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2013年2月 3日 (日)

リムスキー=コルサコフ 交響組曲「シェヘラザード」 名盤

Detouche

シェヘラザードという女性は、伝説上のイランの王妃ですが、「千夜一夜物語(アラビアンナイト)」の語り手として知られています。どうして毎晩物語を語り続けなければならなかったのか、おさらいをしてみますと、昔々シャリアール王という王様が居ました。王様にはお妃様が居ましたが、このお妃様には大変な浮気癖があり、宮殿で堂々と浮気をしていたのだそうです。しかも奴隷とまで浮気をしていました。(よほど魅力的な肉体の奴隷だったのでしょうかね?)

ところが、王妃の浮気を密告されたシャリアール王は、ことの真相を確かめるために、ある日狩りに行くと見せかけて、途中で宮殿に引き返してきます。
すると、王妃は後宮で例の奴隷と浮気の真っ最中でした。
王様は怒り狂って、お妃も奴隷も下女たちも、全員処刑してしまいました。(おお怖ろしや~)

そして、王様はこのことが原因で女性を信じられなくなり、それからは処女と結婚して一夜だけ過ごしては、翌朝に処刑してしまう、という日々を過ごすようになります。
処刑した処女の数は3000人にも及んだそうです。うーん羨ましい・・・、おっと違った、なんてヒドイ奴だ!

そこで、時の大臣の娘であるシェへラザードが、父の反対を押し切って、自ら王様と結婚して一夜を過ごすことを志願しました。

さて、いよいよ王様の寝室に入ったシェへラザードは、面白い物語を王様に語ります。王様は彼女の最初の物語に聞き入り、次の話をするように命じますが、彼女は夜が明けたのを理由に話を終わりにします。そして、「明日お話しする物語は、今宵のものより、もっと心躍るでしょう」と言いました。王様は新しい話を聞きたさに、シェへラザードを処刑せずに生かしておきます。(見事な話術ですねぇ。どこかの結婚詐欺女みたいだ?)

こうして、毎日面白い物語を話したシェヘラザードと王様との間には、やがて3人の子供ができました。(ということは、やっぱり話だけでは無かったのネ。)
シェヘラザード王妃によって、王様は人徳と寛容を身に付けました。
その千と一夜の物語が、「アラビアンナイト」というわけです。

めでたし、めでたし・・・と言いたいところですが、それじゃ3000人の女性の命を奪った落とし前はどうつけてくれるんや!(ハルくん怒る)

リムスキー=コルサコフはロシア五人組の一人ですが、ロシア海軍に入隊して、世界の海を航海した変わり種です。ですので、この「シェエラザード」でも、大海原の描写に非常に優れています。民族的で情緒にあふれる音楽は、他のロシアの作曲家と共通していますが、とりわけ美しい旋律を書いているように思います。

交響組曲「シェエラザード」は、4曲で構成されていて、明かに「交響曲」を意識した構成です。独奏ヴァイオリンがシェへラザードの象徴として至る所で奏されますが、艶っぽい美女を想像させて、とても魅了されます。

一応、4曲のタイトルを記しておきます。

第1楽章「海とシンドバッドの船」

第2楽章「カランダール王子の物語」

第3楽章「若い王子と王女」 

第4楽章「バグダットの祭り。海。船は青銅の騎士の有る岩で難破。終曲」

第1楽章での、荒れ狂う大海原と静かで平和な航海との対比は最高です。さすがに本物の船乗りですね。僕が好むのは第2楽章の民族的な雰囲気で、漂う哀愁がこたえられません。第3楽章のロマンティックな美しさも素敵です。第4楽章はフィナーレに向かって極めてドラマティックに盛り上がります。再び海にたどり着いて最後は船が難破して幕を閉じます。

リムスキー=コルサコフはロシアといっても、中央アジア的で、いわゆる荒涼としたシベリア大地の雰囲気は感じさせません。特にこの曲はアラビアを題材としていますし、明るく演奏されることも多いように思います。でも、第2楽章に登場するオリエンタルな哀愁に溢れた旋律などにも、やはりロシア風の味わいが込められているように感じます。

それでは僕の愛聴盤です。

Schehrrazade_kondrashinキリル・コンドラシン指揮アムステルダム・コンセルトへボウ管(1979年録音/フィリップス盤) 後述のゲルギエフ盤を聴いてしまうと物足りなく感じますが、コンドラシンがしっとりした音色のコンセルトへボウを指揮したオーソドックスな名演です。良くも悪くもゲルギエフやチェリビダッケのようなアクの強さが無いので、好みは分れるでしょうが、安心して抵抗感なく聴いていられる点は良いと思います。名コンマスのヘルマン・クレヴァースの独奏も美しいです。

Celibiセルジュ・チェリビダッケ指揮シュトゥットガルト放送響(1980年録音/AUDIOR盤) 同オケとのライブ録音はグラモフォンから1982年録音のものも出ていますが、それとは別の演奏です。海賊盤ですが、音いじりをしない音造りは正規盤以上に優れています。演奏は極めて遅いテンポでスケールの巨大な典型的なチェリビダッケのスタイルです。特に1楽章や終楽章の破滅的なカタルシスが凄いです。反面、2楽章は遅過ぎてもたれます。3楽章も更に美しく出来そうです。独奏ヴァオリンは表情が大胆で艶やかさに溢れていて、シェラザードの語りを聞くようなのが魅力的です。

Cherisセルジュ・チェリビダッケ指揮ミュンヘン・フィル(1984年録音/EMI盤) この人のこの曲の録音は、近い時期に集まっていますが、ミュンヘンでのライブは最もテンポが遅くチェリビダッケの本領発揮です。但し、終楽章などではシュトゥットガルトRSO盤に比べても緊張感が失われています。結局、この人にとってはブルックナーもRコルサコフも同じ方法論での演奏になってしまうのですが、共通しているのは聴き手の息が詰まらせられることです。こんな演奏を忠実に行なえるオケの力量、管楽メンバーの肺活量?は大したものです。聴き手を「凄い」と感じさせる大巨匠の技ではありますが、これが決して王道だとは思いません。

61h9hwg5twl__ss500_ワレリー・ゲルギエフ指揮キーロフ歌劇場管(2001年録音/フィリップス盤) ゲルギエフの録音の中でもベストの一つです。スケールが非常に大きく、歌いまわしや表情が何とも魅力的です。オケの音には厚みと潤いが有りますし、ヴァイオリン独奏も技術、表情づけともに満足できます。全体にロシア風の味わいを強く感じられて、改めてこの曲がロシア音楽だと認識させられます。3楽章の美しさは絶品ですし、終楽章の手に汗握る展開もこれまで耳にしたことが無いほどです。正に王道の演奏であり、これにくらべればチェリダッケと言えども、からめての演奏という気がしてしまいます。

これ以外のディスクは手放してしまいましたが、オリエンタルな雰囲気が漂うカラヤン/ベルリン・フィル盤は案外悪く無かった記憶があります。ロストロポーヴィチ/パリ管盤はスケールは大きいものの、オケの音色が余りにも華やかに過ぎて好みませんでした。

結局、この曲はゲルギエフ盤一枚あれば事足りますが、もう一枚選ぶなら、何だかんだ言ってもチェリビダッケのAUDIOR盤です。

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リムスキー=コルサコフ」カテゴリの記事

コメント

こんにちは。1コメ光栄です^^

曲の背景など全く知らずに聴くので、今回も勉強になります。
幾つか入手したのですが、愛聴盤は煌びやかさに引き込まれるチェリビダッケ/AUDIORです。氏にしてはソレ程遅くは感じないし。(他は誰のを入手したのかも憶えてないw)

投稿: source man | 2013年2月 3日 (日) 11時35分

source manさん、こんにちは。

チェリビダッケならAUDIOR盤は良いですね。なにせsource manさんは原音重視派ですものね。メジャーレーベルが音をさんざんいじくり回すのは理解できません。

でもこの演奏はやはり随分と遅いと思いますけどねぇ。(汗)

投稿: ハルくん | 2013年2月 3日 (日) 15時25分

再びこんにちは。

>でもこの演奏はやはり随分と遅いと思いますけどねぇ。

「息が詰まらせられる」程の遅さは感じないと表現すべきでした。最近は交響曲や管弦楽曲は全く聴かず、室内楽曲ばかりなもので...。貴BlogとLPで音楽をかけてくれるBarの影響です。アレだけ交響曲一辺倒で色々集めたのに...責任とって下さいw

投稿: source man | 2013年2月 3日 (日) 16時21分

source manさん

最近は室内楽ブームなのですね。
Jazzで言えば、室内楽がカルテットやクインテットならば、シンフォニーはビッグバンドですからね。演奏のデリカシー溢れるやり取りは、やはり室内楽に分が有ります。
でも、いずれまたシンフォニーに回帰する日が来ると思いますよ。ご安心ください。

投稿: ハルくん | 2013年2月 3日 (日) 16時31分

ハルくんさん、こんにちは。 「シェエラザード」は 確かに"ロシア"より、"アラビアの世界"という感じがしますね。 私はLP時代は ストコフスキー盤を聴いていましたが、なかなか迫力が有って良かったです。
今は ゲルギコフ盤しか持っていませんが、これ一枚で 満足しています。

投稿: ヨシツグカ | 2013年2月 3日 (日) 16時44分

ヨシツグカさん、こんばんは。

ストコフスキー盤もありましたね。
この人に非常に向いている曲目ではないでしょうか。

やはりゲルギエフ盤がお気に入りですか。本当にこれ一枚あればという名演奏ですよね。

投稿: ハルくん | 2013年2月 3日 (日) 22時14分

私は、色彩感があふれる、この作品が大好き。特に第3曲の美しい旋律には特に魅かれます。
一番の愛聴盤は、やはりゲルギエフ盤。
その他ではゲルギエフ盤とは対極かもしれませんが、モントゥー指揮ロンドン響(デッカ)の演奏も好きです。第3曲の気品の高さは素晴らしいと思います。

投稿: オペラファン | 2013年2月 5日 (火) 10時12分

コンドラシン盤は好きだけど、音のレベルが低くてボリュームを上げないと迫力に欠けますね。その点
よく聴くライナーのXRCD盤は強烈ですよ。ところでマリインスキー・バレエがパリで公演したザハロワとルジマートフのシェヘラザードは必見ですね。美形好みのハルさんは観ましたか?音楽がいい上に、ザハロワの美貌とスタイルにイチコロにされましたよ(笑)。

投稿: シーバード | 2013年2月 5日 (火) 16時58分

こんにちは。
私は有名なこの曲を管弦楽で最後まで聴いたことがありません(汗)。ピアノ版の動画は見ましたが、バラキレフのイスラメイを思わせる難曲のように感じました。

リムスキー・コルサコフは教育者としても偉かったのですね。師を超えられない弟子は不肖といいますが、お弟子のリャードフは天然癒し系でとても好きな作曲家です。同門のプロコフィエフも大作曲家になりましたしね。

投稿: NY | 2013年2月 5日 (火) 22時53分

オペラファンさん、こんばんは。

3楽章は陶酔的で本当に美しいですね。2楽章の民族的な雰囲気も大好きです。この二つの中間楽章は実に魅力的です。

やはりゲルギエフ盤なのですね。本当に素晴らしいです。モントゥーもエレガンスで良いでしょうね。

投稿: ハルくん | 2013年2月 5日 (火) 23時44分

シーバードさん、こんばんは。

Fライナーの「シェヘラザード」ですか。確かに強烈そうですね。

残念ながらザハーロワの演じる「シェヘラザード」は観ていません。彼女であれば当然素晴らしいでしょうね。最近入手したのはボリショイの映画風の演出版です。主役の名前はよく分りませんが、やはり美形で中々にセクシャルで良かったです。

投稿: ハルくん | 2013年2月 5日 (火) 23時50分

NYさん、こんばんは。

この曲はゲルギエフのような表現力の豊かな名演奏で聴くと、やはり素晴らしい名曲だと思いますよ。オリエンタルな妖しい雰囲気が色彩豊かな管弦楽でとても良く表されています。
是非一度聴かれてみたら宜しいかと思います。

投稿: ハルくん | 2013年2月 5日 (火) 23時55分

こんばんは。ゲルギエフは良いですし、この時期が録音、演奏も良かったですね。
ストコフスキーはデッカのロンドン響がいい。デュトワ、モントリオール響はフレンチにありがちな弦を高くしたり管を派手にすることより原典に沿った音作りでバター臭くない仕上がり。
廃盤からですが、アシュケナージ、フィルハーモニア管。オーソドックスな中に哀調を帯びています。この人最初好きでなかったが品格と貫録を感じさせてくれ見る目が変わってきました。

投稿: eyes_1975 | 2013年2月 6日 (水) 21時47分

eyes_1975さん、こんばんは。

ゲルギエフは才能ある指揮者ですが、最近の録音はロンドン響に移ってしまったのが残念です。やはりその方が稼げるからなのでしょうか。

さすがに色々と聴かれていますね。ストコフスキー、デュトワ、アシュケナージ、いずれも聴いたことがありません。

投稿: ハルくん | 2013年2月 6日 (水) 23時14分

ゲルギエフ、最近の一押しだと思います。絢爛豪華な演奏としてはロストロ/パリ管が1押しです。(但しかなり味付けの濃い演奏です)昔の名盤としては、アンセルメ・オーマンデイ・メータ等、思い出に残る演奏としてはフェドセーエフ(4楽章の迫力はすごい)端正で教科書的な演奏としてモントウをあげたいとおもいます。先日徳永さんが独奏のDutoit/N響のVTRを久しぶりにみました。味わい深い名演でした。

投稿: k | 2014年10月11日 (土) 21時14分

Kさん

ゲルギエフ盤が有れば他は余り必要とは感じていません。響きの明暗のバランスが素晴らしいです。非常に情緒的なのも良いです。
ロストロ/パリ管は響きが余りに明る過ぎて好みません。

投稿: ハルくん | 2014年10月12日 (日) 15時41分

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