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2013年1月

2013年1月27日 (日)

コーガン、ロストロポーヴィチ&ギレリスの「偉大な芸術家の想い出」

「偉大な芸術家の想い出」のクレーメルの新盤の記事を書いたところ、むしろ以前ご紹介した現在廃盤のコーガン、ロストロポーヴィチ&ギレリスによる歴史的演奏を聴いてみたいという声が多かったので、YouTubeで探してみました。
良質な音源を見つけましたので御紹介します。どうやらカナダのDremiレーベルを使用しているようです。もちろん1950年代のロシア録音ですので、ハイファイというわけにはゆきませんが、当時まだ30代だった3人の若き侍が真剣で切り合うような壮絶な演奏を聴くことが出来ます。

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2013年1月26日 (土)

チャイコフスキー ピアノ三重奏曲「偉大な芸術家の想い出」 クレーメル新盤

ロシアと言えば、やはりチャイコフスキーでしょう。この人は、管弦楽曲や協奏曲のイメージが強いですが、室内楽にも弦楽四重奏曲「アンダンテ・カンタービレつき」や、ピアノ三重奏曲「偉大な芸術家の想い出」という傑作が有ります。特に後者は、ピアノ・トリオのジャンルでは、ブラームスの第3番と並んで最も好きな曲です。ビル・エヴァンスのピアノ・トリオも好きですが、これはちょっと違いますね。(苦笑)

この曲については、随分前になりますが、「偉大な芸術家の想い出 名盤」、それに「偉大な芸術家の想い出 もうひとつの名盤」 と二度記事にしました。その中で、マイ・フェイヴァリット盤として、コーガン、ロストロポーヴィチ&ギレリス盤と、オイストラフ、クヌシェヴィツキ―&オボーリン盤の2つを双璧としてご紹介しています。もちろん、それは現在も変わることはありませんが、一昨年リリースされたクレーメルの新しいディスクを聴いてみたところ、非常に素晴らしかったです。実は、このブログのお友達のNYさんが昨年11月に同じメンバーの生演奏をお聴きになられて、それがとても素晴らしかったと教えて頂いたので、せめてCDで聴いてみたいと思いました。

712csnkgxbl__aa1500__2チャイコフスキー「偉大な芸術家の想い出」(2011年録音/ECM盤)

演奏メンバーは、ヴァイオリンがギドン・クレーメル、チェロがギードレ・ディルヴァナウスカイテ、ピアノがカティア・ブニアティシヴィリ、という3人です。

クレーメルについては今更何をいわんやですが、この曲の演奏を10年以上前にアルゲリッチ、マイスキーと組んだ日本公演で聴いたことが有ります。豪華なメンバーでしたが、アルゲリッチの自由奔放さが過度に感じられて、今一つ好きになれなかったのは旧記事に書いた通りです。

今回の新盤のメンバーでは、ピアノのブニアティシヴィリは最近話題のピアニストです。目がくらむほどの美人ですが、彼女のショパン・アルバムは肝心の演奏のほうも非常に才能を感じさせます。そちらについては別の機会に記事にする予定です。

チェロのディルヴァナウスカイテのことは良く知りませんが、やはり実力者なのでしょう。クレーメルとは、しばしば共演しているようです。

ということで、演奏を聴いてみました。

冒頭、ピアノ伴奏が静かに入ってきます。それに続くチェロの旋律は最高に美しい一つですが、とても静かに奏されます。おや、と思うと、ヴァイオリンもやはり同じように静かに歌います。3人が絡み合うようになっても相変わらず同じように演奏されます。ああ、これは心の奥底に沈みこむような表現だな、と思いました。通常は、ずっと表情豊かに歌われることが多いからです。けれども、この控え目の表現が逆に哀しみを誘います。

3人ではブニアティシヴィリのちょっとした表情の変化が一番目につきます。それでもアルゲリッチのようなやり過ぎ感は無いので、抵抗は有りません。むしろセンスの豊かさに惹かれます(美貌にだけでは無いぞ)。クレーメルのヴァイオリンの音は美しく、表現も旧盤でのアルゲリッチに無理に対抗するような力みは感じられません。クレーメルが自然体で気持ちよく弾いている(あのビミューな)顔つきが目に浮かびます。ディルヴァナウスカイテのチェロも実に上手いです。派手さは無いですが、美しい音で全く過不足無く弾いています。

3人のテクニックは優秀で、アンサンブルも素晴らしいですが、音のからみ合いに何とも言えぬしっとり感を感じます。調和のとれた演奏ですが、かといって物足りなさを感じることは有りませんし、内面的な聴きごたえを充分に感じます。

第二部の変奏曲では曲が進むにつれて、少しづつ少しづつ気分が高まってゆくのが見事です。ここでも、一気に頂上へ駆け登って、また下り、上がるようなジェットコースター型の演奏とは異なり、本当に見通しの良い、フィナーレまでをじっくりと見据えた演奏だと思います。それに何よりも、ロシアの土地の空気感を感じさせてくれるのが嬉しいです。それが感じられないチャイコフスキーは正直言って苦手ですので。

これは素晴らしい演奏だと思います。優秀録音のCDとしてベストであるばかりではなく、マイ・フェイヴァリット盤に文句なく仲間入りします。
今更ながら、彼らの生演奏を聴けなかったのが残念です。それにブニアティシヴィリの美貌をこの目で確かめたかったなぁ・・・・。

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2013年1月19日 (土)

ラフマニノフ ピアノ協奏曲第2番 エレーヌ・グリモー盤

正月気分も、とっくにどこへやら。「もーいーくつ寝るとー、おしょうがつぅ~♪」なんて歌うには、早過ぎて虚しくなりますね。(笑)

さて、今年のマニュフェストに”脱ブラームス”を掲げてはみたものの・・・、実はこっそりと聴いています(苦笑)。書きたいことも幾つか有るのですが、そこをぐっとこらえて、新特集は、これも毎年恒例の「冬のロシア音楽特集」です。

毎日厳しい寒さが続きますが、そんな真冬に聴くのに大好きな曲が、ラフマニノフのピアノ協奏曲です。通好みの聴き応えという点では第3番なのでしょうが、第2番の美しい旋律と深い浪漫の香りには効し難い魅力を感じます。

この曲は以前、「ピアノ協奏曲第2番 名盤 ~大人の浪漫~」で記事にしていますが、その後、愛聴盤に加わったのが、僕の大好きなエレーヌ・グリモー嬢が録音した演奏です。

Grimaud_rachエレーヌ・グリモー(独奏)、ウラディーミル・アシュケナージ指揮フィルハーモニア管弦楽団(2000年録音/TELDEC盤)

もう10年以上も前の録音ですが、更にこの3年前に彼女はザンデルリンクの指揮で、あのブラームスのピアノ協奏曲第1番の素晴らしい録音を残しています。ですので、このとき既に彼女はピアニストとして完成の域に達しています。指揮をしているアシュケナージも、かつてピアニストとしてこの曲を得意にしていて、何度か録音をしています。であれば、この組み合わせに、期待して当然です。それでは、聴いた感想です。

冒頭の鐘の音を模倣したピアノは、それほど重々しくありません。むしろさりげないです。続いて入るオーケストラはよく歌われます。但しフィルハーモニア管にロシア的な土臭さは有りません。かといってハリウッド的な甘さも有りません。グリモーは幾らか速めにスイスイと弾いて行きますが、ちょっとした節回しや強弱に驚くほど多彩なニュアンスが込められています。集中せずに聴いていると、うっかり聞き流してしまいそうですが、じっくりと耳を傾けると本当に素晴らしいピアノです。典型は第2楽章冒頭でのオーケストラのバックにつけるアルペジオで、雄弁なことこの上ありません。もちろん主旋律に回ったときの歌い方のセンスの良さも抜群です。こんな弾き方はツィマーマンやキーシンでさえ果たして出来ていたかどうか。ああ、そういえばこのような演奏をした古いピアニストが居ましたっけ。名前はセルゲイ・ラフマニノフです。

第3楽章冒頭のG難度の連続和音も見事です。さすがに超人ガブリーロフほど軽々とは弾いていませんが、非常に切れが良く、聴きごたえが有ります。

ラフマニノフのこの曲の演奏は、深い浪漫の淵にどっぷりと沈み込むような演奏が多いですし、元々そういう曲ではあります。そこへゆくとグリモーの演奏は、単に沈み込むばかりでは無く、沈んだり浮き上がったりと、とにかく刻々と表情が変化します。にもかかわらず、アルゲリッチに時に感じる不安定さや気まぐれさは感じません。若い頃からこんな演奏が出来ていたとは、グリモーは生まれながらの真の天才だと思います。もっとも最近録音されたモーツァルトのK488などを聴くと、更に素晴らしい演奏家に成長を遂げていることが、よく分ります。
アシュケナージの指揮は、フィルハーモニア管の音色に余り魅力が感じられないものの、全体的によく歌わせていて満足できるレベルです。

この曲の、これまでの愛聴盤では、リヒテル盤は全盛期の素晴らしいテクニックによる力強いピアノと深い沈滞ぶりが魅力です。中村紘子盤はスヴェトラーノフ/ロシア国立響の音が、他に類例の無い素晴らしさなのですが、第2楽章以降のピアノがやや物足りないのが欠点でした。それに対して、グリモー盤は、意外なほどラフマニノフ自身のピアノに似ていますし、聴くほどに味わいが深まるというスルメのような演奏で、これから愛聴盤の一角を占めることになりそうです。

<関連記事>
テミルカーノフ/サンクトぺテルブルグ・フィルとエレーヌ・グリモーのライブ盤

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2013年1月12日 (土)

ヴィヴァルディ 「四季」 続・名盤

今から3年前のお正月の聴き初めに、ヴィヴァルディの「四季」を聴きました。誰でも知っているこの名曲は、新春の清々しい気分に相応しいですし、なによりも、つくづく良く出来た曲だと思います。何故ヴィヴァルディが、ヴァイオリン協奏曲「和声と創意の試み」作品8の全12曲のうちの、第1曲から第4曲までを「四季」としたのは分りませんが、結果的に全曲よりも、むしろ「四季」だけ聴いた方が、まとまりの良い作品となっています。

「四季」の名演奏と言えば、イ・ムジチ合奏団が一世を風靡したのは、もう半世紀以上も前のことになりますが、それ以降も、大管弦楽団の小編成の形や、室内管弦楽団、古楽器合奏団などによって多種多様なスタイルで演奏してきました。それらのうち、どれが本物だということでは無く、この曲はそれだけ幅広い演奏スタイルを受け入れるだけの充実した内容を持っているからなのだと思います。この曲を一言で言えば、

一度聴いただけで魅了されるほど解り易い曲でありながら、何度聴いても飽きが来ない

ということではないでしょうか。「こんな通俗名曲は聴かない」というのも、もちろんその人の自由ですが、それでは音楽の最も基本的な楽しみを忘れてしまったに等しい気がします。勿体無いですよね、こんなにも素晴らしい名曲を。

それでは、前回の記事「ヴィヴァルディ 四季 名盤」、を補足する形で新たな愛聴盤をご紹介して、改めてマイ・フェイヴァリット盤を選び直したいと思います。

120921サー・ネヴィル・マリナー指揮アカデミー室内管、アラン・ラヴディ(Vn独奏)(1969年録音/DECCA盤) 昔から名盤の一角を占めていましたが、実際に聴いたのは最近です。現代の古楽器の変幻自在な演奏と比べれば、イン・テンポでの安定感を感じますが、至る所に装飾音を加えるのには驚かされます。この当時に、よくここまでやったと感心しっぱなしです。後の古楽器派の大胆な表現の先駆けだったと思います。現在聴いても古さを感じさせないのは、イ・ムジチと同じです。但し、ラヴディのヴァイオリンはイ・ムジチの各盤の名手達と比べると幾らか劣ります。

35906_0イ・ムジチ合奏団、ピーナ・カルミレッリ(Vn独奏)(1982年録音/フィリップス盤) イ・ムジチの「四季」は現在までに7種類有って、全てを聴いたわけでは有りませんが、これはミケルッチのあとの4度目の録音です。全体のテンポは落ち着いていますが、アンサンブルの切れや迫力が素晴らしいです。カルミレッリのヴァイオリンはとても上手く、美音です。彼女を中心によく歌われているので、人によっては非常に好まれるかもしれません。アーヨ盤の美しさは比類ないですが、余りにレガート過ぎると感じる方には、カルミレッリが良さそうです。

C129d7a17fファビオ・ビオンディ(Vn独奏)、エウローパ・ガランテ(1991年録音/naive盤) 古楽器演奏としては、カルミニョーラに隠れ気味ですが、「四季」の録音では3年先駆けています。アイディア満載で、大胆な表現やダイナミズムの変化に非常に驚かされますが、カルミニョーラほどにはテンポを揺らさないので安定感が有ります。最初は戸惑いますが、慣れるととても楽しめます。ヴァイオリンのテクニック的にはカルミニョーラのほうが上に思います。「夏」などは中々に迫力が有りますが粗さを感じます。尚、ビオンディにはEMIに新盤が有りますが、そちらは未聴です。

020721ジュリアーノ・カルミニョーラ(Vn独奏)、ソナトリ・デ・ラ・ジョイオーサ・マルカ、(1994年録音/DIVOX盤) カルミニョーラの「四季」の旧盤です。僅か5年後にSONYに新盤を録音しますが、理由は分りません。単にメジャーレーベルと契約すると言う営利的な理由と邪推しなくもありません。二つの演奏内容はほとんど変わりませんが、古楽器のノンヴィブラートの音が重なり合う古雅な響きの美しさは旧盤の方がよく出ています。新盤は響きが僅かに粗く聞こえます。表現の大胆さ、過激さは新盤が上回るので、初めて聴く際のインパクトは新盤が勝りますが、何度も繰り返して味わうには、旧盤のほうが良いと思います。ただ、一般的には新盤からわざわざ買い替える必要も無いとは思います。

こうして聴き終えたところで、フェイヴァリット盤の再選です。議席数を3として改めて選出し直すと、前職のイ・ムジチ/アーヨ盤とシルブ盤は、そのまま再当選。カルミニョーラの新盤が惜しくも落選して、旧盤が当選を果たしました。

マリナ―盤、イ・ムジチ/カルミレッリ盤、イタリア合奏団盤などは、小選挙区制の犠牲となり、気の毒な結果に終わりました。でも、時には取り出して聴くのは言うまでもありません。

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2013年1月 5日 (土)

ブルックナー 交響曲第5番 アイヒホルンの聖フローリアン・ライブ

聴き初めにブラームス、マーラーと大曲を聴きましたので、ここはいっそヘビーローテーションということで、AKB・・・じゃなかった、ブルックナーを聴くことにします。いやー、年始からヘビーな曲が続きます。まぁ、なにせ今年はヘビー年ですから。ヽ(´▽`)/
へえ、おあとがよろしいようで。(笑)

さて、新春早々馬鹿な事を言っていないで主題に戻ります。ブルックナーの曲では、最近は、最後期の8番、9番ではなく、5番、7番が聴きたくなります。特に5番の荘厳な雰囲気は新年に相応しいと思います。

あいにく、5番の演奏で未紹介のディスクは一つだけですが、それをご紹介します。隠れ名盤として世評の高い(ならば”隠れ”では無いか?)演奏です。

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クルト・アイヒホルン指揮バイエルン放送響(1990年録音/カプリチオ盤)

アイヒホルンという人は1994年に亡くなっていますが、永年ブルックナーの演奏に尽くしたので、ブルックナー協会からメダルを授与されている、いわゆるブルックナー指揮者ですね。録音も多く残しています。ところが僕はこれまで聴いたことは有りませんでした。理由は、手兵のリンツ・ブルックナー管弦楽団というのが、マイナーオケで、どうも実力がいま一つという評を聞いていたからです。単に食指を動かされなかったということです。

けれども、この1枚だけは目に留まりました。演奏がバイエルン放送響であることと、何といっても演奏会場が、ブルックナーの聖地であるオーストリア・リンツの聖フローリアン修道院だからです。故朝比奈隆氏が大阪フィルを率いて1975年にこの場所でブルックナーの第7番を演奏したことは余りに有名です。ここで演奏した第5交響曲とあっては聴かない訳には行きません。

さて、その演奏ですが、1楽章導入部から、非常に気迫の有る音で驚かされます。響きをふっくらと美しく整えるのではなく、こちらに迫るような押しの強い響きです。主部に入ると幾らか速めのテンポで荒々しいほどの迫力を聞かせます。さしずめマタチッチのようです。残響の極めて長いフローリアンで、これだけ荒々しく聞こえるのは相当なものですが、その理由はトランペットとトロンボーンがかかなり強めだからです。アイヒホルンの指示だとすれば、僕はイメージが覆されます。ただ、アインザッツが頻繁にずれるところをみると、アイヒホルンという人はオケ・コントロールは割合に緩い人なのかもしれません。このあたりが気にならなければ、中々に良い演奏です。

2楽章は、勇壮で美しく、大変聴きごたえが有ります。これはフローリアンの響きの豊かさが充分に生かされているのでしょう。心も充分にこもっています。

3楽章は、荒々しい迫力が有ります。曲が曲だけに、これは悪くありません。

終楽章は、おそらくもっとも出来が良いです。気迫がマイナスでは無く完全にプラスに働いています。表情が豊かで、彫が深く立体的、オケの響きも美感を増していて、非常に感動的な素晴らしい演奏となりました。

録音については、聖フローリアンの残響の長く柔らかい響きを忠実に捉えていて、バイエルン放送響の出す荒々しい音を美しく中和させています。それでいて各パートの分離も明瞭です。相反する要素を生かした優秀録音です。

ということで、5番の演奏としては、ヨッフム/コンセルトへボウの1986年盤はおよそ並ぶもののない奇跡的な名盤ですが、それ以外のクナッパーツブッシュ/ミュンヘン・フィルのライブ、ケンペ/ミュンヘン・フィル、マタチッチ/チェコ・フィル、ヴァント/ミュンヘン・フィル、ティーレマン/ミュンヘン・フィルといった愛聴盤達の仲間に加えても構わないと思います。

<過去記事>

ブルックナー 交響曲第5番 名盤

ティーレマン/ミュンヘン・フィルのブルックナー第5番

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2013年1月 4日 (金)

マーラー 交響曲第8番「千人の交響曲」 テンシュテットのロンドン・ライブ

Mahler_8_tensuクラウス・テンシュテット指揮ロンドン・フィルハーモニー(1991年録音/BBC盤)

昨年の仕事始めは4日だったのですが、今年は嬉しいことに7日からです。正月三が日にすっかりダラけた自分にとっては、非常に有りがたいことです。そこで聴き初めにブラームスの1番をテンシュテットで聴いたので、もう1曲、テンシュテットを聴くことにしました。

新年早々から、暗く厭世観の強いマーラーの曲を余り聴きたいとは思いませんが、第8交響曲は別です。マーラー自身が、「これまでの作品には、いずれも主観的な悲劇を扱ってきたが、この交響曲は偉大な歓喜と栄光を讃えているものです。」と語ったように、躁鬱的、精神分裂的なマーラーの書いた、最も輝かしく光を放つ壮麗巨大なカンタータかオラトリオのような作品です。第6、第9、「大地の歌」がマーラーそのものなら、この第8もやはりマーラーなのです。

といっても普段は滅多に聴くことが有りません。思い立った時だけです。ですので所有ディスクも、他のマーラー作品と比べると、ずっと少なくなります。それらは以前の記事の「千人の交響曲 名盤」でご紹介しました。

その中にはクラウス・テンシュテットのスタジオ盤(EMI)が含まれていますが、その後にリリースされたのがロンドンのフェスティヴァル・ホールでのライブ盤です。EMI盤は1986年の録音でしたが、このライブ盤は、ちょうど5年後の1991年の演奏です。EMI盤はこの壮大な曲を高揚感と格調の高さを持った素晴らしい演奏でしたが、やはりテンシュテットがステージに立つと演奏の気迫が違います。オーケストラは雄弁極まりなく、独唱、コーラス陣の真摯な歌声にも胸を打たれます。イギリスの合唱はやはり素晴らしいです。

ライブ収録にもかかわらず、録音の質が優れているのも嬉しいです。生の演奏会場に居るような臨場感が有りますし、オケも合唱も生々しい音で聞けます。各パートのバランスや距離感も抜群です。特に素晴らしいのは第2部で、中間部アダージッシモの神秘感やロマン性に魅了されますが、圧巻は終結部です。徐々に高まってゆき、ビッグバンのような爆発を見せる合唱とオーケストラには言葉を失います。このフィナーレの絶頂は、もしやバーンスタイン以上の史上最高ではないでしょうか。もちろんライブゆえの些細な傷が無いわけでは有りませんが、全体の感銘の前には全く問題になりません。

録音で聴いてもこれほどの感動を受けるこの演奏を、もしも実際の会場で聞いたらと思うと想像もできません。

この演奏は、テンシュテットのマーラーの中でも、北ドイツ放送響との伝説的な「復活」ライブ、1990年代のEMI録音のロンドンフィルとのライブの6番、7番、それにコンセルトへボウ管とのライブの5番に並ぶ特別な名演奏であるのは間違いありません。

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2013年1月 3日 (木)

ブラームス 交響曲第1番 テンシュテットの1992年ロンドン・ライブ盤

今年のマニュフェストに「脱ブラームス、卒ブラームス」を掲げたために、ブラームスの記事を止めないで欲しいというコメントを幾つか頂いてしまいました。
そこで、大きな声では言えませんが、実は「や・め・ま・せ・ん。」(笑) これが信憑性の低い「マニュフェスト」の良いところ??ですね。

ということで、新年の初聴きはブラームスの交響曲第1番です。(爆)

なにしろ完成までに20年以上の歳月を要したこの曲は、完全主義者ブラームスの代名詞のような作品で、ベートーヴェンの「第10交響曲」とも呼ばれています。年末恒例の曲が「第九」ならば、それに続く「第10」を新年に、というのも、また一興ではないでしょうか。何と言っても、この曲の気宇壮大さと、終楽章に高らかに歌い上げられる勝利の歌は、新しい年の始まりに相応しい気がします。

第1交響曲については、これまで「モノラル録音の名盤」、「ステレオ録音の名盤」で愛聴盤をご紹介しました。そこで、今回は昨年末にリリースされたばかりの新盤をご紹介します。

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クラウス・テンシュテット指揮ロンドン・フィルハーモニー(1992年録音/BBC盤)

テンシュテットという指揮者は、マーラーの演奏に於いては、バーンスタインと並び立つ存在だと思います。もちろんワルターやバルビローリ、ベルティーニ、ノイマンなどの素晴らしいマーラーを演奏する指揮者は何人も存在しますが、この二人ほど心底圧倒される演奏を聴かせる指揮者は、まず居ないと思うのです。但し、マーラー以外の曲の演奏に関しては、正直そこまでの認識は持っていません。テンシュテットの熱烈なファンからは反論を受けそうですが。

実はブラームスについても、あの余りに凄いマーラーの一連の演奏が、逆にブラームスの音楽には遠いイメージとなっていて、これまで食指を動かされたことが有りませんでした。

この人のブラームスの第1交響曲の演奏は、既に1983年のスタジオ録音(EMI盤)、1990年のライブ盤(BBCレジェンド盤)などが出ていましたが、あいにく聴いたことが有りません。そこへ今回、新しく1992年のライブ盤がリリースされたので、テンシュテットのブラームスを一度ぐらいは聴いておいても悪くないと思い、聴いてみました。これはロンドンのロイヤル・フェスティヴァル・ホールでのライブ録音です。

第1楽章冒頭のテンポはゆったりと、しかし緊張感を一杯に湛えており、ティンパニーが非常に力強く叩かれていて後の凄演を予感させます。主部に入ってもテンポはゆったり気味ですが、イン・テンポで緊張感を保ちながら、リズムに念押しを加えてゆくのがプロシア風のブラームスが感じられて心地よいです。響きも金管だけが浮かび上がることなく、弦楽と溶け合っているのが良いです。低弦がうねるような迫力を感じさせるのは、ややワーグナー、マーラー風ですが、ブラームスも元々響きを分厚く書いているので違和感を感じるどころか、逆に魅力的です。

第2楽章も非常にゆったりとロマンティックに聴かせています。甘さよりも悲劇性を強く感じさせるのは、音楽の本質を突いているように思います。

第3楽章でも、遅めのテンポで立体的に響かせているのが良いです。爽やかではありませんが重厚さがたまりません。

第4楽章では、冒頭のティンパニの強打にいきなり驚かされます。同時に「大丈夫かな。爆演になってしまうのかな?」と不安が心をよぎります。聴き進むとホルンによる有名な主題は朗々と響き、ドイツのオケにも聴き劣りがしないほどです。続く弦による主題も悪くは有りませんが、水準レベルというところです。展開部に入ると、にわかに熱気を帯びてきて、楽器が力強く鳴り出します。徐々に爆演に成りかけてきます。あぶないあぶない。更に聴き進むと、全般にティンパニの音が過剰気味ではありますが、幸い金管のボリュームは許容範囲内です。終結部に入ってもある程度の抑制が効いていますので違和感は有りません。終結部では、ずしりとタメを効かせて、中々に満足感を与えます。ちなみに、同じホールでのカラヤン/ベルリンPOの1988年ライブ(Testament盤)では、終結部の余りの強奏にいささか辟易しました。それに比べれば遥かに抵抗感が無く、素晴らしいです。ブラームス演奏は熱演の中にも、やはり一定の節度が無くてはいけません。

このCDは2枚セットで、もう一枚には1983年のライブでブラームスの第3交響曲が収められています。そちらも遅めのテンポで堂々とした演奏なのですが、どういうわけか録音がのっぺりしているので第1番よりも、かなり聴き劣りしてしまいます。録音が良ければ、もっと真価を理解できるのかもしれないので残念です。

ということで、第1番に限っては、愛聴盤の仲間入りをさせたいと思います。

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2013年1月 1日 (火)

明けましておめでとうございます 2013年 元旦

皆様、明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願い致します。

今日は遅く起きて、おせちをゆっくり食べてから、サッカー天皇杯をテレビ観戦していたために、ご挨拶がすっかり遅れました。けれども、実は隠れ柏レイソルサポーターであるハルくんは勝利の美酒に酔いしれています。これで今年もアジアクラブ選手権へ参戦できることになったので、「え~、こいつはハルからえんぎがいいや~、どうでい~!」ってな気分です。

さて、それはともかく、当ブログもスタート以来、はや5回目の新年を迎えました。毎年、新年にはその年にどんなことを記事にしていこうか、マニュフェスト??を掲げているのですが、これまで公約どうりに実現したことは一度も有りません。(笑)

と言いながら、懲りもせずに今年のマニュフェストを発表します。

2013年ハルくんのマニュフェスト

1、ブラームスへの依存度を減らします。(脱ブラームス、卒ブラームス)

2、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲全曲を実現します。

3、シューベルトの三大歌曲集の特集を実現します。

4、フォーレの室内楽の特集に取り組みます。

5、モーツァルトの未紹介曲の記事化に全力で取り組みます。

6、オペラの記事紹介を従来よりも増やします。

7、バッハの作品、中でもカンタータへの取り組みに努力します。

8、ベートーヴェンのピアノ・ソナタへの取り組みを始め、2018年までに未紹介記事ゼロを目指します。(長期5か年計画)

以上ですが、いかがでしょう。我ながら、どうも実現性はかなり低そうだなぁと思わずにいられませんが、どじょうのようにドロくさく実現してゆきます。えっ、それはもうイイって?(苦笑)

なにはともあれ、この一年が皆様にとりまして、素晴らしい年、楽しい年になりますよう心より願っております。

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