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2012年5月18日 (金)

~海峡を渡るバイオリン~ 陳昌絃さんの思い出

一昨日の新聞に小さく訃報の記事が有り、思わず目に留まりました。

ヴァイオリン制作者の陳昌絃(ちん・しょうげん)さんが13日にお亡くなりになられたそうです。陳さんは、戦前に日本の統治下にあった朝鮮半島から日本に渡り、独学でヴァイオリンの制作に励み、1976年には米国の楽器制作コンクールで優勝し、ついには世界に5人だけという無鑑査マスターメーカーに認定されました。世界的に高い評価を得て「東洋のストラディバリ」と呼ばれました。陳さんの半生は「海峡を渡るバイオリン」というテレビドラマになって放送されましたので、ご覧になられた方も多いと思います。

実は僕の所有しているヴィオラは、陳さんの手によるものです。といっても、新制作ではなく、ドイツから輸入された普及品に陳さんが手を加えたものです。陳さんの工房は昔から東京の仙川に有って、いまから約35年前、大学のオーケストラに初心者として入部した自分は、友人からの紹介で陳さんの工房を訪れて、その楽器を格安で譲って頂いたのでした。

その時の陳さんのお話が非常に印象的でしたので、今でも耳にはっきりと焼き付いています。

「良い楽器は耳元では、余り鳴っていないように音が小さく感じられます。けれども遠くに離れると、実はよく聞こえるのです。反対に、悪い楽器は耳元ではよく鳴るが、遠くにまで音は届きません。」という内容でした。

その時には、正直「ふーん、そんなものかなぁ」と半信半疑でしたが、それから僅か数年後に陳さんは世界的なコンクールで優勝されたので、「やはり本当だったんだなあ」と一人で納得したものです。

陳さんのヴィオラは今でも家に有りますが、なにしろ弾かなくなって10年以上も経ちます。陳さんの訃報を知って、久しぶりに楽器を手にしたくなりました。この週末は、楽器を弾きながら名ヴァイオリン制作者を偲ぼうかと思っています。

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コメント

陳さんのことは存じませんでしたが「良い楽器」のお話は私のクラの師匠の言葉と通じるものがあり、感じ入りました。

札幌郊外でいまくらいの季節に、窓を開けてレッスンしていた時のことです。吹いていたら「ちょっと待って」と言われ、「あれ?どっか間違ったかな?」と不審に思っていると、師匠は遠くの郭公の声に聴き入って「郭公が鳴いてるの向こうの丘だよね、どう考えても2kmくらい離れてる。あんな遠くで楽器吹いても絶対聞こえないよね、どんな名人でも。どうして鳥の声だと遠くまで聞こえるんだろう?近くで聞いても大した音量じゃないのに。」と。管楽器の理想は野鳥なのだと知った次第です。

投稿: かげっち | 2012年5月21日 (月) 13時01分

かげっちさん、クラのご師匠さんの話と陳さんの話は全く同じ内容ですね。
お二人とも「音」と「響」の本質を説明しているのだと思います。

僕が聴いたヘンリク・シェリングのヴァイオリンも、楽器から直接聞える音量は小さく感じるのに、ホール一杯に響きが広がる感じなのですね。このように聞こえるヴァイオリニストって実は少ないです。

投稿: ハルくん | 2012年5月21日 (月) 20時09分

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