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2012年6月 7日 (木)

パーヴォ・ヤルヴィ/フランクフルト放送交響楽団 来日公演 マーラー交響曲第5番

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昨夜はパーヴォ・ヤルヴィとフランクフルト放送響のコンサートを聴きに行きました。このコンビの生演奏を聴くのは2008年以来ですので、4年ぶりです。前回はマーラーの最高傑作、交響曲第9番でしたが、今回は同じマーラーの第5番。非常に好きな曲です。

第9番の演奏は、案外とスタイリッシュで、感情にどっぷり浸りきるとか、爆演とかいうタイプでは無かったように記憶しています。熱演でしたが、正攻法でマーラーの音楽の味わいや深さを充分に感じさせてくれる、とても素晴らしい演奏でした。

今回の来日では、ブルックナー8番と、マーラー5番という二つのプログラムが用意されていましたが、僕は迷うことなくマーラーのほうを聴きに行くことにしました。マラ5の生演奏と言うと、随分以前にコバケンが読響に客演したときに、同じサントリーで聴いたのですが、充実した響きでドラマティックなマーラーを堪能できた素晴らしい演奏でした。今回はそれ以上に感動出来れば良いなと思いつつ、会場に足を運びました。

前プロはリストのピアノ協奏曲第1番です。ピアノ独奏は、アリス=沙良・オット。彼女は23歳の日系ドイツ人ですが、まるで「不思議の国のアリス」みたいに可憐な美少女です。日系なので小柄ですし、長い黒髪が揺れてとても素敵です。自分にとっては娘の世代になりますが、胸が熱くときめきます。演奏?あー、耳に入らなかった・・・というわけではありません。(笑) 音量は比較的小さめで、豪快なヴィルティオーゾ風のリストではありません。そういうリストを求めると物足りなく感じられたかもしれません。彼女自身のように美しく可憐なリスト、そんな印象です。アンコールは「ラ・カンパネラ」とブラームスの「ワルツ第3番」。良い曲目構成で楽しめました。

さて、肝心のマーラーですが、これは凄かった!と言っても、ユダヤ風の濃い情念はそれほど感じさせませんし、バーンスタインのような巨大なスケールというわけではありません。テンポは中庸だと思います。リズムの刻み、念押しが強く、アウフタクトはこれでもかと強調されます。フォルテの音は明確ですが、金管にうるさくなるほどの強奏はさせません。逆に弦楽、特に低弦のパワフルさには圧倒されました。第1楽章では幾らか抑え気味の印象でしたが、彫の深さと表現力の豊かさには驚かされました。第2楽章では、いよいよエンジン全開です。パーヴォが体全体で指揮して、嵐の海で大波が揺れるような凄まじい演奏でした。マーラーの音楽を聴く喜びに体が震えました。第3楽章スケルツォも非常に振幅の大きな演奏です。この楽章のみ、ホルンの主席が、舞台上の反対側右奥に一人移って、スタンドしたままソロを吹きましたが、これはパーヴォのアイディアでしょう。主席の演奏も素晴らしく、さしずめホルン協奏曲のような大活躍で印象的でした。第4楽章のアダージョでは、旋律をしっかりと聴かせて美しい響きで勝負するような印象でした。消え入るような弱音で旋律が聞えないというのとは違います。テンポはやや速めでしたので、個人的な好みでは、もう少し遅く指揮して欲しかったです。第5楽章では、明るく解放された音楽が壮麗に鳴り渡りました。決して爆演ではなく、パーヴォが緻密にコントロールしている印象です。でもオーケストラは大熱演ですし、終結部のたたみかける迫力は物凄かったです。この曲を何度聴いていても、興奮させられました。全体として、マーラーファンにとってはこたえられないほどに聴きごたえのある演奏でした。もちろん演奏後の拍手とブラボーは凄かったです。

アンコールは、ドイツのオーケストラの定番のブラームス「ハンガリア舞曲」から、「第5番」です。変幻自在の極みで、魔法のような指揮ぶりの演奏でした。2曲目の「第6番」では、強靭なリズムと、その合間の美しく繊細な歌わせ方が、普段聴いているこの曲とはまるで違う曲のように感じられました。まぁ楽しいこと、この上ありません。

ということで、パーヴォの指揮者としての力量と才能が、とてつもないことが思い知らされました。これほどの表現力を持つ指揮者が他にどれだけいるかと考えても、余り思いつきません。現在、ティーレマンと並んで最も注目すべき指揮者ではないでしょうか。そんなの当たり前?こりゃまた失礼致しました。

尚、翌日7日のブルックナーの演奏についてはsaraiさんが、鑑賞記を詳しく書かれています(こちらへ)。

<参考過去記事>
マーラー 交響曲第5番 名盤

パーヴォ・ヤルヴィのマーラー交響曲第2番「復活」

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マーラー(交響曲第5番~7番)」カテゴリの記事

コメント

はじめまして。
ハルくんさんのブログはいつも興味深く読ませて頂いています。
ヤルヴィのマーラー、私は名古屋で聴きました。本当に素晴らしかったですね。興奮しました(笑)

投稿: Masa | 2012年6月 8日 (金) 09時15分

パーヴォの指揮ならマラ5聴いてみたいですね。前プロに協奏曲を持ってきたんですね、サラは日本の聴衆へのサービスという要素もあるのでしょうが、読んでいて聴きたくなりました。

投稿: かげっち | 2012年6月 8日 (金) 12時44分

Masaさん、はじめまして。
コメントを頂きまして誠にありがとうございます。大変嬉しく思います。

ヤルヴィのマラ5を名古屋でお聴きになられたのですね。この人のマーラーはやはり凄いと思います。何年か後にまた来たら是非とも聴きに行きたいです。今から楽しみですね。

投稿: ハルくん | 2012年6月 8日 (金) 23時10分

かげっちさん、こんにちは。

パーヴォのレパートリー全てを気に入るかどうかは別としても、この人はやはり凄い指揮者だと思います。表現力が半端無いです。ある意味カルロス・クライバーよりも凄いかもしれません。

アリスは可愛いですよ~。一見の価値ありです。おかげで、おじさんは若返りました。(笑)

投稿: ハルくん | 2012年6月 8日 (金) 23時29分

ハルくんさん、当ブログに早々とお越しいただき、ありがとうございました。

ハルくんさんがそんなに激賞するとは余程のことですね。ヒラリー・ハーンとの組み合わせがマーラーだったらよかったのですが残念です。
アリスもお気に召したようですね。そのうちに聴きに行ってみましょう。人気があるので、すぐに来日するでしょうね。

ところで、ブログにも書きましたが、チェリビダッケのリスボン・ライブと東京ライブ聴いて、魂を揺さぶられました。特にリスボン・ライブは臨場感のある録音(これで海賊版?)で生聴き同様に感動しました。東京ライブも演奏自体はリスボン・ライブ以上かもしれません。NHKの録音は綺麗ですが、臨場感には欠けました。
8番以外も聴きたいのですが、ハルくんさんのご推薦は何番ですか?(お好みでないとしても)

投稿: sarai | 2012年6月 9日 (土) 00時15分

ハルくんさんたいへんお久しぶりでございます。
パーヴォのマラ5、札幌でも公演があったようですが僕は行けませんでした。残念。ハルくんさんの文面から、いかに素晴らしい演奏であったかがうかがいしれて、僕も聴きたかった、と慚愧に堪えません。
最近、テンシュテットのマラ5をダウンロードで手に入れまして、よく聴いております。マラ5は7枚目ですが、やっとバーンスタイン盤に匹敵する、立派な演奏のものに出会えました。(ハルくんさんはどう思われるか…)それにつけてもパーヴォの公演、聴きたかったなあ…

投稿: sasa yo | 2012年6月 9日 (土) 08時14分

saraiさん、こんにちは。

チェリビダッケの8番の東京ライブは購入していません。リスボンで、まあ良いかなと思っています。海賊盤でもマスターが元になっているものは良い音がしますね。大抵の場合、余計なマスタリングをしないので、生の会場で聴く臨場感が有ります。

チェリビダッケのブルックナーはどれも同じスタイルなので、お好きな曲を聴かれると良いと思いますよ。ちなみに、EMIから廉価Boxが出ていますので、購入がしやすいです。ミュンヘンフィルとの3,4,5,6,7,8,9番が全て入っています。

投稿: ハルくん | 2012年6月 9日 (土) 15時36分

sasa yoさん、こんにちは。
ご無沙汰しましたが、お元気そうで何よりです。

札幌でも演奏会が開かれたのですね。それは残念でしたね。

テンシュテットのマラ5は僕もバーンスタインの次に好きです。本当は手兵のロンドン・フィルではなくコンセルトへボウとの演奏が好きなのですが、残念ながら正規盤はボックスのみで単品では出ていません。海賊盤でも良さが分かるので、正規盤の単品発売に期待しています。

投稿: ハルくん | 2012年6月 9日 (土) 15時43分

ハルくんさんはじめまして。たかと申します。

私もこのコンサート聴きました。3楽章のホルンオブリガートを右奥で吹かせたのは素晴らしいアイディアですね。

私のブログに書いたのですが、昨年の地元でのコンサートではラトルのように指揮台のそばで吹かせています。私はこの方法はイマイチだと思います。

私のブログのアドレスを書いておきますのでもしよろしかったらご意見をお聞かせ下さい。

ちなみにコンサート指揮者としてはティーレマンよりヤルヴィの方が全然良いと私は思います。

投稿: たか | 2012年6月 9日 (土) 18時05分

たかさん、はじめまして。コメントを頂きまして大変ありがとうございます。

さっそくブログを拝見させていただきました。
3楽章の第1ホルンの扱いについて詳しく解説されていて感心しました。実は僕はP席で聴いたために、ホルンのステレオ効果は分かったものの、第1ホルンの音量が大きく聞こえ過ぎてバランスを損ねていました。ステージ正面側で聴けば完璧でしょうね。パーヴォのアイディアには拍手です。

ティーレマンは遅いテンポでスケールの大きな昔風のカぺルマイスターですし、パーヴォはアイディアと表現力、オケの統率力が抜群です。コンサート指揮者としてもタイプが異なるので、比較は難しいですが、今回のコンサートを聴いてパーヴォの実力が途方もないことが理解できました。前回のマラ9の時はここまでは思いませんでした。

投稿: ハルくん | 2012年6月 9日 (土) 19時14分

私もパーヴォがこんなに良い指揮者になっていたとは最近まで気がつきませんでした。前回も聴いた人の評判をネットでいくつか見ましたが、前回のマラ9は今回ほど良くなかったようですね。

ゲルギエフのように売れるとダメになってしまう指揮者の方が圧倒的に多いのにパーヴォは大したものです。

ティーレマンのベートーヴェン全集はかなりがっかりではないでしょうか? 彼はオペラの方が私にはしっくりきます。

投稿: たか | 2012年6月 9日 (土) 20時20分

こんばんは、ハルくん様。文面から素晴らしいコンサートだった事が手に取る様に分かります。沙良ちゃん可愛いですよね。昨年か一昨年か、リストの超絶技巧練習曲集をジャケ買いしちゃいましたよ。小菅優さん盤も持っていますが、正直あまりピンとこなかったです。沙良ちゃんの方が好みかなぁ。凄い演奏家なんだろうけど好きな演奏家じゃないってありませんか?私には、ピアニストだと不二子ヘミングや丸田アルゲリッチ。チェリストの密者マイスキー(これじゃほぼ実名…)がそうなんです。ファンの方ごめんなさい。

投稿: from Seiko | 2012年6月 9日 (土) 21時18分

不二子さんは好きではないです。
うちの嫁も許せないピアニストと言ってます。

投稿: sasa yo | 2012年6月 9日 (土) 21時32分

ハルくんさん、はじめまして。千里と申します。
たかさんのblog経由でコメントさせて頂きます☆
私もこの演奏会に行ったのですが、とんでもなく素晴らしいマラ5でしたよね。
今度は、ヤルヴィ&パリ管でシベリウスあたり聴いてみたいのですが...
それから前プロの紗良・オットも良かったです! ダイナミックに、意志の強さを感じさせる弾き方だけど、音はとても優しかった。

投稿: 千里 | 2012年6月 9日 (土) 22時11分

たかさん、トラックバック頂きありがとうございます。

前回のマラ9も素晴らしかったですよ。ですので今回もマーラーを聴きたいと思ったぐらいです。でも今回の5番は演奏としては、明らかに前回を超えていました。

ゲルギエフは僕も数年前は最も好きな指揮者でしたが、最近は興味が薄れています。ダメかどうかは余り聴いていないので分かりませんけれども。

ティーレマンのベートーヴェン全集は、部分的には不満足のところも有りますが、全集としては非常に気に入っていますよ。今どき、あんな前時代的な演奏をしてくれる人は見当たりません。そこが好きなんです。オペラは元々オペラハウス出身ですからね。素晴らしいです。

投稿: ハルくん | 2012年6月 9日 (土) 23時05分

Seikoさん、こんばんは。

演奏家にピンと来るか来ないかは、みなそれぞれの自分の感性に合うかどうかですよね。
ですので、それで良いと思います。

不二子さん、最近の丸田さん、密者さん、僕も余り好んでいませんよ。指揮者で大人気の西門裸戸留さん、茶道豊さんも実は余り好きではありません。全て個人的な好みです。

投稿: ハルくん | 2012年6月 9日 (土) 23時25分

sasa yoさん、不二子さんにピンと来ない方は多いみたいです。マスメディアが作った人気だからかもしれませんね。でも、奥様が「許せない」とおっしゃる意味を詳しく聞いてみたいです。

投稿: ハルくん | 2012年6月 9日 (土) 23時27分

千里さん、コメントを頂きましてありがとうございます。とても嬉しく思います。

パーヴォのマラ5は本当に素晴らしかったですね。終演後のスタンディングオベーションが物語っていました。

パーヴォのシベリウスは是非聴いてみたいです。お父さんのネーメ・ヤルヴィとエーテボリ響のシベリウスは生で聴きましたが最高でした。

紗良・オットさんも良かったです。ああいうリストは逆に好感が持てますね。

投稿: ハルくん | 2012年6月 9日 (土) 23時34分

許せない、とはとても過ぎた表現であったことをまずお詫び申し上げます。
とても個人的なことですが、嫁は、2歳の頃からスパルタでピアノを教わり、音大目指してショパンのエチュードを猛練習したような人間であります。
自慢ではなく、学生時代はコンクールの優勝歴もあり、「ピアノとは泣きながら練習するものだ」と厳しく思っていたそうです。「許せない」については、技術的な部分でのところで嫁が個人的にそう思ったようです。
多くの方々に不快な思いをさせてしまったことを、この場を借りて深くお詫び申し上げます。
どうかお許しください。

投稿: sasa yo | 2012年6月10日 (日) 00時10分

sasa yoさん、失礼しました。

ピアノを専門に練習した方であればこそのお気持ちなのは理解ができます。あの人が技術的に上手でないのはピアノのしろうとでも感じます。ただ、「下手でも好き」という方が多くいらっしゃるのは事実でしょうね。ファンというのは好きな理由は何でも良いんですよ。
下手な演奏家が好きでも、弱い野球チームが好きでも、全て自由です。
不二子さんのファンを馬鹿にしたりとかは絶対にしませんし、してはならないことです。

sasa yoさんのコメントには何の問題も有りませんのでご安心ください。

投稿: ハルくん | 2012年6月10日 (日) 00時23分

不二子さんについては、ご指摘のように、マスメディアの盛り上がりがあまりに大きく、嫁としては、腑に落ちないところがあったようです。
もっと実力があり、地道に活動しながらも脚光を浴びないピアニストを嫁も知っているからです。
しかし、許せない、というのは言葉が適切ではなく、重ねてお詫び申し上げます。

投稿: sasa yo | 2012年6月10日 (日) 00時29分

こんばんは、ハル様。先日のコメントでアリス紗良オットさんの紗を沙と間違って変換していました。失礼しました。
ここのところ、攻撃的なコメントを書かれている御仁がおられますが、ハル様はその様な方にも紳士的に対応されて、立派な姿勢に頭が下がります。私などは、そんな輩のコメントなんぞ無視して放っておくか削除してしまえば良いのにと思ってしまいますが、ハル様はちゃんと冷静に返答なさいますもの。とは言うものの、自分は正しいと声高に叫ぶ数名の御仁方。もうこれでお仕舞いにしませんか。楽しい筈のこの場が楽しくなくなってしまうので。私ごとき知識も教養もない者が何を生意気な事をと思いますが、あまりに度が過ぎると思います。ハル様が前に「キライキライも好きのうち」と言っておられましたが、多分この方々は本当は「ハルくんの音楽日記」が大好きな人たちなんだろうと思いますね。

投稿: from Seiko | 2012年6月13日 (水) 01時14分

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マーラー:交響曲第5番 パーヴォ・ヤルヴィ指揮フランクフルト放送響  何とか時間が取れたので6月6日のヤルヴィ/フランクフルト放送響のマラ5を聴いてきた。この組み合わせは4年前にも来日し、その時は9番を演奏したそうだ。できれば2番か3番、もし合唱が準備できなければ6番か7番あたりを聴きたかった。5番や1番はさまになりやすい曲なので、インバル時代からマーラーを熟知しているオケをヤルヴィほどの実力者が振れば良い演奏にならないはずがないのだ。なので、生ヤルヴィをサントリーホールで一度聴いて..... [続きを読む]

受信: 2012年6月 9日 (土) 20時22分

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