« 大河ドラマ「平清盛」 ~遊びをせんとや生まれけむ~ | トップページ | 追悼・中村勘三郎 ~よっ!中村屋!~ »

2012年12月 5日 (水)

ブラームス クラリネット五重奏曲 続々・名盤

北国からは既に雪の便り。地元の神奈川県でも、秋は終わりに近づいて、「秋のブラームス特集」も、いよいよ「クラリネット五重奏曲」です。晩年にブラームスが一度は失った創作意欲を再び取り戻すきっかけとなった名クラリネット奏者、リヒャルト・ミュールフェルトの為に書いた傑作中の傑作です。ブラームス自身は三重奏曲作品114のほうが好きだと言っていたそうですが、我々聴き手としては、やはりこの曲の翳の濃い味わいと聴き応えには、効し難い魅力を感じます。

この曲については過去に、「クラリネット五重奏曲 名盤」、そして「クラリネット五重奏曲 続・名盤」で、二度記事にしていますが、今回はその後に更に加わった愛聴盤をご紹介したいと思います。

00000792977lアルフレート・ボスコフスキー(Cl)、ウイーン八重奏団員(1961年録音/DECCA盤) 当時のウイーン・フィルのメンバーで組んだこの演奏は、ブログお友達のかげっちさんに薦められて聴いてみました。クラリネット独奏のボスコフスキーは、ウインナ・ワルツで有名なウイリー・ボスコフスキーの弟です。1stVnを弾いているのはアントン・フィーツです。これこそは正にウイーンの味です。かつてのウラッハ盤にはウイーンと言ってもハンガリー風の味わいが濃いように感じましたが、こちらはウイーンそのものを感じます。余りに音が甘く柔らかなので、個人的にはカップリングのモーツァルトのクインテットの演奏のほうに更なる魅力を感じますが、このブラームスの演奏ももちろん素晴らしいです。

81npdo10pelチャールズ・ナイディック(Cl)、ジュリアード弦楽四重奏団(1994年録音/SONY盤) これは廉価BOXの弦楽四重奏、弦楽五重奏と一緒に収められているのですが、実に素晴らしい演奏です。ゆったりとしたテンポでフレーズの終わりに念押しをするので、実際以上に遅く感じます。ロバート・マンのヴァイオリンの歌いまわしは大きく、非常にロマンティックです。クラリネットのナイディックはジュリアード音楽院の教授ですが、マンにぴったりと寄り添って素晴らしいです。他のメンバーももちろん上手いですが、音楽の内容表現に徹しているのが素晴らしいです。終楽章の変奏曲などは気合が入って激しく、それでいて非常に立派という、およそベストの演奏のように思います。かつてのジュリアードQのイメージとはまるで異なる、この大きくて深いブラームスの味わいは正に最高です。

41cec3txvxl__sl500_aa300_カール・ライスター(Cl)、ブランディス弦楽四重奏団(1997年録音/Briliant盤) ライスターがこの名曲を何度録音したかは調べませんでしたが、確か5回以上は録音したはずです。この演奏は、その一番最後の方の録音です。演奏には年輪と熟成を全ての音符に感じさせています。但し、元々情緒に流されるようなタイプではありません。そのあたりは好みです。ブランディスの弾くヴァイオリンの表現力と味わいも悪くはありませんが、超一流とは言い難い気がします。激戦区のこの曲の演奏としては、特別に抜きんでる存在では無いと思います。

ということで、今回の大収穫はナイディック/ジュリアードSQ盤です。
ウラッハ/ウイーンコンツェルトハウスSQ盤が横綱、バヴィエ/ヴェーグSQ盤が大関の座は揺るがないとしても、関脇には前回のシフリン/エマーソンSQ盤に代わってジュリアードSQ盤を昇格させたいと思います。もっともこれは僕の全く個人的な番付(盤付?)ですので、物言いが付くのは承知の上です。どすこいpaper

|

« 大河ドラマ「平清盛」 ~遊びをせんとや生まれけむ~ | トップページ | 追悼・中村勘三郎 ~よっ!中村屋!~ »

ブラームス(室内楽)」カテゴリの記事

コメント

ハルくんさん、おはようございます! ブログの更新、いつも楽しみにしています。 クラリネット五重奏良いですよね。此処のところハンガリーのレコードをよく聴いています。ウラッハの演奏のハンガリー風と言う所を少し教えてくださいませんか?宜しくお願いします。

投稿: よーちゃん | 2012年12月 5日 (水) 07時38分

私はライスター/フェルメールSQではじめてこの曲を聴きました。現在は廃盤のようですね。ウラッハのひなびた感は言うまでもなく素晴らしいですが、個人的な好みでは一楽章はもう少しゆっくりのほうがいいかなと思ってます。もともとアレグロなのでしょうけど、かなり急いた演奏も多いですね。

投稿: NY | 2012年12月 5日 (水) 13時25分

ハルくんさん、こんばんは。 ちょうど今頃、秋から冬の変わり目に「クラリネット五重奏曲」は なんて似合うのでしょう・・・。「トリオ」とは違って 秋風に舞う落葉をイメージします。CDは さっき数えたところ、いつの間にか7枚に増えていました・・・う~む。(笑)  でも、今だに、ウラッハ/ウィーン・コンツェルトハウスQを越える演奏はありません。"永遠の名演"ですね。 (と、書いているそばから ライスターの最後の録音が気になっている 私って・・・。笑)

投稿: ヨシツグカ | 2012年12月 5日 (水) 20時38分

>北国からは既に雪の便り。地元の神奈川県でも、秋は終わりに近づいて、「秋のブラームス特集」も、いよいよ「クラリネット五重奏曲」です。

えええ~。もうすぐ冬ですよね。ということは、このブラームス特集も終わってしまうのでしょうか?

ぜひ「冬のブラームス特集」もやって欲しいのですが……。

そして「冬のブラームス特集」が終わったら今度は「春のブラームス特集」をやって欲しいものです。

他の方はどうか知りませんが、私にとって「冬」はブラ1&ピアノ協奏曲第1番の季節であり、「春」はヴァイオリン協奏曲&ピアノ協奏曲第2番の季節なんです。

そして「夏」はブラ2……といった感じなのです。「ブラームスは秋」というイメージに基本的に賛成ですが、例外もあるんですよ。(^^;)。

なぜだかわかりませんが、それぞれの季節に聴きたくなるんです。

>今回の大収穫はナイディック/ジュリアードSQ盤です。


室内楽に関しては、「ご当地主義」はあまり関係ないような気がしないでもないmorokomanです。

先日、ハルくん様に紹介させていただいたエマーソンSQの演奏による


グリーグ&シベリウス 弦楽四重奏曲集


今日再び聴いてみると、以前気づかなかった発見があり、改めて「親愛の声」は傑作であると認識できた次第。これが自分にとって最も合っている演奏なのだと思います。

ちなみに、グリーグの四重奏曲も大変な名演で、作品に内包する豊かな感情を表現してあまりあります。

はたしてノルウェーの団体で、これほどの演奏ができるのだろうか、疑問です。

エマーソンといい、ここでのジュリアードと言い、アメリカの団体なのに、本当にすごいですね。

音楽がギュッと凝縮されるような演奏形態だから、作曲家とは違う民族の演奏ではあっても、演奏家の力量がそのまま、聴き手に訴える力がダイレクトに伝わってきて、民族の壁を越えてしまうのかも知れませんね。

投稿: morokoman | 2012年12月 5日 (水) 22時49分

よーちゃんさん、こんばんは。

ウラッハの演奏というよりも、むしろヴァイオリンのアントン・カンパーの演奏がそう感じさせるのだと思います。「ハンガリー風」と言ったのは、哀愁や悲壮感が強く漂っていて民族色が濃いというイメージです。それはマジャール人の持つジプシーの味わいとでも言うのでしょうか。
もちろんこれは僕の個人的なイメージですので、音楽的に正しいかどうかは分りません。

投稿: ハルくん | 2012年12月 5日 (水) 23時23分

NYさん、こんばんは。

ライスターのフェルメールSQ盤は聴いたことが有りません。廃盤ですか。

ウラッハ盤のひなびた感は本当に素晴らしいです。僕も第一楽章はゆったりとしたテンポが好きです。ウラッハ盤のテンポが丁度良いと思うのですが。

投稿: ハルくん | 2012年12月 5日 (水) 23時44分

ヨシツグカさん、こんばんは。

正に晩秋のイメージですね。今頃一人で夜更けに聴くのが最高ですね。

ウラッハ/ウィーン・コンツェルトハウスQの味わいを越える演奏って無いですね。しいて言えば終楽章がやや弱いのですが、その前までの楽章が全部最高なので、やはり横綱です。

投稿: ハルくん | 2012年12月 5日 (水) 23時48分

morokomanさん、こんばんは。

もちろんブラームスは秋以外にも聴きますけど、ブログ上では毎年秋に特集をしていて、冬になるとロシア音楽、早春には北欧音楽特集なのですよ。

ジュリアードQが良いと思うのは、ひとえにロバート・マンの演奏のせいですね。
民族的かどうかということを越えた「演奏家としての年輪」で、この演奏を聴かせています。若い頃の録音だったら、これほど良いかどうかははなはだ疑問です。

投稿: ハルくん | 2012年12月 5日 (水) 23時58分

ハルくんさん、おはようございます!ハンガリーには、素敵なヴァイオリン弾きがたくさんいますよね。返信ありがとうございました。

投稿: よーちゃん | 2012年12月 6日 (木) 05時44分

よーちゃんさん、こんばんは。

ハンガリーのヴァイオリニストは素晴らしいですね。アウアー、フバイ、ヨアヒム、みなハンガリー出身ですし、シゲティ、ヴェーグ、マルティなど大好きです。

投稿: ハルくん | 2012年12月 6日 (木) 23時33分

ハルくんさん、おはようございます!
シゲティ、ヴェーグ、素晴らしいですよね。ハンガリー国内組のコヴァーチュも良いですよ!

投稿: よーちゃん | 2012年12月 7日 (金) 08時15分

レスありがとうございます。


>冬になるとロシア音楽、早春には北欧音楽特集なのですよ。

うう~む、なるほど。確かに冬となるとロシア音楽は合いますね。

かく申すmorokomanも、冬はロシア民謡がやたら聴きたくなる時がありますからね。

と申しても、私にとって冬といえばシベリウスの第4番のイメージなんです。

そして早春はシベ5、と言った感じです。ジャンキーですので、シベ5を聴くと、常に「雪が溶け、動物、植物、昆虫と言った様々な生命が目覚め、活動を始める。ところどころに生命の息吹を感じる」かのような『幻覚』を見てしまいます。

これが私には応えられないほど素晴らしいことなんです。

ハルくん様もシベ5がとりわけお好きなようで、早春に北欧の音楽を取り上げてくださるのも、もしかするとこれに起因するのかもしれないと思いました。

>ジュリアードQが良いと思うのは、ひとえにロバート・マンの演奏のせいですね。
民族的かどうかということを越えた「演奏家としての年輪」で、この演奏を聴かせています。若い頃の録音だったら、これほど良いかどうかははなはだ疑問です。

なるほど、「演奏家としての年齢」によって民族的な「何か」を超越した、ということは充分ありえますね。

室内楽というジャンルだから越えた、という私の意見は短絡的だったかも。

これを確認するためにも、いずれジュリアードSQの演奏を聴いてみたいものです。

投稿: morokoman | 2012年12月 8日 (土) 20時48分

morokomanさん、こんにちは。

シベリウスは4番も含めて真冬は余り聴きません。寒く成り過ぎるのですよ。(笑)
ですので、陽射しが長く成りはじめたと感じられたころを聴きどきにしています。
早春のイメージはやはり5番ですね。
現在は4番、6番、7番をより好んではいますが、5番もやはり良いですからね。

投稿: ハルくん | 2012年12月 9日 (日) 09時13分

明日から入院のかげっちです。術語しばらくは痛いだろうし動けないから(頸椎の難病です)シベリウス聴きまくって生きる力を奮い立たせる予定、いま病院に持ち込むCDを袋に詰めたところです。

ついにボスコフスキーをお聴きになったのですね。ちょっと甘美すぎるという声もあるかもしれませんが、名盤です。私が最初に勉強した時もこれを聴きこみました。音色も甘美ですが、ルバートが多めなのも特徴です、それでいて嫌らしくないところが凄い演奏。

この曲、もっとも有名な2楽章中間部がそもそもハンガリー風に書けているのですが、ウラーハなんかそこをあっさり吹いているほうだと思いますよ。

ナイディックはあまり好まないので、この曲を録音していることを知りませんでした。上手いことは間違いないです。Mozartでは楽譜にない装飾を入れすぎですし、音色も好きではない(奏者の立場で言うと息の速度が足りない)のです。しかしこの盤を聴いていないので論評やめましょう。

ライスターは言うまでもなく名盤。こういう野太い音と、ボスコフスキーみたいな甘い音、どちらのクラリネットが好きかは趣味の問題ですね~、弦もいずれ劣らぬ名演ですし。4楽章の変奏曲で一つだけ長調になるところで「いろんなことがあったなあ(しみじみ)・・・」という気持ちになれたら、もうこの曲から離れられません!

投稿: かげっち | 2012年12月15日 (土) 15時45分

かげっちさん、ボスコフスキー良かったですよ。ありがとうございます。
もっともモーツァルトがブラームス以上に気に入りましたけど。

前にも書いていますが、ウラッハよりもカンパーのヴァイオリンのほうが「ハンガリー」を感じさせているのだと思います。あれは何しろ最高です。

この曲でのナイディックの音は悪く無いと思います。ただ、これもやはり僕はロバート・マンのヴァイオリンに感動しているのです。

投稿: ハルくん | 2012年12月15日 (土) 16時42分

こんにちは。

最近、エディ・ダニエルという人でブラームスのクラリネット五重奏を聴きました。もともとジャズクラリネットの世界では名手で有名人らしいのですが、私は知りませんでした(汗)。クラシックの専門家でもテンポが揺れたり弦とのズレが気になる演奏が多い中、しっとりとした名演ではないかと思っています。弦も滋味感があってとてもいい味です。本格派の演奏ですが、あまり知られていないようですね。

投稿: NY | 2014年12月15日 (月) 16時00分

NYさん、こんばんは。

僕もEddie Danielsという人は聴いたことが有りませんでした。音源を探して聴いてみたら、確かに非常に良いですね。弦楽のComposers strings qurtetのほうも良いです。
落ち着いたテンポでじっくりと聴かせていて、およそJazzというイメージは感じられません。正統派の演奏として十二分に通用します。
日本では受け入れられにくいキャリアなのでしょうね。
ちなみにJazzの「Sing,sing,sing」も聴いてみましたが、これもまた素晴らしい演奏でした。凄い才能です。
良い演奏家をご紹介くださりありがとうございます。

投稿: ハルくん | 2014年12月16日 (火) 23時02分

こんにちは。

人並みに中年になったせいか、この頃はこの曲が一層身に染みます。Eddie Daniels(日本語ではエディ・ダニエルズでしょうか)はこの数日すっかり聴き惚れてしまいまして、経歴からするとあるいは生粋のクラシックファン受けしないのかもしれませんが、第一楽章は特に秀逸で、中間部のテンポを落としたところなどは感涙ものです。

ザビーネ・マイヤー/アルバン・ベルクSQという演奏も聴いてみました。ザビーネ・マイヤーはカラヤンの推しでかなり話題になった人ですが、クラリネットも弦もアクセントが強く、多少音がきつい感じがしました。彼女はエディ・ダニエルズとの共演もあるようで、ジャンルをまたいだ活動は好ましいですね。

投稿: NY | 2014年12月19日 (金) 01時41分

NYさん、こんばんは。

この曲は本当に心に沁みますね。若い頃から大好きですが、中年を大きく??越えて来ると増々沁みわたります。
Eddie DanielsのCDを欲しいなと思ったのですが、海外でしか入手できず結構高いのですよね。ちょっと悩んでいます。

ザビーネ・マイヤー/アルバン・ベルクは聴いていません。試聴でそれほど気に入らなかったのだったかな?
意外とJazzやポピュラーの演奏は良いかもしれませんね。

投稿: ハルくん | 2014年12月19日 (金) 19時55分

こんにちは。

エディ・ダニエルズのCDが届いたので さっそく 聴いてみました。
予想に反して(笑)、すごくオーソドックスなブラームスが聴けます。
テンポを比較的ゆっくりと取り、この曲の持つ、"哀愁"を まるで 昔の名演奏家のように 心ゆくまで堪能させてくれます。
素晴らしいです。
録音も また素晴らしく、この曲のトップクラスに入るでしょうね。
NYさんが絶賛されるのも 頷けます。
 
私の この曲のベスト3に入る愛聴盤になりそうです。
 
ホントに "演奏"は 実際に聴いてみないと わからないものですね‥…。
 
是非 聴かれてみてください。

投稿: ヨシツグカ | 2014年12月26日 (金) 18時37分

ヨシツグカさん、こんにちは。

エディ・ダニエルズのCDをお聴きになりましたか。
とても素晴らしいオーソドックスなブラームスとのこと、増々聴いてみたくなりました。
これはやはり入手すべきですね。
ありがとうございます。

投稿: ハルくん | 2014年12月26日 (金) 18時41分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1080200/47948369

この記事へのトラックバック一覧です: ブラームス クラリネット五重奏曲 続々・名盤:

« 大河ドラマ「平清盛」 ~遊びをせんとや生まれけむ~ | トップページ | 追悼・中村勘三郎 ~よっ!中村屋!~ »