますが、演奏家がソリストを本気で極めようとする場合に、多忙なオケの活動の合い間に鍛錬できるほど甘い世界では無いのではないでしょうか?二束のわらじにはどうも限界が有るように思えてなりません。
言いたかったのは、ネムタヌさんレベルのプレーヤーであればソリストに専念するのが普通に思えるということだったのです。

どちらにしても知り得ないことを書く時には慎重になるべきですね。一部修正を考えます。
貴重なご意見をどうも有難うございました。

投稿: ハルくん | 2013年4月11日 (木) 22時31分

映画を観た私も期待して聞きましたが、映画のときのような情熱的な演奏ではなかったのが、残念でした。ハルさんは、第2回チャイコフスキーコンクールのバイオリン部門の優勝者ボリス・グトニコフ(すでに亡くなっていますが)、指揮はロジェストベンスキー、モスクワフィルのレコード(残念ながら、CDではありません)を聞いたことがありますか?この回では第3位に久保陽子が入っています。そして、第3回のチャイコフスキーコンクールで、トレチャコフと潮田益子が競い、残念にも潮田が2位に甘んじ、3位に故池田満寿夫夫人の佐藤陽子が入りました。ハルさんは、オイストラフ、レーピン等を高く評価していますが、スラブ的な情熱をこれ以上に表現した演奏はないと断言できるのがボリス・グトニコフの演奏です。第2楽章のカンツォネッタをポルタメントを多用しながら情熱的に盛り上げてゆく演奏は絶品です。レコードはおそらく廃盤だと思いますが、ハルさんなら、手に入れられると思いますので、ぜひ聞いてみて下さい。

投稿: ハセガワ | 2013年4月14日 (日) 02時14分

ハセガワさん、はじめまして。
コメントを頂きましてありがとうございます。

残念ながらボリス・グトニコフの演奏には接したことがありません。当時のチャイコンの優勝者ですから、さぞや良い演奏家でしょうね。(途中からだんだん?のつく人が増えてきましたが)
僕もチャイコフスキーはスラヴ的なスタイルが一番好きです。ですので、どうしてもロシアの演奏家中心になってしまいます。オイストラフ、レーピン、それにコーガン、トレチャコフ、みな大好きです。
グトニコフを聴いてみたいのですが、ディスクはCD、LP問わず、世界的に出ていないようですね。残念です。
でも大変興味深い情報を頂きましてありがとうございました。

また、何でもお気軽にコメント下さい。楽しみにお待ちしています。

投稿: ハルくん | 2013年4月14日 (日) 11時55分

今晩は、ハルくん様。 GW前半いかがお過ごしでしたでしょうか。 私は毎年恒例「ラ・フォル・ジュルネ」を楽しみました。販売ブースも充実していて、ついつい足を向けてしまいました。輸入盤でデボラ・ネムタヌ(Vn) パリ室内管のフォーレ&サンサーンスの作品集なるものを見つけ、購入しました。早速、聴いてみましたが仲々素晴らしい演奏です。たまたま同姓のヴァイオリニストなのか姉妹なのか解りませんが、こうした日本では知られていない良い演奏家がまだまだ沢山いるのでしょうね。 話は変わりますが、今日スーパーに買い物に行ったら「頭上に燕の巣がありますのでご注意下さい」とありました。なるほど大人ツバメさんが巣作りをしています。 ハルくんのお家にはやって来ましたか? 今年も楽しみですね。 東京のスーパーじゃ、こうはいかないでしょうね。 心の広い地元スーパーさん、エライ!

投稿: from Seiko | 2013年4月29日 (月) 22時20分

Seikoさん、こんばんは。

GW前半はのんびりです。後半ものんびりの予定です。(笑)

サラさんとデボラさんは姉妹ですよ。サラさんがお姉さんでデボラさんは妹です。ちなみにお父さんもヴァイオリニストだったそうです。ヴァイオリン一家ですね。
まぁ、姉妹ですから二人とも美しいわけですよね。今後大いに注目です。

厚木ではツバメたちが沢山飛び回っていますよ。昨年残していった我が家の巣にも昨日、ツバメが一羽下見に来ていました。昨年の兄弟の中の一羽なのかなぁ。今年も子育てしてくれると良いなと期待で胸を膨らましています。

投稿: ハルくん | 2013年4月29日 (月) 23時26分

初めまして!
情報ありがとうございました!
映画見てから、彼女の演奏・音に圧倒されまして…CDを探していたのですが、
当時サントラ(短いバージョン)しか出てなくて。

しばらくして、既にCDが出ていたのですね!(歓喜)
もーこれは聞くしかない!ですね。

今もYouTubeで聞いて、彼女の音が素晴らしく、胸に響くというか、もう、泣きそうでした。


コメントに厳しいコメントがあったので、そうなのかな?と思って、聞いてみたのですが、
ここまでくると、好みの話なのでしょうか、
もちろん上手で可憐ですが、
全く響きませんでした。


他の曲は存じ上げませんが、
チャイコフスキー ヴァイオリン協奏曲はやっぱり彼女の表現力・音が好きだなーと改めて思いました。^^


投稿: 聖 | 2014年2月22日 (土) 20時03分

重厚な音で
彼女のルーマニア?の血を感じるというか、
ちょっと王道と違うんですよね…

チャイコフスキー ヴァイオリン協奏曲にはぴったり!(*^_^*)


あくまでも個人的な感想です!(笑)

投稿: 聖 | 2014年2月22日 (土) 21時27分

聖さん、初めまして。
コメントを頂けてとても嬉しいです。

今ではYouTubeで映画の演奏を聴き返すことが出来るので、改めて聴いてみました。
確信を持って、映画の演奏がやはり素晴らしいと思いました。このCDは全曲を聴けるのは良いのですが、演奏の魅力では映画に敵わないと思います。ヴァイオリンの歌い回しが映画の時のほうがずっと大胆です。どうして映画のように弾かないのかなぁと不思議なのですが、映画用には本来の自分の弾き方以上に意識してそうしたのかもしれませんね。興味深いところです。
でも演奏家がその時どきで表現が変化するのもよく有ることですし、あんな素晴らしい演奏を出来る凄いヴァイオリニストなのだということです。
ですのでCDの演奏に対する感じ方は人それぞれになると思いますが、よかったらお聴きになられてください。
そのときのご感想を楽しみにしています。

またいつでもお気軽にコメント下さい。ありがとうございました。

投稿: ハルくん | 2014年2月23日 (日) 10時47分

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