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2012年11月17日 (土)

ブラームス ヴァイオリンとチェロのための協奏曲 イ短調 メニューイン&トルトゥリエ

ブラームス晩年の名作、「ヴァイオリンとチェロのための協奏曲」はタイトルの通り、ヴァイオリンとチェロという二つの楽器が活躍する協奏曲です。そしてブラームスが書いた最後の協奏曲となりました。

複数楽器のコンチェルトはバロック時代には非常に盛んでしたし、モーツァルトも何曲か書いています。それが、ロマン派以降にはコンチェルトというスタイルそのものの衰退もあって、余り書かれなくなるのですが、そんな古い形式を使って名作を書いてしまうのがブラームスです。

この曲では、時にヴァイオリンがリードして、時にチェロがリードします。あるときは仲良く寄り添い、あるときは激しくぶつかり合います。ブラームスはこの曲に「夫婦」の意味をこめて書いたそうですが、何故ゆえ結婚経験のない彼が、夫婦の日常生活を知っていたのかは分りません。

この曲は、第1楽章や第3楽章も素晴らしいですが、僕は特に第2楽章を好んでいます。それにしても、なんという甘く優しい雰囲気でしょうか。ブラームスは愛すれども敵うことのなかったクララ・シューマンとの夫婦生活を密かに想い描いて、二人の愛の交歓を表現したのかもしれませんね。

この曲については、以前「ヴァイオリンとチェロのための協奏曲 名盤」で記事にしています。今回は、その後に聴いた印象的な演奏をご紹介したいと思います。

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ユーディ・メニューイン(Vn)、ポール・トルトゥリエ(Vc)、パーヴォ・ベルグルンド指揮ロンドン・フィルハーモニー(1984年録音/EMI盤)

この曲には幾つも名盤が有るので、この演奏は余り目立たないと思います。僕が興味を持った理由は、メニューインのブラームスだからです。バッハやベートーヴェンの演奏も素晴らしいですが、彼の弾いたブラームスのヴァイオリン協奏曲はとても気に入っています。ですので、この曲もとても興味深いところだったからです。

チェロを弾くトルトゥリエも渋いですね。個人的にフランスのチェロ奏者には好きな人が多いのです。フルニエやジャンドロンも良いですが、トルトゥリエも中々に好きな演奏家です。

この両者の共演を支えるのがパーヴォ・ベルグルンドです。これも興味をそそられますよね。

で、実際に聴いてみた感想です。

メニューインは音程、ボウイングとも完璧ではありません。滑らかさにも欠けています。けれどもスマートで無いのが逆に魅力です。端麗辛口なのは、ちょっと晩年のシゲティに似ています。反対にトルトゥリエは非常に上手いです。この曲を余裕を持って弾き切っています。といってロストロポーヴィチのような大げささは感じません。二人の音は一つの楽器のようにピタリと合わさるわけではありませんが、似ていないもの同士の夫婦が仲良く寄り添うような印象を受けます。ベルグルンドの指揮は得意とするシベリウスの演奏と同じように、透徹した演奏です。ブラームスにしては贅肉が少な過ぎかなとは思いますが、外面的な派手さが無いのも悪くは有りません。テンポは一貫して中庸、第2楽章など、もう少し浪漫的に沈滞してくれても良いのにな、とは思いましたが、これが彼らの味なのでしょう。

それにしても、この曲はやはり素晴らしい曲だなと、改めて感じさせてくれる良い演奏だと思います。

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ブラームス(協奏曲:ヴァイオリン他)」カテゴリの記事

コメント

我が家の二重協奏曲はフランチェスカッティ/フルニエ/ワルターです。フランチェスカッティの甘い音色は昔から好きです。この演奏ではワルターがちょっと先走っているような感じもしました。フランチェスカッティは大昔の人のように感じていましたが、91年まで存命だったのですね。LP時代のメンデルスゾーンをもう一度CDで聴いてみたいです。

投稿: NY | 2012年11月17日 (土) 19時46分

ハルくんさん、こんばんは。 「二重協奏曲」は、前に書いた通り 子供の頃から(小学5~6年でしょうか・・)聴いていました。当時は、レコードは中々買えなかったので FM放送をカセットテープに録音して 一生懸命聴いていました。初めて この曲を聴いたのも FMでした。何故か気に入って カラヤン盤を買ったのですが FMで聴いた演奏の方が良かったのでガッカリでした。 その後 フルトヴェングラー、バーンスタイン、ハイティンクのものを聴いていますが やはりフリッチャイの演奏が一番しっくりきます。私は シュタルケルのチェロが好きなので ハイティンク盤も 聴くのですが、 ハイティンクの指揮が どうもねぇ・・・。(笑)

投稿: ヨシツグカ | 2012年11月17日 (土) 22時59分

NYさん、こんばんは。

ワルター盤も昔から定評ありましたね。
残念ですが聴いたことがありません。
フランチェスカッティはとてもファンが多いように思いますが、我が家には何故か縁が薄く、ラロとサン=サーンスぐらいしかありません。
ブラームスもメンデルスゾーンも一度聴いてみたいですね。

投稿: ハルくん | 2012年11月17日 (土) 23時04分

ヨシツグカさん、こんばんは。

カラヤン盤というのはムターとメネセスの独奏のものでしょうか?それなら以前、LPとCDと持っていました。結構気に入っていましたが、今はありません。

フリッチャイ盤がお気に入りというのは自分も同じです。そういえば総じてお互いの好みは似ているようですね。

投稿: ハルくん | 2012年11月18日 (日) 21時31分

ハルくん様

>この曲には幾つも名盤が有るので、この演奏は余り目立たないと思います。

……この曲に限らず、ブラームスの名作はそれこそ星の数ほど録音されていますから、その中で目立つようになるのはとてつもなく大変だと思います。

現在では世界中の演奏家がブラームスを取り上げるわけで、やはりこのことからもブラームスはドイツだけにとどまらない「人類の作曲家」になっているのだと思います。『音楽史の三大B』にふさわしいことだと思いますけれども。

それが証拠に、ハルくん様はこのブログで、その作曲家の国の演奏家の録音を積極的に紹介されてます(また、それが原則となっています)が、ブラームスには当てはまりませんね。
(^^;)

今回のCDの演奏家達に「ドイツっぽさ」はほとんどありません。わずかにヴァイオリンがドイツにゆかりの人ですが、彼のアイデンティティーはユダヤだと思いますので……。

morokomanは実はこの二重協奏曲の全曲を聴いたことは、一度もないのです。第二楽章だけはあるのですが……聴こう聴こうと思っていて、そのままになっているのですよ。

図書館にあると良いのですけど。できればこの演奏で。

投稿: morokoman | 2012年11月18日 (日) 21時59分

ポール・トルトゥリエの名前は、たいへん懐かしい。
東京での大学生時代、東京文化会館へリサイタルを聴きにいったことがあります。
忘れられた存在と思っていたのですが、こうして名前が出て嬉しく思います。

投稿: オペラファン | 2012年11月18日 (日) 22時08分

morokomanさん、こんばんは。

ブラームスはやはり凄いですよ。ワーグナーの新しい音楽がもてはやされていた時代に「旧態依然とした音楽」のように言われていても、現在ではこれほど人気が有るのですからね。

ソリストは必ずしもドイツの演奏家でなくても構わないですが、オケについてはドイツのオケがやはり適していると思いますよ。

この曲は是非、全曲聴かれてください。この演奏でなくても良い演奏は幾らでもありますから。とにかくどの演奏でも。

投稿: ハルくん | 2012年11月18日 (日) 22時53分

オペラファンさん、こんばんは。

トルトゥリエを僕は生では聴いていませんが、とても好きです。フルニエほどの人気は有りませんが、実力は少しも劣らないと思いますね。

投稿: ハルくん | 2012年11月18日 (日) 22時57分

ハルくんさん、こんばんは。 初めて買った 「二重協奏曲」のLPは 仰る通り ムター、メネセスが独奏のカラヤン盤です。聴いた印象は 「なんだかオケの音が鮮明過ぎるな・・・。」と感じました。今思えば、それまで聴いてた FMの演奏(誰の演奏かは 分かりません・・笑)とは違う響きに拒否反応が出たのでしょうね。 カラヤンのドイツ物は 今だに 抵抗がありますし・・・。(笑)

投稿: ヨシツグカ | 2012年11月19日 (月) 00時29分

ヨシツグカさん、こんばんは。

カラヤンのドイツ物って、あんまりドイツっぽくないのですよね。それだから、「新しい音楽」として戦後に大人気が出たのですけど。
じゃロシア物がロシアっぽいかと言うと、そうとも言えないですが。
まぁ、何を演奏してもカラヤンの音楽、ベルリンフィルは華麗な「カラヤンフィル」の響きなのですよね。

投稿: ハルくん | 2012年11月19日 (月) 20時57分

ハルくん様

>ブラームスはやはり凄いですよ。ワーグナーの新しい音楽がもてはやされていた時代に「旧態依然とした音楽」のように言われていても、現在ではこれほど人気が有るのですからね。


全くおっしゃる通りだと思います。しかし、この事実を考えると「新しい音楽」とか「古い音楽」とか言って色分けして、優劣を問う「評価」って、どれだけ意味があるのか考えてしまいます。

morokomanがガキのころ……と言ってもたかだか中学生ぐらいのころから、10~20年前近くの長きにわたって、

      現 代 音 楽

とか言うジャンルが、それこそ共産主義国家の共産党幹部のようにのさばっていました。

12音なんちゃら、偶然性がどうの、とにかく「理論」と言う名の「カッコイイ屁理屈」を振り回して、訳の分からん騒音を「これが最新鋭の音楽だ!」と主張し、かつての音楽を「時代遅れだ」「古臭い」「保守的だ」「つまらない」ものだと散々あざ笑い、攻撃したものです。

さすがに、ブラームスはこの時は畏れ多い存在になってましたから、もっと時代が近い作曲家-我らがシベリウスなど-がその攻撃対象になりました。

ですが、今現在、笑った連中の音楽は見向きもされなくなり、笑われた人たちの音楽を脚光をあびるようになりました。全くありがたいことですね。

結局、その「新しい音楽」とやらは結局なんだったんでしょうかね。人を感動させる才能の無い連中が、本当に才能のある人を侮辱し、やる気をなくさせ、意気消沈させ、彼らが創作をためらっている間に政治力を駆使して楽壇を占拠し、のさばるための方便に過ぎなかったんじゃないかとさえ思えてきます。

ブラームスの音楽が現在でも多くの人々に支持されているのは、やはり「形の古い、新しい」とは全く別の、

   音楽を使って、

   人生における「大切な何か」を

   誰もが理解できる形で表現した


   からなんじゃないかな、と思います。


後期のピアノ小品集など、技術的にはそれほど難しいものでは無いと思いますし、誰もが口ずさめるほど、単純な作品もあります。

ですが、その音楽が表現する世界の奧の深さは計り知れません。

今後は、やはり表現方法の「古い、新しい」ではなく、その音楽の「内容」によって評価がされるべきだと思います。

投稿: morokoman | 2012年11月19日 (月) 22時46分

morokomanさん、こんばんは。

音楽に限らず、芸術は奥が深いですね。
表面的な美しさ、新しさ、珍しさは、一度は目を(耳を)惹きつけますが、いずれ飽きられます。
何事においても「本物」は理解されるのに、たとえ時間がかかったとしても、決して飽きられることはありません。
「本物」とは受け手にとって唯一とは限りませんが、それを見極めようという姿勢は大切だと思います。

投稿: ハルくん | 2012年11月19日 (月) 23時12分

わたしもこの曲は中学生くらいの時代に聴いて心惹かれた記憶がありますが、誰の演奏だったかは定かでありません。ロマン派で複数楽器のための協奏曲って、あとはブルッフ(クラとヴィオラ)くらいしか思いつきませんね。

投稿: かげっち | 2012年11月20日 (火) 13時18分

かげっちさん

ブラームスは「温故知新」を最高に生かした作曲家で、古い形式を使って新鮮な音楽を書きましたね。
着古された古典派の服をリサイクルして、新品のロマン派の服に仕立て直した最高の職人さんでしょう。

投稿: ハルくん | 2012年11月20日 (火) 14時03分

この曲の第2楽章、結婚式の入場曲にしました。
ま、進行形の結婚生活は曲のように甘くはないですけど(笑)。
演奏はザンデルリンクとツェートマイヤー、メセネスでした。

ps
こちらにたどり着いたのはザンデルリンクとルプーの1番の協奏曲の記事からでした。
1番であの演奏を上回るものは想像つきません。

投稿: すーさん | 2012年11月21日 (水) 02時26分

すーさん、はじめまして。

人生の門出でのエピソードをご紹介下さり、誠にありがとうございました。さぞや素晴らしい雰囲気であったかと想像いたします。
実際の結婚生活は1楽章か3楽章というところですね。(笑) まっ、ショスタコ5番のようでなければよろしいのではないかと・・・

ザンデルリンク/ルプーのP協1番は最高ですね。正規盤でないので世に余り知られず残念です。あれを越える演奏は聴いたことが有りませんが、ザンデルリンク/グリモー盤はかなり肉薄していると思います。

よろしければ、また何でもお気軽にコメント下さい。楽しみにお待ちしております。

投稿: ハルくん | 2012年11月21日 (水) 22時27分

いま正にこの作品を聴いています。フリッチャイ指揮、シュナイダーハン、シュタルケル。今日は宵の口から夜中まで不覚にも眠り詮方なく起きております。私には三者三様のようできちんと調和しているこの録音がもっとも好みです。フリッチャイ逝きて五十年。信じ難い思いです。

投稿: 薄暮の旅人 | 2013年4月30日 (火) 02時32分

薄暮の旅人さん、古い記事へ沢山のコメントありがとうございます。大変嬉しく思います。

この曲のフリッチャイ/シュナイダーハン、シュタルケル盤は必ずしもメジャーではありませんが、自分も記事に書きました通り非常に好きな演奏です。
名盤は演奏家の名前や評論家の評価だけでは決してありませんね。つくづくそう感じます。

宜しければまたいつでもお気軽にコメント下さい。楽しみにお待ちしておりますので。

投稿: ハルくん | 2013年4月30日 (火) 22時57分

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