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2012年6月

2012年6月30日 (土)

カムバック、スワローズ!

今朝、目をさますと、ツバメの声がずいぶんと賑やかだったので、外に出て巣を見てみたら、もぬけのカラでした。「巣立ったんだ!」と思って、近所の空を見渡すと、大勢のツバメたちが元気に飛び回っていました。さっそうと飛ぶ大人ツバメと、まだ慣れない様子でパタパタと必死に飛ぼうとしている子ツバメたちの差は明らかです。その数は全部で20羽を越えましたが、その中に我が家の子ツバメが混じっているのは間違いありません。

昼間外出して、夕方家に戻って来た頃には、ツバメたちが空高く飛び回っていました。たった一日で、すっかり上達するのには驚きです。

そして、夜になって巣を見に行きましたが、子ツバメは一羽も戻っていませんでした。巣の下にも糞が全く落ちていません。本当に巣立ちを遂げたんですねー。嬉しさの反面、ちょっぴり寂しさも感じます。

しばらくは、この辺りを飛んでいると思いますが、いずれは海を渡って南の国への長い旅を始めることでしょう。そして来年の春には、きっとまた我が家に戻って来てくれるものと思います。みんな元気でな!
カムバック、スワローズ!

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2012年6月29日 (金)

ショパン 「ポロネーズ集」 名盤

ショパンの曲で僕が特に好んでいるのは2曲のソナタとプレリュードですが、もちろん他の曲も好きです。バラード、ノクターンなど、どれを聴いても「ピアノの詩人」の面目躍如ですものね。孤独な憂鬱さを感じる音楽はショパンの本質をついていると思います。けれどもショパンの偉業の一つとして、舞踏曲の芸術化ということが上げられると思います。ワルツ、マズルカ、ポロネーズなどを、単なる「踊り」の為の音楽では無く、高い芸術性を持った鑑賞用の音楽に昇華させたからです。

それらの曲は、どれも素晴らしいですが、ショパンの祖国ポーランドで祭礼や儀式の時に踊られていたポロネーズは、「ブンチャカチャッチャチャッチャ」という独特のリズムが男性的で、力強く勇壮な雰囲気が大きな魅力です。このリズムは、ロシアのチャイコフスキーなども好んで取り上げましたが、何と言ってもショパンが筆頭格と言えるでしょう。

ショパンは7歳の時に最初のポロネーズを作って、10代の頃までに約10曲の作品を書きました。けれども、それらは初期作品と扱われていて、現在一般に聴かれているのは、彼がポーランドを離れてから書いた作品26以降の7曲です。

第1番嬰ハ短調op.26-1

第2番変ホ短調op.26-2

第3番イ長調「軍隊」op.40-1

第4番ハ短調op.40-2

第5番嬰へ短調op44

第6番変イ長調「英雄」op.53

第7番変イ長調「幻想ポロネーズ」op.61

いずれも非常な名曲ですが、勇壮な舞曲にもかかわらず、1、2、4、5番のように暗い情熱に支配された短調の曲が多いです。特に4番、5番が秀逸で、第4番ハ短調では厳しい運命の重さに押し潰されそうになりながらも、必死に立ち上がって進もうとしている姿を想わせます。第5番嬰へ短調は「英雄」と並んで僕の最も好きなポロネーズです。長い曲で第1主題が何度も繰り返されるのに、くどさを感じないでもありませんが、切迫感に包まれた暗い情熱に引き込まれます。中間部は抒情的で美しく魅力的です。

一方で、3、6番のように力に溢れた長調の曲が大きな輝きを放っています。第3番「軍隊」も名作ですが、第6番「英雄」は傑作中の傑作で、何度聴いても胸いっぱいに勇気が広がる最高の曲です。無駄のない構成も実に素晴らしいと思います。

それでは僕の愛聴盤ですが、7曲のポロネーズが収められているCDは意外に多く有りません。常識的には母国ポーランドの大ピアニストであるルービンシュタインが考えられますが、この人のRCA盤は余り気に入りませんでした。どうもサロン的で緊迫感に欠けた感が有るからです。アシュケナージのDECCA盤も、切れのあるタッチと澄んだ美音が耳に心地よいのですが、その分、ショパンの悩み、苦悩という暗い部分が失われている気がします。こんなにも健康的なショパンは自分の好みからは外れます。そうすると、やはりこの人です。

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マウリツィオ・ポリーニ(1974年録音/グラモフォン盤) ポリーニに一番適しているのは「練習曲集」だと思いますが、このポロネーズ集も気に入っています。リズムを崩さずに厳格に刻むので、音楽が非常に威厳を持って立派に感じられます。流れの良さと、重厚さとのバランスが秀逸だと思います。1番、2番では演奏にやや不完全燃焼を感じますが、「軍隊」以降、特に僕の好む第5番と「英雄」の出来栄えが傑出しているので大いに満足です。ここでは装飾音の一つ一つまでが音楽に完全に奉仕していると思います。

ということで、7曲のポロネーズ集としては、昔からポリーニ盤を愛聴していますが、その他にも「英雄」他の単独の録音には良いものが有りますのでご紹介します。

Cci00025アルトゥール・ルービンシュタイン(1960年録音/Muza盤) ルービンシュタインの祖国ポーランドのワルシャワでのコンサートのアンコールで「英雄」を弾きました。この演奏にはRCAのスタジオ録音とは全く異なる気迫と緊張感が感じられます。全盛期ですのでテクニックも申し分なく、これこそが真の「英雄ポロネーズ」なのかと、認識を新たにさせられる感があります。こういう演奏で7曲を残してくれたら、決定盤間違い無しです。

074644230628_2 ウラディミール・ホロヴィッツ(1960年代録音/CBS盤) ベスト盤ですが、「軍隊」「5番」「英雄」「幻想」と主要な曲を聴くことが出来ます。どの曲もホロヴィッツ一流の「クセ」の有る演奏で、好き嫌いの分かれ道ではないかと思います。で、僕は好きです。どんなスタイルでも究極まで突き詰められた「芸」は、やはり真の芸術だと思うのです。但し聴いていて、作曲家よりも演奏家の体臭を強く感じてしまうのは覚悟しなければなりません。

F4db9736 マルタ・アルゲリッチ(1967年録音/グラモフォン盤) 「英雄」「幻想」を聴くことが出来ます。 若きアルゲリッチの録音ですが、僕は70年代までの彼女の演奏は大好きです。本能と感性のままに、曲にストレートにぶつかる演奏が後年の恣意的な演奏とは随分印象が異なるからです。この2曲の演奏も、一気呵成に弾いているようで、表情をひょひょいと変えてゆくのが実に楽しいです。ポリーニのような造形性や立派さは有りませんが、音楽の勢いが非常に魅力的です。

Chopin_kissin エフゲニ・キーシン(1993年-2004年録音/RCA盤) ショパン選集の中から、1、2、4、5、6番を聴くことが出来ます。各曲に共通しているのは、遅めのリズムで重いことです。そのために躍動感に不足するように感じます。それでいて4番などは、引きずる様なテンポが人生の苦悩を増した印象かと言えば、意外にそうでもありません。「英雄」は1999年と2004年の二種類が有りますが、1999年のほうが躍動感に溢れていて好きです。

ということで、「英雄ポロネーズ」単独でも、ポリーニのグラモフォン盤が一番好きですが、それに並ぶのがルービンシュタインのワルシャワ・ライブ盤です。

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2012年6月25日 (月)

続・ハルくんのツバメ日記 

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我が家のツバメちゃんたちが生まれて、明日で2週間になります。子供の成長の早いことは何処も同じです。産毛でほわほわしていた小さな頭もずいぶんと大きくなって、顔つきもすっかり大人びてきました。「へへん、そんな生意気そうな顔してて飛べないのかよー」とでも、からかってやりたくなりますね。

それにしても写真の通り、5羽のツバメちゃんたちは、巣の中で、もう身体がぎゅーぎゅー状態です。きっと、窮屈になって今にも巣立つことと思います。巣立ちの瞬間が見届けられると嬉しいのですが、ずっと見ていられるわけでは無いのでどうでしょう。

さぁ、みんなで早く飛び立って、電線の上で「電線音頭」を踊って見せておくれよー!

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2012年6月21日 (木)

ショパン 「バラード集」 名盤

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「バラード(Ballade)」というのは、古くは12世紀頃にフランスで生まれた世俗抒情歌の形式の一つだそうです。その後、声楽曲として広まっていましたが、器楽曲に初めて取り上げたのがショパンだそうです。同じポーランド出身の詩人アダム・ミツキェヴィッチの詩に霊感を受けて作曲したそうですが、各曲の具体的なストーリーについては余り明確では無いようです。ですので、曲を聴く時には、自分で自由にイメージを湧かせて楽しめば良いのでしょう。例えば「愛」でも「恋」でも「孤独」でも「嵐」でも何でも構わないですし、もちろん純粋器楽曲として聴いて良いと思います。

ショパンの書いたバラードは4曲有ります。

第1番ト短調op.23

第2番ヘ長調op.38

第3番変イ長調op.47

第4番ヘ短調op.52

4曲の中で、演奏される回数が多く、最も人気の高い名曲は、やはり第1番でしょう。ロベルト・シューマンは、この曲を「ショパンの曲で最も好きだ」と語ったそうですし、僕も大好きな曲です。ほの暗いロマンティシズムとドラマティックな曲で、いかにもシューマン好みらしい曲ですね。聴きどころは、物思いにふける様なト短調の第1主題と、それまでの暗い気分が晴れやかにがらりと変貌する変ホ長調の第2主題です。もちろんピアニスティックな部分も素晴らしいですが、この曲はやはり、得も言えぬ旋律の美しさに最大の魅力を感じます。

第2番は、優しい牧歌的な部分と、嵐のように激しい部分が交互に入れ替わる非常にドラマティックな曲です。まるで夫婦生活の縮図のようですね。まぁ、そんなことは良いとして、ショパンは、この第2番をシューマンに献呈したのですが、第1番ほどには評価をされなかったそうです。僕はこの曲も大好きだけどなぁ。

第3番は、4曲の中で最も平穏な音楽です。どことなくシューベルトを想わせる単純な旋律が繰り返されます。地味な音楽ですが、やはり美しく魅力的な曲だと思います。

第4番は前半を、メランコリックな旋律が淡々と繰り返されます。憂鬱で沈んだ雰囲気が、いかにもショパンです。それが中間部では穏やかさを見せて、後半では、がらりと変わって激しさを表します。聴きごたえの点では、第1番に次いでいると思います。

僕はショパンの曲では2曲のソナタとプレリュードが特に好きですが、この4曲のバラードもやはりイイですね。とりわけ第1番は何度聴いても魅了されます。う~ん、ショパン!

それでは僕の愛聴盤ですが、第1番のみと全曲盤とでご紹介します。

―第1番ト短調op.23―

41rkeftwicl__ss500_ウラディミール・ホロヴィッツ(1965年録音/CBS SONY盤) ホロヴィッツが12年のブランクから復帰したカーネギーホールでの記念すべきライブ録音です。美しく、かつ強靭なピアノタッチと譜読みの深さ、多彩な表現力にはいつもながら感嘆させられます。ブランク明けのライブですのでミスタッチも見受けられますが、いささかも気にはなりません。やはりこの人のショパンは凄かった!演奏後の盛大な拍手も収録されています。

074644230628_2 ウラディミール・ホロヴィッツ(1968年録音/CBS盤) ベスト盤ですので、記載は有りませんが、たぶん招待客を前にして収録されて全米でTV放映された際の録音です。演奏の勢いはカーネギー・ライブのほうが僅かに上かなとも思いますが、ピアノそのものの音はこちらのほうが明瞭なので迫力を感じます。どちらを選んでもホロヴィッツの凄さは充分に聴けますので問題は有りません。全曲が聴けないのが本当に残念です。

51ukeut7bpl アルトゥーロ・べネディッティ・ミケランジェリ(1967年録音/DIAPASON盤) イタリアのフェレンツエ近郊の町プラトで行われたライブです。録音は多少不安定さを感じますが、ピアノの音に芯が有るので悪くありません。この人の演奏も凄いです。第1主題はさらりと流れて、第2主題で思いきりゆっくりと夢見るように美しく弾くのでインパクトが大きいです。後半も見事で迫力も充分です。ああ、これぞショパン!素晴らしい!

51gypejgpkl__sl500_aa300__2アルトゥーロ・べネディッティ・ミケランジェリ(1971年録音/グラモフォン盤) 昔から有名なショパン・アルバムに含まれますが、プラトのライブ録音のほうが感興の高さを感じます。こちらは良くも悪くもスタジオ録音です。けれども、この人のピアノの持つ美感は本当に他の誰とも違います。力強く、音そのものに独特の輝きが有ります。それでいて脂ぎったヴィルトゥオーゾ性は全く感じません。常に高貴さを失わないのです。やはりホロヴィッツに対抗出来る唯一の名匠です。

―全曲盤―

3836f9980303c78dbd1a76834746599fクリスティアン・ツィマーマン(1987年録音/グラモフォン盤) どの曲も歌いまわしのスケールが大きく、情緒的な面でも雰囲気満点です。テクニックも素晴らしくヴィルトゥオーゾ性も充分です。器楽的な魅力と情緒的な魅力のバランスが50対50という、正にショパン弾きを目指すピアニストのお手本のような演奏ではないでしょうか。強音での打鍵は非常に力強いですが、美しさを失いません。どの曲も出来が素晴らしいと思います。

Chopin_kissin エフゲニ・キーシン(1998年録音/RCA盤) キーシンのショパンCD5枚セットに収められています。この人らしいしなやかで美しいタッチで難しい部分も軽々と弾き切っています。情緒的な部分もゆったりと歌わせます。フォルテの迫力も充分です。但し、「不健康さ」や「毒気」が余り感じられないのに、ある種の物足り無さを覚えます。「これだけ上手くて、何が不満か」と言われるでしょうが、やっぱり有るのですよね。

3199080666 マウリツィオ・ポリーニ(1999年録音/グラモフォン盤) ポリーニの57歳の録音ですが、強靭な打鍵は健在です。ですので、2番では強音と弱音のコントラストが凄いです。他の曲も同様です。その反面、1番では陰鬱な部分をさらりと流してしまうので物足りません。4番の弱音で長く繰り返される旋律がどうも味気ないです。ダイナミックな部分での迫力は凄みさえ感じますが、僕の好みではありません。ポリーニはバラードには余り向いていないように思います。

4110091410 ジャン‐マルク・ルイサダ(2010年録音/RCA盤) この人はテクニック的に不足は無くても、ヴィルトゥオーゾ性が前面に出ることが有りません。フォルテの迫力も抑え気味です。その分逆に、情緒面の訴えかけが抜群で、何とも深く心に沁み入ってきます。優しく歌う部分での美しさは比類有りません。ですので個性の薄い3番などが非常に魅力的な曲に感じられます。もちろん1番、4番も皆素晴らしいです。最も「詩人」を感じる演奏だという気がします。

以上を聴いてみて、第1番ではホロヴィッツとミケランジェリがやはり素晴らしく、現代の名手達をもってしても中々越えることのできない孤高の域に達していると思います。

全曲盤の比較では、僕が好んでいるのは、ルイサダ>ツィマーマン>キーシン>ポリーニの順です。

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2012年6月17日 (日)

ハルくんのツバメ日記

今日、ベイビーの一羽が巣の下に落ちて死んでいました。とても悲しかったですが、拾って庭の花壇の端に穴を掘って埋めてやりました。

巣から落ちてしまうのは良くあることらしいです。昨年は6羽が全て無事に巣立ったのですが、今年は全員そろってとは行きませんでした。でも、これも自然界の宿命ですので仕方がありません。残る5羽(どうやら、そうみたいです。)には、無事に巣立ちまで頑張ってほしいです。

Swalow31_2 育ち盛りですので、お腹を空かせて、ママさんの運んできてくれるごはんを待っていますね。

Swalow32 「ママ~、お腹が空いてもう待てないよぉ~」 首を長くして待っているので、キリンさんのようになってしまいました。

Swarou33ママさんつばめは大忙しでエサを持ち帰っては腹ぺこベイビーズに与えています。「あんたたち、静かに待っていなさい!ワタシだって忙しいんだから!」

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2012年6月15日 (金)

ショパン 「24の前奏曲」op.28 名盤

Chopin
ヴァルデモサの修道院

「24の前奏曲」作品28は、ショパンがパリでジョルジュ・サンドと知り合い、親しくなっていった頃の約3年に渡って作曲されました。サンドがショパンの病気を心配して、療養のために二人でスペインのマジョルカ島に渡ります。けれども、ショパンの肺結核の病気が島の人々に怖がられてしまったために、二人は人里から遠く離れたヴァルデモサにある修道院に移らざるを得ませんでした。ショパンは、ここでピアノを弾き、「24の前奏曲」を完成させたのです。

ショパンがバッハの「平均律クラヴィーア集」を、座右の曲として弾いていて、この「24の前奏曲」作曲のヒントとなったことは良く知られています。全て(24)の調に対して1曲づつ曲を作ったのですが、ハ長調(第1番)とイ短調(第2番)の平行調をスタートとして、完全五度づつ上昇して全ての調を一巡するというユニークな配列(いわゆる五度循環方式)をとっているために、全体が見事な統一感を持っています。3年の間に別々に書かれた、短く性格の異なる曲たちが、全く違和感を感じることなく、自然に流れゆく川のように移りゆくのには感嘆します。

24曲の中では、やはり第15番変ニ長調「雨だれ」が印象的です。初めから絶え間なく続く同じ音「ラ♭」が雨だれに聞こえるので、この呼び名が付きました。曲は刻々と表情を変えて行きますが、この音だけが変わらずにいつまでも続きます。天才的なアイディアの傑作だと思います。

続く第16番変ロ長調も印象的です。速いプレストですので、出来るだけ速く、かつ音を明確に弾き切れるかが勝負です。

第4番ホ短調ラルゴはメランコリックな曲ですが、ショパンが亡くなった時にパリのマドレーヌ寺院で行われた葬儀でオルガンで奏されたそうです。

他のどの曲もショパンらしい詩情に溢れた美しい名曲ばかりですが、それぞれの曲を個別に聴こうとは、まず思いません。多くのピアニストのリサイタルでも「雨だれ」以外の曲は、単独で弾かれることは少ないようです。やはり全曲を通して、はじめて真価を発揮する曲集なのでしょう。ショパンの曲では、ピアノ・ソナタの2番、3番を最も好んではいますが、最高傑作としては「24の前奏曲」だという気がします。

それでは僕の愛聴盤のご紹介です。

51bxstk1ael__sl500_aa300_アルフレッド・コルトー(1926年録音/NAXOS盤) コルトーは1933年にも再録音を行なっていますが、これはEMIへの最初の録音をSP盤から板起こししたものです。当然ながら音は非常に古めかしいです。コルトー全盛期ですから、自由自在の表現と引き締まった演奏に高い評価を与える人も居ますが、音楽そのものの深さとしては、僕は晩年の演奏の方が遥かに優れていると思っています。ですので、僕にとっては名ピアニストの遺産としての価値に留まっています。

941アルフレッド・コルトー(1955年録音/ARCHIPEL盤) 同じコルトーでも最晩年の演奏です。クレジットにはミュンヘンでのライブ録音と有ります。EMIにもスタジオ録音を2度行っていますし、コルトー得意のレパートリーだったのではないでしょうか。ですので、演奏に余り衰えを感じません。ミスタッチも少なめです。何と言っても、詩情の豊かさが抜群ですし、演奏の味わいの濃さと音楽の深みは圧倒的です。音質も明瞭ですので、コルトーの代表盤の一つに上げたいと思います。本当に素晴らしいショパンです。

Img_739358_19011967_0サンソン・フランソワ(1959年録音/EMI盤) フランソワは好きなピアニストですし、特にドヴュッシーは絶品だったと思うのですが、ショパンは案外と今一つに感じています。この演奏も、これだけを聴いていれば決して悪くはありませんが、他の好きな演奏と比べると、少々影が薄く感じられます。「これを、どうしても聴かなくては」とは中々思えないのですね。EMIの録音もパリッとせずに、年代を考慮しても優秀とは言い難いです。

20101028103130db8マウリツィオ・ポリーニ(1974年録音/グラモフォン盤) ポリーニに一番適しているのは「練習曲集」だと思います。感情に溺れず、どの曲でもカッチリと演奏するスタイルは「前奏曲」の場合には、幾らか面白みに欠ける気がします。そうは言っても、決して情緒に欠けているわけではありませんし、これだけ曲そのものを大げさにならずに端正に聞かせることの出来るピアニストは、すぐに思いつきません。やはりこれも、ポリーニの残した名盤だと言って構わないと思います。

F4db9736 マルタ・アルゲリッチ(1977年録音/グラモフォン盤) どの曲でも彼女にしては、あっさりと一筆書きのように弾いているので、後年の味の濃い演奏が好きな人には、物足りないと思います。でも僕は結構気に入っています。頭で余り余計な事を考えずに、感性だけで弾いているのが好きなのですね。それでもピアノタッチは冴えていますし、ニュアンスが豊かで情緒を一杯に感じられるのが素晴らしいです。なお、第16曲プレスト・コン・フォートでは超快速で何と1分を切っています。キーシンでもジャスト1分ですので、恐らく彼女が最速なのではないでしょうか。

865グリゴリー・ソコロフ(1990年録音/NAIVE盤) 素晴らしく聴きごたえのある演奏です。短い一曲一曲を遅めのテンポとルバートで表情豊かに奏でます。弱音のデリカシーには胸を打たれますし、強音の力強さと迫力にも圧倒される思いです。これだけ譜読みの深さと表現力を持つピアニストは余り思い当たりません。しかも、上手いピアニストに往々に感じる「あざとさ」とはまるで無縁なのも凄いです。全体を通して聴いて、この作品がこれほど偉大で巨大に感じられたのは初めてです。この人の「葬送ソナタ」では、完成度が僅かに不足しているかなと感じましたが、「前奏曲集」には、文句の付けようが有りません。

51xcxnjhaql__sl500_aa300_ ニキタ・マガロフ(1991年録音/DENON盤) マガロフが80歳で亡くなる前年のライブです。会場は東京の江戸川文化センターです。いかにも大家の晩年らしく、全体的におおらかでゆったりと構えた印象です。奇をてらった表現は無く、若い演奏家のような挑戦的、刺激的な演奏とは、まるでかけ離れています。ピアノタッチが美しく、端正な音ですが美しいです。フォルテの打鍵は、力みのない伸びのある音で快感です。

Chopin_kissin エフゲニ・キーシン(1999年録音/RCA盤) テクニックは完璧、ピアニスティックな意味では最高レベルだと思います。音の粒だちや、リズムには曖昧な部分が少しも有りません。但し、僕はそこに逆に窮屈な印象を受けてしまうのですね。あくまでも好き嫌いの問題です。第16曲プレスト・コン・フォートはジャスト1分。アルゲリッチが暴走気味に聞こえるのに、キーシンはきっちり制御されている印象です。それでも速やっ!

ということで、僕にとってはアルフレッド・コルトーの1955年録音盤と、グリゴリー・ソコロフ盤の二つが群を抜いています。次点を選ぶとすれば、アルゲリッチ盤に惹かれます。

本当は、どうしても聴いてみたかったのがホロヴィッツです。しかし、残念なことに録音を残してはくれませんでした。今後の録音に大いに期待しているのは、ルイサダとツィマーマンです。

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2012年6月14日 (木)

いた!ベイビー・スワローズ

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今朝、会社に出かけるのに玄関を出たら、居た居た!綿のように柔らかそうな羽毛の生えた小さな頭が見えました。頭の数はわかりませんが、昨日よりもずっと大きな声でピーピー鳴いています。「ママ~おなかすいたよ~!」と言っているに違いありません。ママさんつばめは、エサを見つけてくるのに大変そうです。いくら自然がまだ残る丹沢のふもととはいっても、エサになる幼虫はだんだん減っているでしょうから。
ママさん、ベイビーズのために頑張れ!

(夕方、写真撮影に成功しましたのでアップしました。小さな頭で大きな口を一杯に広げて、ママつばめが取ってきてくれるエサを待ちわびているのでしょう。)

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2012年6月12日 (火)

出産報告!

今日、我が家に同居するスワロー一家の奥方が無事に出産しました。会社から帰宅してみると、玄関の上の巣の中から、チーチーと明らかにベイビーの鳴き声が聞こえてくるのです。ただし、巣の中を覗くことはできませんので、声だけです。何羽誕生したかも、まだ分かりません。しばらく経てば、巣の中から顔を出すと思いますので、撮影に成功したら皆さんにお見せします。
さあ、彼らが無事に巣立つのが楽しみです。

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2012年6月 7日 (木)

パーヴォ・ヤルヴィ/フランクフルト放送交響楽団 来日公演 マーラー交響曲第5番

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昨夜はパーヴォ・ヤルヴィとフランクフルト放送響のコンサートを聴きに行きました。このコンビの生演奏を聴くのは2008年以来ですので、4年ぶりです。前回はマーラーの最高傑作、交響曲第9番でしたが、今回は同じマーラーの第5番。非常に好きな曲です。

第9番の演奏は、案外とスタイリッシュで、感情にどっぷり浸りきるとか、爆演とかいうタイプでは無かったように記憶しています。熱演でしたが、正攻法でマーラーの音楽の味わいや深さを充分に感じさせてくれる、とても素晴らしい演奏でした。

今回の来日では、ブルックナー8番と、マーラー5番という二つのプログラムが用意されていましたが、僕は迷うことなくマーラーのほうを聴きに行くことにしました。マラ5の生演奏と言うと、随分以前にコバケンが読響に客演したときに、同じサントリーで聴いたのですが、充実した響きでドラマティックなマーラーを堪能できた素晴らしい演奏でした。今回はそれ以上に感動出来れば良いなと思いつつ、会場に足を運びました。

前プロはリストのピアノ協奏曲第1番です。ピアノ独奏は、アリス=沙良・オット。彼女は23歳の日系ドイツ人ですが、まるで「不思議の国のアリス」みたいに可憐な美少女です。日系なので小柄ですし、長い黒髪が揺れてとても素敵です。自分にとっては娘の世代になりますが、胸が熱くときめきます。演奏?あー、耳に入らなかった・・・というわけではありません。(笑) 音量は比較的小さめで、豪快なヴィルティオーゾ風のリストではありません。そういうリストを求めると物足りなく感じられたかもしれません。彼女自身のように美しく可憐なリスト、そんな印象です。アンコールは「ラ・カンパネラ」とブラームスの「ワルツ第3番」。良い曲目構成で楽しめました。

さて、肝心のマーラーですが、これは凄かった!と言っても、ユダヤ風の濃い情念はそれほど感じさせませんし、バーンスタインのような巨大なスケールというわけではありません。テンポは中庸だと思います。リズムの刻み、念押しが強く、アウフタクトはこれでもかと強調されます。フォルテの音は明確ですが、金管にうるさくなるほどの強奏はさせません。逆に弦楽、特に低弦のパワフルさには圧倒されました。第1楽章では幾らか抑え気味の印象でしたが、彫の深さと表現力の豊かさには驚かされました。第2楽章では、いよいよエンジン全開です。パーヴォが体全体で指揮して、嵐の海で大波が揺れるような凄まじい演奏でした。マーラーの音楽を聴く喜びに体が震えました。第3楽章スケルツォも非常に振幅の大きな演奏です。この楽章のみ、ホルンの主席が、舞台上の反対側右奥に一人移って、スタンドしたままソロを吹きましたが、これはパーヴォのアイディアでしょう。主席の演奏も素晴らしく、さしずめホルン協奏曲のような大活躍で印象的でした。第4楽章のアダージョでは、旋律をしっかりと聴かせて美しい響きで勝負するような印象でした。消え入るような弱音で旋律が聞えないというのとは違います。テンポはやや速めでしたので、個人的な好みでは、もう少し遅く指揮して欲しかったです。第5楽章では、明るく解放された音楽が壮麗に鳴り渡りました。決して爆演ではなく、パーヴォが緻密にコントロールしている印象です。でもオーケストラは大熱演ですし、終結部のたたみかける迫力は物凄かったです。この曲を何度聴いていても、興奮させられました。全体として、マーラーファンにとってはこたえられないほどに聴きごたえのある演奏でした。もちろん演奏後の拍手とブラボーは凄かったです。

アンコールは、ドイツのオーケストラの定番のブラームス「ハンガリア舞曲」から、「第5番」です。変幻自在の極みで、魔法のような指揮ぶりの演奏でした。2曲目の「第6番」では、強靭なリズムと、その合間の美しく繊細な歌わせ方が、普段聴いているこの曲とはまるで違う曲のように感じられました。まぁ楽しいこと、この上ありません。

ということで、パーヴォの指揮者としての力量と才能が、とてつもないことが思い知らされました。これほどの表現力を持つ指揮者が他にどれだけいるかと考えても、余り思いつきません。現在、ティーレマンと並んで最も注目すべき指揮者ではないでしょうか。そんなの当たり前?こりゃまた失礼致しました。

尚、翌日7日のブルックナーの演奏についてはsaraiさんが、鑑賞記を詳しく書かれています(こちらへ)。

<参考過去記事>
マーラー 交響曲第5番 名盤

パーヴォ・ヤルヴィのマーラー交響曲第2番「復活」

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2012年6月 3日 (日)

帰ってきたツバメ

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1年前に、いまの家に引っ越してきたところ、まもなく我が家の玄関の上にツバメが巣を作りました。ひと月ほどもすると鄙が6羽生まれて、やがて全員(全羽?)無事に巣立っていきました。あとに残ったのは半分崩れた巣の跡だけでした。

今年も来ると良いなぁ、と思って、崩れた巣をそのままにしていたら、先日しっかりと戻ってきたのです。数日で巣を綺麗に修理して、現在は巣から出たり入ったりしています。きっと近いうちに鄙を生んで、巣立ちまで育てることでしょう。その間は、玄関下に糞が沢山落ちますので、毎朝掃除するのが日課になります。1年中では少々困りますが、まあ、ひと月ほどのことなので、それもまた楽しみです。

日本のツバメは、冬を越すのに太平洋を渡って、台湾、マレーシア、フィリピン、遠くはオーストラリアまで行くそうです。そして春になると日本に戻り、大抵は前の家か、もしくはその家の近くに戻って来るそうです。ということは、わざわざ巣を半分壊していくのは、翌年に別のツバメに住まれないようにする為なのかもしれません。

今居るツバメは、たぶん昨年飛んで行って、長い距離の旅を終えて帰ってきた同じ親ツバメか、あるいは6羽の子ツバメのうちのどれかである可能性が高いので、自然の凄さを感じるのと同時に、とっても嬉しい気持ちになります。今年もまた、鄙たちが全員無事に巣立つことを願っています。

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2012年6月 1日 (金)

ショパン ピアノソナタ第2番変ロ短調op.35「葬送」 続・名盤

ショパンの曲の中で、僕が一番好きなのはピアノ・ソナタです。2番と3番は中々に甲乙が付け難いところですが、どちらか1曲と言われれば、やはり第2番を選びます。第1楽章の焦燥感と感情の高まりには心を激しく揺さぶられますし、第3楽章の葬送行進曲と美しい中間部もとても好んでいます。この曲については、以前、ピアノ・ソナタ第2番「葬送」名盤で記事にしていますが、それ以降に聴いた幾つかの演奏を今回はご紹介します。

Cortot_chopin_sonataアルフレッド・コルトー(1933年録音/EMI盤) コルトー全盛期のSP録音です。現代の耳からすれば、テクニックは乏しく、仕上がりも粗いです。ところが演奏からプンプンと迸る香りはいかばかりでしょう。どんなに表情が大げさで芝居がかかっていても、少しもわざとらしく聞こえません。コルトーが心で感じたそのままを自然に演奏するからだと思います。それは、まるで人間の肉声の歌声を聴いているようです。これほど真に「心」を感じさせるピアニストは現代には中々見当たりません。

941アルフレッド・コルトー(1956年録音/ARCHIPEL盤) 同じコルトーでも最晩年の演奏です。クレジットには一応ミュンヘンでのライブ録音と有ります。ミスタッチは数え切れず、テクニックの衰えは痛々しいほどですが、音楽の表情の大きさと豊かさは、1933年盤を更に上回ります。パウゼやルバートも頻出しますが、全てが堂に入っていて、驚くほど説得力が有ります。現代のメカニカルな演奏に慣れた耳だと、受け入れ難いかもしれませんが、「音楽とは本来何なのか」という、哲学的な思考を試みるためにも、これは一聴の価値が有ると思います。

865グリゴリー・ソコロフ(1992年録音/NAIVE盤) ブログお友達のyoshimiさん絶賛のソコロフでしたが、聴いたのはこの演奏が初めてです。感想を一言で言えば「凄いピアニスト!」です。スケールが大きく、足取りは非常に巨大です。と言っても、速い部分はそれなりに速く弾きます。テクニックも申し分有りませんし、ダイナミックレンジの広さも尋常ではありません。フォルテシモの打鍵の強さと繊細なピアニシモのどちらもが凄いです。但し、この演奏ではフォルテが強過ぎに感じた箇所も有りました。表情づけは極めて豊かで、テンポ・ルバートを駆使した歌いまわしの大きさには驚かせられます。第3楽章での、葬礼の列が遠くから足取り重く、少しづつ近づいて来る表現や、低音を鐘のように響かせるのも面白いですし、アイディアが実に豊かですね。但し、余りに演奏のカロリーが高過ぎて、繰り返して聴くと胃が持たれる感もあります。この感覚は最近のツィメルマンの演奏に共通しているかもしれません。コルトーの味の濃さは決してもたれないのですが・・・。この辺りは好みということでしょう。カップリングの「24の前奏曲」も凄い演奏ですが、それは次回にまた。

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