ヴィヴァルディ 「四季」 続・名盤
今から3年前のお正月の聴き初めに、ヴィヴァルディの「四季」を聴きました。誰でも知っているこの名曲は、新春の清々しい気分に相応しいですし、なによりも、つくづく良く出来た曲だと思います。何故ヴィヴァルディが、ヴァイオリン協奏曲「和声と創意の試み」作品8の全12曲のうちの、第1曲から第4曲までを「四季」としたのは分りませんが、結果的に全曲よりも、むしろ「四季」だけ聴いた方が、まとまりの良い作品となっています。
「四季」の名演奏と言えば、イ・ムジチ合奏団が一世を風靡したのは、もう半世紀以上も前のことになりますが、それ以降も、大管弦楽団の小編成の形や、室内管弦楽団、古楽器合奏団などによって多種多様なスタイルで演奏してきました。それらのうち、どれが本物だということでは無く、この曲はそれだけ幅広い演奏スタイルを受け入れるだけの充実した内容を持っているからなのだと思います。この曲を一言で言えば、
『一度聴いただけで魅了されるほど解り易い曲でありながら、何度聴いても飽きが来ない』
ということではないでしょうか。「こんな通俗名曲は聴かない」というのも、もちろんその人の自由ですが、それでは音楽の最も基本的な楽しみを忘れてしまったに等しい気がします。勿体無いですよね、こんなにも素晴らしい名曲を。
それでは、前回の記事「ヴィヴァルディ 四季 名盤」、を補足する形で新たな愛聴盤をご紹介して、改めてマイ・フェイヴァリット盤を選び直したいと思います。
ファビオ・ビオンディ(Vn独奏)、エウローパ・ガランテ(1991年録音/naive盤) 古楽器演奏としては、カルミニョーラに隠れ気味ですが、「四季」の録音ではイル・ジャルディーノ・アルモ二コに2年、カルミニョーラに3年先駆けています。アイディア満載で、大胆な表現やダイナミズムの変化に非常に驚かされますが、後の両盤ほどにはテンポを揺らさないので安定感が有ります。やはり最初は戸惑いますが、慣れるととても楽しめます。ヴァイオリンのテクニック的にはカルミニョーラのほうが上だと思います。「夏」などは中々に迫力が有りますが粗さを感じます。尚、ビオンディはEMIに再録音を行いましたが、そちらは未聴です。
ジュリアーノ・カルミニョーラ(Vn独奏)、ヴェニス・バロック・オーケストラ(1999年録音/SONY盤) 「四季」の古楽器演奏で、かつて一世を風靡したカルミニョーラでしたが、これは旧盤から僅か5年後の二度目の録音と成ります。メジャーレ―ベルへの再録音には幾らか商業的な匂いを感じます。肝心の演奏は、旧盤での高い技巧を駆使した過激で変幻自在なスタイルが更に激しくなっています。ただ、それが幾らか造り物めいた印象を受けるようになり、余り心を打たれません。それは「聴き慣れた」ということでは無く、演奏そのものに原因が有るようには思います。
レイチェル・ポッジャー(独奏Vn)、ブレコン・バロック(2017年録音/ Channel Classics) バロック・ヴァイオリンの名手ポッジャーが主宰するアンサンブルを伴っての録音です。やはり英国生まれだけあり、イタリア勢の過激なスタイルとは異なる格調の高さを感じます。アクセント、アタックの強さにも、それなりの節度が有り、激し過ぎません。装飾音もごく自然です。何よりテンポや間合いでの極端な変化も余り取らないので安心して聴けます。新しい録音なので古楽器の古雅で美しい音色をたっぷりと楽しめますし、「どちらか言えばモダン楽器の方が好きだが、古楽器も聴いておきたい」という方には最適なチョイスなのでは無いでしょうか。
こうして聴き終えたところで、前回のマイ・フェイヴァリット盤の再選を行ってみます。
議席数を3として改めて選出し直すと、前職のイ・ムジチのアーヨ盤とシルブ盤は、そのまま再当選。カルミニョーラの旧盤も再選を果たしてやはり現職強しという結果に終わりました。しかしモダン派と古楽派の中間的な位置づけでの新しい名盤ポッジャー盤も議席数を4に増やして繰り上げ当選させたいです。
<補足>ポッジャー/ブレコン・バロックの新盤を加筆しました。
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コメント
ハルくんさん、こんにちは。 「四季」を初めて聴いたのは 小学5年生の時、アバト/ロンドン響(フィル?)盤でした。
当時、クラシック音楽に目覚めたばかりで、情報源は 音楽の教科書や百科事典が主で、いわゆる名曲を ワクワクしながら少ない小遣いやお年玉でLPレコードを買いに行ったものです。(笑)
その後、音楽雑誌などで イ・ムジチの演奏が素晴らしいとの事で 聴いてみようと買ったのが、'82年盤でした。これを気に入って、LP時代はこの演奏を聴いていました。
CDでは アーヨ盤、イタリア合奏団盤、チョン・キョンファ盤を持っていますが、良く聴くのは やはり アーヨ盤でしょうか。(確かに、レガートは効き過ぎでずが・・・。(笑))
投稿: ヨシツグカ | 2013年1月12日 (土) 14時05分
ヨシツグカさん、こんにちは。
僕が最初に買ったレコードはイ・ムジチのミケルッチ盤でした。でも友人の持っていたアーヨ盤の方が好きでした。中3の時でしたが、あの時のイメージは現在聴いても変わっていません。
それから、カラヤン/シュヴァルヴェ盤とかカラヤン/ムター盤、小澤/シルヴァーシュタイン盤などを聴きましたが、結局のところイ・ムジチに戻りました。
最近はカルミニョーラの旧盤にハマっています。これはイイですよ。
投稿: ハルくん | 2013年1月12日 (土) 16時19分
こんにちは。
四季ですか。何と言っても調和がとれている超名曲ですよね。四季はイ・ムジチ以前はそれほど名曲扱いされていなかったようですが、信じられないことです。バッハの無伴奏ですらあんまり重要視されていなかった時代もあるらしいので、評価が定まる過程は実にわからない(悪く言えばイイカゲンな)ものです。
私が子供の頃に聴いたLPはラ・ストラヴァガンツァ(これもいい曲です)とカップリングされてました。演奏者は忘れてしまいましたが。
投稿: NY | 2013年1月12日 (土) 18時19分
ハルくん、こんばんは
おっヴィヴァルディのカテゴリ超久々ですね(*^▽^*)『四季』の名曲メチャクチャ大好きですよ(゜∀゜;ノ)ノ特に春があっ話が変わりますが、別のサイトでヴィヴァルディの切手がだーい発見しちゃいましたよ\(☆o☆)/1978年製だから超レア物かもよ♪~θ(^0^ )後、『四季』の切手もありましたよ春夏秋冬のイラストがメチャクチャキレイかもo(`▽´)o私はそんな作曲家ヴィヴァルディの切手にメチャクチャキュンってしちゃいます(*^▽^*)
投稿: 上原よう子 | 2013年1月12日 (土) 21時51分
NYさん、こんばんは。
昔はレコードもインターネットも無かったですからね。マーラーも20世紀前半にはほとんど演奏されませんでした。
他にも忘れ去られていた音楽家や作品は沢山あったと思います。その点、今の時代は恵まれています。有りがたいことですね。
ヴィヴァルディのコンチェルトには「ラ・ストラヴァガンツァ」や「調和の幻想」や良い曲が沢山ありますよね。
投稿: ハルくん | 2013年1月12日 (土) 22時22分
よう子さん、こんばんは。
「四季」は春はもちろん、夏、秋、冬のどれもが良い曲ですね。
ヴィヴァルディや四季の切手が有るのですか。素敵ですね。誰か、それで手紙を送ってくれないかなぁ。
投稿: ハルくん | 2013年1月12日 (土) 22時29分
こんばんは。はじめまして、佐川物流太郎と申します。上原よう子さんの紹介で初めて投稿させていただきます!作曲家ヴィヴァルディの合奏協奏曲『四季』メチャクチャ有名ですね(o^∀^o)実は僕は上原よう子さんに、「ヴィヴァルディの名曲超オススメだよ!」って言われました☆(*^▽^*)☆♪♪ヴィヴァルディの名曲メチャクチャ美しい物ですね(^○^)♪そんなこんなの未熟な僕ですが、よろしくお願いします(^з^)-☆Chu!!(上原よう子さんにヴィヴァルディのブログ勧められたから!)僕の親友の上原よう子さんは作曲家ヴィヴァルディ博士ですよ!彼女は彼の事なら何でも調べるので☆(*^▽^*)☆♪♪
投稿: 佐川物流太郎 | 2013年1月12日 (土) 22時29分
作曲家ヴィヴァルディの切手は残念ながら持ってません現在は売ってるかどうかもわかりませんしね。あっ話が変わりますが私の親友の佐川物流太郎さんに作曲家ヴィヴァルディの事について知りたいって投稿させてもらったよ彼は作曲家ヴィヴァルディに少しだけ興味もってるからもっと知りたいって言ってました
投稿: 上原よう子 | 2013年1月12日 (土) 22時34分
佐川物流太郎さん、はじめまして。
ようこそお越しいただきました。コメントありがとうございます。
ヴィヴァルディの曲はどれも楽しく美しい曲ばかりですが、「四季」は中でも特別素晴らしい曲ですからね。良い曲を教えて貰えて良かったですねー。持つべきものは友達ですね。
投稿: ハルくん | 2013年1月13日 (日) 09時02分
よう子さん、お友達へのご紹介ありがとうございました。
佐川物流太郎さんへは、ヴィヴァルディのことをもっと教えてあげてくださいね。
投稿: ハルくん | 2013年1月13日 (日) 09時05分
ハルくん、おはようございます(*^∇^*)
イ・ムジチ合奏団はホントに有名ですか僕は高校生の頃に少しだけ耳にしたことがありますけど、クラシックの勉強あまりしていないのでわかりません作曲家ヴィヴァルディに興味示したのは高校生の頃からですのでようこちゃんよりかなりの遅いめですp(´⌒`q) (正式に興味だしたのは高校1年生の頃くらいからだと思いますが…(ρ°∩°))実はお仕事中に彼女にこんな事言われました
よう子「イ・ムジチ合奏団知らないのヴィヴァルディの名曲をガンガン演奏してるんだよ貴方も修行が足りないねぇ~。」
ってさ(ρ_;)僕も早くようこちゃん見たいにヴィヴァルディ博士になりたいです!!
投稿: 佐川物流太郎 | 2013年1月14日 (月) 09時48分
佐川物流太郎くん、こんにちは。
イ・ムジチ合奏団は本当に有名ですよ。
「四季」と言えばイ・ムジチ合奏団というほどです。もちろん他にも素晴らしい演奏家は居ますけどね。
ヴィヴァルディ博士を目指して頑張ってください。
投稿: ハルくん | 2013年1月14日 (月) 10時06分
今晩は、ハルくん様。 今日のニュース番組はどの局も首都圏の大雪の話題からでしたね。8~9センチの雪で大雪と言うなかれ…ですよ~。新潟市海岸平野部は今、積雪ほぼなしです(雪が降っても晴れたり雨だったりで溶けちゃいました)
新潟市って春は日本一の大河信濃川の土手に桜の花が見事に咲き、夏は(ちょっと湿気が多いけど)海で泳いで砂浜でBBQ。大花火大会や夕日コンサートもあるし、秋は紅葉の名所も近いので楽しめるし稲穂の田園風景も見られるし、冬は美しい雪景色あり、車で手軽に行けるスキー場もありだし(風が強くて寒いのが玉に傷だけど)季節を感じるにはとっても良いところです。「四季」に引っ掛けて郷土自慢させて頂きました。ヴィヴァルディと関係ない話でごめんなさい。ハルくんの住む丹沢の四季も素晴らしいのでしょうね。
投稿: from Seiko | 2013年1月14日 (月) 22時53分
Seikoさん、こんばんは。
東京では8センチでも大雪なんですよ。
これでも僕は、北の街札幌で冬を越した経験がるので、雪の上での歩行や車の運転は慣れていますが、東京近辺の人や運転者の雪への不慣れさには呆れるほどです。経験が無ければ仕方ないことですが。
ですので8センチも積もれば道路は大渋滞、交通マヒ。本当に大変です。
新潟市の四季折々は素敵なんですね。家内の実家のある上越市高田も春、夏、秋の綺麗なところだなあと思いますが、冬にだけは行ったことがありません。雪に埋もれるらしいのでね。(笑)
雪国の冬だけは大変ですね。お年寄りには雪かきや雪下ろしを無理しないで貰いたいですね。
丹沢の四季も中々良いですよ。山全体の彩りが刻々と変化してゆきますし。
投稿: ハルくん | 2013年1月15日 (火) 21時04分
ハルくんさん、こんばんは
私は、この曲はアーヨ/イ・ムジチの演奏録音で専ら聴いており、他の演奏はその異なる個性が気になってしまうほ程です。しかし、偶々、トレヴァー・ピノック / イングリッシュ・コンサートのCDを聴いて、その響の美しさと違和感を覚えない演奏が大変気に入りました。これが私のセカンド・チョイスです。
HABABI
投稿: HABABI | 2013年1月17日 (木) 20時07分
HABABIさん、こんにちは。
アーヨ盤は本当に素晴らしいのですが、さすがに「時代」を感じないでもありません。
古楽器団体の雅な音色は、それもまた魅力的に思います。ピノック盤は聴いたことがありませんが、一度聴いてみたいですね。
ご紹介ありがとうございました。
投稿: ハルくん | 2013年1月18日 (金) 12時35分
こちらにもお邪魔しますね。 今日、奥村愛さんのお父様でコンセルトヘボウで演奏家としても活躍された奥村和雄先生の門下生の記念演奏会があり幼稚園児からプロで活躍中のソリストの方々も交えて素敵なアンサンブルを聞かせてもらいました。おもちゃの交響曲から四季まで幅広い選曲で楽しめました。 今日の和雄先生はヴィオラに専念され、お弟子さんと娘さんにヴァイオリンは任されてました。2/3は学生や素人とは言え、合宿までして準備しただけあり、なかなかの演奏でした。自分がヴィオラで娘がヴァイオリンで競演なんて素敵ですね。ハルさまは将来お孫さんと競演なんて場面があるかしら?命尽きるまでブログを続けるなら、そんな記事が読めそうですね。楽しみに待ちます♪
投稿: from Seiko | 2014年8月 3日 (日) 18時37分
Seikoさん、こちらへもコメントありがとうございます。
奥村愛さん(とお父上)のご実家は新潟だったのですね。
お父上は元、世界の名門コンセルトへボウ団員とあっては厳しい練習で生徒さんたちのアンサンブルを鍛えたのでしょうね。
うちの孫たち、もう3人居るのですよ。(いやぁ立派なオジイやんだぁ)
ヴァイオリンを2人に、チェロを一人に習わせればカルテットが結成できますね。名付けてハル・ストリングス・カルテット!どうでしょうか?
投稿: ハルくん | 2014年8月 3日 (日) 22時09分
イームジチの実演に接したのはただ一度、1979年の来日公演の際に、大阪フェスティバルーホールでありました。メインはやはり『四季』でした(笑)。3年前の暮れに、輸入盤UMのヴィヴァルディ集成482-4391,27枚組を買い、折に触れて聴いております。やはり、何と言うのか安心して聴けますよ。
投稿: 覆面吾郎 | 2019年10月11日 (金) 09時28分
覆面吾郎さん、コメントありがとうございます!
古楽器団体が主流とはなりましたが、イ・ムジチのヴィヴァルディは永遠に不滅ですね。
特に60年代から80年頃の録音は皆素晴らしいです。
投稿: ハルくん | 2019年10月15日 (火) 12時43分
コロナ禍で外出自粛の中、ラヴディ独奏マリナー&ASMFのLP‥ZRG-654,レーベル名はArgo‥を、久方ぶりに取り出しました。輸入盤故に解説は‥ですが、まるでエコー効果を思わせる強弱、装飾的なコンティヌオの活躍ぶり、確かに一驚に値します。当時のマリナーのブレーン役に、音楽学者のサーストン・ダートが付いていたらしいですが、Philips原盤のバッハ『ブランデンブルグ協奏曲』の演奏ぶりにしても、さもありなんとの印象でした。
投稿: リゴレットさん | 2020年5月10日 (日) 13時49分
リゴレットさん
ラヴディ&マリナー/アカデミーの「四季」、イ・ムジチと共に一世を風靡しただけあり今聴いても存在感が有りますね。
ブランデンブルグも演奏者が大変な名手揃いで驚かされました。
投稿: ハルくん | 2020年5月14日 (木) 10時50分