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2013年2月26日 (火)

グリーグ ヴァイオリン・ソナタ集 ~オーレ・ベーンの名演で~

グリーグはピアノ独奏曲を数多く書いていて、どの作品も抒情的で非常に親しみ易いように感じます。それに比べると室内楽作品はずっと少ないのですが、その中で僕の愛聴曲に3曲のヴァイオリン・ソナタが有ります。各曲について簡単にご紹介しておきます。

ヴァイオリン・ソナタ 第1番ヘ長調 作品8

グリーグがデンマークに住んでいた22歳の年に最初のヴァイオリン・ソナタが作曲されました。ある部分はシューマン風でもあり、またドヴォルザーク風でもあり、まだまだ個性に乏しいのは否定でません。それでも、既にグリーグらしい爽やかな抒情が感じられますし、第2楽章ではノルウェーの民族楽器ハーディング・フェーレのような響きを響かせたりと、それなりの面白さは有ります。

ヴァイオリン・ソナタ 第2番ト長調 作品13

24歳の時にノルウェーに戻ってから作曲されました。第1番から僅か2年しか経っていませんが、内容的には格段に進歩しました。第1楽章からグリーグらしさに溢れていますし、民謡調の旋律が魅力の第2楽章は、なんと深い抒情を湛えていることでしょうか。ドヴォルザークのヴァイオリン小品に通じる雰囲気を感じますが、あくまでもグリーグの音楽そのものです。第3楽章は優雅で美しい北欧舞曲で心が躍ります。

ヴァイオリン・ソナタ 第3番ハ短調 作品45

この曲はずっと後の44歳の時の作品です。どうして20年ぶりに再びヴァイオリン・ソナタを書く気になったのかというと、実はテレジーナ・トゥアという名前のイタリアの女性ヴァイオリニストが、グリーグ宅を訪れたのがきっかけだったようです。これは大いにアヤシイですね。きっと彼女は大変に魅力的だったに違いありません。
この曲はハ短調という調性からも、ドラマティックな要素を持っています。とりわけ第1楽章はブラームスを想わせる曲想と、グリーグ的な抒情とが交互に現れて魅了されます。第2楽章はとてもロマンティックな夜想曲風です。どことなくボロディンのノクターンにも似ていますし、これはテレジーナと二人で語り明かした夜を想って書かれたような気がします。中間部の胸の高まり具合はいかばかりでしょう。第3楽章は民族的な特徴あるリズムが大そうご機嫌です。

3曲のうちで人気の高いのは第3番ですし、グリーグの音楽の魅力に溢れた名曲なのは間違いありません。けれども、個人的には第2番も非常に好んでいます。

Grieg_838オーレ・ベーン(ヴァイオリン)、アイナル・ステーン=ノックレベルグ(ピアノ)(1985年録音/独SOUND STAR-TON盤)

いわゆる「国民楽派」に分類される作曲家の作品は、やはり同郷の演奏家が一番しっくりきます。チャイコフスキー、ドヴォルザーク、シベリウス、いずれもなのですが、グリーグもまた、しかりです。このソナタ集はそれなりに演奏されていて、CDも出ていますが、同郷の演奏家で良さそうなものが無いかと探して見つけたのが、この演奏です。

Ole_bohn_2
オーレ・ベーン

Nokleberg
アイナル・ステーン=ノックレベルグ

オーレ・ベーンは1945年生まれのノルウェーのヴァイオリニストです。欧米ではメジャーオケのソリストとして多く演奏をしている実力者なのですが、日本での知名度はゼロに近いようです。同じノルウェー人のピアニスト、アイナル・ステーン=ノックレベルグのほうは、グリーグのピアノ曲を全曲録音しているのでご存じの方は多いのではないでしょうか。この人は1944年生まれですので、二人は全くの同世代です。

このCDはドイツのレーベルで制作されましたが、本当に魅力的な演奏を聴かせてくれます。二人のテクニックは確かですし、特にオーレ・ベーン思い切りの良い弾き方は、変な神経質さが無くて爽快です。といって無神経で荒い演奏とは全く異なります。何よりも、「面白く聴かせてやろう」という力みを全く感じさせません。曲そのものに自然に語らせるような演奏なのです。シべリウスと同様に、演奏家の我欲や見栄、誇張が僅かでも入り込むと、その瞬間に音楽の美しさは消え去ってしまい、矮小な音楽に落ちてしまいます。それぐらい純粋素朴な音楽なのだと思います。その点、この二人の演奏は正に理想的です。グリーグの書いた美しい作品を、これほどまでに美しい演奏で聴くことの出来る喜びは何物にも代えがたいです。このCDに出会えたおかげで、この3曲が本当に愛聴曲になりました。

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コメント

ハルくん様

morokomanです。(^^)

感涙ものの北欧音楽シリーズ、今回はグリーグのヴァイオリン・ソナタ集ですね。

私は第3番しか知りません。ハルくん様は全てご存知で羨ましいです。

第3番の第2楽章はとりわけ有名ですね。これだけ抜き出して収録しているCDもあるくらいです。素晴らしい夜想曲だと思います。

>シべリウスと同様に、演奏家の我欲や見栄、誇張が僅かでも入り込むと、その瞬間に音楽の美しさは消え去ってしまい、矮小な音楽に落ちてしまいます。

確かに、これらの曲と同様、シベリウスのヴァイオリンとピアノのための小品集などにも共通していると思います。

グリーグ&シベリウスにはとりわけそのような性質がありますね。自然の大気や風、水、氷、雪といったものに、人間の意思など入り込むことはできないからだと思います。


曲とは関係ありませんが、このCDの表紙の写真、どう見てもフィンランドですね。湖とその奥に広がる平地にどこまでも続く森……シベリウスの曲のCDなどではおなじみの光景です。(^^;)

なので、できればフィヨルドか山岳地帯の写真を使って欲しかったです。

実は自分はネイチャー・フォトマニアなのです。北欧の美しい自然の写真の表紙には、いつも惚れ込んでいるのです。BISの父ヤルヴィ盤などは、ジャケの表紙に惹かれて購入を繰り返しておりました。

また、曲そのものが「自然の音化」とも言えるものばかりですから、表紙は演奏家の写真よりも自然の写真の方がしっくりきます。やはりグリーグ&シベリウスの音楽には「人間らしさ」は必要ないと思います。

投稿: morokoman | 2013年2月27日 (水) 21時56分

morokomanさん、こんばんは。

3番は本当に良い曲ですよね。1番、2番もやはり良い曲ですよ。機会ありましたら是非聴いてみて下さい。

北欧の自然の写真にはどれも心を惹きつけられますね。出来れば生涯に一度は実際にこの目で見てみたいものです。夢がかなうと良いのですが。

グリーグとシベリウスの音楽には、脂っこい「人間らしさ」は確かに邪魔ですね。
許せるのは、心の内に秘めた「優しい心」と、自然を畏怖する「寂寥感」というところでしょうか。

投稿: ハルくん | 2013年2月28日 (木) 00時18分

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