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2012年6月15日 (金)

ショパン 「24の前奏曲」(プレリュード)op.28 名盤

Chopin
ヴァルデモサの修道院

「24の前奏曲(プレリュード)」作品28は、ショパンがパリでジョルジュ・サンドと知り合い、親しくなっていった頃の約3年に渡って作曲されました。サンドがショパンの病気を心配して、療養のために二人でスペインのマジョルカ島に渡ります。けれども、ショパンの肺結核の病気が島の人々に怖がられてしまったために、二人は人里から遠く離れたヴァルデモサにある修道院に移らざるを得ませんでした。ショパンは、ここでピアノを弾き、「24の前奏曲」を完成させたのです。

ショパンがバッハの「平均律クラヴィーア集」を、座右の曲として弾いていて、この「24の前奏曲」作曲のヒントとなったことは良く知られています。全て(24)の調に対して1曲づつ曲を作ったのですが、ハ長調(第1番)とイ短調(第2番)の平行調をスタートとして、完全五度づつ上昇して全ての調を一巡するというユニークな配列(いわゆる五度循環方式)をとっているために、全体が見事な統一感を持っています。3年の間に別々に書かれた、短く性格の異なる曲たちが、全く違和感を感じることなく、自然に流れゆく川のように移りゆくのには感嘆します。

24曲の中では、やはり第15番変ニ長調「雨だれ」が印象的です。初めから絶え間なく続く同じ音「ラ♭」が雨だれに聞こえるので、この呼び名が付きました。曲は刻々と表情を変えて行きますが、この音だけが変わらずにいつまでも続きます。天才的なアイディアの傑作だと思います。

続く第16番変ロ長調も印象的です。速いプレストですので、出来るだけ速く、かつ音を明確に弾き切れるかが勝負です。

第4番ホ短調ラルゴはメランコリックな曲ですが、ショパンが亡くなった時にパリのマドレーヌ寺院で行われた葬儀でオルガンで奏されたそうです。

他のどの曲もショパンらしい詩情に溢れた美しい名曲ばかりですが、それぞれの曲を個別に聴こうとは、まず思いません。多くのピアニストのリサイタルでも「雨だれ」以外の曲は、単独で弾かれることは少ないようです。やはり全曲を通して、はじめて真価を発揮する曲集なのでしょう。ショパンの曲では、ピアノ・ソナタの2番、3番を最も好んではいますが、最高傑作としては「24の前奏曲」だという気がします。

それでは僕の愛聴盤のご紹介です。

51bxstk1ael__sl500_aa300_アルフレッド・コルトー(1926年録音/NAXOS盤) コルトーは1933年にも再録音を行なっていますが、これはEMIへの最初の録音をSP盤から板起こししたものです。当然ながら音は非常に古めかしいです。コルトー全盛期ですから、自由自在の表現と引き締まった演奏に高い評価を与える人も居ますが、音楽そのものの深さとしては、僕は晩年の演奏の方が遥かに優れていると思っています。ですので、僕にとっては名ピアニストの遺産としての価値に留まっています。

941アルフレッド・コルトー(1955年録音/ARCHIPEL盤) 同じコルトーでも最晩年の演奏です。クレジットにはミュンヘンでのライブ録音と有ります。EMIにもスタジオ録音を2度行っていますし、コルトー得意のレパートリーだったのではないでしょうか。ですので、演奏に余り衰えを感じません。ミスタッチも少なめです。何と言っても、詩情の豊かさが抜群ですし、演奏の味わいの濃さと音楽の深みは圧倒的です。音質も明瞭ですので、コルトーの代表盤の一つに上げたいと思います。本当に素晴らしいショパンです。

Chopin91o5luzivfl_sl1500_ サンソン・フランソワ(1959年録音/EMI盤) フランソワは好きなピアニストですし、特にドヴュッシーは絶品でした。ショパンに関しては以前は「クセがある」という否定的な評をよく見かけましたが、決してそんなことはありません。確かに伝統的でオーソドックスなショパンとは違うかもしれませんが、この人特有の閃きで音楽の持つ魅力を掘り起こして行きます。大げさに見栄を切ったりしませんが、至る所のニュアンスの変化が本当に洒落ています。EMIの録音は余りパリッとせずに、年代を考慮しても優秀とは言い難いのはやや残念です。

20101028103130db8マウリツィオ・ポリーニ(1974年録音/グラモフォン盤) ポリーニに一番適しているのは「練習曲集」だと思います。感情に溺れず、どの曲でもカッチリと演奏するスタイルは「前奏曲」の場合には、幾らか面白みに欠ける気がします。そうは言っても、決して情緒に欠けているわけではありませんし、これだけ曲そのものを大げさにならずに端正に聞かせることの出来るピアニストは、すぐに思いつきません。やはりこれも、ポリーニの残した名盤だと言って構わないと思います。

F4db9736 マルタ・アルゲリッチ(1977年録音/グラモフォン盤) どの曲でも彼女にしては、あっさりと一筆書きのように弾いているので、後年の味の濃い演奏が好きな人には、物足りないと思います。でも僕は結構気に入っています。頭で余り余計な事を考えずに、感性だけで弾いているのが好きなのですね。それでもピアノタッチは冴えていますし、ニュアンスが豊かで情緒を一杯に感じられるのが素晴らしいです。なお、第16曲プレスト・コン・フォートでは超快速で何と1分を切っています。キーシンでもジャスト1分ですので、恐らく彼女が最速なのではないでしょうか。

Chopin61fpgvjzml_sx355_ イーヴォ・ポゴレリチ(1989年録音/グラモフォン盤) ポゴレリチの魅力全開のユニークな演奏です。特徴は緩徐曲の非常な遅さであり、どこまでも深く沈みこむようです。しかしそこに演出臭さやあざとさが感じられることはありません。これはやはりポゴレリチの心から生まれた音楽表現だからに他なりません。急速な楽章についても速さで押切るようなことはなく、むしろじっくりと聴かせる印象を受けます。これは決して奇異な演奏でもなんでもなく、それはまるで熟達の巨匠の手によるかのような恐ろしく深みのある演奏です。

Chopin51iild0phl__sx425_ スタニスラフ・ブーニン(1990年録音/EMI盤) 豊かな表現力と安定したテクニックで、どの曲もじっくりと仕上げられています。そしてショパンのロマンティシズムがたっぷりと感じられるのが大きな魅力です。ここにはハッとさせるような奇抜さやスリル感こそ余り有りませんが、音楽に真摯に向き合う姿は大変好感の持てるものです。落ち着いてプレリュード集を聴きたいときには最適な演奏だと思います。

865グリゴリー・ソコロフ(1990年録音/NAIVE盤) 素晴らしく聴きごたえのある演奏です。短い一曲一曲を遅めのテンポとルバートで表情豊かに奏でます。弱音のデリカシーには胸を打たれますし、強音の力強さと迫力にも圧倒される思いです。これだけ譜読みの深さと表現力を持つピアニストは余り思い当たりません。しかも、上手いピアニストに往々に感じる「あざとさ」とはまるで無縁なのも凄いです。全体を通して聴いて、この作品がこれほど偉大で巨大に感じられたのは初めてです。この人の「葬送ソナタ」では、完成度が僅かに不足しているかなと感じましたが、「前奏曲集」には、文句の付けようが有りません。

51xcxnjhaql__sl500_aa300_ ニキタ・マガロフ(1991年録音/DENON盤) マガロフが80歳で亡くなる前年のライブです。会場は東京の江戸川文化センターです。いかにも大家の晩年らしく、全体的におおらかでゆったりと構えた印象です。奇をてらった表現は無く、若い演奏家のような挑戦的、刺激的な演奏とは、まるでかけ離れています。ピアノタッチが美しく、端正な音ですが美しいです。フォルテの打鍵は、力みのない伸びのある音で快感です。

Chopin41x3hxn1sdl ウラージミル・アシュケナージ(1992年録音/DECCA盤) いかにもこの人らしいクセの全く感じられない演奏です。優等生的とも言えるでしょうし、音大生がお手本にするにはうってつけだと思います。といって無味乾燥なわけでも無いですし、とても美しく聴かせてくれます。けれどもそこにはハッとするようなスリリングな緊張感は有りません。このピアノの詩人の最高傑作がこのように聞かされて良いものだろうかと考えると聴き終わった後にはやはり物足りなさが残ってしまうのです。

Chopin51rn1ybqwdl シプリアン・カツァリス(1992年録音/SONY盤) テルデックからソニーに移籍して2枚目のディスクですので正に絶頂期の録音です。とにかく余りあるテクニックを使ってどんな風にも弾けてしまうという印象です。普通は目立たない多くの伴奏音型が新しい命を与えられたかのように自己主張しています。聴いていて面白いことこの上ありません。但しこの演奏はショパンの語りには感じられず、演奏者カツァリスがどうしても前面に現れてしまいます。そこが好悪の大きな分かれ道だと思います。

Chopin_kissin エフゲニ・キーシン(1999年録音/RCA盤) テクニックは完璧、ピアニスティックな意味では最高レベルだと思います。音の粒だちや、リズムには曖昧な部分が少しも有りません。但し、僕はそこに逆に窮屈な印象を受けてしまうのですね。あくまでも好き嫌いの問題です。第16曲プレスト・コン・フォートはジャスト1分。アルゲリッチが暴走気味に聞こえるのに、キーシンはきっちり制御されている印象です。それでも速やっ!

Chopin710anlu28ql__sl1103_ ラファル・ブレハッチ(2007年録音/グラモフォン盤) ショパンの祖国ポーランドから生まれた新世代の名ピアニストも目を見張るテクニックで全曲を弾き上げます。これはキーシンとも共通するのですが、一音一音が余りに明晰な為に逆に聴いていて窮屈な印象を与えてしまい、音楽に浸リ切って酔うことが出来ません。それは何もピアニストに限らず現代の演奏家に共通した不満かもしれません。しかし音楽は実に立派ですし、緊張感あふれる音はやはり凄いと思います。聴きごたえは充分過ぎます!

ということで、僕にとってはアルフレッド・コルトーの1955年録音盤とグリゴリー・ソコロフ盤、それにイーヴォ・ポゴレリチ盤の三つが群を抜いています。更に次点を選ぶとすれば、アルゲリッチ盤に惹かれます。

本当は、どうしても聴いてみたかったのがホロヴィッツです。しかし、残念なことに録音を残してはくれませんでした。今後の録音に期待しているのは、ルイサダとツィマーマンです。

<補足>後からブーニン、アシュケナージ、カツァリス、ブレハッチを追加しました。

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コメント

ハルくんさん、こんにちは。 ショパンの作品の中では やはり 24の前奏曲が好きですね。あとは 夜想曲とポロネーズを良く聴きます。前奏曲のCDは コルトーの 33年盤と55年盤が素晴らしいと思います。現役のピアニストでは ピリスの演奏が好きですね。

投稿: ヨシツグカ | 2012年6月16日 (土) 11時47分

 こんにちわ。

24の前奏曲は、貴方のCDと同じニキタ・マガロフ(1991年のライヴ録音)でピアノ・ソナタ第3番とのカップリングで聴いてます。
その中でも「雨だれ」が一番の好みです。7番のイ長調も胃薬のCMで耳に残り親しみがあります。
全ての調を一巡させていたとは気がつきませんでした。
それを何事もないように作曲しちゃうなんて、なんともニクイ方ですね。
カップリングのピアノ・ソナタ第3番もさらっとしていて好印象でした。

投稿: たつ | 2012年6月16日 (土) 21時37分

ヨシツグカさん、こんにちは。

やはりコルトーがお好きなのですね。この人以外では、まず聴くことが出来ない素晴らしい演奏ですよね。

ピリスのものは聴いていません。聴いてみたいですね。
どうもありがとうございます。

投稿: ハルくん | 2012年6月17日 (日) 09時55分

たつさん、こんにちは。

各曲の配列は素晴らしいアイディアですね。絶妙だと思います。

マガロフの演奏はベテランの余裕が感じられてとても良いですね。ソナタの演奏ももちろん好きですよ。

投稿: ハルくん | 2012年6月17日 (日) 10時05分

アルゲリッチの録音はこれ以上のものはないと思わせるほどすごいと思います。若かったからでしょうか、それぞれの曲の描写はまさに一筆書きのようですね。私は個々の曲を分割して聴くのが好きなのですが、この録音ではたしかに全体がつながって聴こえます。終曲24番の演奏でこれ以上のものはなかなか出ないのではないかなあと思ってます。

投稿: NY | 2012年6月26日 (火) 08時23分

NYさん、こんにちは。

僕はアルゲリッチの一番好きな時期ってこの70年代の頃なのです。後年ほどわざとらしく無く、純粋に才気のほとばしりを感じるからです。
そうなんですよね。この演奏で聴くと本当に全体がつながっているように感じられて、あっという間に聴き終えてしまいます。次から次へと聴かせようというのが、ショパンの狙いだったのではないかなぁと思いますね。

終曲の24番を改めて聴いてみました。確かにこの曲ではアルゲリッチは誰よりもアパッショナートですね。グリゴリー・ソコロフがもっと大きな波に揺すられるような気分にさせてくれますが、激しいのはやはりアルゲリッチです。


投稿: ハルくん | 2012年6月26日 (火) 22時48分

こんばんは。
ラヴェル/夜のガスパールでフランソワを知って大愛聴盤となり、ノクターン目当てで所有、前奏曲は未聴だったので聴きました。

>この演奏も、これだけを聴いていれば決して悪くはありませんが、他の好きな演奏と比べると、少々影が薄く感じられます。

確かに録音もスゴく良い訳ではないですし、コルトーを探します。

投稿: source man | 2012年10月 1日 (月) 20時41分

source manさん、こんばんは。

フランソワは好きですし、ラヴェル、ドヴュッシーは最高だと思うのですが、ショパンは正直いま一つだと思っています。

コルトーは聴き手によって受け止め方が全く異なると思いますが、ツボにハマった人にとってはホロヴィッツ以上かと。是非聴いてみてください。

投稿: ハルくん | 2012年10月 1日 (月) 22時20分

 こんばんは。初めまして。
 僕の大好きなソコロフの演奏について書いてあったので、嬉しくなってしまいました。この前奏曲集の演奏は、いったん聴き始めると最後まで耳が釘づけにされてしまいます。「これだけ譜読みの深さと表現力を持つピアニストは余り思い当たりません。」同意です。もっと有名になっていいピアニスト&録音だと思います。
 あと僕が好きなのはエッシェンバッハの録音です。超ダークでブラックなんですが、それがたまりません。若手ではメジューエワの演奏が素晴らしいと思います。機会がありましたら、お聴きになってみて下さい。
 ハルくんさんがオススメされているコルトーは聴いたことがありませんでした。相性のいい曲を弾いた時は物凄い演奏をするピアニストですし、今度聴いてみようかと思います。
 長文失礼しました。

投稿: ぴあの・ぴあの | 2013年7月 2日 (火) 00時10分

ぴあの・ぴあのさん、はじめまして。
コメントを頂きまして誠にありがとうございます。

管弦楽や弦楽に比べると、ピアノの記事は少ないのですが大好きです。ソコロフは僕も割と最近までは知らない存在でしたが、本当に凄い演奏家ですね。

エッシェンバッハは現在は指揮者として大好きですが、ピアニストとしても素晴らしかったですね。前奏曲集は興味が有るのですが未聴です。是非聴いてみたいと思います。ありがとうございました。

コルトーは受け入れられる人とそうでない人にハッキリわかれるとは思いますが、一度は聴かれて良いと思います。どうせなら晩年のものがお薦めなのですが。
ご感想を楽しみにしています。

どうぞまたお気軽になんでもコメントください。今後ともよろしくお願い致します。

投稿: ハルくん | 2013年7月 3日 (水) 00時14分

 ハルくんさん、こんにちは。
 オススメのコルトーの前奏曲集を聴きました。とりあえず、若い頃のものを。まず、この年代の録音にしては音が良いですね!演奏も技術的な衰えはほとんど感じられず、前奏曲集の特質とコルトーの個性がうまくマッチしているように聴こえます。以前コルトーの他のショパン録音を聴いた時は釈然としなかったことが、前奏曲集ではあまり感じられませんでした。この独特の美しい打鍵は、現代では絶対に得られないものですね。
 ただ、やはりコルトーの個人的な音の操作が気になってしまいました。Nimbusのピアノ・ロールのような衝撃を少し期待していたんですが、そこまでではなかったようです。しかし、このレベルまでくると好みと違っていても認めないわけにはいかないですね。

投稿: ぴあの・ぴあの | 2013年8月21日 (水) 14時20分

ぴあの・ぴあのさん、こんにちは。

コルトーを聴かれたのですね。
この人の場合は上手い下手を語るのはナンセンスで、他の誰にも真似のできない雄弁な語り口を楽しむべきですね。
もちろん聴き手の好みは有って当然ですが、一つのピアノの歴史として聴いておいて損は無いと思います。
もし機会が有れば新盤のほうもお聴きになられてください。

投稿: ハルくん | 2013年8月21日 (水) 23時22分

お早うございます。

ソコロフの初版opus盤¥648で入手。中古で笑、巡り合うのをずーっと待っていたので高まりました。

>配列~全体が見事な統一感

終始暗いムードに支配されていて浸れる理由なのですね。なるほど。

フランソワでは余り魅かれなかった曲だけに、ソレだけ素晴らしい演奏なのだと判ります。硬質でなく柔らかい音に、程よい残響が心地よくも在ります。

パドヴァのゴールドベルクも然りですが、どのピアノで録音するかが相当に大事と感じています。

投稿: source man | 2015年3月22日 (日) 08時08分

source manさん、こんにちは。

ソコロフ盤を聴かれたのですね。
この演奏を聴くと、優れたテクニックは”音楽性”を表現するための手段にしか過ぎないのだなぁとつくづく感じますね。
ライブの生きた雰囲気をとらえた録音も含めて、まずはこの曲の最高の演奏だと思っています。

投稿: ハルくん | 2015年3月23日 (月) 12時51分

ハルくん様

今年は暖かくなったと思ったらまた寒くなるというややこしい日々が続きます。ハルくん様もお身体には十分ご注意下さい。

さて、会社では年度末だというのに、同僚が盲腸で入院してしまい、一人二役で毎日疲れています(精神的にも)。
いつもイライラするので、昔、小林麻美さんが歌っていたショパンで自分を癒しています。僕にとって、フラストレーションが溜まった時に癒してくれるのは、バッハでもモーツァルトでもなく、ショパンのようです。

僕はロマン派の音楽はほとんど聴きません。ベートーヴェン以降の交響曲で聴くのはマーラーとブラームスくらいです。
しかし、ピアノ音楽だけは、昔住んでいた家の近くにヤマハピアノ音楽教室があり、そこの先生と親しかったせいか、どの時代の音楽もよく聴きます。

その先生に「ショパンの代表作は?」と尋ねると、即座に、24の前奏曲と練習曲だという答が返ってきました。そして特にショパンの練習曲を弾いて人を感動させられない人はプロのピアニストにはなれない、と仰っていました。
僕はそれまでBGM的にショパンを聴いていましたが、もしかするとショパンは、ピアニストの資質を透過させてしまう、恐ろしい作曲家だと思い、聴き方を変えました(笑)。

今聴いているのは、24の前奏曲です。名盤は全てハルくん様が紹介されていますので、「僕の名盤」を紹介いたします。御笑読いただけましたら幸いです。


① モラヴェツ盤
イヴァン・モラヴェツは、ハルくん様のモーツァルトとブラームスのサイトで紹介されていますが、案外、ショパンも多く録音しています。
彼の演奏は、ルービンシュタインやポリーニのようなインターナショナルなものでなく、ローカルで朴訥とした演奏です。しかし、一度聴くと忘れられない歌心に溢れています。僕が一番よく聴くのはモラヴェツ盤です。
 

② ラローチャ盤
ピアノの女王の異名を持つラローチャもこの曲を録音しています。
ラローチャは画家のように色彩感豊かな音を奏でます。こうした彼女の特性はモーツァルトなどでは裏目に出ることがありますが、ショパンには向いていると思います。まるでゴヤやドガの絵画を見ているような気分になります。
日本は男尊女卑の国のせいか、女性を絶対に「巨匠」と呼びませんでした。最近になって、ようやく彼女も巨匠と呼ばれるようになりましたが、何を今さら、ましてよくあるように、老化現象を美化する意味での巨匠など必要ではありません。彼女のテクニックは、彼女が亡くなるまで衰えることはなかったのですから。


③ アンダ盤
ゲザ・アンダは早逝でしたので、数は少ないがロマン派の音楽を録音しています。特に、この曲はモノラルとステレオの二種類の録音があります。
アンダの特徴は、どんなに強奏しても決して音楽が煩くならないことでしょう。テクニックの面では、全く不安のない人なので、どんな難パッセージの前でも破綻をみせません。こういうタイプのピアニストは緩徐楽章は緩慢に流れやすいのですが、アンダは急速な曲もゆっくりした曲も実に上手く弾いています。アンダもこの曲を独立した前奏曲ではなく、一つの大曲と捉えているようです。聴き終わった時の充実感は何物にも代えられません。
こういう事を考えるのは不謹慎かもしれませんが、アンダ、リパッティ、グールドという人達にもう少し寿命が与えられたら、ピアノ音楽界は、今のように退屈なものにはなっていなかったような気がします。

以上、また長文になってしまいましたね。申し訳ありません。
今日も元気に(?)休日出勤した者の戯言でした。

投稿: motosumiyosi | 2018年3月21日 (水) 22時58分

motosumiyosiさん、こんにちは。

ショパンの代表作が前奏曲と練習曲だという答は的確だと思いますが、僕はソナタ2番、3番やポロネーズ集なんかも大好きですね。それにワルツやバラードも。

しかし「ショパンの練習曲を弾いて人を感動させられない人はプロのピアニストにはなれない」とは興味深いご意見ですね。しかしプロが弾いたのを余り聴いた覚えが有りません。聴いてみたくなりました。

モラヴェツやアンダのCDは機会あれば聴いてみたいと思います。

投稿: ハルくん | 2018年3月26日 (月) 10時53分

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