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2012年9月21日 (金)

ブラームス 交響曲全集 エッシェンバッハ/ヒューストン響盤 ~こちらヒューストン~

51tpouw3ykl__ss400_クリストフ・エッシェンバッハ指揮ヒューストン交響楽団(1991~93年録音/EMI Virgin盤)

現代の指揮者は、どうしても仕事量が多く忙し過ぎるために、短時間で仕事をまとめあげる器用な能力が求められます。ひと昔前の巨匠時代の指揮者のように、じっくりゆっくりと時間をかけて自分の音楽を徐々に熟成させてゆくようなタイプは生き残れないでしょう。ですので、どの演奏家も金太郎飴のように何となく似たり寄ったりで、特別な個性の感じられない演奏家が多くなりがちです。ホールで生で聴くのならまだしも、CDを購入して家で聴こうとは中々思えなくなるというのが正直な気持です。

そんな現代の指揮者たちの中で、数少ない個性を持つ人という点で僕が興味を駆り立てられるのは、クリスティアン・ティーレマン、パーヴォ・ヤルヴィ、そしてクリストフ・エッシェンバッハの3人です。少し前まではワレリー・ゲルギエフと小林研一朗が好きでしたが、二人とも最近の活動にはそれほど大きな興味は感じられません。

そのうちのティーレマンとエッシェンバッハには共通点を感じます。二人とも現代流行の古楽器的で速いテンポのスタイルには目もくれずに、かつてのドイツの巨匠時代の重厚長大路線を再現しているように感じるからです。

そして、ワーグナーやブルックナーを得意とするティーレマンにはクナッパーツブッシュを、比較的テンポの変化を自由に行うエッシェンバッハにはフルトヴェングラーを連想させられます。

実は、クリストフ・エッシェンバッハが凄い指揮者だと知ったのは、2005年にサントリーホールでシュレスヴィヒ・ホルシュタイン祝祭管弦楽団を率いて演奏したブラームスの第4交響曲を聴いた時です。アゴーギグを多用した変幻自在なテンポ感を持ち、白熱した演奏が、まるでフルトヴェングラーが現代に蘇ったかのように感じられたのです。それでいてフルトヴェングラーほどには極端で無いので、ロマンティックで充実したブラームスを聴けた喜びで一杯になりました。シュレスヴィヒ・ホルシュタイン祝祭管弦楽団というのは若手演奏家を主体とした臨時編成の団体ですので、技術的には完璧とは言えませんが、エッシェンバッハの音楽を忠実に表現していました。

さて、そのエッシェンバッハが既にブラームスの交響曲全集を1991年から93年にかけてEMIに録音していたのは知っていましたが、オーケストラがアメリカのヒューストン交響楽団だったので、これまで敬遠をしていました。アメリカのオケのブラームスの音には抵抗感が有るからです。ましてやヒューストンというのが興味を損なっていました。「こちらヒューストン」と言えばNASAの通信でお馴染みの言葉ですが、この都市のあるテキサス州には仕事で行ったことがありますが、その土地に似合うのはクラシック音楽ではなく、カントリー&ウエスタンだったからです。

そうは言っても、実演で聴いたブラームスの素晴らしさを知っている者にとっては、やはり聴いてみたいですし、いずれはドイツのオケと再録音する可能性も有るでしょうが、それではいつになるか判らないので、ダメもとで聴いてみました。このCDセットには、4曲のシンフォニーと「ハイドンの主題による変奏曲」「大学祝典序曲」「悲劇的序曲」「アルト・ラプソディ」が収められていて充実しています。

全ての曲を聴いてみて感じるのが、演奏表現の統一性です。基本はゆったりとしたテンポのスケールの大きな表現ですが、微動だにしないイン・テンポで古典的な造形性を強調するという演奏とは異なります。適度なアゴーギグとテンポの流動性を生かしたロマンティックなスタイルです。但し、それは極端な動きでは有りませんので、とても正統的なブラームスを感じさせます。実演で聴いたスタイルとも少々異なる印象です。
1番の第1楽章や終楽章のような速い楽章での充実感も素晴らしいですが、3番の2、3楽章のような緩徐楽章での静けさと美しさも大変なものです。

ヒューストン響で最も印象的なのは弦楽の優秀さです。ヴァイオリンは澄んだ音で良く歌いますし、中低弦の厚みも大したものです。木管群もまずます問題ありません。問題が有るとすれば、やはり予想をしていた金管の音色です。ホルンの音はドイツの渋く深い音とは反対の明るい音色でブラームスには不向きです。但し、管楽の音を浮き立たせるのではなく、あくまでも弦楽の上に柔らかく乗せるというヨーロッパ的にブレンドされた響きです。アメリカのオーケストラから、これほど柔らかい響きを醸し出すというのは、やはりドイツ人であるエッシェンバッハの力でしょう。

それにしてもエッシェンバッハのブラームスは本当に素晴らしい。この人が北ドイツ放送響あたりと再録音を行なってくれたら、何を置いても飛び付きたいと思います。

この4枚組CDは、日本でも再リリースされましたが、旧盤にもかかわらず4000円近くと少々割高です。Virginレーベルの海外盤ならせいぜい元は20ドル程度ですし、自分も中古店で1000円以下で入手しました。東芝は相変わらずこういう、せこい商売を続けているようなのが余り感心できません。

ところで、前述のサントリーホールでの第4番のライブ演奏はヘンスラーからCD化されています。CDで聴くと、どうしてもオケの粗さが感じられてしまい、会場での感動には遠く及びませんが、テンポや表情の変化の大きさはヒューストン響との演奏以上で、非常にドラマティックです。興味をお持ちの方はこちらも是非お聴きになられて下さい。

51zthntyphlクリストフ・エッシェンバッハ指揮シュレスヴィヒ・ホルシュタイン祝祭管弦楽団(2005年録音/ヘンスラー盤)

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コメント

ハルくんさん、こんにちは。 う~ん・・・。アメリカのオケのブラームスですか・・・。 実は、中学生の頃 いつも行っていたレコード店の店長さんの薦めで買った ショルティ/シカゴ響の「ブラ1」にがっかりして以来 アメリカのブラームスには違和感を持つようになってしまいました。(ワルターでもダメでした・・・) ですので エッシェンバッハには 是非ドイツのオケで再録してもらいたいです。(SKDやMPOだったら最高ですね。)

投稿: ヨシツグカ | 2012年9月23日 (日) 11時50分

ヨシツグカさん、こんばんは。

ショルティのブラームスは聴いたことが有りませんが、ワルターでもコロムビア響の1番、4番に限ってはオーケストラの明るい音色にもかかわらず音楽性が素晴らしいと思います。(世評の高いモノラル録音のNYPとの2番は全く好みませんが)

本場もの嗜好が人一倍の僕でも、このエッシェンバッハの造り出す音楽の深みとオケの響きの柔らかさには惹きつけられました。もちろんドイツのオケを指揮してくれれば、それいじょうの結果が出るのは明らかです。

投稿: ハルくん | 2012年9月23日 (日) 21時11分

 ハルくんさん、こんばんは。コメントではお久しぶりです。
 ブラームスを聴きたくなる季節になりましたね。エッシェンバッハのブラームスは聴いたことがありませんが、ピアニストとしての彼の演奏は素晴らしいと思います。先日もタワーレコードでシューベルトの即興曲集を購入し、ダークネスな演奏内容に戦慄したばかりです(笑)。
 確かにアメリカのオケというのが気になるところではありますが、金管を「弦楽の上に柔らかく乗せるというヨーロッパ的にブレンドされた響き」という文を読んで心を惹かれました。たまにはアメリカのブラームスもいいかもしれません。
 それにしても、エッシェンバッハはアメリカのオケを多く振っている印象があります(私だけでしょうか?)。ハルくんさんのおっしゃる通り、もっとヨーロッパ(特にドイツ)のオケを振ってほしい指揮者ですね。

投稿: ぴあの・ぴあの | 2014年11月 6日 (木) 23時49分

ぴあの・ぴあのさん、こんばんは。
久々に頂くコメント嬉しく思います。

エッシェンバッハのピアノは凄いですね。でも、あの凄さは単に”ピアニスト”としてではなく、元々持っている音楽が凄いのだと思います。なので指揮をしても同じように凄さを感じてしまいます。
アメリカでの活躍が多いのは事実です。古きドイツロマン派の生き残りのようなこの人をアメリカに流失(!)させるのは実に惜しいです。
希少な存在という点ではティーレマン以上だと思います。

投稿: ハルくん | 2014年11月 7日 (金) 23時28分

http://www4.nhk.or.jp/ongakukan/

11/12エッシェンバッハで3&2です。

投稿: 影の王子 | 2017年10月29日 (日) 08時42分

影の王子さん、こんにちは。

ありがとうございます。楽しみですね!
今回は1番、4番も指揮しているのでは無かったですかね?

私は年末のエッシェンバッハ/N響の第九を聴きに行きますが、サントリーホールのチケットを購入できたのでとても楽しみです。

投稿: ハルくん | 2017年10月30日 (月) 12時34分

こんばんは。

HPではまだUPされてませんが、文からすると
翌週に1&4も放送みたいですね。

大晦日の第9の放送はおそらくエッシェンバッハでしょう。
これも楽しみですね。

ショルティ、バレンボイム、アシュケナージ・・・と
「ピアニストから指揮するようになった」指揮者たち
の演奏に感心しなかった(協奏曲の弾き振りは別)ので
指揮者エッシェンバッハをまだ聴いたことがないのです。
今回はじっくりと聴かせていただきます!

投稿: 影の王子 | 2017年10月30日 (月) 20時54分

こんばんは!

昨夜の放送から「第3」を聴きました。
大好きな曲なので、期待が大き過ぎたのか?
第1楽章はやや座りの悪さを覚えましたが
第2楽章以降はそれがすっかりなくなり
音楽が心に染みてきます。
ビックリしたのは第3楽章です!
ゆったりとしたテンポでじっくりと歌うのですが
そこにわざとらしさをまったく感じません。
聴きなれた名旋律がなんと胸を打つのでしょうか!
もしかしたら、この第3楽章は
過去に聴いた中で最高かも知れません!
終楽章コーダを余韻を持って終わらせ、見事に締めくくりました
(相変わらずの「速い」拍手に(怒))。

【感想】エッシェンバッハって凄ぇな!

もったいないので「第2」は楽しみにとっておきます。

しかし、おかしいなぁ?なんだか女性奏者がやたらと多い気がしたのですが?しかもみな美人揃い・・・

投稿: 影の王子 | 2017年11月13日 (月) 22時23分

影の王子さん、こんにちは。

エッシェンバッハのブラームスは素晴らしかったですね。しり上がりに良くなっていったようで、3番の前半よりも後半、3番よりも2番が更に良かったように感じました。

小粒で器用な指揮者が幅を利かせる時代にこういう音楽を聴かせてくれる指揮者が居るのは本当に嬉しいです。でもこの人が居なくなった先は・・・・

N響にも女流奏者が増えましたね。まぁ、これは世界的な流れですのでね。

投稿: ハルくん | 2017年11月14日 (火) 12時31分

返信ありがとうございます。

厚かましいお願いですが、相談があります。

http://www.collegium.or.jp/html/vespro2017.html

これは聴くべきでしょうか?
まだ一度も聴いたことが無いので、CDでの「予習」が必要ですが。
いずみホールなので、対訳が電光掲示板で出ると思います。

今年は一度もコンサートに行っていないので
せめて1回はと思っています。

投稿: 影の王子 | 2017年11月14日 (火) 17時34分

影の王子さん、こんにちは。

聴くべきかどうかと聞かれれば「絶対に聞くべきです!」としか御答えようが有りません。
これは西洋音楽史上に燦然と輝く極めて重要な作品ですから。
好みの問題を越えてぜひ一度はお聴きになられてみてはいかがでしょうか?

投稿: ハルくん | 2017年11月15日 (水) 11時08分

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