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2012年5月 1日 (火)

ワーグナー 楽劇「トリスタンとイゾルデ」 クリスティアン・ティーレマン/ウイーン国立歌劇場盤

41ciltrjol_2クリスティアン・ティーレマン指揮ウイーン国立歌劇場(2003年録音/グラモフォン盤) 

ゴールデン・ウイークには、普段中々聴けないCDをじっくりと聴くのも大きな楽しみです。最近は、家でオペラを聴くことが少なくなっています。昔はCD(LP?)やビデオでも良く鑑賞していたのですが、この頃は余り取り出すことが有りません。もちろん鑑賞に長時間が必要だということもありますが、ならばバッハの大作の鑑賞をしているのですから、余り理由にはなりません。たぶん自分の中で、オペラは家でCD、DVDを鑑賞するよりも、劇場で生の舞台を鑑賞する方が愉しいという感覚が強くなっているのかもしれません。ただ、その割には、生の舞台で期待外れになることも少なく無いので、結局のところは良くわかりません。

ワーグナーのオペラのディスクは一通り持っていますが、頻繁に取り出して聴くのは「トリスタンとイゾルデ」と「パルジファル」の二つだけです。それ以外は「指輪」も含めて、滅多に聴きません。

「トリスタン」については、以前、「トリスタンとイゾルデ 名盤 ~禁断の恋~」という記事で愛聴盤のご紹介をしました。その後、クリスティアン・ティーレマンが2003年にウイーン国立歌劇場で演奏したライブ盤を購入したのですが、きちんとは聴いていませんでした。今回、それを、ようやくじっくりと聴いてみました。

オーストリア放送協会による放送用録音ですので、スタジオ録音と比べると、どうしても緻密さや分離、ダイナミック・レンジの点で劣るかもしれません。但し、昔から放送録音を聴き慣れてきた耳には、スタジオ録音の人工的な音造りよりも、舞台が目の前に浮かぶ自然な音像がむしろ好ましく感じられます。

今からもう10年も前の演奏なのですが、カぺルマイスターとして地道にキャリアを積んできたティーレマンのオペラ指揮だけあって、実に堂に入ったものです。ワーグナーの傑作オペラだからといって妙に肩に力の入リ過ぎていない、のびのびとした指揮ぶりの印象です。テンポが特に遅いわけでも無いのに、何かゆったりと聞こえるのは、フレージングの良さでしょうか。カール・ベームの、あの極度の緊張感に包まれた壮絶な演奏とは異なります。と言っても、何も緩んだ演奏だということでは全く無く、1幕の結びや、3幕での緊迫した部分における迫力は中々のものです。けれども、最も印象に残るのは、オーケストラ、すなわちウイーン・フィルのしなやかで美しい演奏です。僕がこれまで愛聴してきた、ベーム盤はバイロイト管、フルトヴェングラーはフィルハーモニア管、バーンスタインはバイエルン放送響ですので、ウイーン・フィルの全曲盤は持っていませんでした。かのクナッパーツブッシュ/ウイーン・フィルの抜粋盤などを聴くと、「ああ、これが全曲盤であったらさぞや・・・」と思わずにいられなかったのです。もちろん、ティーレマンはクナッパーツブッシュではありませんが、このしなやかで艶の有る美しい響きは、やはりウイーン・フィルならではです。それに、表現力の素晴らしさも、最高の機能を持った歌劇場オーケストラならではの実力を、余すところなく示しています。トリスタンを歌うトーマス・モーザーは決して超人的なヘルデン・テナーではありません。けれども、恋に落ちてしまい、悲劇的な結末を迎える人間的な弱さを持ったトリスタンとして、魅力は充分です。イゾルデを歌うデボラ・ヴォイトも、若々しく美しい声が、恋に落ちる美女を想像させてとても良いです。これが、もしもDVDだと、彼女の恰幅の良い姿がアップで見えてしまうので、むしろ興ざめ??になりかねません。現実よりも、想像の世界の方が良いことは世の中によく有ることです。(笑)

全体として、ベームの迫力には及ばず、フルトヴェングラーの沈滞の深さにも及ばず、バーンスタインの濃厚なロマンティシズムにも及びませんが、ワーグナーの書いた管弦楽の美しさを、これほどまでに生かし切って、しかも愛と悲劇のドラマを充分に感じさせる演奏はこれまで無かったかもしれません。オリンピックであれば、種目別では他の選手にメダルを譲っても、団体総合で金メダルというところです。

補足ですが、このCDも各3幕が、1枚毎にぴったり収まっているので、鑑賞には便利です。

大好きな「トリスタンとイゾルデ」に、またまた愛聴盤が加わりました。やっぱり人生は愛だわなぁ~(笑)

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コメント

ハルくん、こんにちは

ううん、私の場合、LPやCDは結構、「ジャケット買い」をしますが、上記のCDはシャケットの絵が私の趣味ではないので、演奏者達が気に入っても、多分、入手しないで終わりそうです。

さて、「トリスタンとイゾルデ」ですが、これ、主人公達の年齢設定って、確か、10代後半か、20~22歳なのですね。ですから、声的に若々しく感じなんければならない筈なのですが、ドラマティックソプラノが歌うことが多いので、大人の女性と言うイメージの録音がほとんどだと思っています。その中で、唯一、「青春」を感じさせてくれたのは「グッドオール指揮ウェールズナショナルオペラO.」の録音でした。

後は、「ベーム指揮バイロイト祝祭歌劇場O.」は素晴らしいとは思いますが、録音を度外視すれば、フラグスタートとメルヒオールの輝かしい歌が聴ける「ラインスドルフ指揮メトロポリタン歌劇場O.」が最も好きです。

投稿: matsumo | 2012年5月 3日 (木) 11時17分

matsumoさん、こんにちは。

このCDジャケットの絵は、デイヴィッド・ホックニーという、ピカソに影響された現代画家の作品ですからね。ジャケットとしては奇抜ですが、僕は中々新鮮で良いかなぁとは思っています。
この人は「トリスタン」や「春の祭典」などの舞台装置のデザインもやっているそうです。

この音楽の持っている濃厚で官能的な曲想からは、どうも青春の恋愛の印象は受けません。「ロミオとジュリエット」の世界からは遠く感じますね。むしろ、円熟した大人の恋愛に感じてしまいます。
フラグスタートもフルトヴェングラー盤では、すっかりオバハン声になりましたが、かつては素晴らしい声を聞かせていましたね。

投稿: ハルくん | 2012年5月 3日 (木) 12時50分

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