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2013年1月19日 (土)

ラフマニノフ ピアノ協奏曲第2番 エレーヌ・グリモー盤

正月気分も、とっくにどこへやら。「もーいーくつ寝るとー、おしょうがつぅ~♪」なんて歌うには、早過ぎて虚しくなりますね。(笑)

さて、今年のマニュフェストに”脱ブラームス”を掲げてはみたものの・・・、実はこっそりと聴いています(苦笑)。書きたいことも幾つか有るのですが、そこをぐっとこらえて、新特集は、これも毎年恒例の「冬のロシア音楽特集」です。

毎日厳しい寒さが続きますが、そんな真冬に聴くのに大好きな曲が、ラフマニノフのピアノ協奏曲です。通好みの聴き応えという点では第3番なのでしょうが、第2番の美しい旋律と深い浪漫の香りには効し難い魅力を感じます。

この曲は以前、「ピアノ協奏曲第2番 名盤 ~大人の浪漫~」で記事にしていますが、その後、愛聴盤に加わったのが、僕の大好きなエレーヌ・グリモー嬢が録音した演奏です。

Grimaud_rachエレーヌ・グリモー(独奏)、ウラディーミル・アシュケナージ指揮フィルハーモニア管弦楽団(2000年録音/TELDEC盤)

もう10年以上も前の録音ですが、更にこの3年前に彼女はザンデルリンクの指揮で、あのブラームスのピアノ協奏曲第1番の素晴らしい録音を残しています。ですので、このとき既に彼女はピアニストとして完成の域に達しています。指揮をしているアシュケナージも、かつてピアニストとしてこの曲を得意にしていて、何度か録音をしています。であれば、この組み合わせに、期待して当然です。それでは、聴いた感想です。

冒頭の鐘の音を模倣したピアノは、それほど重々しくありません。むしろさりげないです。続いて入るオーケストラはよく歌われます。但しフィルハーモニア管にロシア的な土臭さは有りません。かといってハリウッド的な甘さも有りません。グリモーは幾らか速めにスイスイと弾いて行きますが、ちょっとした節回しや強弱に驚くほど多彩なニュアンスが込められています。集中せずに聴いていると、うっかり聞き流してしまいそうですが、じっくりと耳を傾けると本当に素晴らしいピアノです。典型は第2楽章冒頭でのオーケストラのバックにつけるアルペジオで、雄弁なことこの上ありません。もちろん主旋律に回ったときの歌い方のセンスの良さも抜群です。こんな弾き方はツィマーマンやキーシンでさえ果たして出来ていたかどうか。ああ、そういえばこのような演奏をした古いピアニストが居ましたっけ。名前はセルゲイ・ラフマニノフです。

第3楽章冒頭のG難度の連続和音も見事です。さすがに超人ガブリーロフほど軽々とは弾いていませんが、非常に切れが良く、聴きごたえが有ります。

ラフマニノフのこの曲の演奏は、深い浪漫の淵にどっぷりと沈み込むような演奏が多いですし、元々そういう曲ではあります。そこへゆくとグリモーの演奏は、単に沈み込むばかりでは無く、沈んだり浮き上がったりと、とにかく刻々と表情が変化します。にもかかわらず、アルゲリッチに時に感じる不安定さや気まぐれさは感じません。若い頃からこんな演奏が出来ていたとは、グリモーは生まれながらの真の天才だと思います。もっとも最近録音されたモーツァルトのK488などを聴くと、更に素晴らしい演奏家に成長を遂げていることが、よく分ります。
アシュケナージの指揮は、フィルハーモニア管の音色に余り魅力が感じられないものの、全体的によく歌わせていて満足できるレベルです。

この曲の、これまでの愛聴盤では、リヒテル盤は全盛期の素晴らしいテクニックによる力強いピアノと深い沈滞ぶりが魅力です。中村紘子盤はスヴェトラーノフ/ロシア国立響の音が、他に類例の無い素晴らしさなのですが、第2楽章以降のピアノがやや物足りないのが欠点でした。それに対して、グリモー盤は、意外なほどラフマニノフ自身のピアノに似ていますし、聴くほどに味わいが深まるというスルメのような演奏で、これから愛聴盤の一角を占めることになりそうです。

<関連記事>
テミルカーノフ/サンクトぺテルブルグ・フィルとエレーヌ・グリモーのライブ盤

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ラフマニノフ」カテゴリの記事

コメント

ハルくんさん、こんにちは。
ラフマニノフの音楽は甘美なメロディと、その内に秘めた哀愁が たまらなくロマンティックで、ブラームスとは また違った"大人の浪漫"を感じます。
私の大好きな種類の音楽ですねぇ。(笑)
「ピアノ協奏曲 第2番」の演奏もテンポのゆったりとしたロマンティックなものが好みです。CDは リヒテル/ヴィスロツキ盤と 中村紘子/スヴェトラーノフ盤、それと、昨年購入した ペトロフ/スヴェトラーノフ盤(聴いて びっくり!(笑))を聴いています。 どの演奏からも ロシアの大地と、切ないまでの"浪漫"を感じさせてくれます。

投稿: ヨシツグカ | 2013年1月19日 (土) 16時42分

こんばんは。

私もグリモーの演奏は好きです。確かに、作曲者の自作自演を思わせるところがありますね。ラフマニノフは甘く重厚に演奏されがちですが、彼の演奏を聴くと、それが必ずしも正しくないように思えてきます。

協奏曲2番で一番好きなのは、アンスネス独奏、パッパーノ指揮ベルリンフィルです。クールさと情熱のバランスが絶妙で、本当に素晴らしい演奏です。

投稿: こもじゃー | 2013年1月19日 (土) 21時39分

ヨシツグカさん、こんばんは。

そうなんですよ。”大人の浪漫”です。これですよね。
もっとも自分は学生の頃から、この曲が大好きでしたが。(笑)

中村紘子/スヴェトラーノフ盤は録音が優秀なので、あのロシア国立響の厚い音が堪能できますね。
ペトロフ盤は録音が劣るという評は目にしますが未購入です。そちらもぜひ聴いてみたいですね。
情報をありがとうございました。

投稿: ハルくん | 2013年1月19日 (土) 22時56分

こもじゃーさん、こんばんは。

ラフマニノフの演奏を聴くと、色々と考えさせられる点はありますよね。
ただ、時代と共に演奏スタイルは変化しますので、必ずしも作曲者の演奏が現代でもベストかというと、そうとも言えないような気がします。
音楽の味わいに関しては、さすがに作曲者です。最も自然ですね。

アンスネスは生でも聴きましたし、素晴らしいピアニストなので好きですが、この曲の演奏は聴いたことが有りません。
情報をどうもありがとうございました。

投稿: ハルくん | 2013年1月19日 (土) 23時04分

リヒテル盤しかほとんど聴きませんが、ジャケットのチャーミングさはリヒテル盤を圧倒していますね。美形好みのハルさんだから点数が甘くなってるんじゃないでしょうか、失礼(笑)。そういう小生もアルゲリッチの1977年のチャイコフスキー第1とプロコフィエフ第3のライヴDVDを最近買って楽しんでいます。美人に弱いのは共通していますね(笑)。

投稿: シーバード | 2013年1月20日 (日) 11時45分

シーバードさん、こんにちは。

もちろんです。美女に弱いことでは定評のある自分ですので、当然点数は甘くなりますよ。(笑)
いいんです。それもまた音楽鑑賞の楽しみです(ホントか??)。
各社もっともっとCDジャケットに力を入れてもらいたいですね。水着になれとは言いませんけど。(笑)

投稿: ハルくん | 2013年1月20日 (日) 13時23分

今晩は、ハルくん様。 1月も3週間過ぎると正月気分などと言っていられない状況になりますね。周りの営業マンは今期の目標に全然数字が足りないって青い顔してるし…
さてラフマニノフピアノ協奏曲2番。名曲かつ難曲と言われるこの曲、その頃(2008年あたり)の“ノリ”で佐渡裕指揮/辻井伸之独奏 ベルリンドイツ響のCD(DVD付)を購入しました。
辻井さんの演奏は純粋で曇りのない美しい演奏ですし佐渡さんの熱意も感じるのですが、やはり大人のこの曲にはそれだけじゃ物足りないでしょうか。
ハンデを背負ってあれだけの演奏をする辻井さんの才能と努力には平伏しますが、どの演奏を聴いても(って大した数を聴いてる訳じゃないけど)同じ感想なんだな。これからの彼の最大の課題でしょうね。大人の演奏家として頑張って欲しいです。それにしてもエレーヌ美しい!ショートカットもお似合いですねぇ。 ハルくん提案なんですが「美人演奏家」ってカテゴリを増やしません? 愛聴盤ならぬ愛眼盤の記事も良いじゃないですか。

投稿: from Seiko | 2013年1月21日 (月) 21時40分

Seikoさん。こんばんは。

辻井さんは確かにハンディを克服した立派なピアニストですね。
ただ、コンクール優勝後に、スターが必要な音楽業界に持ち上げられすぎているかもしれませんね。どんなに周囲からチヤホヤされても、それまでの純粋な気持ちで精進出来るかどうかが、真の音楽家になるための条件ではないでしょうか。

彼の演奏については自分もそれほど聴いていませんが、実はSeikoさんと同じような印象を持っています。大人の演奏家を目指して精進してもらいたいですね。

「美人演奏家」のカテゴリー!
それはグッドアイディアですね~。
でも、自分の選ぶ女流奏者はみんなそのカテゴリーに入ってしまう可能性が有ります。(笑)

投稿: ハルくん | 2013年1月21日 (月) 22時05分

私も美人大好き!(男だったら当たり前か?)
この前、テレビでアリス=紗良・オットの演奏を見ていてクラクラしました。
正に演奏、そっちのけで見ていました。
さてエレーヌ・グリモーにも、ぐらつくものがあります。
グリモーはブラームスのピアノ協奏曲も得意にしている方。
私は美人で強さのある女性は大好きです。
音楽の本質から脱線して、たいへん申し訳ございませんでした。

投稿: オペラファン | 2013年1月21日 (月) 23時37分

ハルくんさん、こんにちは。先日、NHKのピアニスト特集で中村紘子さんがピアニストをスラブ、ユダヤ系、ゲルマン系などと分類していました。その場では解説なしにさらりと流していたのですが、不勉強な私にはよく分かりませんでした。ハルくんさん、易しく教えて頂けないでしょうか?宜しくお願いします!

投稿: よーちゃん | 2013年1月22日 (火) 13時40分

オペラファンさん、こんにちは。

アリス=紗良・オット嬢は生で観ましたよ。ホント可愛かったです。若い女の子好きなオペラファンさんにはたまらないのが良く分ります。(笑)
音楽ネタも良いですが、美女ネタは実に楽しいので大歓迎です。

投稿: ハルくん | 2013年1月23日 (水) 22時31分

よーちゃんさん、こんにちは。

ピアニストの系譜は余り詳しくありません。スラブ系、ユダヤ系、ゲルマン系というのは出身地、血筋、加えて演奏スタイルを言っていたのではないでしょうか。
スラブはスラブ系諸国(ロシア、チェコなど)ゲルマン系はドイツですね。ユダヤ系だけはイスラエル以外は具体的な国ではなく人種的な区別ですね。
実際にはフランス系や、折衷系など色々有るので複雑でしょうけど。
それぞれの演奏の歴史を調べると面白いでしょうね。ヴァイオリンの演奏史も面白いですよ。

投稿: ハルくん | 2013年1月23日 (水) 22時42分

今晩は、ハルくん様。 美女ネタ大歓迎との事、音楽ネタそっちのけでコメントいたします。
今の私の一押しはギタリストの朴葵姫(パク・キュヒ)ちゃんですね。とっても可愛いし実力もあるし。

投稿: from Seiko | 2013年1月24日 (木) 22時17分

Seikoさん、こんばんは。

パク・キュヒちゃん、可愛いですねー。
演奏は聴いたことが有りませんが、上手いらしいですね。

日本で「美人ギタリスト」と言えば、やはり村治佳織さんでしょうが、いつのまにかもう34歳なのですね。早いものです。いよいよこれからが女盛りですね。

投稿: ハルくん | 2013年1月24日 (木) 23時20分

こんにちは。

ラフマニノフの自演は2番も3番も相当に速いテンポをとっており、歴史的に興味深いです。グリモーの2番はアバドでもアシュケナージでもかなり遅いですね。2番の曲調からして、現代は遅めの演奏のほうが受けるのでしょう。

グリモーの最近の演奏ではラヴェルのピアノ協奏曲(2009年ライブ?)がとても良かったです。グリモー本人はあまりフランス音楽は好きではないようですね。ラヴェルの中年期以降から晩年は作品が少ないですが、この傑作はまさに最後の輝きというところでしょうか。

投稿: NY | 2014年9月27日 (土) 02時41分

NYさん、こんにちは。

ラフマニノフの演奏テンポはかなり速いですね。にもかかわらず情緒が溢れ出てくるところが凄いです。他の演奏家が情緒を表現しようとすると、どうしても遅いテンポを取らざるを得ないということかもしれません。

グリモーはどちらかいえばドイツ音楽を好むようですね。ドイツ人演奏家とはまた違う、さりとてラテン系の演奏家のブラームスともまた違うグリモー独特のスタイルのように感じます。
そのラヴェルの協奏曲の演奏は聴いていませんが、彼女には最新録音をして貰いたいですね。

投稿: ハルくん | 2014年9月27日 (土) 11時04分

ラフマニノフのメロディーはすごくロマンティックで(チャイコスキーとスクリャービンの中間にあると思います)アプローチの方法によってはジャムと蜂蜜でベタベタ状態になると思います。映画のだめでこの曲の甘美なアプローチを是とするような演出がされていましたがそれが今様なのかも知れません。この曲はルビンシュタイン/オーマンデイで知りました。当時の名演はアシュケナージ/コンドラシン・リヒテル(DG盤)だったように思います。今は好まれない表現だとしたらがっかりです

投稿: k | 2014年9月28日 (日) 11時40分

Kさん

個人的にはラフマニノフはメランコリックで情緒たっぷりタイプが好きですね。速いテンポで”あっさり”というのは好みません。
ルービンシュタインもリヒテルも大好きですし、まだまだ人気は高いのでは?アシュケナージはそれほど好きではありませんが。

投稿: ハルくん | 2014年9月29日 (月) 23時29分

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