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2013年2月23日 (土)

グリーグ 劇付随音楽「ペール・ギュント」全曲 ネーメ・ヤルヴィ/エーテボリ交響楽団

フィンランドのシベリウスと並んで北欧を代表する作曲家といえば、ノルウェーのグリーグですね。シベリウスの音楽が「春が近づいてきた冬の終わり」だとすれば、グリーグの音楽は「冬の寒さが遠ざかってゆく早春」というイメージです。その温度感の差は、両国の気候そのものの違いでもあります。

そのグリーグの代表作の一つ、劇音楽「ペール・ギュント」については、以前「ペール・ギュント第1&第2組曲」の記事にしました。広く親しまれている組曲版で、ラシライネンとノルウェー放送響の素晴らしい演奏をご紹介しました。ラシライネンの演奏が余りに素晴らしいので、これまで特に全曲盤を聴こうとも思わなかったのですが、ブログお友達のmorokomanさんから、全曲盤の素晴らしさを教えて頂いたこともあり、演奏の期待できそうなCDを入手しました。ネーメ・ヤルヴィとエーテボリ交響楽団の演奏です。この演奏は完全原典版として、グリーグが書いた全ての曲を網羅しています。

20100731_612169ネーメ・ヤルヴィ指揮エーテボリ交響楽団(1987年録音/グラモフォン盤)

この演奏には当然のことながら、オーケストラ以外に歌手や語り手、コーラスが大勢参加しています。

  バーバラ・ボニー(ソプラノ)
  ウルバン・マルムベルイ(バリトン)
  シェル・マグヌス・サンヴェー(テノール)
  ルート・テレフセン(語り)
  エスター・オーリン・ヴォーカル・アンサンブル
  プロ・ムジカ合唱団、といった面々です。
 

参考までに各曲のタイトルを記しておきます。

劇付随音楽「ペール・ギュント」全曲

1.婚礼の場にて(第1幕前奏曲)
2.ハリング(第2場と第3場)
3.スプリンガル(第3場)
4.花嫁略奪:イングリの愁訴(第2幕前奏曲)
5.ペール・ギュントと山羊追いの女達(第3場)
6.ペール・ギュントと緑衣の女(第5場への導入)
7.ペール「育ちの良さは馬具見りゃわかる」(第5場の結び)
8.ドヴレ山の魔王の宮殿にて(第6場の開始)
9.ドヴレ山の魔王の娘の踊り)(第6場)
10.ペールはトロルに追い回される(第6場)
11.ペール・ギュントとベイグ(第7場)
12.オーゼの死(第3幕前奏曲)
13.朝(第4幕前奏曲)
14.泥棒と盗品買い(第5場)
15.アラビアの踊り(第6場)
16.アニトラの踊り(第6場)
17.ペールのセレナーデ(第7場)
18.ペール・ギュントとアニトラ(第8場)
19.ソルヴェイグの歌(第10場)
20.ノムノン像の前のペール・ギュント(第11場への導入)
21.ペール・ギュントの帰郷:夕方の嵐の海(第5幕前奏曲)
22.難破(第1場と第2場の間)
23.小屋でソルヴェイグが歌っている(第5場)
24.夜の情景(第6場)
25.ペンテコステ讃美歌「祝福の朝なり」(第10場)
26.ソルヴェイグの子守歌(第10場)

通常演奏される組曲版では、当然ストーリーの展開とは無関係に曲が入れ替わっています。コンサートで演奏される場合には何ら問題は有りません。但し、少しでもストーリーの展開を意識して聴こうとすれば、どうしても全曲版となります。

全曲版は、CD2枚分のおよそ85分にも及ぶ、短いオペラ並みの規模になります。全ての曲が格別の名曲だとは言えないかもしれませんが、それは大抵のオペラ作品の場合に当てはまることです。それよりも、歌が加わることにより、歌無しの組曲版とは大きく印象が異なってきます。歌やコーラスの役割がとても重要となります。たとえば、第8曲「山の魔王の宮殿にて」では、トロル(怪物)たちがペールを「殺せ!殺せ!」と荒々しく叫びながら歌うのが、管弦楽だけのときよりも遥かに不気味な雰囲気になっています。第16曲「アニトラの踊り」も歌とコーラスが入ったおかげで非常に魅惑的な曲に成りました。それ以外にも有名な「ソルヴェイグの歌」や終曲の「ソルヴェイグの子守歌」など美しい歌曲が多く含まれています。
それと、楽器で面白いのは第2曲「ハリング」ではノルウェーの民族楽器ハーディング・フェーレ(またはハリング・フェーレ)というヴァイオリンの仲間が使用されていることです。アイリッシュ・フィドルによく似た音で、北欧を感じさせてくれて楽しいです。

この演奏では、セリフ部分を歌手とは別の専門の語り手が担当しています。それほど違和感は有りませんし、むしろ迫真のセリフのやりとりが演劇性を高めていて良いです。

この全曲版を聴いていると、まるでオペラを聴いているように思えてきます。それに、ストーリー自体が元々破天荒ですので、ファンタジー冒険映画を見ているような気にもなります。この「ペール・ギュント」が舞台化や映画化されたら絶対に面白いと思うのですがね。

指揮者のネーメ・ヤルヴィは、シベリウスなどの北欧ものが大の得意ですし、グリーグの音楽への共感が強く感じられます。程よくドラマティックでありながらも決して大げさにはならず、「オーゼの死」などでは、静寂の中から哀しみを滲み出させていて感動的です。

確かに全曲版をこのような素晴らしい演奏で聴いてしまうと、管弦楽版には物足りなさを感じてしまい、中々後戻りできないかもしれません。

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コメント

ハルくんさん、こんにちは。
今回は「冷水」のグリーグですね。(笑)
確かに 雪溶け水が流れ出しているような 爽やかな音がぴったりくるように思います。
「ペール・ギュント」全曲板、私も このN・ヤルヴィ盤を聴いてきました。ヤルヴィの共感に満ちた演奏も素晴らしいですが、ソプラノのボニーの可憐な歌声がまた 良いですね。「ソルヴェイグの歌」から 讃美歌をへて 「子守歌」を歌う、最後のシーンは感動的です。
このCDだけで十分 満足ですが、 私は もう一組、ルード/ベルゲン・フィル という 真正ノルウェーの演奏のCDを聴いています。これは SACDなので オススメはできませんが ヤルヴィ盤より味わいが濃く、これも素晴らしい演奏です。ソプラノの ソルベルグの歌はボニーの"可憐さ"に対して より"母性"を感じさせ、最後の場面も より味わい深いです。

投稿: ヨシツグカ | 2013年2月23日 (土) 15時02分

こんにちは。
こうしたジャンルは付帯音楽というのでしょうか、現代ではゲームの音楽なんかも強いて言えばそういう分野になるのかなと思います。最近はポップでも電子音楽でも非常に優秀な人がいますね。

私は全曲を通して聴いたことがありませんが、「朝」は小学校の朝礼でかかってました。「オーゼの死」はブラームスのラプソディ1番に似てますね。そういう妙なところだけはしっかり覚えているのですが。。。。しょうもないことですみません。

投稿: NY | 2013年2月23日 (土) 19時22分

今晩は、ハルくん。 ペールは全曲盤は聴いた事ないけど、この記事を読んだら聴かなきゃ損々…って気になりましたね。ペールのハチャメチャぶりに男性は呆れるのか憧れるのか?
今日はチェリストの新倉瞳ちゃんのコンサートに行ったんです。 スッゴク可愛い~!写真より実物の方がもっとずっと可愛い~♪ それに控えめな性格らしく、今まだまだ勉強の途中の身なのに、こうしてソロコンサートに呼んで頂いて嬉しい有難いとお話されてました。声がまた可愛い~の。丸顔だけど身体つきは華奢で守ってあげたくなっちゃうだろうな、男性なら。
桐朋を主席卒業した実力派で若手注目株だし、才色兼備ってやつですね。今日の演奏でシューベルトのアルペジョーネ・ソナタが特に良かったです。これからどんどん経験を積んで、もっともっと良い演奏家になって欲しいですね。いや~、それにしても可愛いかった☆☆☆

投稿: from Seiko | 2013年2月23日 (土) 19時50分

ヨシツグカさん、こんばんは。

何と言ってもベルゲンはグリーグの住んでいた街ですし、ベルゲンフィルは良い音を出しますよね。ルードも管弦楽曲全集を出しているぐらいですから、きっと良いでしょうね。
ありがとうございます。とても参考になりました、


投稿: ハルくん | 2013年2月24日 (日) 00時07分

NYさん、こんばんは。

正確には劇付帯音楽とか劇付随音楽でしょうかね。せっかくですので訂正しておきます。ありがとうございました。

でも「オーゼの死」はブラームスのラプソディ1番に似ているところ有りましたっけ?

投稿: ハルくん | 2013年2月24日 (日) 00時12分

Seikoさん、こんばんは。

さすがにペールのハチャメチャぶりに憧れるということは有りませんね。呆れるほうだなぁ。
やっぱり女性を悲しませてはいけませんよー。

新倉瞳ちゃんのコンサート良かったですね!
それほど可愛いとあっては是非とも実物を見てみたいものです。日本ではコンサートをよく開いているのでしょうか?


投稿: ハルくん | 2013年2月24日 (日) 00時28分

ハルくん様

morokomanです。(^^)

おおっ今回はペール・ギュント全曲版ですね。(^o^)


>シベリウスの音楽が「春が近づいてきた冬の終わり」だとすれば、グリーグの音楽は「冬の寒さが遠ざかってゆく早春」というイメージです。


言い得て妙ですね。シベリウスの方が気温が低い感じがしますし。また、グリーグの音楽の方が爽やかさがありますしね。澄みきってはいるけれども、ぬくもりが感じられる優しい風がふいているのがグリーグですね。


>morokomanさんから、全曲盤の素晴らしさを教えて頂いたこともあり、


いえいえ、お言葉はありがたいのですが……(冷や汗)、自分が聴いたのはバルビローリ盤、ビーチャム盤、ノイマン盤です。ハルくん様ご紹介のヤルヴィ盤のように、劇全体を再現したような盤ではありません。「音楽だけ」を取り出した盤を三種類聴いた、というわけですね。

まだヤルヴィ盤は持っていないのです。お金が欲しいよう……(嘆き)。ヤルヴィ/イェーテボリ響は北欧音楽の定番とも言える名コンビ。一定の水準は確実にキープしていますから、とても期待できそうですね。


>それと、楽器で面白いのは第2曲「ハリング」ではノルウェーの民族楽器ハーディング・フェーレ(またはハリング・フェーレ)というヴァイオリンの仲間が使用されていることです。アイリッシュ・フィドルによく似た音で、北欧を感じさせてくれて楽しいです。


グリーグの作品にはこの「ハーディング・フェーレ」を思わせる奏法が、ヴァイオリンないしヴィオラで「ここぞ!!!」という時に、ほぼ確実に出てきます。それがものすごく効果的で、私などいつもここで感激してしまいます。弦楽四重奏曲などその最たるものですね。

あれ? 曲目を見ると、バルビローリ盤ではあった「序曲」がありませんね。もしかすると第1曲目の「婚礼の場にて」がそれにあたるのでしょうか? バルビ盤「序曲」では中間部でヴィオラの独奏が出てきて、私はものすごく感激したものですが。もしそうだったら嬉しいのですが、違っていたとしたら、あれはバルビローリ盤にしかない、貴重な音楽なのかもしれません。なんとなく「婚礼の場」=他盤の「ノルウェーの結婚行進曲」のような雰囲気が漂い、不安なのですが……。あの「序曲」が聴きたいです。

いまバルビローリ盤も、ビーチャム盤も、私の「大災難」の時に失われ、持っていないのです。バルビローリ盤はなんとか取り戻したいものです。(大泣き)

あと、ヤルヴィ盤も聴いてみたいなぁ。お金に都合がつけばの話なのですが……。図書館の係りの方が、購入してくれないかなぁ。(涙)

投稿: morokoman | 2013年2月24日 (日) 21時56分

morokomanさん、こんばんは。

先の「組曲」へのコメントを頂いたおかげで全曲版の購入を決心しましたので、とても感謝しています。

ヤルヴィ盤での第1曲は「婚礼の場にて」と記載がありますが、おっしゃられる「序曲」と同じ曲でしょうね。中間でヴィオラ独奏も有りますよ。

投稿: ハルくん | 2013年2月24日 (日) 22時17分

ハルくん様、レスありがとうございます。


>先の「組曲」へのコメントを頂いたおかげで全曲版の購入を決心しましたので、とても感謝しています。

お役に立てて嬉しいです。(^^)
いつも教えられてばかりでしたからね。


>ヤルヴィ盤での第1曲は「婚礼の場にて」と記載がありますが、おっしゃられる「序曲」と同じ曲でしょうね。中間でヴィオラ独奏も有りますよ。

おおっそうなのですか~。(^O^)
なぜかバルビローリ盤にしかありませんでしたからね。ビーチャム盤にもノイマン盤にもなかったので「なんで?」と思っておりました。ヤルヴィ盤にあったのは嬉しい限りです。

バルビ盤で初めて「序曲」を聴いた時には、中間のヴィオラ独奏が、まるでノルウェーのフィヨルドや嶮峻な山岳にこだまするかのように聴こえたのです。「おおっ。これぞノルウェーの音!」などと感激したものです。

また、ヴィオラの独奏を聴いたのは、これが初めてでしたので、その時はとても新鮮でした。

呼吸が深く、心が休まる、どこか安心&安定した音がヴィオラの魅力ですね。

そうそう、ヴィオラと言えばプリムローズの『ブラームス ヴィオラ・ソナタ』を入手しました。時々聴いております。いずれ感想を書きにお邪魔いたします。(^_^)

投稿: morokoman | 2013年2月25日 (月) 21時25分

morokomanさん、再びコメントありがとうございます。

プリムローズのブラームス/ヴィオラ・ソナタを入手されたのですね。何と言っても名曲中の名曲です。
ご感想を楽しみにお待ちしております。

投稿: ハルくん | 2013年2月26日 (火) 00時06分

こんにちは。
オーゼの死は最初の主題がブラームスのラプソディー1番のニ短調の部分に似てるかなと。。。空耳?

最近ご紹介のヴァイオリンソナタも私は知りませんでした。今度ぜひ聴いてみます。グリーグはピアノ曲がいまひとつもの足りない感じがしますが、抒情小曲集は日本人にも人気が高いですね。

投稿: NY | 2013年3月 1日 (金) 19時38分

NYさん、こんにちは。

ニ短調の部分ですか?うーん僕の耳が節穴なのかも・・・。よく聴き直してみますね。

グリーグのピアノ小品はどれも物足りない感じがしますが、そこがまた良さなのでしょうね。リラックスして聴いていられます。
ヴァイオリン・ソナタのほうは音に変化が感じられるので面白いと思っています。

投稿: ハルくん | 2013年3月 2日 (土) 09時09分

この盤、噂だけで実際に聴いてないんですよ~、やっぱり入手したいな。

つまらないことを書きます。今回の病気で最初に受診したのはお盆明けでした。職場に戻れたのが3月。「夏は過ぎて秋過ぎて、冬も過ぎて春来たる♪」ペールを待つソルヴェイグの歌のような気分です。グリークいいなあ。

投稿: かげっち | 2013年3月 4日 (月) 12時36分

かげっちさん、こちらへもコメントありがとうございます。

ヤルヴィの全曲盤イイですよ。是非入手されてください。
ボニーの歌う「ソルヴェイグの歌」がまた素晴らしいです。

投稿: ハルくん | 2013年3月 4日 (月) 22時51分

「ペール・ギュント」全曲はブロムシュテット指揮サンフランシスコ響のCD(デッカ盤)を持っていますが、やはり北欧のオケで聴いてみたいと常に思っています。
ネーメ・ヤルヴィ指揮エーテボリ交響楽団には「ペール・ギュント」全曲も収録されているグリーグの管弦楽曲集のアルバムがあるので、今、狙っています。

投稿: オペラファン | 2013年3月 5日 (火) 14時43分

オペラファンさん、こんばんは。

ブロムシュテットとサンフランシスコ響のコンビはシベリウスを聴きましたが、これがアメリカの西海岸のオケかと驚くほどに北欧的な音を出していました。

ヤルヴィのグリーグも素晴らしいので、管弦楽曲集のアルバムを求めるのは良い選択かもしれませんね。

投稿: ハルくん | 2013年3月 5日 (火) 23時39分

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